ジャーナリスト 清武英利
やる気はあった。仕事も好きだった。でも会社は、彼らを「いらない」と言った。創業者がリストラを嫌ったソニーで、人を切るためだけの部屋に追い込まれた彼らは、自らの足で立つことを選んだ。
東大准教授として再出発
東京大学生産技術研究所は、東京の駒場キャンパスの一角にある。ここに「滝口研究室」を構える滝口清昭特任准教授(59歳)は、「準静電界」という耳慣れない分野の研究で注目された工学博士だ。
彼はJR東日本など複数の民間企業とともに、「準静電界通信技術」を応用した通信や遠隔個人認証の共同研究を続けている。フジテレビ系列のテレビ番組『超潜入!リアルスコープハイパー』でも、JR東日本などと取り組んでいる最新自動改札機「タッチレスゲート」が、「超ラクチン改札」と紹介された。
その彼には不思議な経歴があった。
滝口氏はソニー情報技術研究所のシニアリサーチャー(上級研究員)だったが、2007年に、東京・御殿山にあった「東京キャリアデザイン室」、通称「リストラ部屋」に追いやられたことがあるのだ。
ある日、上司からこう告げられた。
「君はうちでは仕事がない。ここでは要らない人間です」
滝口氏が「準静電界」に着目し、その実用化を夢見ていたころだ。交通システムやGPSの研究開発を手掛け、新たな分野に挑戦していた。
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