◆◇◆墓地の山も対象に…先祖の名前で照会が可能 補償金目当ての「墳墓基地権」も 実は預金と同様に不動産の相続問題も深刻なのです。 お墓の山も相続の対象です。お墓を分配する人はいないでしょうから、そのまま法定相続することになります。勝手に法定相続扱いになっているのですから、お墓の土地の共同所有者になっている自覚もありません。 ご存じのように済州島には鉄道がありません。交通手段はバスとタクシーでしたが、近代化とともに当然車社会となりました。道路網の整備も急速に行われました。道路を造るのに便利な山手には当然お墓があります。道路用地になると土地収用代金が支給されます。観光地化すると海岸沿いの荒れ地ですら本人も気付かないうちに価値が上がります。このような事例は少なくありません。 昔は、占い師に勧められて他人の土地に勝手に埋葬してお墓を建てたそうです。管理されていない畑に補償金目当てで墓を建てる人もいました。01年以前に建てられた墓は20年経ったら「墳墓基地権」が与えられ、土地所有者も撤去を求められません。確実に価値が下がります。たまには他人の墓がないか視察した方が良いです。 私の知り合いで韓国の土地を父親から相続した人がいますが、手続きを未だにしていません。 故郷にある畑で叔母が管理していると、父から聞いていました。しかし、幼少の頃その叔母と会ったきりで顔も覚えておらず、今では直接の交流もありません。というよりも韓国語もできないし、20年近く韓国へ行っていません。 つまり、その土地がどこにあるのかも知らないのです。見たこともない土地を相続しなければならないのですが、手続きも分かりません。まずはどこにあるのか? 価値がどれだけか? を調べなければなりません。ではどのようにすれば良いのでしょうか? 幸いにも1999年から、韓国の自治行政部地籍電算網を利用して「先祖の土地探し」制度ができています。祖先の住民登録番号がわかれば、簡単に電算情報で不動産を探すことができる制度です。 在日は、住民登録番号がありませんが、先祖の名前で照会できます。先祖の名義で土地があると推定される特別市・広域市・道庁地籍部署に本人および相続人が直接訪問して閲覧請求書を提出すれば直ちに照会することができますが、他の者へ委任することも可能です。所有する不動産があると聞いていた人たちには朗報です。利用しない手はありません。 在外国民の申請手続で必要な書類は、1,先祖の除籍謄本(土地所有者が2007年12月31日以前に死亡して直系尊卑属が申請する場合)または、家族関係証明書および基本証明書(土地所有者が08年1月1日以後に死亡して直系尊卑属が申請する場合)2,申請者のパスポートあるいは外国人登録証等の身分証持参3,個人申請者用地籍電算資料利用申込書(市・郡・区庁地籍業務部署に具備)を提出4,また、代理人が申し込む場合は所定の委任状・印鑑証明書等です。 個人的な不動産業者には注意を 私が済州支店に派遣されていた時、3件の詐欺まがいの不動産売買が行われていました。代金の受け渡しが銀行だったので自然と取引の概略が分かってきます。要するに在日が韓国の不動産事情に不慣れなことを利用して相場のごまかしをするのです。比較する相場の提示がなく、怪しい路線価のようなもので価格が決められていました。 在日の被害者は韓国語もできず、近隣の不動産業者と比べる余裕もなく一方的な取引をさせられていました。調べてみると相場より3割ほど低い価格だったそうです。個人の不動産ブローカーには注意しましょう。せめて公認仲介士の資格を確認するか、それなりの規模の会社を選びましょう。 全国相続協会相続支援センター 在日韓国人相続相談室室長 鄭相憲) (2014.9.10 民団新聞) |