2012年08月18日

インカレ団体決勝に向けて

インカレ団体決勝に向けて

団体予選では、1位・青森大学、2位・花園大学、3位・福岡大学、4位・国士舘大学という結果になったが、1位と2位の差は、わずか0.150である。予選の得点は2分の1になり、決勝の得点と合算するので、実質の得点差は、0.075とないに等しい。すべては明日の決勝で決まると言ってよい。
3位と4位についても同様で、実質の点差は0.050しかない。予選の演技はどのチームもかなり素晴らしく(観客目線でも気づくようなミスはほとんどなかった)、チームごとの個性がよく出ていたように思う。

とは言え、各チームそれぞれに小さなミスはあったようなので、決勝ではそれを修正してさらに納得のいく演技になることを期待したい。

今回のインカレ前に、4大学の練習を取材してあったのだが、予選前に記事をアップすることができなかった。すでに予選は終わってしまったが、いざ決戦を前に少しでも各チームの日ごろの様子、インカレに懸ける思いが伝わるように、あまりにもギリギリではあるがレポートしておこうと思う。

まずは国士舘大学から。

●国士舘大学

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点数は伸びなかったが、予選での国士舘の演技はかなり印象はよかったと思う。比較的最近、試技会や取材で国士舘の演技を見る機会があった人に聞くと、「(予選での演技は)いい出来だった」と言う。つまり、それだけ今回の国士舘は、苦労していたということだ。それなのに、本番にはかなり合わせてこれた。そのことに価値がある。いや、もちろん、よりよい実施で決勝では、さらに上を目指してはいるのだろうが、現時点でもすでに十分チームは成長してきたと言える。 一昨日、昨日の公式練習のとき、日の丸のついた扇子を片手に、誰よりも大きな声をあげて檄をとばしていたのが、熊沢大地(4年)だ。本来なら彼がこのインカレのフロアに立っているはずだった。4年になってからの熊沢は、最高学年の自覚と責任をしっかり感じているようだった。それに伴って、演技の中での存在感も大きくなっていた。そんな熊沢が怪我をしたのは、インカレに向けての試技会が開かれた7月だった。本人もおそらくショックだったろう。4年のインカレだ。「次」はもうない。それでも、無理して出るのではなく、しっかり治癒してジャパンでの復帰を目指す選択をした彼がどんな思いでチームをサポートしているかを想像するだに切ない。チームメイト達もそれは痛いほどわかっているだろう。フロアに立つ6人だけではなく、彼らは今日、熊沢の思いも一緒に踊る。 ●福岡大学
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昨年はインカレ、ジャパンという舞台でミスが出てしまい、残念な結果になってしまった福岡大学だが、今年はいつもより「新体操らしい演技」にしたという。団体リーダーの木原(4年)によると、「徒手のポイントを見やすくした」とのことだが、たしかに今年の作品ではひとつひとつの動きの美しさが際立って見え、それゆえに情感がしっかり伝わってくる。 7月に取材に行ったとき、たまたま体育館が体操の発表会で使われていて、団体メンバーは体育館のロビーの硬い床の上で合わせの練習をしていた。その西日が射し込むロビーで、KOKIAの「花宴」にのせて踊る姿はなんだか神々しくさえ見えたのだ。