はっと目覚めて枕元のスマホを見ると6時25分。
しまった。今日は息子のテニスの試合の日。本来ならば玄関で見送っているべき時間だ。案の定まだ寝ていた息子を慌てて起こしつつ、私は前夜に調達しておいたコンビニのハンバーグやその他ありあわせのおかずをお弁当箱に詰めて水筒を用意。奇跡のような動きを見せたがこの時点で集合時間まで残り5分。歩いて行かせたところでとてもじゃないけれど間に合わない。さっと黒のロングコートを羽織って、車の鍵と財布を手に「行くよ」と息子に声をかける。
エンジンをかけ、アクセルを踏んだところではたと気づく。
そうだ、私、ノーパンノーブラだった。
季節の変わり目のせいか、昨夜はひどい蕁麻疹に悩まされていた。なかなか症状が治まらないので、やむなく誘発しそうなブラジャーとパンツを脱ぎ捨て、その上から部屋着だけを着て寝たんだった。
「今気づいたんだけど、お母さん、ノーパンノーブラだったわ」
黙っていたら、万が一不慮の事故でばれたときに本気の性癖と思われるかもしれない。先んじて息子に打ち明ける。
「まじか……」
後部座席の息子は、手元のスマホに視線を落としたまま、さほど驚きもせずに答える。
休日、早朝の都心の道路は驚くほど空いていた。息子はなんとか集合時間ギリギリに待ち合わせ場所に到着。汚い身なりの私は息子の心情に配慮し、遠方に止めた車の中からその様子を見届け、ほっと胸をなでおろす。
起床から10分、半ば無理と思われたミッションをクリアした達成感と同時に、下着から解放された圧倒的な自由を噛み締める。
冬が終わり、春が訪れようとしていた。
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