forGamer.netイギリス紀行:独占インタビューシリーズ<4> 4/6

キャラクターゲームとしての「Galleon」
「コンピューターゲームで表現されている世界を理解するためには,そこに登場する物事の論理とか法則とか,その世界にいるんだという理由付けが必要なのではないでしょうか」−Toby Gard氏

4GN:
 今回,主人公が男になったのは?

ガード:
 だってほら,トゥームレイダーと色の違いを出さなきゃならないじゃないですか(笑)。まあ,同じアクションアドベンチャーゲームというジャンルのゲームであるために,私が作るゲームにはどうしてもララの影が付きまとってしまう。それならば,さっきお話しした"感情移入"という点ではマイナスになってしまっても,主人公を男性キャラクターにしてNPCとの会話やインタラクションを増やすことで,トゥームレイダーシリーズでは達成されなかった「ほかのキャラクターとの感情的な結び付き」が表現できると思ったのです
 ララは,それだけで楽しめるキャラクターであったのは確かですが,それ以上のものはありません。そういう,カッコ良くて小気味良いキャラクターが動くキャラクターを視覚的に楽しむために用意されたのであって,ほかのキャラクターとの感情レベルでの結び付きは,ストーリー的にも技術的にも考慮されていなかったというのが実情です。Galleonでは,もっと主人公に密着した形でストーリーを進めていきたい。だから,男性のプレイヤーが大半を占めるであろうことを予想すれば,主人公も男性にしておいたほうが良いのではという公算があったというわけです。

4GN:
 その,感情なりの表現が,Galleonでのコアの部分になっているのですかね。

ガード:
 そうですね。それから,もしトゥームレイダーに問題があったとすれば,あのゲームの"アドベンチャー的要素"が,ブロックなど一定のオブジェクトを使ったパズルを基本としたところにあったということです。さらに,ストーリーはレベルとレベルでリンクされたものの積み重ねでしかなく,良い意味でも悪い意味でもシューティングゲーム的な単純さに影響されていたわけです
 Galleonの開発においては,パズルとストーリーがもっと融合した形になっていて,その世界での意味を持ち合わせていたほうがいいのではないかと考えています。つまりは,プレイヤーがあるコンピューターゲームで表現されている世界を理解するためには,そこに登場する物事の論理とか法則とか,その世界にいるんだという理由付けが必要なのではないでしょうか。だからGalleonでは,ストーリーにしろキャラクターにしろパズルにしろ,すべてを一つの流れにまとめていくのが,私のやりたいことの一つだといえますね。

4GN:
 ゲームシステムに関しては?

ガード:
 ゲームシステムに関していえば,おおぴっらにいってしまえば,マリオ64のいいトコ取りです(笑)

4GN:
 確かに,操作性とかに影響が感じられますね。

ガード:
 ええ。トゥームレイダーからGalleonへと続く流れの中で,技術的に一番改善したかった部分がキャラクターアニメーションなんです。ララ・クロフトだって飛び跳ねたりよじ登ったりといろんな動きができましたけど,方向キーで正確な位置に合わせなければならず,ロボットのようにカクカクしていましたよね。それをもっとスムーズにして,ゲーム世界の中の"物理"を完璧に作用させるようなゲームプレイとコントロールを実現してみたいのです。コンシューマ機で素晴らしいのは,標準のアナログコントローラが開発されたことですね。それをうまく生かしたのはまずマリオだったし,その性能を利用したアニメーションにしてみたいという欲望があります。

4GN:
 そういう流れで,GamecubeとXboxをメインシステムに選んだと。

ガード:
 そうです。PS2にしなかったのは,開発当初にプラットフォームの絞り込みはしていなくて,パソコンでゲームを作っていたという経緯からです。PS2は,そこから移植するのは弱小開発チームには負担ですからね。

4GN:
 そういう過程を経てきた結果,Galleonって日本的なキャラクターゲームになってきましたね。

ガード:
 やはりマリオ64なんかには,ゲームプレイヤーとしてだけでなく,ゲーム制作者としても憧れる部分がいっぱいあって,飛び具合だとか滑り具合だとか,我々の住む現実世界の物理だけに捕らわれているのではなく,ゲーム的な物理的現実を追及して演出しているじゃないですか。完璧ですよね,あのゲーム。大好きです(笑)。
 Galleonの話に戻しておくと,そういうキャラクターアニメーションに気を配りながら,それをゲームプレイやレベルデザインにどのようにフィードバックできるかという観点で,ゲームを作っているのです

4GN:
 世界観の違いに関してはどうでしょう?

ガード:
 トゥームレイダーとGalleonの? 確かに,トゥームレイダーはエジプトとかインカとか,現実的な世界を表現しているという制約はあったのでしょうね。Galleonはファンタジー世界であるゆえに,そういう物理的な飛躍もプレイヤーは受け入れやすくなっているのでしょう。

4GN:
 グラフィックス的に見て,Gamecube版とXbox版で違いはありますか?

ガード:
 少なくとも我々のゲームでは,XboxにできてGamecubeにはできないという表現手法はないですね。PC版では,解像度が高く設定できるなどの利点は考えられます。

通常では考え付かないような急斜面でも,ラマはサルのようにサクサクと登ってしまう。崩れ落ちた洞窟の内部や壊れてしまった桟橋など,うまく跳躍力を使って乗り切らなければならない局面も多いのだ 切り立った崖の下の狭い土地を有効に活用したアクバーの街並みと,海に流れ落ちる大瀑布。石や地面,樹木,海面などの質感も見事に表現されている
ターバンを巻いたアラビア風の巨人に,格闘ゲームにでも出て来そうなカンフー使いの老人。妙にコミカルなシーンだが,キャラクターたちの表情の豊かさには感嘆してしまう 2階部分は,ガード氏を含めたデザインチームが入っている。全員で20人くらいが開発に従事していたが,皆黙々と作業を続けていたのが印象的だ

次のページへ