2013年03月17日

2013高校選抜直前企画⑤ 水俣高校

2013高校選抜直前企画⑤ 水俣高校

「不屈」

2011年は部員不足で団体を組むこともできなかった水俣高校だが、昨年は新入部員が入り、見事にインターハイへの返り咲きを果たした。

しかし。
3年生が卒業した現在、部員は4人になり、再び団体存続の危機に瀕することになってしまった。それでも、出場権を得ていた選抜大会には4人編成で出場する。

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昨年の団体選手権、インターハイで見た水俣高校の演技は、久しぶりに団体が組めた、というチームとしてはかなりの健闘だったように思った。しかも、去年のチームの3年生達は、高校入学まではまったく新体操とは関わりのなかった「高校はじめ」の選手達だった。
そんなキャリアの浅いメンバーで、団体としての練習は4月から始めて、わずか4か月後のインターハイでいっぱしの演技を見せたのだから。

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それでも、かつては全国制覇も成し遂げている水俣高校としては、復活ののろしを上げただけ。本当の復活は、ここから!  と思いたかったのだが、現在は部員4名。新入部員のあてもまだないという。

そんな状況だからか、清本監督は、「うちは4人しかいませんから」と取材の申し出に対して、戸惑いを見せた。
「取材するほどのものではない」と言いたげだった。

それでも。
4人しかいないならいないなりに、その状況で彼らがどう成長しているのか、を見たくて、3月16日、水俣高校を訪ねた。

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「一技千回」の大きな部旗の下で行われる4人だけの練習風景は、たしかにさびしく見える。 しかし、彼らが、フロアの脇で円になってお互いの動きを見ながらの「合わせ」を始めたのを見て、私はかなり驚いた。 うまくなっていたのだ。 想像以上に。 rg-lovers-384967.jpg


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インターハイ前に、水俣高校の練習を見たときには、ジュニアあがりで体きく1年生達は、高校はじめの先輩達よりもできる部分もありながら、やっぱり1年生、といった気楽さ(厳しい言い方をするなら甘さ)もあるように見えていた。
それが、4人しかいない状況になり、自覚が違ってきたのだろうか。練習に取り組む姿勢ががらりと変わっていた。

1人だけの2年生も、夏に見たときは、気の弱そうな印象だったが、唯一の2年生として、ずい分、しっかりしたように見えた。

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ああ。そうだった。
水俣高校は、こういうチームなんだ。

去年のキャプテンだった田畑も、1年生の終わりに見たときには、本当に頼りなく見えた。技術的にもやっとバク転ができる。そんな選手だった。
それが、3年生の夏には立派にキャプテンを務めるまでになり、演技ではテンポ宙もこなしていたのだ。

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選抜大会は、4人で出る以上、高い得点は望めない。
それはわかっていても、彼らも清本監督もあきらめていないのだ。

選抜での結果は期待できないとしても、この大会を次につながるものにしたい。
さらには、この大会に出る4人にとって、彼らなりの達成感を得させたい。
かつての「強い水俣高校」を率いた経験もある清本監督は、そう考えているんじゃないか、と思った。

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たとえ4人でも。 団体が組めるかどうかわからない状況でも。 そこにいる生徒にとって、新体操が心身を成長させる場であることを、この指導者は目指している。 私はそう感じた。 rg-lovers-384981.jpg


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私が、男子新操を真剣に見始めて、やっと3年がたった。
この3年間は、どちらかといえば、「美しい」「表現力がある」ということが、私の中ではポイントが高めだった。
しかし、ここにきて、新体操の価値観はひとつではない、と感じることが多くなった。

いろんな新体操があっていいし、それぞれが違う魅力を見せてくれる新体操であってほしい。
そう思うようになった。

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だから。
井原とも青森山田とも、神埼清明とも小林秀峰とも違う水俣の新体操も、これはこれでいいな! と思うのだ。

彼らの新体操の良さをしっかり見せられる演技ができる状況に早くなるように、と願わずにいられない。


高校選抜大会は、明日3月18日に始まる。
まずは個人競技から。競技開始は、午前9時半になる。


※お知らせ

ジムラブに、横田泉さんが、高校選抜の事前記事をアップしています。小林秀峰高校、智頭農林高校、恵庭南高校が登場しています。ぜひご覧ください。
http://gymlove.net/rgl/topics/report/2013/03/17/28/


