マクロビで育つ子は、栄養失調とのデータが
2013-07-29 15:38:26
カテゴリー: 日記
http://macrostarter.at.webry.info/200905/article_4.html
マクロビオティックの栄養と子どもの健康:オランダで行われた集団ベースの混合縦断的研究(大勢の人を対象に長期に渡って追跡調査を行った研究)
大変興味深い内容であり、マクロビ乳幼児の栄養障害を防ぐにはどのようなことに気をつければよいかの記述もあったため、長くなりますが全文から抜粋・要約しました。
(リンク先サイト右上のFull textをクリックすると、全文をダウンロードできます。
(内容紹介)
<この研究の目的>
1966年以降、アメリカでは米国小児科学会や米国学術研究会議、米国医師会その他の団体により、ベジタリアン(特に動物性の食物をほとんどどらない食事をしている人)の健康被害報告やその栄養的な欠点についての懸念が表明されている。中でも頻繁に出てくるのがマクロビオティックの食事である。
これらの報告の多くは、重度の栄養障害になった子どもたちの入院例や死亡例に基づくものである1)2)。
しかし、個々の事例だけでは、その集団全体の栄養状態についての結論は何ら引きだせるものではない。
そこで、オランダでマクロビオティックの食事をしている子どもたちを対象に、集団ベースの研究を行った。
(以下、マクロビ児と省略します)
その目的は
1)マクロビ児の栄養障害報告は偶発的なものなのか、それともマクロビ児の集団全体に見られるものなのか。
2)そうした子どもたちの栄養状態を改善するため、マクロビ原理の範囲内で許されるアドバイスはないだろうか。
というふたつの問いに答えることである。
<研究対象>
もっとも栄養障害のリスクの高い年齢を調べるため、0歳〜8歳までの子どもたち(243名)を対象に断面的な身体測定を行った。2年後、同じ子どもたちを対象にもう一度行った(194名)。
次に、1985年にオランダで出産したマクロビ家庭の赤ちゃんの95%にあたる53名に対し、混合縦断的研究を行った。3つの集団に分け、生後4〜10ヶ月、8〜14ヶ月、12〜18ヶ月の期間調査を行った。同年代のオランダの赤ちゃん57名を対照とした。
出生体重が2500g未満の赤ちゃん、先天的な病気をもっている赤ちゃんは除外した。
(※マクロビ家庭で出生体重が2500g未満の赤ちゃんは4.3%で、オランダ人全体の2.0%に比べ有意に多かった。マクロビ赤ちゃんの平均出生体重はオランダ人の赤ちゃん全体より約200g少なかった。)
さらに、栄養障害の認められた赤ちゃん(27名)に対し、介入試験を行った。
50品目のマクロビ食品および母乳についても栄養素濃度を測定した。
<マクロビ赤ちゃんの家庭背景>
研究対象となったマクロビ赤ちゃんの母親の全員が3年以上マクロビ食を実践しており、5年以上の実践者も75%いた。
母親の97%が一般向けマクロビ講習会に参加しており、92%が子どもの栄養についてのマクロビ特別コースまたは集団相談会に出席していた。
両親の学歴は高く、父親の64%、母親の45%が大卒だった(同年代の一般オランダ人はそれぞれ17%、9%)。
参加家庭の92%が両親そろっていた(対照群は100%)。
母乳保育率はマクロビ家庭が高く(生後一ヶ月以上:96% vs 74%)、母乳育児の期間も長かった(13.6ヶ月 vs 6.6ヶ月)。
離乳食開始時期(母乳以外のものを与え始める時期)はマクロビ家庭で遅い傾向にあった(4.8ヶ月 vs 2.7ヶ月)。
<結果>
・身体の成長
生後6ヶ月までは体重・身長ともマクロビ児も成長曲線の平均に近いが、生後6ヶ月から成長に遅れが出始めた。
生後4〜18ヶ月の間、マクロビ児の成長の遅れが目立った。
2歳以降は体重と腕囲は追いついてくるが、身長と座高は追いつくことはなかった。親の魚と乳製品の摂取の頻度が増えると赤ちゃんの出生体重も増えていた。
乳製品をまれにしかとらない、または全くとらない家庭の赤ちゃんは体重、身長、腕囲ともに低かった。
最初の調査以来動物性食品の摂取を増やした家庭では、身長の伸びがその他のマクロビ児よりよくなった。
皮膚の菲薄化、筋肉のやせがマクロビ児の30%に見られた(対照群は2%)。
・栄養状態
マクロビ児はエネルギー摂取、タンパク質摂取、カルシウム、リボフラビン(ビタミンB2)、ビタミンB12摂取が対照群に比べかなり低かった。
一般に信じられていることとは逆に、植物性由来のカルシウム源や水道水はマクロビ児のカルシウム摂取に対する貢献度が低いようだった。
鉄およびチアミン(ビタミンB1)の摂取はマクロビ児の方が高かった。
