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<女川協定締結>周辺自治体に権限を/過酷事故想定し改定必要

 かない・としゆき 東大法学部卒。東京都立大助教授、オランダ国立ライデン大客員研究員などを経て06年から現職。専門は自治体行政学。著書に「実践自治体行政学」「原発と自治体」など。48歳。群馬県出身。

◎東大大学院 金井利之教授に聞く

 東北電力と女川原発(宮城県女川町、石巻市)の周辺5市町が20日、安全協定を締結した。焦点だった原発の設備変更時の「事前了解」は盛り込まれず、現状では周辺自治体が再稼働の可否を自主的に判断するのは難しい。協定の問題点や今後の改善点などを東大大学院の金井利之教授(自治体行政学)に聞いた。

 −立地自治体と同等の協定を求める周辺自治体と東北電との溝が、なかなか埋まらなかった。
 「想定する事故のレベルが双方で違っているためではないか。電力会社は事故の影響が原発の所在する自治体で収まると考え、周辺市町村は福島のような被害を想定しているのだろう」
 −妥協策として、宮城県が周辺市町の意見を聞く覚書を締結した。
 「意見が反映されるかは不透明だ。県が周辺市町の意見を反映しなかったときの対応策がない」
 −協定締結を踏まえ、東北電は原発事業とどう向き合うべきか。
 「過酷事故が起きた際は避難、帰還、復興など相当な困難が予想される。事故は事業経営に起因するのだから、電力会社は原因者責任に基づき、避難・復興基金を設立するなど事前の対策を真剣に検討すべきだ」
 −原発の立つ「所在自治体」と周辺自治体で権限に差がある。一般的に言われる立地自治体の範囲はどうあるべきか。
 「立地自治体イコール所在自治体との考えは、深刻な事故が起きないという安全神話時代の話。現実的に被害を受ける可能性のある自治体は立地自治体になりうる。どの範囲が立地自治体になるかは、各市町村が自己決定権に基づいて決めるべきで、国や電力会社が決めるべきではない」
 −安全協定は原発の安全性を高めると思うか。
 「ないよりあった方が高まると推論できる。ただ、所在自治体は事前了解のような事実上の権限があっても、経済的、財政的メリットとセットで議論してしまう。そうすると、安全性が高まらない可能性はある。メリットよりもデメリットの方が大きい周辺自治体に事実上の権限があるならば、安全性は確実に高まる」
 −今後、協定を改善する場合に留意する点は。
 「今回の協定は過酷事故が起きないことを想定したもので、過酷事故に対応する内容に改定すべきだ。そもそも前提になっている所在自治体と東北電との協定が、福島の原発事故後も改定されておらず不十分だ」
(聞き手は報道部・勅使河原奨治)


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2015年04月21日火曜日

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