2012年07月08日

2012インカレに向けて~① 青森大学団体(その1)

2012インカレに向けて~① 青森大学団体その1

「変革」

昨年でインカレ10連覇を成し遂げた青森大学は、今年、かつてない大きな変化を迎えている。

青森大学新体操部の創設監督である中田吉光が、監督を退き部長となり、監督には高岩薫が就任したのだ。
高岩は、あの伝説の「2009JAPAN」の演技に選手として出ている。当時、4年生。彼にとっての最後のJAPAN、最後の青大としての演技があの「BLUE」だったのだ。

卒業後、高岩は、青森大学の職員として働きながら、新体操部のコーチを務めてきた。
昨年の東インカレ前に青森に取材に行ったときは、団体はかなり高岩コーチ(当時)に任されていて驚いたのだが、今年はさらに驚くことになった。

東日本インカレのプログラムを見ると、青森大学の監督名が「高岩薫」になっていたのだ。

たしかに、「いずれ高岩に監督を譲る」とは、中田前監督はよく口にしてはいた。が、それがこんなに早くだとは、私は予想していなかったのだ。

東日本インカレのとき、たしかにフロアにおりて青森大学の選手達を指揮していたのは、高岩監督だった。中田前監督の姿も体育館にはあったが、ほとんど観客席にどっしりと座っていて、そこから選手達を見守っているという様子だった。

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青森大学は、東日本インカレに2チーム出してきた。
公式練習で、最初に登場したのはBチームだった。
このチームは、1年生が3人も入っているフレッシュなチーム。とは言え、その練習ぶりは極めて落ち着いていて、1年生トリオから「大学での初めての試合」という悪い緊張は感じられなかった。

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おそらく彼らが平常心で試合を迎えることができたのは、彼らをサポートし、リードしてくれる上級生達の存在が大きかったのだろう。結果、3人の1年生は、ルーキーらしく、ひたむきに先輩や監督の言葉に耳を傾け、きびきびと動く、じつにすがすがしい姿を見せてくれた。 rg-lovers-332843.jpg


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この試合で、Bチームが演じた作品は、青森大学で団体が組めるようになった最初の年度の作品だった。いわば、「青大のルーツ」だ。

3人のルーキーを擁する若いチームが、青森大学にとってはクラシカルすぎるほどクラシカルなその作品を演じる。
私には、それは「高岩薫監督の初采配試合」に、じつにふさわしいような気がした。

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試合後に高岩監督に話を聞いてみたところ、この作品をやる! と決めたのは、Bチームの選手達自身だったそうだ。
さらに驚いたのは、彼らの練習を監督がちゃんと見たのは、ゴールデンウィークくらいだというのだ。

たしかに練習場所も限られ、時間も短い青森大学では、2チームで交互にフロアを使うような余裕はない。以前、練習を取材したときも、Bチームは主に、体育館の玄関ロビーや2階の観覧スペースなどを利用して練習していた。決して恵まれた環境ではない。

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今年のチームも当たり前のように、そんな環境で練習してきた。 昨年までなら、Aチームを中田監督が見ている間、高岩コーチに見てもらうこともできていただろうが、今年は、その高岩が監督となり、自分達中心に見てもらえる時間は格段に減ってしまったに違いない。 去年の東インカレ前は、Bチームをかなり任されていた高岩は、その差をことさらに感じていたのだろう。 「今年のBチームは、ほんとに自分達でやってきた。朝も授業前に体育館に来て練習したり。えらかったと思います。」 rg-lovers-332853.jpg


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公式練習を見ていても、団体が2チームに分かれている青森大学は、フロア外のサポートの選手があまりいなかった。個人の選手達がフロアにおりてきてのサポートもなかった。

それだけに、すこしさびしい練習風景にも思えた。
「勢い」という点では、大丈夫か? という感じもあった。

しかし、じつはそれが、「自分たちのリズム」だったのだ。
彼らは、人気のない早朝の体育館や、暗い玄関ロビーなどで、いつも練習してきたのだ。
だから、いつも通りに淡々と練習をこなし、動きを確認する。
それだけで十分だったし、それがよかったのだ。



東日本インカレ本番。
青森大学Bチームの演技には、ラインオーバーこそあったものの、空気の流れさえも揃っているように感じる、素晴らしい演技を見せた。

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とくにぐっときたのは、上下肢運動に入る前の振り向く動き。 ここは、ぞくっとするほど揃っていた。 「揃えよう、一体になろう」という彼らの気持ちが、そのまま動きになった、そんな風に見えた。 側挙での小さい跳躍も、3バックもよく揃い、そして、どれも美しかった。 1年生が3人入っていても、まぎれもなく「青森大学の演技」であり、「青森大学の動き」だった。 彼らが、青大初代作品を選んだ意味、が感じられた。
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8月の全日本インカレには、Bチームは出場できないが、このときBチームのメンバーとして出場して選手たちも、現在は、「青森大学団体」の一員となって、控え選手やサポートとして力を尽くしている。 「新監督・高岩薫」にとっては、今年の試合はすべてが初采配となる。 東日本インカレでは、試合終了後にほっとした笑顔もこぼれていたが、本当の勝負はこれからだ。 おそらく半端ないプレッシャーを感じているだろうに、いつも明るい高岩監督からは、そんな様子は感じられない。 「大変でしょう?」と問いかけても、必ず、「大丈夫っす」と返ってくる。
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心の中にはきっと不安もあるに違いない。 それでも、「大丈夫っす」と彼に言わせるくらいに、選手たちは頑張っているのだ、きっと。 東日本インカレでの、Bチームの健闘を見てそう思った。 高岩薫監督の1年目。 「新しい青森大学」を、私たちは、ひたすら楽しみにしておけばいいのだ。                                  <撮影:小林隆子>※本番演技写真のみ


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