おそらくそれは、このチームがじつに自立していることとも無縁ではないように思う。 監督不在で練習することも多いこのチームは、さまざまなことを自分達で考え、工夫し、問題解決している。だから、作品に対する思い入れもひとしおであり、そこに感情がこもるのだろう。木原の口からも「演じるときは、役に入るといイメージで。見ている人に伝わるくらいに感情を出して踊りたい。」という言葉が出た。彼らがもっとも目指しているのは「そこ」なのだ。 予選での演技は、大きなミスなく、彼らの描きたかったものは、しっかり出せていた。演技が行われている間の、観客が息をのんでいるような静寂がそれを物語っていた。決勝でも「伝わる演技」を期待したい。 ●花園大学
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7月に花園大学を訪れたとき、じつは私は団体の練習を見ていない。「団体は見せられませんが、それでもよければ」という条件でお邪魔させてもらったのだ。今年の花大は、それだけ団体に懸けていた。そして、勝負にこだわっていた。野田監督に話を聞いても「今回は勝ちます」という言葉が何回も出た。 しかし、そのわりには公式練習での花大には、昨年までのようなイケイケ感はなかったように思う。もちろん、勝ちをあきらめたわけではなく、勝ちたい気持ちを表に出しすぎない冷静さやしたたかさをももって今年の花大は、「獲りにきてる」ということだろう。 その意欲は、例年よりずっと早くに構成も完成させ、インカレに向けて精度をあげてきたという準備の仕方にも表れている。予選での演技にはややばらつきもあったが、十分修正可能な範囲に見えた。そして、公式練習で見たときには合わせるのが難しいのではないかと感じた、ふわあっとした動きをは本番では見事に空気を動かしていた。 決勝では、花大が歴史を動かす瞬間を見ることができるかもしれない。 彼らはそのために、この9かつき、いや1年、いやもっとずっと前から牙をといできたのだから。 ●青森大学
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11連覇に挑む王者青大には、今年は正念場の年になりそうだ。昨年のジャパンでの辛勝があったため、次は圧倒的な勝ちをおさめなければ、というタスクを負わされている。 リーダーの日高(4年)は、2008年のジャパンで青大が国士舘に敗れた次の年に青大に入学し、1年生からレギュラー入り。以降、青大はインカレ、ジャパン通して負けを知らない。その日高の不敗神話を守ること、を今の後輩達はかなり意識しているという。愛嬌があり、誰からも愛される日高だからなおさらのこと、みんなが「ゆうきさんを無敗で卒業させたい」と言う。 当の日高も、もちろんそれを目指してはいるのだろうが、きわめて冷静だ。「いつも通りやるべきことをきちんとやるだけ」と彼は言う。 中田監督から若い高岩監督に代わったことで、不安もあったはずだが、日高を見ている限り、まったくそんな迷いは見えない。なにをやるべきか、彼は知っている。後輩達もだ。 そして、その言葉通り、公式練習でも予選でも青大は、青大らしさに今までとは違うよさ(かっこよさと言ってもいい)を備えた演技を見せていた。その強さに対して感嘆の声があがるのは、いつものことかもしれないが、今年の青大の演技は「なんか違う」のだ。 そのひと味違う青大が、連覇をのばせるかどうか。日高の不敗神話を守れるかどうか。 それは、今日の決勝にかかっている。


