2015_04
22
(Wed)22:54

一山超えて

印象的なサジンを誕生日プレゼントで頂いた時
吐き出す様に書いてしまったので
重いです

スルーして下さいませ



サジンのイメージからお話が浮かんでいきました

下書きなしで書き下ろしますので
お話が何処へ着地していくのかも解りません

そんな書き方でずっと書いてきました

私の内側にある
その時々の足掻きのような想いがお話の中で
こうやって落ちていく

ピエロの姿の中に
ユル君やシン君の宮の皇子としての
何かが落ちていけばいいな

そして
人が生きること自体の意味や悲しみ
想い

そんな部分をどこかに引っ掛かればいい

書いていて楽しかったです

喉を潰したままですが(笑)
やっと少し
自分の気持ちの落とし所が見つかった様な気がします

人との出会いって
必然だと思います

自分では気が付かない部分を相手の方が持っていたり
また・・奔放な部分を相手の方が見て・・
自分は雁字搦めになっているのでは

そう思って苦しんだり

結局、悩んだり苦しんだりしないと
人は気付いたり、先に進もうと思わなかったりだと思うのです

だから・・
色んな人に出会うんでしょうね

今の自分にとって
あんまり有り難くない人も
別の見方をすれば・・成長や先に進むのに必要だということ

そう思った晩でした

自分の眼の前に
あまりにも・・自分と正反対の人を放りこまれましたら

えっと・・動けなくなりました
(笑)
御両親に愛されて育った方で
素直で自分に自信があって
それでいて・・無理してないんです
若くて
正社員で

どんなに足掻いても手に入れることが出来ない
愛されるって何?
自分を愛する
自信ってなに・・

見てて苦しくて仕方なかった

そんな人もいらっしゃるんですねって

私は私だと

やっと何となく言えます

無理せず
あたしが今から先にやりたいことを
そう・・・
自由に生きていいんだもん

長々と・・

あたしはあたしだ
そう言えた晩
2015_04
22
(Wed)22:31

pierrot 6

ユルがその晩
通されたのはシンの趣味の部屋
写真を現像するための薄暗い部屋だった

部屋の端に小さなテーブルと椅子が用意された様に
呆れたようにユルがうそぶく

「もっとマシな部屋がよかったな。
 薄暗いし・・・現像してぶら下がってるのが、全部妃宮様の写真だもんなー。
 ねぇ?たまには、グラビアアイドルとかの写真なんて見たいと思わないの?
 こう・・ボン・キュッ・ボンって具合の?」

ユルの言い草に至極真っ当にシンが返す

「チェギョン以外の女?それは・・何のために意味がある?
 僕は、チェギョンしか知らんが・・あれは最高の女だ。」

『幸せなんだ。シン。』
よかった・・

ユルの心の中に嬉しさとからかいたいようなこそばゆさと・・そして安堵の気持ちが入り混じる

「幸せなんだね。よかった。 シンが幸せなら・・それでいい。
 その調子なら直ぐに子だくさんな皇帝一家となる。
 僕がこの国に留まる理由は・・・なくなるね。大丈夫だ・・」

静かな声にユル自身驚くが、シンの落ち着いた顔に苛立ちと恐れが広がる

「ユル!僕を置いて・・・宮を出ていく気なのか?
 僕を支えてくれるんじゃなかったのか?」

焦りで歪んだ表情が苦しそうだった

「僕の巫女姫が言うんだ。そんな未来・・・覚悟が出来ますかと?
 この国のもうひとりの皇子ではなく、ただのイ・ユルとして生きていく覚悟はあるのかと・・」

シンの顔が歪んでいく

「シン?覚悟しておいて欲しい。この宮を守ることを考えるのならば・・・
 不安定要素な者を諦める覚悟は、していなければならない。今は、僕が君の支えとして必要だけど、
 いつか・・僕を擁立して皇位を奪おうとする者たちが出てきた時、遠慮なく僕を切り捨てて欲しい。
 君の後継者が存在してくれるのならば・・もうひとりの皇子など不要なんだ。いいね?」