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2013年03月17日

2013高校選抜直前企画④ 鹿児島実業高校

2013高校選抜直前企画④ 鹿児島実業高校

「復活劇」

2年前のこの時期に、私は初めて鹿児島実業高校の体育館を訪ねた。

大阪選抜大会が震災の影響で中止になった直後だったが、当時の鹿児島実業にとっては、もともと高校選抜大会は無縁のものだった。
2年前、「新1年生が入ってきてくれれば、なんとか6人で団体を組むことができそう」・・・鹿児島実業はそんな状況にあった。

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2年前のあの日、入学予定だという中学3年生が2人、練習に来ていて先輩達から柔軟を教えてもらっていたが、それはそれはつらそうだった。開脚も満足にできず、涙目になっていた。 バク転の練習では、柔道の帯を腰に巻き、樋口監督と先輩が彼らに伴走して帯を利用して回る感覚を教えていた。 「果たして続くかな?」 そんな頼りなさだった。 rg-lovers-384932.jpg


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が、そのときの頼りない中3坊主は、その年の夏、青森インターハイには、「久々にインハイに帰ってきたカジツ」のメンバーとしてフロアに立っていた。
鹿倒立は瞬間芸のようだったし、タンブリングは前宙のみ、ではあったが彼はしっかり自分の役割を果たしていた。

そして、試合後には、

「楽しかった。またこの舞台に戻ってきたいです。」

と言った。

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その言葉とおりに、青森インターハイ以降、昨年の選抜大会、福井インターハイと鹿児島実業は、全国の舞台を沸かせ続けている。

そして、その演技は確実にレベルアップしてきている。

前宙しかできなかった1年生が、いつの間にかひねりまでこなすようになり、倒立もバランスもあぶなげなく止まるようになり、前後開脚して腹をべったりと床につけられるようになったのだ。

一人一人がそれだけ成長しているのだから、チーム力は何倍も上がる。1年前の選抜でも、福井インターハイでもその成長ぶりは見てとれた。

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そして、なによりも。

部員が増えた。

県内のテレビなどがしきりにカジツを取り上げる効果も大きいと思うが、全国に名だたる強豪クラブも多い鹿児島実業高校において、いまや男子新体操部は、人気クラブの一角をなす。

3年生が引退したこの時期の練習を見ても、レギュラーメンバー以外でもう1チーム組めるだけの人数がいた。

ほんの2年前は、6人集めるのがやっとだった部が、だ。

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そして、選抜に向けて彼らは、あの「一休さん」の演技を練習していたが、3年生が2人抜けたあとに入った1年生達が、かなりいい。穴を埋めて余りある動きを見せていた。

もちろん、演技のおもしろさはそのままに、だ。

たった2年で、停滞していたチームが、こんな風に息を吹き返すこともある。選抜大会での鹿児島実業の演技は、きっとそういう意味でも、多くの人々に希望を与えてくれるだろう。

今大会には、メンバー不足で4人編制になってしまったチームも複数ある。6人そろってはいても、かなり苦しい台所事情のチームもある。
それでも。

アイデア次第、指導次第では、鹿児島実業のように復活できることもある! 

そう思わせる活気が、ここにはあった。

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今年も、カジツは観客の心をわしづかみにする。 きっと、だ。 rg-lovers-384956.jpg


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1年生ながら、昨年春の九州大会で個人優勝。インターハイでも6位入賞を果たし、ジャパンにも出場した福永将司は、あのユニークな団体演技とは対照的に、非常にベーシックで美しい新体操をする選手だ。おそらく普段は団体中心の練習で、個人はそれほどやり込んではいないのだろうが、基本的な部分が揺るぎないので、ミスさえなければある程度の得点は計算できる。

今大会に向けては、故障していた時期もあり、コンディションがよいとは言えない状況のようだが、それでも4種目をまとめる力はある。夏のインターハイは、再び九州・佐賀での開催。団体だけでなく、個人でも九州勢の活躍が期待されるとなると、福永への期待はより大きくなりそうだ。

※お知らせ

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2013年03月16日

2013高校選抜直前企画③ 小林秀峰高校

2013高校選抜直前企画③ 小林秀峰高校

「確信」

2012年の全日本選手権。
小林秀峰高校は団体総合7位だった。
高校団体の中では、3位・井原、5位・青森山田に次いでの3番目の成績。
しかし、井原と山田がそれぞれ3年生のメンバーを入れたままだったのに対して、全日本での小林はすでに1・2年生だけのチームだった。
それで、予選では18.900、決勝では18.850をマークする安定感を見せ、「(3年生の抜ける)選抜は小林が本命?」との評価が一気に高まった。