鉄摂取が高いにもかかわらず、マクロビ児の15%に鉄欠乏が見られ、対照群には鉄欠乏は見られなかった。
血清中ビタミンB12濃度はマクロビ児が149pmol/L、対照群が404pmol/Lだった。ヘマトクリット値(赤血球の割合)および赤血球数もマクロビ児が有意に低く、平均赤血球容積(MCV)および平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)は有意に高かった(いずれも高値の場合、ヘモグロビン量の減少が考えられる)。
血液学的指標を見ると、マクロビ児の全員が赤血球数の減少とMCVの高値を示しており、ビタミンB12欠乏による血球の変化がマクロビ児の大半に見られることを示している。
マクロビ児は葉酸値が高く、ビタミンB12欠乏の生理的な影響が示唆されている。
夏ではマクロビ児の無症状のくる病(rickets)率は17%(対照群は0%)、症状のあるくる病率28%と合わせて45%であった。冬季はトータルでマクロビ児のくる病率は90%にもなった。
血清中25-ヒドロキシビタミンD濃度の低さと食事中に含まれる食物繊維の摂取の多さが血清中カルシウム濃度の低さおよびくる病の症状発現の一因となっていた。
母乳育児期間の長さはこのふたつと有意な関係はみられなかった。
・発達
精神運動能ではマクロビ児が粗大運動の発達と発話、言語能の発達に遅れが見られた(後者の方が程度は少ない)。
特に差が出たのが移動運動である。マクロビ児は歩くのが3ヶ月遅れた。
特に、脂肪や筋肉のやせがみられる赤ちゃんでは移動運動の発達が遅れた。
運動能の差は出生体重の差および妊婦の体重増加の差に起因し、またことばの発達の差は出生体重の差に起因した。このような関係は対照群には見られなかった。
マクロビオティックの教えでは、マクロビ児の栄養障害の原因として、マクロビを始める前の親の健康問題やドラッグ使用があげられているが、今回のデータではそうした要因では説明できないことが示された。
「健康のためにマクロビを始めた」という家庭では、その他の目的で(思想的なものなど)マクロビを始めた家庭の子に比べ、体重と身長の伸びがよかった。が、脂肪および筋肉のやせ、精神運動機能の発達の遅れ、ビタミンB12欠乏、くる病の差はみられなかった。
<結論>
今回のデータは、マクロビ児の栄養障害報告に見られる症例は偶発的なものではなく、マクロビ乳幼児全体に見られる栄養障害であることが示唆されている。
今回の対象のマクロビ児の母親全員が3年以上マクロビを実践しており、ほとんどが子どもの栄養についてのマクロビ特別コースをとっていることから、マクロビの経験不足によるものではないと思われる。
今回の結論は、アメリカボストン周辺のマクロビ児を対象に行った栄養障害の報告(未出版)の結果を裏付けるものである。また、ヨーロッパ各地(ベルギー、ドイツ、スイス、イタリア、イギリスなど)の、マクロビ児の栄養障害報告(未出版)とも一致している。
<考察>
今回の研究では、2〜10歳のマクロビ児の成長の追いつきには限りがあり、魚、乳製品、脂肪で食事を補った子どもたちはその他のマクロビ児よりも体重と身長がより早く追いついた。
また、今回示唆されたことは他にも以下のことがある。
1)赤ちゃんの出生体重の低さは妊婦の魚・乳製品の摂取の少なさと関連があり、妊婦期間中の体重増加の少なさとも関連していた。そうした赤ちゃんに運動能力の発達に遅れが見られた。
2)母親の母乳分泌の少なさとマクロビ児の脂肪および筋肉のやせとは関連があった。
3)マクロビの母からの母乳はビタミンB12、カルシウム、マグネシウム濃度が低い傾向にあった(対照群の母親と比べ)。
<植物性食品のビタミンB12>
植物性食品に含まれるビタミンB12量の報告は微生物学的測定法によるものであり、本当のビタミンB12を測れるものではない。
そこで別の研究で3)、マクロビ社会ではよいビタミンB12源として提唱されている40品目の植物性食品について競合タンパク結合分析を用いて分析を行った。
しかし大豆食品(テンペ、しょうゆ、たまり、麦みそ、米みそ、豆腐)、他の発酵食品(甘酒、梅干、ザワークラフト)、全粒穀物にも測定可能なビタミンB12を見出すことはできなかった。
ある種の海藻類には十分なビタミンB12が検出されたが(海苔、スピルリナ、昆布、わかめ)、ビタミンB12欠乏症の乳幼児にこれらの食品をたっぷり食べさせても異常な血液学的指標(RBC、MCV)の値は改善されなかった(魚をとっていた乳幼児はそうではなかった)。最近のアメリカでの研究では、マクロビ実践者である大人の海藻消費とビタミンB12の状態には関連がないことが示されている。4)