からん・・・

グラスの中の氷がカランと音を立てる

飲み込んだバーボンが喉を焼く

安定した関係をいつか壊すと
諦めろと微笑みながら話す従兄弟の姿をシンは直視出来ないでいた

「前から話しておきたかったんだ。僕は、宮で生きることを決心した時
 ステラを妃に迎えたすぐの頃に・・僕ら夫婦は話し合って、決心したんだ。
 大事な家族を守る為の駒になろうって・・・。それで僕が宮の家族にしてしまった
 ことの・・少しでも贖罪になれば・・いい。ステラは笑いながら頷いてくれた」

シンの瞳から零れていく

どうして・・こんな生き方しか僕らは出来ないんだろう

誰かがpierrot になって
踊らなければ
皆が笑っていられない時だってあるさ

ユルが静かに微笑んで言う

「態とか?今夜・・夫婦喧嘩した・・な・・・」

シンの顔が歪んでいた

自分達だけ幸せになんていいのだろうか?
イイワケナンテナイデハナイカ!

「違うよ。僕は・・僕らは幸せなんだ。
 シンにとってチェギョンが最愛なように・・・僕にとっては、ステラが最愛。
 最愛が傍にいれば、後は何処でだって生きていける。シンだってそうでしょ?
 僕らは・・シンと僕は、傍にいるだけが幸せではない。離れてしまっても・・相手を想えるなら
 それでいいじゃない?シンは・・違うの?」

淀んでしまった感情から解き放ってくれ!

そうだ

心が通っていれば・・
大事なものは・・

気持ち

自分がどうしたいか

それに尽きる

従兄弟はその覚悟をしたという

「時間をくれないか?ユル・・僕は・・」

カラン

互いのこれからを話す時期だったと
ユルがシンに告げた

「僕はね。ステラがいればそれでいい・・。
 たまに他の女を抱いてみたいとか、ちょっと・・浮気心が疼く時もあるけど(笑)
 結局、ステラほど・・心から僕を愛してくれる女はいないから・・浮気しませんけど(笑)」

カラン

今日の話はここだけだと
シンが言う

そうだね

チェギョンが聞いたら暴れそうだもの(笑)

家出妃と最愛の妃宮の自慢話で盛り上がろうと
ユルがバーボンを煽る

シンの頬が諦めたように乾いていく

そして・・シンの唇がバーボンの熱さに火傷しそうに
歪んでいった

「僕がユルの立場だったとしても・・・
 そうだな。宇宙最強の妃宮が傍にいてくれれば・・怖い物なんてない。
 ユル・・・。今夜は、妃自慢をするか(笑)」

「え~・・。僕のステラちゃんには敵わないよ。だって、超天然だもん。可愛いよ~。
 跳ねながら逃げるしね(笑)」

「チェギョンは、そうだな。出かい口で美味そうに何でも食べるな。その姿も愛らしい(照れ)」

「えぇ~。バキュームみたいだね。あんまり食べる女子って、僕退くんだよね。
 よかったー。僕の奥さんじゃなくって。ステラは食が細いんだ。
 えっとね。気を抜くと・・2日くらい・・珈琲だけで・・・貧血で倒れるんだよね。って・・ダメか?」