あれから4か月が経った。

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3月14日。 小林秀峰高校の練習場は、いつものように賑やかだった。 3年生はすでに部活を、引退している。 この春、入部してくる予定の中3生もまだ練習には参加していない。 それでも、この数。このレベル。 これがまず、小林秀峰の強さだ。 rg-lovers-384206.jpg


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全員での徒手の流しを何回か行ったあと、レギュラーメンバーと控えの選手達が分かれて練習を始めた。
まずは、各自で気になるところを確認しているようだったが、彼らの動きにかつてない力が漲っていることを感じた。

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たとえばバランスに入る前の動き。
一瞬、両腕を体の前で交差させてから、腕を水平に広げるのだが、その水平に広げるときに空気が動き、風を切る音がはっきり聞こえる。

いや、広げるときだけではなく、腕を交差させるときにも、「ザッ」という音がする。

たとえば、上げた腕の指先を見つめる動き。
今までよりもしっかりとあごがあがり、表情をもって頭が動く。

大きく何かが変わったわけではない。
が、たしかに何かが変わっていた。

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なによりも、この練習場の空気自体が、違う。 この日は、公式練習のスケジュール通りに練習を進めていたので、レギュラーが想定公式練習に入ると、ほかの選手達はまわりで、声をかける。 この声かけは、いつも通りの光景だし、今まで見た何回かの練習のときも、感動できる一体感はあった。 rg-lovers-384218.jpg


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しかし、この日の練習場に漂う一体感は、今までに感じたそれとは何かが違っていた。

おそらく。

そこには「確信」があるのではないか。

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仲間に頑張ってほしいから! 彼らがみんなの代表だから。 たとえフロアにのっていなくても、自分も一緒に演じているような気持ちで控え選手達は声援をおくる。 それはいつもと同じだ。 小林秀峰は、いつも「みんなで戦う」。 もしかしたら、だからこそ、選手達に不安があれば、声援にも不安が出てしまうのかもしれない。 そんなことを今さら思った。 rg-lovers-384222.jpg


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「頼むから、一番いい一本を出してくれ!」
ここ数回の大会での小林秀峰の声援には、そんな願いがこもっていたように思う。

しかし、今は。

「いつも通りにやってくれ! いつも通りでいいんだ!」
そんな思いが伝わってくる。

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たしかに。
今の小林秀峰は強い。

多くのチームがメンバー切り替えで苦労している中、3月の時点で、このレベルに仕上がっているというのは、強豪・小林秀峰といえど、そうそうないのではないか。

あとは。

「いつも通りにやること」 だけだ。

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ただ、それが一番難しいということは、誰もが知っている。 選手達も、チームを率いる永野監督も、その難しさは重々わかっているはずだ。 小林秀峰は、インターハイ、選抜で、ここ何大会か本番でミスを犯している。現在のレギュラーの中には、昨年のインターハイや選抜にも出場しているメンバーもいる。 どんなに気をつけていても、努力していても、ミスが起きることもある、という怖さを身をもって知っている。
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だから、今度こそ! 自分達のやってきたことを。 自分達に今できることを。 力まず、油断せず、「フツー」にやりきる。 この選抜大会で、彼らは「それ」に挑戦する。
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小林秀峰高校のOBで、青森大学に在学した4年間、不敗を守った日高祐樹も、3月15日に青森大学を卒業し、選抜大会では小林秀峰のサポートに駆けつけるという。 日高が4年生の夏、インカレ前に、「常勝・青森大学」の強さの秘密を聞いたことがあった。返ってきた答えは、「やるべきことは決まっている。だから、それを普通にやるだけ。」だった。 ライバルが強いからと焦ったり、自分達に力があるからと驕ったりせずに、「やるべきことを、普通に淡々とやって準備して、いつも通りに本番をやる」・・・誰よりもそのことを知っている日高の存在は、きっと彼らを「いつも通り」に送り出す大きな力になるだろう。 高校選抜大会、団体競技は3月19日に行われる。 小林秀峰高校は、参加16チーム中15番目に登場する。


