2012年06月01日
2012ユースチャンピオンシップレポート④ 佐能諒一&小川晃平(井原高校)
2012ユースチャンピオンシップレポート④ 佐能諒一&小川晃平(井原高校) 「西の両雄」 甲乙つけがたい2人の選手がいるのに、インターハイには1人しか出場できない。 ・・・それは青森県だけではない。 団体王者・井原高校のある岡山県も同じ状況だ。 岡山総体は、明日、6月2日に行われるが、そこで岡山県代表は、この2人のどちらかにおそらく決まる。 佐能諒一と小川晃平。 ユースチャンピオンシップでは4位と5位。![]()
この2人の片方しかインターハイには個人で出場できないとは、本当にもったいない。 それだけにこのユースチャンピオンシップという試合が貴重であり、そこに揃って出場してくれたことには感謝したい。昨年は小川はコンディションが万全でなく、団体に専念するためにユースには出場していなかったのだから。 インターハイ出場はどちらに転ぶかわからないが、いずれにしても、11月のジャパンでは2人とも見ることができるのが救いとも思える。 それくらい、彼らの演技は、見るたびに磨きがかかってきている。 ともに、井原団体のメンバーである。あの団体に入っている以上、団体に費やす時間も圧倒的に多いはずだが、それでも個人の演技の完成度もめきめき上がってきている。そのポテンシャルやおそるべし、と言えるだろう。 ●佐能諒一ユースでは男子最初の演技者だった。スティックで、いつもの通りキレッキレの演技を見せて、ラストの投げキャッチがややあやしかったもののいきなりの9.400をマーク。演技冒頭で顔を切るところがあるが、あそこは何回見てもいい。なんでこんなにキレた動きができるだろう? と感心するばかりだ。 続くリングは、高校選抜で初披露したマイケル・ジャクソン。これも最初の投げがすこし大きかったようにも見えたが、難なくカバーしてあとは見る人をぐいぐい惹きこむ演技を見せた。高校選抜でのインパクトが大きかったため、この演技が始まる前にすでに会場には期待のこもった空気が流れていた。そんな中で、さらりと期待に応える精神力も見上げたものだ。この作品には、佐能らしい「ほかの人の演技では見ない動き」が随所で見られる。じつに個性的な演技で、9.375。予選終了時点で、臼井には及ばなかったものの、堂々の2位につけた。 決勝1種目目のクラブは、音と動きがおそろしく合った演技で、9.350。クラブを持ち直す場面は何回か見られたが、安定感も抜群で、永井、平野の追い上げを跳ね返す演技だった。 しかし、最終種目のロープに鬼門が待ち受けていた。高校選抜のときは、臼井がロープではわずかにミスを犯したため、わずが0.025差と迫った種目だったが、この日の佐能は、疲れが出たのか少し、のりきれていないように見えた。それでも、大きなミスにはならず演技終盤までは持ちこたえたのだが、フロア中央の後ろから前に向かってくる最後のタンブリングの着地がもちこたえられずまさかのしりもち。9.150に終わり、永井、平野に逆転負けを喫してしまった。 そこまではしっかり2位をキープしていただけに、かなり悔しかったのではないかと思うが、おそらく佐能にとっては、4位になってしまったこと以上に、最後の種目の最後になって、自分の演技の世界観を、自分のミスで壊してしまったことが悔しかったのではないかと思う。 まだ、高校生だが、彼はそんな風に見える選手だ。自分の演技に、自分の作品に対する思いがとても深く、強い。演技を終わったときの表情からもそれがよくわかる。よかったときは、素直に「よっしゃあ!」という表情をするし、なにかしっくりいかなかったときは、「ああ」と納得いかない表情になる。 そんな彼だから、彼の演技は、人の心をつかんで離さない。次に彼の演技を見られるのがインターハイかどうかはわからない。ただ、それがインターハイだとしても、ジャパンだとしても、そこまでの時間があれば、彼はますます自分の世界に磨きをかけてくるだろうことは間違いない。それが楽しみで仕方ない。 ●小川晃平3月の高校選抜から、ユースまでの2か月でもっとも変化したのが、この小川ではないかと思う。その変化は、点数だけを見ても明らかだ。高校選抜では4種目の合計点が36.500。もっともよかったスティックで9.250だった。それが、ユースでは合計37.025、クラブでは9.300を出している。一番低かった種目でも、9.225。完全に底上げに成功している。 1種目目のスティックは、緊張からか少しずつあやしいところがあったようにも見えた。斜前屈のとき少し動いた? とも見えたし、短すぎた投げをカバーしたところもあった。それでも大きなミスは防ぎ、全体を通しては動きの美しさが印象に残る演技で9.225。高校選抜のときは、このスティックが4種目の中ではずば抜けていたが、今回は悪くはないのだが、高校選抜を上回る演技とはいかなかったように、私には見えた。 ところが、高校選抜ではミスがあり、8点台に沈んだリングで、小川はすばらしい演技を見せる。高いタンブリングがの滞空感もさることながら、体操の美しさ、また踊り感たっぷりのつなぎの動きもはっきりと見え、今まで以上の魅力を見せつけて、9.275。 さらに、決勝のクラブでは、緩急をつけた動きを見せながら、ときおりはさみこまれるポーズにも味があり、タンブリングでの伸身の姿勢の美しさ、2つ目のタンブリングでさらに浮き上がる強さも見せて、9.300。演じるたびに得点を伸ばしていく勢いを見せた。 最終種目のロープでは投げのキャッチでわずかにミスが出て、9.225に終わったが、高いタンブリングを支える脚力の強さは、たかがなわとびでさえも、見せ場にしてしまう。普通になわを跳ぶだけでもその高さ、スピード、美しさと申し分がない。演技の途中で見せる、全身を使ったウェイブもかっこよすぎ! 最終順位は、高校選抜と変わらず5位だが、上にいる選手たちに、与えた脅威は高校選抜の比ではなかっただろう。 臼井優華を頂点に、今、高校生の個人選手はかつてない充実ぶりを見せている。臼井、永井、平野、佐能、川西、畠山可夢(現在は国士舘大学)。昨年のユース、インターハイ、今年になってからの高校選抜で表彰台に乗ったのはこの6人だ。小川は、その下。台はないが表彰状はある、というポジションにいた。臼井、佐能、平野と強い高3が3人もいるので、小川の順番が回ってくるのは来年か、という感もあったが、にわかにわからなくなってきた。 先輩である佐能を破って、インターハイの切符を獲得することは、かなりの困難を伴うとは思うが、もしも、それができたならば、インターハイでは台乗りも夢ではない。それだけの力を彼はもう持っている。![]()
いずれにしても、6月2日には岡山県代表が決まる。 同日、青森県の代表も決まる。 注目したい。 <撮影:小林隆子>
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