「健康管理がなってないな。義誠大君妃としてどうなんだ?」

「ぶぅ~。国民からの人気だってチェギョンに負けてないもんね!」

シンの口角が余裕を含んだ様に上がっていく

「チェギョンの方が国民からの人気は高いぞ。あの笑顔がいいんだ」

っぷ

ふたりの皇子の視線が合わさっていく

「明日の朝食後、大君妃がおまえのところへ戻る様に・・・しておく。
 ところで・・・?喧嘩の原因はなんなんだ?」

ユルがキョトンとしたまま言った言葉

「えっと・・キスの最中に昔の彼女のキスと比べてたことがバレタ?
 ステラがあんまり拒むからさ。協力的にして欲しい時だってあるでしょ?」

「・・・・・。ユルが悪い。ステラに謝っておけよ」

「・・・・人の奥さん、呼び捨てって、止めてくれない?ちょっとムカつくんですけど(笑)」

不毛な会話が続いていくが
それが楽しかった

そう・・

今宵のこの機会はもしかしたら・・巫堂が仕組んだことなのかもしれぬ

先の先を

心構えしておかなければならないほど
大事な兄弟であり
従兄弟であり
友だった

奥方ふたりも

内緒話の末に盛り上がったようで

そう・・・

時には羽目を外すのも

pierrot 

誰かが誰かの犠牲になるのではなく

大事な人を思いやりながら

生きる

だから・・誰かが時にはpierrot になって

いつかは違うだれかが

pierrot 

ピエロになることも

いいのやもしえぬ

「チェギョン・・・
 初恋ってなんなんだ~・・。後でお仕置きだからな・・・」

「ふつーに・・初恋くらいいいんじゃないの?お仕置きの口実もありか?(笑)
 ねぇ~。責めるんだったら、大人のおもちゃあげようか?それとも縄がいい?」

「・・・・・」

「・・・・つまんないね。シンってさ。結局、普通の愛し方しかしてないんじゃん?
 飽きられちゃうよ?」

「おまえとは違う。縛ったり吊るしたりしたら・・妻が可哀想だろう?」

「ん?全然。」

会話がどうやらここまでにしておこうと・・・

自主規制❤

pierrot 

孤独は時には・・
必要なものなのかもしれない

人を戒め
振り返らせるキッカケ

だから・・・






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2015_04
21
(Tue)23:20

ハナミズキ 前 ~舞姫別の紡ぎ~

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ちらり

はらりと落ちるは
なんであろうや?

染った花弁の合間から空が見えた

屋敷の中から眺めるだけの自由

年頃を理由に

否・・

両班の家柄を理由に

それとも・・跳ねっ返りのこの娘が心配で閉じ込めておく?

口実は何でもよかった

「ああ・・思い切り広い場所から空を眺めてみたい
 そうだ。村はずれのあの場所から峠に向かって馬を走らせれたら・・」

「さぞ気持ちいいだろうな?ハヌル様(笑)」

その声は低く、だが人の心の奥に心地よく通る声だった

「チャン・ヨンジュ・・・。お願いだ。屋敷から出してくれないか?」

母親譲りの大きな瞳。意思が強いのだろう。黒曜石のようにしっとりとしてその奥に意思を秘めていた
だが・・鼻筋の通った横顔と冷笑を称えた唇は、彼女が複雑な育ちを自分で受け入れてしまった証拠だった

そして彼女をハヌルと呼ぶ彼の声もまた
旅の一座の歌姫と称されたあの人に似て
澄んでいた

茶目っ気のある人懐っこい笑顔は、彼の父を思い出させよう

武人 チャン・ギョン

彼を想いだせる者はもう・・この世には少ない

「ハヌル?我が姫・・・。君が美しすぎるのが罪なんだ。
 屋敷から君を出してしまったら・・・我が師匠リュ・ファンの姫君がこんなに美しく成長してしまったと
 国中の噂になってしまうからね。心の狭い許嫁をお許し願いたい。我が姫」

むっつりとしたままだったハヌルが花が綻ぶように笑いだした

「ヨンジュ兄様には敵いませんわってね(笑)
 解った。また・・王様からの私への文が届いた。たった一度街中で見かけただけの私に恋をしたのだと・・(笑)
 言ってしまいたい。王様は、母君違いの兄上で・・私は先の王様と陽の舞姫の間に生まれた・・・娘」

ヨンジュの顔が白くなっていく

嘘の吐けぬこの性根は、誰譲りなのだろう

先の王様なのだろうか
それとも陽の巫女様

もう・・自分を育ててくれた
愛してくれた
教え導いてくれたあの人達はもう・・・皆、帰幽してしまった

あの人達の子らへと世代が変わっていき
先の王様と陽の巫女様の恋物語を知っている者ももう・・世に・・残っているのだろうか?