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2012年08月15日

2012インカレ直前企画⑦ 4年生<下>

2012インカレ直前企画⑦ 4年生<下>

●征矢直之(東洋大学)

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いつ見ても「まじめで誠実」。そんな印象の演技をする選手だ。 彼も、初めて見たときには決してうまい選手ではなかった。 経歴を調べてみれば、高校は名門・埼玉栄だが、新体操を始めたのは高校からで、高校時代にはほとんど結果は残せていなかったという。 それでも、いやだからこそか、彼は大学でも新体操を続ける選択をした。それも、東洋大学でだ。 大学には一緒に練習する仲間はいない。環境も整っていない。 彼の練習場所は、母校である埼玉栄高校だった。私が埼玉栄に取材に行くと、100%彼はそこにいた。おそらく高校時代と寸分変わらぬペースで、埼玉栄で練習を続けてきた4年間だった。 そんな地道な努力の積み重ねが、今年になってから急激に実ってきた。去年までは、新体操キャリアの短さを感じさせる演技だった。よく見える瞬間もあるのだが、ミスも多かったし、動きに硬さも見られた。終わってみれば、「残念」な演技になってしむことも多かった。それが、このところかなり高い確率でノーミスやほぼノーミスに近い演技をするようになってきた。それに伴って見るものに訴える力も増してきた。 失礼ながら、1年前には「9点には遠い」選手だった。それが、ここにきて「限りなく9点に近い」演技を見せるようになった。ただし、公式試合ではまだ9点を出したことがない。本当にあと一歩のところまできているのだが。 しかし、「あと一歩」だからこそだろうか。4年生になっても、彼の努力する姿勢にはまったく変化がない。むしろ拍車がかかっている。結果ではないのだ。どこまでも「自分がまだ伸びる可能性」を信じている、そんな選手だ。大学最後の年にかける思いは強く、今年はいろいろな環境を求め、いろいろな指導者にも見てもらう機会を増やしたという。その成果は、公式練習でも十分に見てとれた。力を出しきれれば、9点台は十分出せる選手、に見えた。 4年間、努力し続けられたこと。成長し続けられたこと。 彼は、すでに大きなことを成し遂げている。 結果は「おまけ」に過ぎないが、できれば結果にも恵まれてほしい。 そう思いたくなる選手だ。 ●稲葉 亮(国士舘大学)
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ある日、国士舘大学の練習で、彼はこう叱責されていた。 「一生懸命やっていることは伝わってくるけど、それだけ」と。 いわゆる何かを表現する力がないと言われていたのだ。 彼も、1年前までは、征矢同様、「9点は遠い」選手だった。 しかし、やはり最後の年に懸ける気持ちは強かったのだろう。この1年、いや半年あまりで目覚しい進歩を見せた。今は、「いつ9点にのってもおかしくない」そんな選手になった。 彼も高校時代は無名の選手だった。ましてや個人はほとんどやったことがなかったという。それだけに、手具操作には常に不安がつきまとい、試合ではミスをすることも多かった。「表現する力」がないというよりもそんな余裕はない、というのが彼の演技だった。 今年になってからはミスは飛躍的に減った。ノーミスで通せることも増えてきた。だからこそ、指導者も「もっと」を求めるようになり、「表現する力」も求めるようになってきたのだろうが、たしかに彼の演技から伝わってくるのは「一生懸命さ」や「必死さ」である。何かを描き出すというよりも、この4年間、どんなに「ダメだ」と言われても、新体操をあきらめずに続けて頑張ってきた彼自身のひたむきさが、演技からにじみ出る。 でも、私はそんな演技があってもいいと思うし、そんな選手がいてもいいと思う。「一生懸命さ」しか見えないからこそ、彼の演技に心うたれることは多いのだ。 大学4年生になっても、自分をあきらめずに努力することができる。そんな彼のやってきたこと、がインカレですべて出しきれるように祈らずにはいられない。 ●松田陽樹(青森大学)
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今年度、東日本インカレチャンピオンの松田だが、東のチャンピオンとしてのインカレへの抱負を聞くと、「いや、自分はそんなんじゃないんで」と言った。そんな謙虚な、すこし謙虚すぎる選手、それが松田だ。 BLUE TOKYOでは、発足当時からステージも出ている松田は、青森大学のなかでも目立つ存在、のような印象があったが、じつは「下積みが長いんで」と言う。「下働きは誰よりもしてきた自信がある」とも言う。 そんな松田だから、東日本インカレで優勝したからと言って、「チャンピオン」と呼ばれるのは、なにか居心地がよくないようだった。青森山田高校時代は、なかなかレギュラーになれなかった。高校2年の夏・佐賀インターハイのときも、松田は補欠だった。2年の新人戦からやっとレギュラー入りして、3年のインターハイには出場できたが、その年の青森山田は3位で、青森山田としては「今年はダメだった」と言われて高校時代を終えた。 