2012年06月09日
2012 男子団体選手権レポート① 埼玉栄高校
2012 男子団体選手権レポート① 埼玉栄高校 男子団体選手権は、下馬評とおりインハイ覇者・井原高校の優勝だったが、そのほかのチームも個性豊かでなかなか面白い試合になった。 もっとも春先の試合ということで、ノーミスでばしっと決められたチームはあまり多くなかった。そんな中で、ほぼノーミス(少なくとも観客目線ではミスらしいミスはなかった)演技を決め、昨年に続いて準優勝となったのが、埼玉栄高校だった。埼玉栄は、昨年の作品もかなりよかった。 しかも、昨年のメンバーはかなり強かった。 強かった3年生が3人抜け、新しい作品になり、果たして今年の栄は? と少しばかり不安まじりに、楽しみにしていたのだが、 その期待は裏切られなかった。昨年のインターハイメンバーが3人残っていた埼玉栄団体だが、中でももっとも タンブリングが強いと言われている鶴田選手がインターハイ2次予選で負傷。 団体選手権まで1ヶ月を切った時点でのメンバー交代を余儀なくされていた。 ただでさえ、去年のメンバーより弱いと言われていたところに、 中心メンバーの離脱。じつは、かなり危うい状況だったと後になって聞いたが、 本番で彼らが見せた演技は、じつに堂々としていて見事なエンターテイメントだった。 曲は、ディズニーランドのパレードの曲だと思うが、 そのワクワクドキドキさせる華やかさによく合った振付であり、 それを選手達がしっかりやりこなしていたと思う。昨年も思ったのだが、今の埼玉栄の演技は他のどのチームにも似ていない。 はっきり「埼玉栄だ!」とわかる演技なのだ。 そのことがまず、すごいと思う。 男子新体操は意外と流行に左右される部分も少なくない競技で、 そうなると、「今はこういう演技が評価されているようだ」ということに 多かれ少なかれ影響される。 しかし、埼玉栄の演技にはしっかりとした独自性があり、そこがいいのだ。今回の演技は、従来の栄の作品よりもダンス的な印象だが、それも青森山田的なダンス とはまったく違っている。 曲の力もあるかもしれないが、まさにパレードかミュージカルでも見ているような 気分にさせてくれる演技なのだ。 それでいて、動きはあくまでもスポーティブで、そこがじつに栄らしい。 昨今の表現力豊かな印象の演技には「曲線」が不可欠という印象がある。 動きの中に、ふうっとした曲線的な部分があり、それゆえに味が出る、 スパイスになる。そこそこ上手いのに、印象が薄い演技はたいていの場合、 この曲線的な動きが少かったりするのだ。 しかし、埼玉栄の演技は、そういう曲線的な動きはほとんどない。 昨年も今年も。 それでも、彼らのきびきびとした体育会系らしい動きで 十分にエンターテイメントを見せられているのだ。 それはもう不思議なくらいに。ここのところ、全国大会(インハイ、選抜)では、5位が定位置になりつつある埼玉栄。 しかし、彼らが力を出し切って、周囲にミスでも出ようものなら、一気に上位を うかがえるチャンスはある。 いや、ライバル達のミスに頼るのではなくても、彼らの力(作品の力も含め)があれば、 上位チームを脅かすことは間違いなくできる。 次の全国の舞台は福井のインターハイ! そこで、また埼玉栄の演技が多くの観客を沸かせることを私は期待している。まだ誰も通ったことのない道を、たくましく切り拓いていくエネルギーが、 今の埼玉栄の演技からは伝わってくる。 そうやって何かに挑み続ける自分達のことをおそらく彼らは好きなのだろう。 その自己肯定感が、彼らの演技に力を与えている。 見ているほうまで、なんだか元気になれる。 それが、今年の埼玉栄の作品だ。<撮影:小林隆子>
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- posted by rg-lovers
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