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「くらしEYE」のコーナーは、共同通信社生活報道部が毎週末、新聞用に出稿している「暮らしアイ」と「暮らしコンパス」「そもそも解説」を47NEWS向けに再構成したものです。

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里親にも育休を  共働きに「法の壁」

里親の知子さん夫婦の間に座り、お絵かきをする女の子(上)

里親の知子さん夫婦の間に座り、お絵かきをする女の子(上)

虐待や親の死亡などで行き場を失った子どものために、里親にも育児休業を認めるべきだとの声が強まっている。共働き世帯が増える中、「法律上の親子」の場合にしか育休取得が認められず、里親になれない人が多いとされるからだ。今年は育児・介護休業法の見直し時期で、国は法改正も含め、検討を始める。
 埼玉県の知子さん(47)=仮名=は2年前、児童養護施設で暮らしていた当時3歳の女の子の里親になるため大手銀行を退職した。女の子を紹介された児童相談所で「仕事はどうしますか」と言われたのがきっかけだ。
 共働きで、銀行では管理職だった知子さん。40すぎまで不妊治療を続けたが、子どもを授からなかった。「どうしても子育てがしたい」。仕事に未練はあったが、女の子が「会いに来てくれる人がいる」と誇らしげに話すのを見て、「後悔したくない」と心を決めた。一緒に暮らし始めると、児童相談所での言葉の意味が分かった。
 女の子は知子さん夫婦がいると食事を取らず、「食べたい」とせがまれたものを作ると「いらない」と突っぱねた。あちこちかみついてきたこともあった。本当に自分を愛してくれる人かどうか、確かめるための「試し行動」だ。
 家事を一切できず、1、2カ月は育児にかかりきり。ようやく落ち着いたのは1年近くたってからで、知子さんは「仕事との両立は無理だった」と振り返る。
 虐待や親の精神疾患、死亡、行方不明といった理由で、親元などで暮らせない子どもは全国に約4万6千人(2014年3月末)。国がまとめた里親などへの委託率は15・6%で諸外国に比べて圧倒的に少ない。里親になるには実親の同意が必要な点や、血縁を重視する社会の意識も影響しているとみられ、国連の「子どもの権利委員会」は施設中心の養育環境を是正するよう勧告している。
 さらに障害となっているのが、育休取得の条件を「法律上の親子関係がある子」に限っている育児・介護休業法の規定だ。全国里親会は昨年12月、「今後の里親候補は共働きが多く、どちらかが辞めると経済的に苦しくなり希望者が増えない」として厚生労働省に法改正の要望書を提出した。
 愛知教育大の萬屋育子特任教授は「乳幼児期に親との愛着関係を持たずに育った子どもとは、少なくとも1年は付きっきりで過ごす必要がある」と指摘。「子どもの年齢に関係なく育休を取れれば、施設で育つ子を減らせるはずだ」と話す。
 里親の中には養子縁組を希望する場合もある。総務省は3月、6歳未満の子を実子として引き取る特別養子縁組制度で、試験養育期間(6カ月以上)に育休を認めるよう厚労省に改善勧告した。三重県も2月から、同制度を利用する県職員に独自に育休を認めている。
 厚労省の担当者は「法律見直しの議論の中で、里親など事実上の親の育休も検討したい」と話している。

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