だが・・・彼女は知っていた
自分が本当は誰と誰の間に生まれた・・・者かを

養い親の二親
ファンとガンヒョンは実の子として愛し育ててくれた

だが・・彼女は知っていた
聡い彼女は・・

眼の前の兄とも慕うチャン・ヨンジュが言いたいことも知っていた

「王様が私を妃として・・・王宮に迎えたいとの・・
 ヨンジュ兄様に言付けをされたのであろう?」

ハヌルの薄い唇が真だけを告げる

その様は母である陽の巫女というよりも
その姉の月の巫女その人のようであった

「ああ・・。そうだ。」

俯くヨンジュにハヌルが溜息混じりに問う

「兄様・・。否。チャン・ヨンジュはそれでいいのか?」

意地悪な言葉で返すのが一番解るはずだと
ハヌルが薄く笑う

受けたヨンジュがそう・・

庭先の花弁のように・・頬を染めるのは滑稽な程

恋だ

そう・・10も年の違う小娘に手古摺らされる自分は・・・
王の信認厚いこの国の支えとなっている

さてさて・・・

不器用なところは
あの男の息子らしいと言えば・・
間違いはない

さもあろう・・

風が苦笑いを・・

『俺の息子だな・・・
 ヨンジュ・・』

だろう?

散ってしまった命

だが悔いはなかった

敬愛する王を友を守りたかった

この身よりも命よりも何よりも

だけど・・

たったひとつの心残り

それは・・あの晩愛し合ったあの人と
そして・・繋がった命を自分の手で守れなかったことだ

俺は・・

悔いもないと言ったが

おまえの事が・・

ふんわりとした風と
突風を思わせる一陣の風

こう告げているようだ

『心残り?誰が・・そんなことを頼んだのかしら?
 愛しい人の分まで私がこの子を愛したわ
 そして・・・あなたの友ふたりがこの子を慈しんで下さった・・・』

『我が子だと思っている
 友の子であり愛しい人の子であり
 そして・・私ともうひとりの友がこの子の才を伸ばした
 それでいいだろう?』

そうだった

この世に生まれおちた後

どれ程の人から手を掛けられて
愛されてきたか

チャン・ヨンジュの人徳は
彼に会った人々が彼をほっとけないこと

さて・・

庭先のハナミズキの花が

天を仰ぐ

厄介事は

そう・・真実を知らずに
妹に恋をしてしまった王の孤独からかもしれぬと

「面倒な事になる前に・・私が王宮へ参ろう。
 それで・・・真実を王様に告げよう。そう手配してくれないか?
 ヨンジュ兄様(笑)」

手に握った薄いヒレ

実の母の形見だと
育ての母から渡された

このヒレを
白き薄衣を纏って舞い踊る姿は
春先に散りゆく

白きあの花のようだったと

この国の伝説になっりつつある偉大なる王
イ・シンすら
その姿に
真心に
恋をして
そして・・愛したのだ

戦友と言える王妃との仲は格別であったが
王妃への敬愛と
男としての
女への焦がれる様な
溺れる様な恋は違うのだ

イ・シンが恋した女は
可憐な舞姫だった

彼女の名前は・・チェギョン

そうだ

彼女が残した命をずっと見守ったのは

何故か

月の巫女姫

『この娘の気性・・陽の巫女よりも私の方が導きやすいだろう?
 実の娘にでれでれしていては・・その生を導く妨げになる
 私の方が・・時には背を押し・・時には谷底に突き落とすことも出来るからな(笑)
 我が妹も・・光に返ったと思えば・・想い人同士・・今更に沿うておる
 我が君なんぞ・・とうに次へと・・転生の階段を上られてしまった(ハァ~)』