<マクロビ食に対するアドバイス>
最初の研究で、最も栄養障害のひどかった乳幼児(マクロビ児53名中27名)に対して介入試験が行われた。
同時に、オランダおよび海外のマクロビ教師を交えた(ボストンの久司道夫氏を含む)集中的な相談会を開始した。
その結果、共同報告を試験に参加したすべての親に配布した。
一般に、サプリメントや強化食品はマクロビの原理と相容れないとされる。
そこで、以下のマクロビ食に対する改変がアドバイスされた。これはマクロビ原理の範囲内であり、比較的マイナーな変化でマクロビ食を栄養的に適切なものにするものである。
1)エネルギー源として食物脂肪を総エネルギー摂取の25-30%以上にすること。これは一日につき20-25gの油を加えるか、またはその倍の量のナッツ・種子類をくわえること。
2)ビタミンB12源として、魚などの動物性食品を加えること。脂肪が多い魚を一週間に100-150gとれば、一日にビタミンB12を約0.9-1.3マイクログラム摂取することができる。また一日に約2-3マイクログラムのビタミンDをとることもできる。
海藻の摂取は適度な量にとどめること。なぜならこれらには体内に吸収して利用されることのできないビタミンB12の類似体を含んでいるため、ビタミンB12の代謝を妨げる可能性があるからである。
3)さらに、カルシウム、たんぱく質、リボフラビン源として乳製品の摂取(一日に150-250g以上)がすすめられた。ただし過去の経験から、マクロビオティック食の実践者の中にはこれに適応するのが困難に感じる人たちがいることがわかっている。
4)最後に、2歳以下の乳幼児には、食物繊維の摂取を減らすことが指示された。
これは小さい子どもたちの食べ物を裏ごししたり、全粒の食物を部分的に低食物繊維の食品に替えることで実践できる。
今回の研究はマクロビオティックな食事をとっている子どもに関するもので、その他の形態のベジタリアンについてのものではない。他のベジタリアンについても同様の試験が行われることが望ましいが、それまではその他のベジタリアンその他の食事形態の妥当性について結論づけることはできない。
表題論文は
PC Dagnelie and WA van Staveren. Macrobiotic nutrition and child health: results of a population-based, mixed-longitudinal cohort study in The Netherlands. American Journal of Clinical Nutrition, Vol 59, 1187S-1196S
注
1)Zen macrobiotic diets. The Journal of the American Medical Association. 218:397, 1971.(ネット上に本文は見つけられませんでした)
2)Nutritional Aspects of Vegetarianism, Health Foods, and Fad Diets
(Zen Macrobiotic Dietary Problems in Infancy )
Committee on Nutrition. PEDIATRICS Vol. 59 No. 3 March 1977, pp. 460-464
(ネットで全文が読めます)
3)De Graaf T; Van de Bovenkamp P; Van Staveren WA; Willems MAW:The composition of cereal-water porridges as given to macrobiotically fed infants.
01. Nov.1987 / Voeding / Vol. 48 / Archiv-Nr: GO1987110001
(ネット上に本文は見つけられませんでした)
van den Berg H, Daqnelie PC, van Staveren WA. Vitamin B12 and seaweed, Lancet. 1988 Jan 30;1(8579):242-3.
(ネット上に本文は見つけられませんでした)
4)DR Miller, BL Specker, ML Ho, and EJ Norman. Vitamin B12 status in a macrobiotic community.The American Journal of Clinical Nutrition 1991; 53: 524-9.