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2013年03月15日

2013高校選抜直前企画② 神埼清明高校

2013高校選抜直前企画② 神埼清明高校

「牽引力」

試合が近づいてくると、神埼清明の練習は短くなることが多い。
試合当日や前日は、会場練習やなにかであまり長時間の練習をすることはできないなかで、本番を迎えなければならないのだから、そこでもっとも力を発揮できるように調整していくのだ。

3月12日も、早い時間に練習が始められた分、夕方にはもう練習は終わるということだった。

最後に1本全通しをやる前に、レギュラーメンバーは通しの時間に合わせて体と気持ちを整える時間をとる。その間、控えのメンバーの練習を中山監督が見ていた。

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神埼清明といえば、男子新体操の名門校であり強豪だ。
近年では神埼中学校や神埼ジュニアなど、強いジュニア選手も多く育っているので、神埼清明高校の新体操部といえば、経験者のツワモノそろいなのだろうと、周囲は思う(私も思っていた)。

ところが。
案外そうでもないのだという。

毎年のように、高校から新体操を始める部員がいる。
そういう部員は、年によっては団体メンバーには入れないまま終わることもあるが、そのときの部の状況と、本人の頑張り次第では、団体メンバーに入ることは、今でもあるのだそうだ。

「あいつらは素人だけん」

と中山監督は言うが、その素人が頑張ってくれないことには、どうにもならない。神埼清明といえど、そんなときもあるのだ。

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だから、だろうか。
全通しが始まるのを待っている時間に、彼らに接している中山監督の指導は、熱くも厳しくもあったが、とても論理的で説得力があった。
ひとことで言うなら、「素人が素人に見えなくなるため」のポイントを効率よく教えていた、ように感じた。

もちろん、それは小手先だけでできることではない。
彼らが、基本的な努力を積み重ねることが大前提ではあるが、それでも中山監督の指摘するポイントを押さえておくのとそうじゃないのでは、見え方には大きな差が出てくるだろう、と思った。

「素人だ」と言いながらも、引き受けた生徒達をいっぱしの新体操選手らしく育てる術を、中山監督は心得ているのだな、と改めて感じた。

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現在、ジュニア~大学を合わせても監督の中ではもっともベテランと言える中山監督は、自分のチームの力をいつも冷静に判断している。

それだけに、自分のチームが、「常に優勝できる力を持っている」と思うほど楽観的ではない。
しかし、だからと言って、投げたりあきらめたりは絶対にしない。

それはおそらく、「優勝できる力を持っていてもできない」ことがどこのチームにもあることも、よくわかっているからだろう。

ならば、少々地力では劣るとしても、神埼は神埼なりのベストを尽くすことで勝機はあると、中山監督は知っている。
だから、彼は、いつも、自分のチームの状態を、本番で最高にもっていくことだけに力を注ぐ。強いときも、そうとは言いがたいときも。

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その中山イズムは、選手達にも浸透している。
選抜大会のようにレギュラーメンバーの中でも比較的力に差のあるメンバーになってしまったときでも、チームの一体感があるのだ。

通しに入る直前に選手達が組む円陣。
その近くに寄ってみると、彼らがそれぞれに言葉を発しているのが聞こえた。6人が順番に通しに対しての意気込みや、仲間を鼓舞する言葉を口にしていた。
「タンブリングがっつり決むっぞ!」「軽くでよか、軽くいこ!」「できるけん! 絶対できるけん!」
そこにはなんの差もなく、6人がフラットにチームに存在している空気があり、6人で天を仰ぎ、呼吸を合わせている様は、本当に「ひとつ」に見えた。

力の差があるからこそ、みんなの力を合わせて、経験値の低い選手がいれば、その選手が力を出せる雰囲気を作っていくのが「強くなれるチーム」だと、彼らはわかっているのだ。

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「今回はちょっと・・・」

とあまり自信なさそうな発言を中山監督は口にしていたが、この日見た全通しは、「それでもここまで仕上げてくるのか」、と思う演技だった。

昨年夏のインターハイのチームは、優勝もありか? と思えるだけの力をもったチームだった。そこから3年生が抜けた現在のメンバーでは、たしかに迫力の面は、やや劣るかもしれない。

しかし、それは井原高校同様、あくまで「対前年比」という話だ。
今、そこで行われている演技のレベルが低いのか? と言われれば、決してそんなことはない。

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どんな状況であっても、チームを、作品をここまで仕上げてくるその監督の手腕。そして、それについていける選手達。