じつは個人をやりたかったそうだが、高校時代の実績もなく、言い出せないまま大学1年生のときは団体選手として、ここでもサポートメンバーだった。しかし、松田はその間、個人選手の練習の曲かけ、ビデオ撮りなどを積極的にやったという。そうすることで、個人の選手たちの練習の仕方を見て、研究していたのだ。とくに、当時は4年生に春日克之がいたため、その「攻めの練習」「ひたすらにがむしゃらに練習する姿」を見てきた。 そして、大学1年の終わりにやっと「個人がやりたい」と中田監督に申し出、個人に転向。個人デビューとなった2年のときは、まだ試合ではミスもあり、ジャパン出場には届かなかったが、3年になった去年は、演技に安定感も増し、ジャパンに駒を進めることはできた。しかし、強力だった4年生(福士、柴田、増田、椎野)と、能力の高い下級生(小林、川西、佐藤)にはさまれて、1人しかいない学年ということもあり、今ひとつ地味な存在にあまんじていた。 それが。東日本インカレでいきなりの大躍進を見せた。 去年まで勝てなかった青大の下級生も、一気に抜き去り、寄せ付けない貫禄を見せた。後半種目でくずれた東での青大の中で唯一、全種目ノーミスで青大の個人連覇を死守したのは、「下積みの長かった」松田だった。 勝因は、「4年になった責任感と最後の年だから後悔したくないという思い。それだけ。」だと松田は言う。 でも、それだけではない。 彼はおそらく誰よりも長く深く「自分の新体操」を追ってきたのだと思う。評価されるかどうかに左右されることなく。だから、下積みも下働きも厭わずやってこれた。そのすべてに意味を見つけることができる才能があったから。 そういう彼の姿勢を、きっと神様が見ていたのだと思う。今年の彼の演技は、昨年までに比べて動きや操作を欲張っているにもかかわらず抜群に安定している。もとよりある表現力も存分に見える。それはもちろん、彼の努力のたまものではあるが、きっと神様も守ってくれているんじゃないかと思う。そう思わせる人柄と経歴の選手なのだ。 音楽によく合った動きと表情。可動域が大きく無理のない動き。 松田の演技の魅力をあげるならそう言えるだろう。 しかし、それよりも、日の当たらない場所にいることや、後輩に追い抜かれることなども十分経験してきながら、あきらめず腐らずやってきた。その彼の人間性が、最大の魅力なのだ。 ●廣庭捷平(福岡大学)
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悔しい経験を無駄にしなかった選手がここにもいる。 昨年のインカレではまさかの2種目大崩れで、ジャパン出場を逃したが、多くの人に強烈な印象を残した廣庭捷平だ。 西日本インカレでは、菅正樹とのギリギリの勝負を制して優勝。廣庭が入学したころは、風前の灯だった福岡大学から西のチャンピオンが出たことは画期的なことだ。それを成し遂げられたのは、彼ならではだ。 廣庭は、力のある選手だ。大学2年のときは、福岡大学の団体と個人の選手を兼任しながらジャパンにまで進み、個人総合5位になっている。団体との兼任が珍しい大学生にして、この成績は不世出のものだ。そんな選手が個人に専念したのだから、去年のインカレで彼が見せたリング、ロープのすばらしい演技も、いわば想定内とも言えただけに、あまりの失敗ぶりに驚いてしまった。 「去年は、自分の演技が客観的に見れていませんでした。」と、今年の7月に会ったとき、彼は言った。去年は、個人に専念して練習をつめてきただけに、小さなミスでも自分の中ではとても大きなものに感じてしまっていたのだという。後でビデオなどで確認すれば、演技の大勢には影響のない程度のミスでも、自分では「ダメだ!」と感じてしまう、ある種の潔癖さ、完璧主義が去年の彼にはあったのだという。そのため、1つのミスを大きく感じすぎてしまい、それで崩れてしまった。それが去年のインカレだったという。今年は、それはない。「大丈夫です。もっと図々しくなりました。」そういう彼は、たしかにしたたかさを身につけたようだった。 廣庭の演技のよさ、は一言では説明しづらい。言ってみれば平均値が高いということになるが、そんな言葉では説明できない「独自性」が彼の最大の魅力だ。きわめてノーマルに高い能力をもっている面と、ほかの誰とも同じに見えない個性が、うまく融合している。そして、彼にもまた東日本チャンピオンの松田同様、決してスター街道をまい進してきたわけではないというたくましさがある。 紫野高校時代も、同級生にスター(小椋恭平)がいた。 大学に入れば、当時は低迷していた福岡大学の選手で、圧倒的にマイノリティ。西日本インカレに出れば花園大学のスター選手たちが遠い存在に見えた。 「自分の出る幕じゃない」と感じることが多かった。 それでも、彼は成長し続けられた。 それはおそらく彼が「人と違うこと」を嫌がらなかったからではないか。 「福岡大学」を選んだことも、団体と兼任選手だったことも、人から見れば「遠回り」に見えるかもしれないが、回り道でしか見えない景色があることを彼は知っていたのではないかと思う。 だから、廣庭捷平の演技には、彼だけの色がある。 彼だけが見てきた風景が見える。 大丈夫。今年はきっと4種目で酔わせてくれる。 そして、その先にさらに大きな舞台が彼を待っている。 <写真提供:清水綾子←征矢、稲葉、松田>