(ネットで全文が読めます)
マクロビオティックの栄養と子どもの健康:オランダで行われた集団ベースの混合縦断的研究(大勢の人を対象に長期に渡って追跡調査を行った研究)
大変興味深い内容であり、マクロビ乳幼児の栄養障害を防ぐにはどのようなことに気をつければよいかの記述もあったため、長くなりますが全文から抜粋・要約しました。
(リンク先サイト右上のFull textをクリックすると、全文をダウンロードできます。
(内容紹介)
<この研究の目的>
1966年以降、アメリカでは米国小児科学会や米国学術研究会議、米国医師会その他の団体により、ベジタリアン(特に動物性の食物をほとんどどらない食事をしている人)の健康被害報告やその栄養的な欠点についての懸念が表明されている。中でも頻繁に出てくるのがマクロビオティックの食事である。
これらの報告の多くは、重度の栄養障害になった子どもたちの入院例や死亡例に基づくものである1)2)。
しかし、個々の事例だけでは、その集団全体の栄養状態についての結論は何ら引きだせるものではない。
そこで、オランダでマクロビオティックの食事をしている子どもたちを対象に、集団ベースの研究を行った。
(以下、マクロビ児と省略します)
その目的は
1)マクロビ児の栄養障害報告は偶発的なものなのか、それともマクロビ児の集団全体に見られるものなのか。
2)そうした子どもたちの栄養状態を改善するため、マクロビ原理の範囲内で許されるアドバイスはないだろうか。
というふたつの問いに答えることである。
<研究対象>
もっとも栄養障害のリスクの高い年齢を調べるため、0歳〜8歳までの子どもたち(243名)を対象に断面的な身体測定を行った。2年後、同じ子どもたちを対象にもう一度行った(194名)。
次に、1985年にオランダで出産したマクロビ家庭の赤ちゃんの95%にあたる53名に対し、混合縦断的研究を行った。3つの集団に分け、生後4〜10ヶ月、8〜14ヶ月、12〜18ヶ月の期間調査を行った。同年代のオランダの赤ちゃん57名を対照とした。
出生体重が2500g未満の赤ちゃん、先天的な病気をもっている赤ちゃんは除外した。
(※マクロビ家庭で出生体重が2500g未満の赤ちゃんは4.3%で、オランダ人全体の2.0%に比べ有意に多かった。マクロビ赤ちゃんの平均出生体重はオランダ人の赤ちゃん全体より約200g少なかった。)
さらに、栄養障害の認められた赤ちゃん(27名)に対し、介入試験を行った。
50品目のマクロビ食品および母乳についても栄養素濃度を測定した。
<マクロビ赤ちゃんの家庭背景>
研究対象となったマクロビ赤ちゃんの母親の全員が3年以上マクロビ食を実践しており、5年以上の実践者も75%いた。
母親の97%が一般向けマクロビ講習会に参加しており、92%が子どもの栄養についてのマクロビ特別コースまたは集団相談会に出席していた。
両親の学歴は高く、父親の64%、母親の45%が大卒だった(同年代の一般オランダ人はそれぞれ17%、9%)。
参加家庭の92%が両親そろっていた(対照群は100%)。
母乳保育率はマクロビ家庭が高く(生後一ヶ月以上:96% vs 74%)、母乳育児の期間も長かった(13.6ヶ月 vs 6.6ヶ月)。
離乳食開始時期(母乳以外のものを与え始める時期)はマクロビ家庭で遅い傾向にあった(4.8ヶ月 vs 2.7ヶ月)。
<結果>
・身体の成長
生後6ヶ月までは体重・身長ともマクロビ児も成長曲線の平均に近いが、生後6ヶ月から成長に遅れが出始めた。
生後4〜18ヶ月の間、マクロビ児の成長の遅れが目立った。
2歳以降は体重と腕囲は追いついてくるが、身長と座高は追いつくことはなかった。親の魚と乳製品の摂取の頻度が増えると赤ちゃんの出生体重も増えていた。
乳製品をまれにしかとらない、または全くとらない家庭の赤ちゃんは体重、身長、腕囲ともに低かった。
最初の調査以来動物性食品の摂取を増やした家庭では、身長の伸びがその他のマクロビ児よりよくなった。
皮膚の菲薄化、筋肉のやせがマクロビ児の30%に見られた(対照群は2%)。
・栄養状態
マクロビ児はエネルギー摂取、タンパク質摂取、カルシウム、リボフラビン(ビタミンB2)、ビタミンB12摂取が対照群に比べかなり低かった。
一般に信じられていることとは逆に、植物性由来のカルシウム源や水道水はマクロビ児のカルシウム摂取に対する貢献度が低いようだった。
鉄およびチアミン(ビタミンB1)の摂取はマクロビ児の方が高かった。
鉄摂取が高いにもかかわらず、マクロビ児の15%に鉄欠乏が見られ、対照群には鉄欠乏は見られなかった。