月の巫女姫がハヌルの後ろで導き
そして・・ハヌル自身
月の巫女姫とのやり取りを楽しんでいた

彼女もまた・・血に連なる能力者
異端な者だった

「何か考えがあるのか?ハヌル・・」

ヨンジュが空を見上げた

「ええ・・。舞う舞台を用意してくれまいか?兄様。
 そこで・・舞いながら・・兄上に・・王様に託宣をお渡ししたい」

ヨンジュの表情が強張りだした

「どうして・・舞うんだ。いや・・舞えるのか?」

ハナミズキの色に誓う

「王と舞姫。寂しい王の心をお慰めし、正すだけ。
 兄と妹・・・それだけだ。私が帰る場所は、チャン・ヨンジュ。
 あなたの傍。ずっと・・・」

触れなば落ちん

いや・・触れる前からヨンジュの心は堕ちていた

ハナミズキの花の下

寄り添うだけの恋人の影が重なっていく

触れなば落ちん

君の顔

君の声

君の仕草に

我が身は

もう・・全てを捧げてしまっているのだろうと

ヨンジュは諦めたように微笑む

2015_04
16
(Thu)23:09

pierrot 5

生きるって意味と向き合うと

時々えらく落ち込んで

はしゃぎたくなるような瞬間に出会って

自分って何だろうと問う

ある剛毅な女が言った

「あたしはあたしだ。それ以上でもそれ以下でもない・・」

言いきれるだけ凄い

惑う者は決して弱いのではなく

生真面目なのだろう

剛毅な女が真面目に真摯に生きていないのではない

彼女はきっと・・・

悔むことも考え込むこともきっと・・

もう・・ずっと前に通り過ぎたのだ

だから・・「あたしはあたしだ」

そう言い切れる

眼の前で繰り広げられる
ほぼ初恋と・・・
初恋から愛へ昇華し始めた彼らにとっては

まだ生きることが通過点なだけ

若いのだから・・仕方ない

人が生きていく瞬間に

pierrot 

ピエロを演じる瞬間もあり・・


シンがこの東宮殿の主が妻の初恋をいみじくも問いただそうと
妃宮の私室のドアに手を掛けようとした時

その時点で携帯の呼び出しに反応した

息を飲み込んで手元の画面で誰からの電話かを確認してみると
従兄弟からだった

足早に建物の外へと移動してから電話に応えた

「ユル・・・。おまえの愛しい妻が妃宮のところで管を巻いているぞ。
 迷惑だから・・連れ帰ってくれないか?」

言いたいことを言える相手

それが皇太弟の立場にある自分にとってどれ程有り難いだろうと
シンは電話で悪態をつく勢いの自分が笑っているのを改めて笑っていた

「今夜はそっちで預かってくれない?
 たまにはさ・・って、シン?今日は泊りの公務だったと思うんだけど?
 あれあれぇ~・・。妃宮様に会いたくて無理して戻ってきたパターン?」

ぐっと口の中で言葉を濁すが悪びれない従兄弟とも兄弟・・友
どれが当てはまるのかこの男の言葉に笑いだしていた

「そうだ。チェギョンを抱きたくて・・急いで戻ってみれば・・
 おまえの妃が邪魔なんだがな。なんだ・・喧嘩でもしたのか?」

直ぐに返事が出来ないのは、あの女の残像がそうさせるのだ

本気であの頃、恋をした

そして・・抱き合って眠ったんだ

それを掘り起こして・・今の最愛と並べて比べるという愚行をしてしまった自分にユルは呆れていた

「幸せだから・・安心しちゃったんだろうな?(笑)
 ちょっとメンドクサイっていうのか・・今夜一晩くらいほとぼりを冷ましたいんだよね。
 ってかさ、シンも言うようになったね。愛妃を抱きたいか・・。前だったら言えなかったんじゃない?」

