2012年05月14日
2012東日本インカレレポート① 松田陽樹(青森大学)
2012東日本インカレレポート① 松田陽樹(青森大学) 「襷」 金曜日の公式練習のときから、松田の動きのよさは目立っていた。 動きがいいだけでなく、青森大学個人選手唯一の4年生というプライドが、気迫となって彼の周囲には立ちこめていた。 公式練習では、投げ受けのミスもあったが、それを修正しようと黙々と練習している彼の姿には、「絶対に負けない!」という強い思いが感じられた。 1日目。最初の種目・リングは、従来の松田の演技よりもずっと動きも操作もつめた印象の作品だったが、体のライン、足先などの美しさがあるため、バタバタと慌ただしく見えることはまったくない。彼の演技は、低い姿勢を見せるところが多いのだが、これほど無理なく低い位置で動けるのは、十分な柔軟性を身につけているからだろう。絶え間なく、速く動くリングと、得意の曲線的なポーズや、そりの美しさのコントラストが、彼の「負けない気持ち」を際立たせた。ともすれば「きれいだけどそれほど印象には残らない」と言われていた松田陽樹という選手の殻を破ろうとするエネルギーがあふれ出る演技で、9.375。 「今年の自分は今までとは違う!」 その思いを伝えることに、松田は最初のリングで成功したのだ。2種目目のスティックでも、「こんなに手具扱いが巧かったっけ?」と目を見張るような、スピード感のあるよどみない手具操作をともないながら、これまた流れるように美しい動きで、音楽をなぞるように踊り上げ、9.375。 1日目は、ノーミスで通した選手でもなかなか9.300を超えられないという流れの試合だったが、その中で、松田だけが2種目そろって、9.300を超え首位スタートを切った。 迎えた2日目。 松田は、クラブ3番目の演技者だったが、その前にロープで登場した佐藤秀平(青森大学)が、初日は2位につけていたものの、かなりミスの多い演技となってしまい、8.650。一瞬、青大応援席にも嫌な空気が流れた。 そこで登場した松田のクラブは、昨年までと同じだったと思うが、松田の作品の中でももっとも音楽との一致が感じられる作品だった。速いタンブリングとふんわりした動きとの緩急の差で、見るものを惹きつける。今までになくエネルギッシュな1日目の作品もよかったが、クラブでは、「そうそう。松田のよさはこれだった!」と再確認させられた。旋律にのせて踊る、という点では卓越したものを見せたこの演技で、3つ目の9.375。 しかし、この後、青森大学のほかの選手達がロープでミスの連鎖にはまっていく。 1日目は2種目とも9点を超えた籠島遼は落下があり、8.850。 1年生の鈴木仁は初日からの硬さが抜けず、落下ミスがあり8.850。 1日目はスティックで9.400をマークし、総合3位につけ松田の優勝を脅かす存在と思われた小林翔までも、ロープでは落下やひっかけのミスを連発し、9.125。 そんな悪い流れの中で、おまけに「優勝がかかっている」という状況で松田のロープの試技順が回ってきた。 どれほど緊張しても無理はない、そんな場面だったが、だからこそ、彼はどこまでも落ち着いていた。 もちろん、内心はドキドキ、バクバクだったかもしれないが、それはまった表面には出ていなかった。表から見えたのは、「絶対に崩れない」という彼の強い意思だけだった。 おそらく。ほかの種目に比べると、本人としては満足しきれない出来だったのではないだろうか。演技終了後に、少し微妙な表情を見せていたし、ロープの操作がしっくりいかなかった? と見えた瞬間もあったように思う。それでも、大きなミスにはならずうまくまとめ、迫ってくるような音楽との相乗効果で、ひたひたと優勝に向けて進んでいく力強さを感じさせる演技だった。結果、9.325。 2日目の青大個人には、はっきりと負の空気が流れていたが、唯一の4年生である松田陽樹は、その空気に飲み込まれず踏みとどまった。 その精神的な強さで、もぎとった優勝だった。昨年までの松田が、そこまで上位の選手ではなかったのは、演技のインパクトがもう一歩足りなかったほか、必ずどこかではミスを犯していたせいもあった。その彼が、全体としてはミスの多かった東日本インカレを「ミスなく最後までやりきる」強さで、制覇した。 1日目に見せた「これまでの自分とは違う!」と宣言するような熱く強い演技は、もちろん、彼の技術の向上と構成の工夫あってこそのものだ。しかし、それ以上に彼を変えたのは、やっぱり「気持ち」なんだ、と思う。 「自分がやらなければ!」「自分が勝ちたい!」 というある種の責任感を伴った野心や欲。 おそらく今までの彼にはなかったそんなものと、彼はしっかり向き合い、モチベーションにつなげ、最後にはそれが気負いにならないように、コントロールできた。 2008年から続いている青森大学の東日本インカレ個人での連覇を松田が「5」にのばした。春日克之、大舌恭平、福士祐介と渡されてきた襷は、松田陽樹によって、来年へとつながれたのだ。 <演技写真撮影:小林隆子>
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- posted by rg-lovers
- 09:31
- 2012東日本インカレレポート
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