「Re;makeの奇跡」、再び
いよいよジャパンまであと2日となった。
個人も団体も、優勝の行方はもちろん、果たして誰が、どんな演技を見せるのか。
どんなドラマが起きるのか。
興味はつきない。
なかでも、今年の社会人大会を見た人なら、このチームのことは気になっているのではないかと思う。
そう。 Re;make だ。
果たして彼らは、出場できるのか。
いったい何人で出てくるのか。
私も、気になっていた。
だから、先日、彼らが「最後の練習」をすると聞いて、光明学園相模原高校を訪ねた。
この日は、メンバーの1人・田邉浩仁が、所用で参加できていなかったが、田邉が抜けても5人、で彼らは練習していた。
そう。
そこには大原朗生もいた。
彼は、やはり団体メンバーとしてジャパンに出場する。
もちろん、万全な状態ではない。
しかし、やれるだけのことはやる!
彼も、そして仲間たちもそう決めている。
この日は、今の自分たちなりに、演技を全うできるように、構成をすこしいじったりしていた。
できないことはできない。
それでも、作品自体が成立するように、彼らは知恵をしぼっていた。
メンバー達も大原も、とても楽しそうだった。
見ているほうが嬉しくなってしまう練習だった。
もちろん、大変な思いをしているのはわかる。
大原も、「やっとここまで膝がのびるようになりました」と苦笑いしている。相当な無理をしているのだ。でも、それでも彼らは楽しそうに笑っていた。
「新体操という家の6人きょうだい」(by同免木)は、こうして仲間と練習できる最後の時間を、本当に楽しんでいるように見えた。
1週間後には、ジャパン!
和気あいあいとした練習ながらも、「そこ」に向けて、みんなの気持ちがひとつになっていることは、十分に感じられた。
「社会人大会で演技が終わった瞬間、あ~、ジャパンどうしようって思ってました」
と大原は言う。
「なんとかメンバーには隠し通さないと、って思ったんですけど」
実際のところ、フロアから退場することもままならない状態で、隠すどころではなかった。
試合中に傷めた左膝はかなりの重症だった。
「社会人大会が終わってから、ジャパンはどうしようかって。」
大原の片腕である宮川健太郎は言った。
「ジャパンには出ない、5人で出る、6人で出る。その3つのうち、どれにすべきか、って。みんなで考えて。」
「5人で出る」が、最初に却下されたという。
大原も一緒に出る、そうじゃなければ、いっそ出ない。
それがチームの答えだった。
そして、彼らは、11月23日、代々木のフロアに6人で立つ。
演技もきっと、やり通す。
このチームを結成してから、ずっと。
宮川、同免木、久納は、仕事のかたわら、仕事以外の時間はすべてこの団体に懸けてきた。
相模原で練習することが多かったが、同免木は勤務先が異動になり、埼玉の深谷から2時間かけて練習に通っていた。
今年入社したばかりの久納にとっても、慣れない仕事と新体操の両立は大変だったに違いない。
宮川も時間が不規則な仕事をしていて、昼間に練習が入ると睡眠の確保が難しかった。
それでも、この団体のために、やってきたのだから。
「みんなすごい無理して頑張ってきたんで、勝つことでしか報われないと思ってたんです。だから、なんか報われないなあ、とは思いますけど。」
と宮川は言った。
「自分達の演技を見てもらえば、オレ達がどんなに勝ちたくてやってきたかわかってもらえるんじゃないかなって。」
と大原は言った。
彼らは、間違っている、と私は思う。
「報われない」なんてことは断じてない。
いちばん伝わってくるものは、「勝ちたい気持ち」なんかじゃない。
彼らは、この仲間と出会い、ジャパンの舞台に立てる時点で、世界一の果報者だ。
そして、彼らの演技からは、なによりも「新体操が大好き!」な気持ちが伝わってくる。必死なのも、勝ちたい気持ちもわかるが、それよりも、彼らは「新体操が大好き」で「仲間が大好き」だから、そこにいる。
あのとき、山形で見せた「Re:makeの奇跡」を、
11月23日の代々木で、彼らはまた違う形で見せてくれるだろう。