言葉の含みに今夜は飲まないかと従兄弟が誘っている

「ああ・・。なんだ・・今夜は一緒に飲まないかって素直に誘ってくれよ」

シンの言葉がほころんでいた

「じゃぁ・・何処で飲む?」

「灯台下暗し。僕の私室でどうだ?」

シンの誘いに間を置いてから・・含み笑いでユルは承諾していた

「解った。今夜は男同士飲もうよ。奥様方も楽しくやってるんだろうから・・」

「そうだな・・。後でお仕置きだがな(笑)」

「?」

「待ってる。」

「はーい(笑)」

そう・・星降る夜に

風は春だと告げていた
2015_04
11
(Sat)21:36

pierrot 4

小さな籠の中に一口で食べられるサイズのサンドイッチ

カップの中の湯気は、紅茶に垂らされたブランデーが所在をここだと言わんばかりに香る

さて、覗きこんだ妃宮様のお勉強部屋で必死になってパソコンのキーを叩く御本人様

その隣でこれまた・・えらい勢いで彼女の為の資料を翻訳しているのは大君妃殿

10数分後に大きな溜息がふたつ

「終わった~・・・」

「そのようですわね。お疲れ様です・・」

ぐびっと紅茶を一気に飲み干したふたり

「ちょっと・アルコール度数が高いわ。ほっぺが熱い・・」

「?アルコール足りませんけど?健全な飲み物となってますが・・」

チョン内人とパン内人が呆れた様に互いの顔を見合わせる

絶対にノンベですわ
そうよね・・・うちの妃宮様に悪い影響が・・・

こそこそ視線で話すが意を決して言葉を紡ぐ

「健康の為には・・お酒は控えた方が・・・」

「確かに・・酔っぱらった妃殿下ってみたくありません」

「わかってまーす。私は飲まないって・・ご飯ご飯❤」

内人の言葉に相槌を打ってからサンドイッチを頬張る

大学のレポートを済ませてすっきりしたチェギョンは、大きな口でぱくぱくと美味しそうにサンドイッチをほおばっていた

「ステラ妃殿下は召し上がりませんの?」

「お口に合いませんか?」

東宮殿の内人ふたりが心配そうにステラを眺める

「えっと・・夜は、あんまり食べませんの。サラダをツツクくらいで・・。食べるのって面倒でどうも・・」

3人の視線が絡みつく

「食べることが面倒?信じられない。美味しい物を食べてる時が一番幸せでしょ?」

「「左様でございますとも・・」」

今度は、ステラが苦笑いの番だった

「体を壊しますから・・適度には召し上がりませんと・・。
 ソ尚宮様がよく零されてます。義誠大君妃殿下におかれては・・食が細く、貧血の数値が
 気になって仕方ないと。二切れは召し上がってください。野菜ジュースもお持ちしましたので是非❤」

微笑を称えながらチェ尚宮がステラに勧めるのは食事の改善だった

「そうだよ。ステラさん?ご飯をきちんと食べてないと貧血とかで倒れちゃうわよ。
 ユル君も心配するでしょう?」

夫の名前を出されて、食事についてのアドバイスと
折角羽を伸ばそうと家出妃してきたのがなんだか歯車が狂う

「あはは・・・。野菜ジュースだけでいいかなって。」

おずおずと野菜ジュースのカップに手を伸ばして、ごくんと一気に飲み干した

「いけません。二口は召し上がってください。体力が落ちてしまいます。」

ふるふると首を振ってみたが、睨んだ様な視線に根負けしてサンドイッチを口にするステラは
ちょっとほっぺが膨らんでいた

「いつもチェ尚宮は、こうなんですの?怖い・・・」

ステラがぷぅ~っとほっぺが膨らんだまま呟けば
可笑しそうにチェギョンが肯定した

「そうよ。チェ尚宮オンニは厳しいけど愛ある厳しさよ。
 ステラさんの偏食・・噂通りだね。ユル君も心配してたよ」

ずるずる・・・カップに残った紅茶が少し苦く感じる

「今夜は、楽しく過ごすんじゃありませんでしたの?妃宮様・・・」

開け放たれた窓から入り込んだ風がふんわりと・・過ごしやすくなった春の宵だと教えてくれる

「う~ん。そうだね。何があったのかなんて野暮は言わないか。
 本当は興味津津なんですけど(笑)
 私もシン君の過去のことで波風立てるのはもう・・めんどくさいし。
 今が幸せならそれでいいんじゃない?」