血清中ビタミンB12濃度はマクロビ児が149pmol/L、対照群が404pmol/Lだった。ヘマトクリット値(赤血球の割合)および赤血球数もマクロビ児が有意に低く、平均赤血球容積(MCV)および平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)は有意に高かった(いずれも高値の場合、ヘモグロビン量の減少が考えられる)。
血液学的指標を見ると、マクロビ児の全員が赤血球数の減少とMCVの高値を示しており、ビタミンB12欠乏による血球の変化がマクロビ児の大半に見られることを示している。
マクロビ児は葉酸値が高く、ビタミンB12欠乏の生理的な影響が示唆されている。
夏ではマクロビ児の無症状のくる病(rickets)率は17%(対照群は0%)、症状のあるくる病率28%と合わせて45%であった。冬季はトータルでマクロビ児のくる病率は90%にもなった。
血清中25-ヒドロキシビタミンD濃度の低さと食事中に含まれる食物繊維の摂取の多さが血清中カルシウム濃度の低さおよびくる病の症状発現の一因となっていた。
母乳育児期間の長さはこのふたつと有意な関係はみられなかった。
・発達
精神運動能ではマクロビ児が粗大運動の発達と発話、言語能の発達に遅れが見られた(後者の方が程度は少ない)。
特に差が出たのが移動運動である。マクロビ児は歩くのが3ヶ月遅れた。
特に、脂肪や筋肉のやせがみられる赤ちゃんでは移動運動の発達が遅れた。
運動能の差は出生体重の差および妊婦の体重増加の差に起因し、またことばの発達の差は出生体重の差に起因した。このような関係は対照群には見られなかった。
マクロビオティックの教えでは、マクロビ児の栄養障害の原因として、マクロビを始める前の親の健康問題やドラッグ使用があげられているが、今回のデータではそうした要因では説明できないことが示された。
「健康のためにマクロビを始めた」という家庭では、その他の目的で(思想的なものなど)マクロビを始めた家庭の子に比べ、体重と身長の伸びがよかった。が、脂肪および筋肉のやせ、精神運動機能の発達の遅れ、ビタミンB12欠乏、くる病の差はみられなかった。
<結論>
今回のデータは、マクロビ児の栄養障害報告に見られる症例は偶発的なものではなく、マクロビ乳幼児全体に見られる栄養障害であることが示唆されている。
今回の対象のマクロビ児の母親全員が3年以上マクロビを実践しており、ほとんどが子どもの栄養についてのマクロビ特別コースをとっていることから、マクロビの経験不足によるものではないと思われる。
今回の結論は、アメリカボストン周辺のマクロビ児を対象に行った栄養障害の報告(未出版)の結果を裏付けるものである。また、ヨーロッパ各地(ベルギー、ドイツ、スイス、イタリア、イギリスなど)の、マクロビ児の栄養障害報告(未出版)とも一致している。
<考察>
今回の研究では、2〜10歳のマクロビ児の成長の追いつきには限りがあり、魚、乳製品、脂肪で食事を補った子どもたちはその他のマクロビ児よりも体重と身長がより早く追いついた。
また、今回示唆されたことは他にも以下のことがある。
1)赤ちゃんの出生体重の低さは妊婦の魚・乳製品の摂取の少なさと関連があり、妊婦期間中の体重増加の少なさとも関連していた。そうした赤ちゃんに運動能力の発達に遅れが見られた。
2)母親の母乳分泌の少なさとマクロビ児の脂肪および筋肉のやせとは関連があった。
3)マクロビの母からの母乳はビタミンB12、カルシウム、マグネシウム濃度が低い傾向にあった(対照群の母親と比べ)。
<植物性食品のビタミンB12>
植物性食品に含まれるビタミンB12量の報告は微生物学的測定法によるものであり、本当のビタミンB12を測れるものではない。
そこで別の研究で3)、マクロビ社会ではよいビタミンB12源として提唱されている40品目の植物性食品について競合タンパク結合分析を用いて分析を行った。
しかし大豆食品(テンペ、しょうゆ、たまり、麦みそ、米みそ、豆腐)、他の発酵食品(甘酒、梅干、ザワークラフト)、全粒穀物にも測定可能なビタミンB12を見出すことはできなかった。
ある種の海藻類には十分なビタミンB12が検出されたが(海苔、スピルリナ、昆布、わかめ)、ビタミンB12欠乏症の乳幼児にこれらの食品をたっぷり食べさせても異常な血液学的指標(RBC、MCV)の値は改善されなかった(魚をとっていた乳幼児はそうではなかった)。最近のアメリカでの研究では、マクロビ実践者である大人の海藻消費とビタミンB12の状態には関連がないことが示されている。4)
<マクロビ食に対するアドバイス>