その力には、畏敬の念を覚える。

「強い選手が集まっているから強豪校」なのではなく、「強くする」ことができるから強豪になれるのだ。

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中山監督は言う。

「素人は下手でもよか。ただ、気持ちだけは強なかといかん。」

つまり、気持ちさえ強ければ、うまくはなくてもなんとかできる!
ということではないだろうか。確固たるその自信。

指導者のもつこの自信が、選手達を強力に引っ張っている。
神埼清明は、そういうチームだ。

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神埼の体育館の壁に貼ってある横断幕に、こんな文言がある。

「お前らがばい強かばい! みんなを信じて絆」

これが、中山監督の教えの真髄なんだろう、と思う。
自分で思っているよりも、自分は強いんだということを、新体操を通じて選手達に教えたい。「選手のために」なんて言葉はあまり似合わない強面の監督だが、じつはそう思っているんじゃないか。

神埼清明に行くようになって2年。
私はそう感じるようになった。

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昨年までのチームは、「ジュニア時代から井原に勝ったことがない選手達。だから、一度井原に勝たせたい」と中山監督は言っていた。

今回のチームは、まだ自分に自信はもてない選手もいるチームだ。
だからこそ、勝たせたい! と監督は思っている。
それは試合の結果という形で表れるかどうかはわからない。

だが、少なくとも自分達の演技のやりきれた感は、味あわせたい! 
味あわせてやる!

そう思っているに違いない。

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しかし、改めて感じたのは、作品のもつ力だ。 井原にしても神埼にしても、「対前年比」で見れば、落ちる、弱いと自称するチームだが、そんな彼らが、昨年のチームがやっていた作品を必死に仕上げてきた結果、やはり見ごたえのある作品が出来上がっていることには感心する。 演じる人間が変わっても、いいと思えるだけの力を「作品」が持っているのだな、と思うとともに、その作品を演じるられるまでの力を選手に発揮させることのできる指導者の力の大きさにも恐れ入るしかない。 地元・佐賀県での選抜大会。 神埼清明は、地元の大声援に恥じない演技を必ず見せてくれるはずだ。 ※『新体操魂』3号、公開中! 山田小太郎(国士舘大学監督)、山脇麻衣(町田RG/早稲田大学)のインタビューや、2012年全日本選手権レポートも! 電子書籍というシステムに馴染みがない〜と今まで、見送っていた方も 今回は必見ですよ。 リンク集の「ブクログ」からぜひジャンプしてください!


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2013年03月14日

2013高校選抜直前企画① 井原高校

2013高校選抜直前企画① 井原高校

「継ぐ者たち」

高校選抜の開幕まで1週間を切った。
今回は、岡山以西のみしか選抜前に立ち寄ることができなかったので、あまり多くのチームを取り上げることはできないが、選抜直前企画をお届けしよう。

3月11日。

まず、最初に訪ねたのは、井原高校。
インターハイこそ優勝を逃したが、11月の全日本選手権では高校生ながら2年連続の3位入賞。1月に青森で行われた『BLUE』の舞台でも観客を圧倒する素晴らしい演技を見せたあの井原高校だ。

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1年前の選抜から、インターハイ、全日本と井原不動のメンバーは、4人が3年生だったため、今回は大幅にメンバーが変わる。

そこが井原にとっては若干の不安材料でもあり、ライバルチームとっては「つけいる隙」になるかもしれない。

私も、不安なような楽しみなような。
そんな気持ちで、井原の練習場にお邪魔した。

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3年生不在の分、人数も減ってややさびしさは否めない。
そんな雰囲気ではあったが、いざ練習が始まってみれば、そこにはいつもとおりの「美しい井原の新体操」があった。

試合前で基礎トレーニングはかなり省いているとの事だったが、それでも作品の練習に入る前の、アイソレーションの見事なこと。
柔軟も相変わらず、「そこまでやる?」レベルのものを、新メンバー達も黙々とこなしている。

やはり、井原。
メンバーは変わっても、侮れない。

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タンブリング抜きの通しを見て、ますますその思いは、強くなった。 メンバー不足のチームにありがちな、「あ~惜しい」という場面はない。 あの強かったメンバーだからやれる! と思っていた、あの構成をほとんど変えることなく、やってのける後輩たちのチームがそこにはいた。 rg-lovers-382984.jpg