チェギョンが澄ました顔で微笑んでいた

そうだ

過去に囚われて心の自由を奪われて
過ちを犯したのは戸惑った結果

この宮でシンとチェギョン・・ユルは心から消せない傷と
妃宮の長い冬休みという
宮から出されるとい結果になった

今が幸せならそれでいい

確かにそうだ

ステラは微笑んだ

視えたことに囚われるなんて

哀れなことだと知っていたのに

「ユル君がイギリスで寂しかった時
 恋をなさった
 それを咎めるなんて誰も出来ない
 人の心の中の襞の記憶を読みとって
 イジケテモも仕方ないし・・
 私との口づけとその方とのキスの仕方も
 抱いた時の感触も・・
 比べたいのなら比べればいい
 そうですわね・・
 今のユル君には・・私だけいればいいんだもの」

言葉に出せばそれだけ・・
の筈だったんだが・・

「ちょっと待って・・・
 口に出さないけど・・・ユル君・・
 ステラさんとその昔の彼女とを・・その・・
 エッチの最中の具合を比べてたの?
 それって・・・最低・・あ・・ごめんなさい」

正直な人だとステラは微笑んだ

「いいんです。人なんて・・そんなもんですわ・・って
 あれ?違うんですの?」

唇を押さえて回りを見ると
違うちがーうと4人の女性が首を振っている

「そこは・・怒ってもいいかな?って思うんだけど
 う~ん・・。一般人は、相手が前の彼女と今の相手を比べてるなんて解んないものね・・」

込み入ってくる感情は
有り難かった

まるで自分の事のようにステラの悩みを一緒に悩んでくれる

「ふふふ・・。この話はもう・・これでお終いにしませんか?
 私もユル君に言ってしまったことあるんですの。ベロチューなんてイギリスに居た頃の彼は・・
 しませんでしたわって・・・あれ?皆さん・・・引いてます?」

お口があんぐり・・
人様の過去の恋バナほど・・聞いていて楽しいのと自分に置き換えて引いてしまうことも・・・さもありなん

「えっとその後・・ユル君はなんて?ステラさん彼氏いたんだ・・」

コクコクト頷き・・
「えっと・・前彼?っていいますの
 お隣にお住まいだった韓国人だけど金髪に染めた人でしたの。
 ちなみに・・キスしかしてませんわよ?だって・・粘膜接触は禁じられてましたもの!
 えっへんですわ!」

えっへんって・・・・
これまた引くんだけどなとは誰も言えずにいたが・・妃宮様が口を開いた

「・・・私のファーストキスはシン君なんだけど。
 ちょっと羨ましいかな?他の誰かとキスの想い出か~」

「それ皇太弟殿下に聞かれたらたいへんなことになりそうですわね。」

えっと・・恋バナって盛り上がるんですよね

その後

ひとりひとりが初恋をこっそりと語る晩

こつこつと・・乾いた足音が東宮殿のパビリオンに響く

「そうそう・・初恋ってことだけならさ。
 高校に入った時、同じクラスの・・ふふふ・・かっこ良く見えたんだよね」

チェギョンの一言がその後を続ける予定だった

「どなたですの?初恋の君。卒アルに載ってますか?」

「え~・・・どうしよっかな?シン君に会う前だもん。
 シン君が一番カッコいいんだけど・・優しさでは・・どうかなぁ~(笑)」

こつこつ・・・

足音が小さく近付く

この話が聞かれるなんて誰も思わない

『チェギョンの初恋?
 聞いてないぞ。って・・僕じゃ・・ないのか?誰だ・・それは・・(怒)』

小さな嫉妬のめんどくさそうな炎が彼の瞳に宿ってしまった

さぁ・・今宵は、公務先にお泊りの筈が・・大好きな妻に会いたくて無理やり帰宮した東宮殿の主

どんどこどんどん・・・

妖しい太鼓の音が聞こえてきそうだ