人形雑記 その33 香山リカの謎

 ジェニーの商標についておもしろい発見をしました。ジェニーという名前で正式に発売されたのは1986年です。その前の1982年から1985年まではバービーの名前で販売されていました。しかしジェニーという名前自体は1979年に既にタカラによって商標申請されています。1979年ではタカラバービーの販売もはじまっていません。ジェニーという商標の指定商品は人形の他に浮き輪、トランプなど当時のタカラが扱っていた製品がズラズラと羅列されていました。ジェニーという名前は将来出る製品のためにあらかじめ用意されていたものの一つだったようです。

 ジェニーの発売を翌年に控えた1985年にタカラは追加の申請をして商標の指定商品を大幅に増やしています。これは他業種に気軽にジェニーという名前を使われないようにするための事前の防衛策です。この指定は多岐に渡っておりハミガキ粉からタイヤ、自動車、航空機、船舶にまで及びます。ティモテの話でも書いたように商標権は指定した商品にしか及ばないので他社に使われないようにするにはこうするしかないのです。
 各分野の製品を網羅しているのでジェニーという名前をタカラ以外の会社が使うのはまず無理です。しかしそのタカラにも指定できなかった商品があったようです。それがコーヒーとココアです。これらは1978年(タカラがジェニーの商標を申請する一年前)に大阪のインスタントコーヒーメーカーが自社のブランドとしてコーヒー,茶,ココア,氷 の指定で申請しています。ジェニーコーヒーは現在も販売されており味の評判もいいようです。
 商標のことで気になるのはタレント精神科医の女性が「香山リカ」という芸名を名乗っていることです。香山リカはリカちゃんのフルネームです。もちろんこういった事態は予測されており、リカちゃんにも事前の防衛策はとられていました。商標の指定商品の中には放送や出版も入っています。しかしフルネームの香山リカは商標登録していなかったのです。この隙を突かれてしまったようです。精神科医の女性がみんなに好かれるような人ならまだいいのですがどうやらそういうタイプのタレントさんではないようです。
 さらに悪いことにタカラが遅まきながら香山リカで商標登録をしようとしたらタレント精神科医が香山リカという芸名を長年使用しているのでその侵害になるという理由でいったん却下されています。これはその後の審決でそもそもタカラのリカちゃんが先であることが証明され却下は取り消されています。驚いたことにほんの一時期ではありますが向こうが本家扱いされていたようです。

 商標審決データベース(新しいタグで開きます)独特の用語が多くてわかりにくいですが要約すると、タカラが香山リカの商標を登録をしようとした→特許庁は精神科医の香山リカ氏の芸名を毀損するとして却下→タカラが不服申し立て→香山リカは元々タカラのリカちゃんのフルネームであり精神科医の女性はそれを真似ていたことが証明される→結論:タカラの香山リカの商標登録を認める、といった感じです。途中あぶないところはありましたが最終的には正当な結果に終わったようです。しかし2014年5月現在、まだタレント精神科医は香山リカの名前を使ってます。色々調べているのですがその謎が解けないです。訴えるなら訴えてみろと開き直っているだけなのか、現在も係争中なのか正直わからないです。ここまで引っ張っておきながらラストは謎のままとかエヴァンゲリオンかよ!(ひとり突っ込み)いや、本当に面目ないです。

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