最初の研究で、最も栄養障害のひどかった乳幼児(マクロビ児53名中27名)に対して介入試験が行われた。
同時に、オランダおよび海外のマクロビ教師を交えた(ボストンの久司道夫氏を含む)集中的な相談会を開始した。
その結果、共同報告を試験に参加したすべての親に配布した。
一般に、サプリメントや強化食品はマクロビの原理と相容れないとされる。
そこで、以下のマクロビ食に対する改変がアドバイスされた。これはマクロビ原理の範囲内であり、比較的マイナーな変化でマクロビ食を栄養的に適切なものにするものである。
1)エネルギー源として食物脂肪を総エネルギー摂取の25-30%以上にすること。これは一日につき20-25gの油を加えるか、またはその倍の量のナッツ・種子類をくわえること。
2)ビタミンB12源として、魚などの動物性食品を加えること。脂肪が多い魚を一週間に100-150gとれば、一日にビタミンB12を約0.9-1.3マイクログラム摂取することができる。また一日に約2-3マイクログラムのビタミンDをとることもできる。
海藻の摂取は適度な量にとどめること。なぜならこれらには体内に吸収して利用されることのできないビタミンB12の類似体を含んでいるため、ビタミンB12の代謝を妨げる可能性があるからである。
3)さらに、カルシウム、たんぱく質、リボフラビン源として乳製品の摂取(一日に150-250g以上)がすすめられた。ただし過去の経験から、マクロビオティック食の実践者の中にはこれに適応するのが困難に感じる人たちがいることがわかっている。
4)最後に、2歳以下の乳幼児には、食物繊維の摂取を減らすことが指示された。
これは小さい子どもたちの食べ物を裏ごししたり、全粒の食物を部分的に低食物繊維の食品に替えることで実践できる。
今回の研究はマクロビオティックな食事をとっている子どもに関するもので、その他の形態のベジタリアンについてのものではない。他のベジタリアンについても同様の試験が行われることが望ましいが、それまではその他のベジタリアンその他の食事形態の妥当性について結論づけることはできない。
表題論文は
PC Dagnelie and WA van Staveren. Macrobiotic nutrition and child health: results of a population-based, mixed-longitudinal cohort study in The Netherlands. American Journal of Clinical Nutrition, Vol 59, 1187S-1196S
注
1)Zen macrobiotic diets. The Journal of the American Medical Association. 218:397, 1971.(ネット上に本文は見つけられませんでした)
2)Nutritional Aspects of Vegetarianism, Health Foods, and Fad Diets
(Zen Macrobiotic Dietary Problems in Infancy )
Committee on Nutrition. PEDIATRICS Vol. 59 No. 3 March 1977, pp. 460-464
(ネットで全文が読めます)
3)De Graaf T; Van de Bovenkamp P; Van Staveren WA; Willems MAW:The composition of cereal-water porridges as given to macrobiotically fed infants.
01. Nov.1987 / Voeding / Vol. 48 / Archiv-Nr: GO1987110001
(ネット上に本文は見つけられませんでした)
van den Berg H, Daqnelie PC, van Staveren WA. Vitamin B12 and seaweed, Lancet. 1988 Jan 30;1(8579):242-3.
(ネット上に本文は見つけられませんでした)
4)DR Miller, BL Specker, ML Ho, and EJ Norman. Vitamin B12 status in a macrobiotic community.The American Journal of Clinical Nutrition 1991; 53: 524-9.
(ネットで全文が読めます)