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2012年08月15日

2012インカレ直前企画⑥ 4年生<上>

2012インカレ直前企画⑥ 4年生<上>

毎年のことだが、4年生にとってのインカレは特別な試合だ。
「これが最後」になる、可能性のある試合。
いや、仮にジャパンの出場権を得たとしても、「インカレ」はもうこれで最後だ。
そう思うと、有終の美を飾りたいと思うのが人情だろうが、あまり意識しすぎるのもよくない。

おそらく、淡々といつもとおりにこの試合を迎えるのがよいのだが、それが難しいのが「4年生」なのだろう。

そんな4年生たちへのエールを込めて、今大会に出場している4年生の選手たちを紹介したい。

●水島勇貴(国士舘大学)

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今の水島を一言で表すなら、「大化けした5番目の男」だ。 彼は、1年前の全日本インカレで19位だった。それも、18位との差はわずか0.025。たったそれだけの差で、大学3年のジャパンにも彼は出場できなかった。 どれほど悔しかったかと思う。 そういうとき、人は「この悔しさを忘れない」と思うものだが、案外それを忘れてしまうことも多い。しかし、彼はおそらく、忘れなかった。 そう思わずにはいられないほどの変化をこの1年で見せてきた。 水島という選手を初めて知ったのは、彼が大学2年生のときだったが、当時から「じつはけっこううまい選手」だった。悪いところはないし、いい雰囲気もある。ただ、アピールが弱いというか、俺が! と前に出てくるところが希薄だった。それゆえに、どちらかというと実力以下にしか演技が見えなかった。たいていの大学生は「ジャパン出場」を目標には掲げているが、大学2年のときの水島は、失礼ながら「ジャパンに出られたらいいな」な選手にすぎなかった。 しかし、まず大学3年のインカレ前にかなりの変化が見られた。動きや表情に深みや味わいが出てきたし、演技の安定感も増してきた。その結果、「ジャパンに出ていてもおかしくない選手」に見えるようになったのだ。しかし、結果として、ジャパン出場には届かなかった。そして、彼は去年の悔しかったインカレ後、目を見張るほどの変化を見せた。もはや彼は、「ジャパンに出ていないのが信じられない選手」になった。 私がとくに好きなのは、リングの演技だ。このリングの演技は、当時は地味だった水島の演技の中で、初めから光をもって見えていた。以前は曲に負け気味に見えたこともあったが、今は、この力強い曲を、彼の動きが奏でさせているように見える。東インカレでは、国士舘の上位4人が活躍したため、水島は国士舘の「第5の男」だった。しかし、いつ上の4人を食ってもおかしくないだけの力と存在感を今の彼はもっている。ぜひ注目して見てほしい選手だ。 そして、彼のことをそう紹介できることが、私はうれしくて仕方がない。 ●篠原良太(国士舘大学)
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彼の演技を見ていると、「篠原良太そのもの」だなあ、といつも思う。 スティックとクラブで見せる、どこまでも美しく素直な演技も、ロープとリングで見せる、頑張って頑張って強くあろうとしている演技も、どちらも「篠原良太」以外のなにものにも見えない。 新体操は表現するスポーツであるから、その演技で何かを演じて見せる選手も多い。または曲を表現して見せる場合もある。 だが、篠原の演技は、いつも「自分」がそのまま出ている。 そして、そこがいい。涙が出るほどいい。 篠原は、きわめてノーマルな美しい体操をする選手だが、ノーマルさゆえにそれほど目立つタイプの選手ではなかった。そんな彼に最初に注目したのは、そのつま先の美しさゆえだった。