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もっとも、長田監督は、常に苦笑いのような微妙な表情を浮かべていた。決して楽観はしていないし、むしろかつてない危機感が表情からは読み取れた。 「弱いでしょう?」 と長田監督は私に対しても言うが、それはあくまでも「対前年比」の話だろう、と思う。 ここ2年間の井原の強さは尋常じゃなかった。 うまいだけでなく、高校生とは思えぬ深みのある動きのできる選手が多く、彼らが演じることで、作品はより力のあるものになっていた。 あのチームと比べてしまえば、そりゃあ、今のチームは「弱い」。 それは否定しない。 しかし、そこと比べるのは酷だろう。 と私は思う。 あのチームにひけをとらないチームなんて、ましてや高校生で、そうそうできるものではない。
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そんな偉大な先輩たちの後を継いで、今、「井原」をしょって立つことになった彼らは、監督からも、おそらくいろいろな人からも、「(先輩チームに比べて)弱い」と言われ続けてきているんだろうな、と彼らの演技を見ていて思った。 しかし、言われて言われて。 頑張っても頑張っても「それでは足りない」と言われ。 自分でも、その「足りなさ」を痛感し、ここまでやってきたんだ、とも思った。 rg-lovers-382988.jpg


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去年の夏に見た練習風景を思い出す。

控え選手だった彼らも、レギュラーの通しの間には通しをやっていたが、その通しは、決して下手ではないのだが、「自分がレギュラーにとって代わってやる」という気迫はなかった。

私の目で見てもわかる「できていない要素」もいくらかはあった。

8か月前の彼らは、この作品を「自分たちが演じるもの」とは実感していなかったんじゃないかと思う。
それは、先輩たちだからできる、先輩たちの演技、だったのだ。

いざ、自分たちがやることになって、そこからおそらく必死にやってきたんだろう、ということは今の彼らの演技を見ればわかる。
長田監督も何回も彼らに言っていた。

「数はとにかくやってきたんだから」

新チームに変わり、たくさんの「足りないもの」を補うために、やれることは「数をこなす」しかなかったんだろう。
そして、彼らはそこから逃げずにやってきた。

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一足飛びに自信のあるチームにはなれないかもしれない。
だけど、彼らは確実に前に進んでいる。

そして、どうしても先輩チームと比べられてしまいがちだが、彼らとて「全日本ジュニア覇者」なのだ。そのプライドは、いい意味で彼らを支えている、と思う。
長田監督もそれは認めていた。

「まだまだ弱いチームですが、きつい練習をしてても暗くならないのが彼らのいいところ。それに、ジュニアチャンピオンというプライドも、やっぱりあるんだな、と感じます。」

井原の練習場の壁には、その年の目標を各自が書いたホワイトボードが掲げられている。その真ん中に書かれていたのは、

「数 意地 プライド」

だった。

「ジュニアチャンピオンだった」という過去の栄光だけにプライドをもっていても強くはなれない。そんなプライドは無用の長物だ。
だから、このチームは、「だれよりも数をこなしてきた」ということでプライドの裏づけをしようとしている。
その裏づけがあってこそ、彼らがジュニア時代に得てきたプライドは大きな武器になる。

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彼らが「ジュニアチャンピオン」ではなく、「高校生チャンピオン」になれるかどうか。 それはまだわからない。 それが今回の高校選抜なのか、夏なのか。 もしかしたら1年後、2年後かもしれない。 しかし、たしかに言えるのは、「チャンピオンを目指せる位置」にはいるということだ。 新生・井原を率いるリーダーでもある小川晃平(2年)は、高校選抜個人優勝の最有力候補の1人だ。 この日は、みっちり団体の練習を行ったあとで、4種目とも軽く流すような通しを行っていたが、ますます大人っぽくなったと感じた。 rg-lovers-382996.jpg


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とくにクラブは、新しい作品なっていたが、しっとりした曲でかなり魅せる演技だった。これは、小川晃平の新しい魅力を見せつける作品になる予感がした。

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高校選抜大会は、3月18、19日に佐賀県で行われる。 平日開催なので、観戦に行くのは難しい人が多そうだが、ぜひ関心をもって注目してもらえればと思う。 当ブログでもなるべく多くの情報を流していく予定だ。


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