まだまだ足先には隙のある選手の多い男子の中で、彼のつま先は、本当に緩まない。常にきちんと伸びている。それはタンブリングの空中姿勢でも変わらない。ひねりでも変わらない。3回前転をしても緩まない。今のロープとリングの作品は彼にしては動きのつまった忙しい演技だが、それでも彼のつま先には隙がまったくない。 そして、この2年間で、彼はつま先以外にもたくさんの魅力を開花させた。決して大きな選手ではないのだが、動くととても大きく見える。そして、なんと言っても最大の魅力はその「動きの間」だ。 大きな動きと絶妙の間で、空気を動かすような演技をし、見ている人の心にしみこんでくる。それが篠原の新体操だ。美しい演技も、強い演技も、そこは変わらない。だから、彼の新体操は「彼そのもの」にしか見えない。私はそんな彼の新体操が大好きで、いつまでも見ていたいと思いながら見ている。いつかは来る「最後の演技」が、できるだけ後になればいいと思いながら見ている。 ●久納直也(花園大学)
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http://www.plus-blog.sportsnavi.com/reportage/article/104 久納直也については、横田泉さんのブログに記事がアップされているので、そちらに譲ることにする。↑上のリンクからとんで、ぜひ読んでもらいたい。 ●小椋恭平(同志社大学)
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●山上 駿(同志社大学)
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同志社大学の2人、小椋と山上も4年生になった。 新体操を続ける環境としては恵まれているとは言いがたいが、それでも4年間、同志社で新体操を続けてきた意思の強さは、並大抵ではない。ただ、彼らが抜けてしまうと、「同志社の新体操」は存続の危機に瀕する。それがわかっているだけに、この大会に懸ける思いはひとしおなのではないか。 公式練習のときの小椋の演技は、いつにも増してスピードと迫力があった。「同志社で新体操をやる」という選択が間違っていなかったと証明する演技を、今大会では期待したい。 <写真提供:清水綾子←水島、篠原/藤田義則←小椋、久納/村岡美穂←山上>


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2012年08月15日

2012インカレ直前企画⑤ 個人競技(男子)の見どころ

2012インカレ直前企画⑤ 個人競技(男子)の見どころ

今でこそ、こんなブログをやっているが、じつは私の「男子新体操ガチ観戦歴」は短い。
記録が残っているインカレは、2009年が一番古い。

それでも、今回は「ガチ」になって4回目のインカレである。

この4年の間にずい分、勢力図が変わってきたな、と改めて感じる。
個人に関して言えば、2009年は明らかに青森大学VS花園大学だった。
青森大学には、前年度全日本チャンピオンの春日克之がいたし、同期の藤田朋輝も力をもっていた。
1年下には大舌恭平、さらに下には福士祐介、柴田翔平らもいた。

花園大学にも、木村功、北村将嗣、谷本竜也らがいて、団体では青森大学が連勝中ではあったが、「個人は花大」という空気もあった。
いずれにしても、2009、いや2010年あたりまで個人は、青森大学VS花園大学という構図になっていたのだ。

ところが、2011年にすこし変化が見えた。
2011年のインカレ個人成績の上位10人は、青大5、花大3、国士舘大2である。(ちなみに2010年は、青大6、花大4、中京大1・・・10位が同点で2人いたため)つまり、青大、花大が1人ずつ減らした分、国士舘が上がってきたのだ。

そして、今年の東日本インカレでは、優勝は青森大の松田陽樹だったが、その下には、国士舘がずらりと並ぶ(2位:斉藤剛大、3位:篠原良太、4位:弓田速未、6位:佐々木智生)というここ数年ない状況になった。また、西日本インカレでも、前年度インカレチャンピオン・菅正樹(花園大学)を僅差でかわして、廣庭捷平(福岡大学)が優勝を飾った。これも近年なかったことだ。

インカレの個人は、勢力図が大きく変わりつつあり、まさに群雄割拠の時代になってきている。それは間違いない。
それだけに、フラットな立場で見れば、今の男子新体操個人競技はかなり面白く、楽しめる展開になりそうだ。

菅正樹の連覇の可能性も十分にある一方で、西日本インカレでは菅を破った廣庭の優勝もあり得る。また、東日本インカレ覇者の松田陽樹も今年度、抜群の安定感を誇り、くずれそうもない。また、虎視眈々と上位をうかがう国士舘の斉藤、篠原、弓田、佐々木も侮れないし、東日本インカレでは、後半種目でくずれた青森大学の小林翔、川西雅人、佐藤秀平らも今回は狙ってくるだろう。

こうなってくると、男子新体操はミスが命取りになる。
上位にきそうな選手でも、大きなミスが出れば、一気に順位は変動する。それだけに見ているほうはドキドキしてしまうが、選手たちにはできることならミスをおそれず、のびのびと自分の演技をやり切ってもらいたいと思う。

今日の公式練習を見てきたが、いずれ劣らぬ充実ぶりだった。誰が優勝しようが、何位になろうが、彼らが力を出し切ってくれさえすれば、きっとすばらしい演技の応酬になるはずだ。

全日本インカレは、いよいよ明日開幕する。

※今年度全日本インカレ会場は、愛知県豊田市「豊田スカイホール」(名鉄三河線「豊田市」駅徒歩15分くらい)体操の国際大会も開かれるすばらしい会場です。座席も駐車場も十分ありますので、ぜひ足をお運びください。
8月16日(木)競技開始10:20(男女個人前半種目)
8月17日(金)競技開始9:55(男女個人後半種目+男女団体)
8月18日(土)競技開始9:40(男女個人種目別決勝+男女団体)
入場無料です!

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2012年08月14日

2012インカレ直前企画④ 女子個人出場選手C~D班

2012インカレ直前企画④ 女子個人出場選手C~D班

●C班(フープ試技順26~38番)

26 足立明穂(日本女子体育大学2年)

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27 中垣真木子(武庫川女子大学4年) 28 徳永弓璃花(中京大学2年) 29 矢﨑ほの香(日本女子体育大学1年)
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30 西生 樹(宮崎産業経営大学3年) 31 迫 利菜(宮崎産業経営大学4年) 32 三沢真希(日本女子体育大学1年)
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33 帆足美優(熊本学園大学1年) 34 進藤みのり(東京女子体育大学1年)
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35 中澤 歩(日本女子体育大学3年)
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36 新崎さちや(流通経済大学3年) 37 濱口春菜(東京女子体育大学3年)
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38 野渕芳子(広島女学院大学3年) ●D班(ボール試技順26~37番) 26 永井佑佳(中京大学3年) 27 赤坂かずさ(国士舘大学1年)
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28 山口留奈(流通経済大学2年) 29 村瀬はるか(東京女子体育大学1年)
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30 島岡里奈(東京女子体育大学1年)
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31 河津花絵(東海大学九州3年) 32 井尾真由美(中京大学4年) 33 川崎桃子(武庫川女子大学4年) 34 小林可南子(修文大学1年) 35 清水花菜(日本女子体育大学3年)
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36 木崎頌子(国士舘大学2年)
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37 安信亜美(武庫川女子大学2年) <写真提供:清水綾子←東京女子体育大学・国士舘大学>


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2012年08月14日

2012インカレ直前企画③ 女子個人出場選手A~B班

2012インカレ直前企画③ 女子個人出場選手A~B班

●A班(フープ試技順1~12番)

1 山脇麻衣(早稲田大学3年)

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2 木村朱里(福山平成大学1年) 3 勇元望愛(武庫川女子大学1年) 4 久保田貴恵(宮崎産業経営大学2年) 5 桑原玲美(仙台大学1年) 6 成松エリナ(国士舘大学1年)
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7 穴久保璃子(流通経済大学4年) 8 小西夏生(流通経済大学2年) 9 浅井美彩登(日本女子体育大学4年)
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10 松永美咲(宮崎産業経営大学1年) 11 安積佳澄(武庫川女子大学3年) 12 原田亜都沙(宮崎産業経営大学4年) ●B班(ボール試技順1~13番) 1 片山誌帆(徳山大学1年) 2 中津裕美(東京女子体育大学4年)
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3 坂口 杏(修文大学1年) 4 武田 彩(国士舘大学4年)
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5 伊藤彩華(武庫川女子大学3年) 6 尾竹絵里香(中京大学1年) 7 北川樹理(中京大学2年) 8 宿谷あゆみ(流通経済大学3年) 9 中田真綾(修文大学1年) 10 三上真穂(東京女子体育大学1年)
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11 角 果奈子(国士舘大学1年)
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12 若林沙加(流通経済大学3年) 13 山本紗歌(中京大学3年) <写真提供:清水綾子←東京女子体育大学・国士舘大学・早稲田大学>


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2012年08月14日

2012インカレ直前企画② 男子個人出場選手C~D班

2012インカレ直前企画② 男子個人出場選手C~D班

●C班(スティック試技順20~28番)

20 籠島 遼(青森大学2年)

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21 福士俊輔(青森大学2年)
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22 松田陽樹(青森大学4年)
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23 廣庭捷平(福岡大学4年)
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24 和藤晨吾(岩手大学3年)
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25 弓田速未(国士舘大学3年)
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26 小椋恭平(同志社大学4年)
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27 中矢敬太(福岡大学2年)
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28 木村威一朗(花園大学3年)
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●D班(リング試技順20~28番) 20 小谷笙平(国士舘大学3年)
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21 水島勇貴(国士舘大学4年)
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22 佐々木智生(国士舘大学3年)
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23 安積喬央(同志社大学2年)
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24 桃井勢太(福山平成大学2年)
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25 佐藤史弥(仙台大学3年)
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26 山田大作(福岡大学2年)
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27 石井龍平(花園大学3年)
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28 前田優樹(花園大学1年)
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<写真提供:清水綾子←国士舘大学・青森大学/藤田義則←小椋・木村・桃井/村岡美穂←安積・佐藤>


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2012年08月13日

2012インカレ直前企画① 男子個人出場選手A~B班

2012インカレ直前企画① 男子個人出場選手A~B班

●A班(スティック試技順1~10番)

1 斉藤剛大(国士舘大学2年)

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2 服部 心(花園大学1年)
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3 細羽勇貴(花園大学1年)
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4 佐藤秀平(青森大学2年)
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5 竹内佑真(花園大学3年)
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6 征矢直之(東洋大学4年)
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7 鈴木 仁(青森大学1年)
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8 藤原大貴(青森大学2年)
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9 小林 翔(青森大学3年)
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10 本田 拓(中京大学1年)
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●B班(リング試技順1~10番) 1 篠原良太(国士舘大学4年)
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2 畠山可夢(国士舘大学1年)
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3 飯塚大貴(中京大学2年)
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4 阪本弘喜(明治大学3年) 5 稲葉 亮(国士舘大学4年)
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6 久納直也(花園大学4年)
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7 山上 駿(同志社大学4年)
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8 菅 正樹(花園大学3年)
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9 川西雅人(青森大学3年)
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<写真提供:清水綾子←国士舘大学・青森大学/藤田義則←中京大学/村岡美穂←東洋大学・同志社大学>


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