2013全日本ジュニア直前企画① 恵庭RGクラブ <上>
10月18~20日の3日間にわたって行われる全日本ジュニアだが、今年の男子はかなりハイレベルな戦いになりそうだ。
なにしろ、昨年の上位選手の中から抜けた選手が少ない(昨年の10位以内で中3だったのは、2位・栗山巧、4位・加藤大地のみ)ため、昨年上位を争ったメンバーはそっくりそのまま残り、さらに下からも有望選手が上がってくるのだから、混戦必至なのだ。
団体にも同じことが言える。主力メンバーが昨年のまま残っているチームが多い。
中でも、ディフェンディングチャンピオンである恵庭RGクラブは、昨年のメンバーから誰も抜けていない。
昨年も、ジュニアながら圧倒的な実施の確かさで優勝をもぎとったあのチームが、さらに1年分成長してくるのだ。
強くないわけがない。
ぜひ見てみたい! と、じつは9月に北海道まで行く準備をしていた。またしても、各駅停車乗り継ぎという苛酷な旅だが、そうまでしても今の恵庭は見る価値があるだろう、と思っていたのだ。
ところが!
私の日頃の行いがよいのだろうか。
9月14~16日、恵庭RGクラブが国士舘大学で合宿をするという情報が飛び込んできた。なんてありがたい!
おかげで私は、JRでの長い長い旅をせずとも、全日本ジュニア前に恵庭RGクラブを見ることができたのだ。
国士舘での練習は、恵庭の選手たちにとっては緊張の連続だったと思う。基本的には、場所を借りて、いつもとおりの自分達の練習をしているのだが、周囲を見回せば、あこがれの大学生選手はいるし、国士舘ジュニアの選手たちもいる。もちろん、国士舘大学の山田監督もいる。
いつもの練習場所とは、何もかもが違う。
しかし、そんな中でも、私が見に行ったのは、15日、16日だったので、徐々に慣れてきていたのか、彼らは、いい意味でマイペースに練習に取り組んでいた。
その練習ぶりを見ていて、まず感じたのは、明るさだった。
練習はまじめにやっているし、先生の話を聞くときはびしっとしている。
はきはきと「はいっ!」と返事をし、話もしっかりと聞いている。
だが、ちょっとした合間の時間には、とても無邪気なのだ。
だから、彼らはまぎれもなく「現ジュニアチャンピオン」であり、連覇の可能性も限りなく高いチームには違いないのだが、「連覇がかかったチーム」という空気があまりないのだ。
いや、もちろん、連覇したいという気持ちはあるはずだし、それに向けて一生懸命練習はしている。
だが、「勝たねばならぬ」という緊迫感はない。
彼らはおそらくチャンピオンになる前と同じように、仲間と新体操をやっていることが楽しくて、それでここまで続けてきたんだろう。
一緒に頑張ることが楽しい!
その先に、昨年の優勝があり、連覇もあるのだ。
昨年の恵庭RGクラブの強さは、「引きどころのない実施」だったと言われている。
構成のおもしろさや難度の高さ、または、動きの美しさなど、部分的に見れば恵庭を上回るチームもいた。
しかし、本番でミスが出たり、揃えきれなかったり、それぞれに少しずつ崩れてしまったのに比べて、恵庭RGの演技にはそういったほころびがなかった。
その「確実性」は、あの本番の演技でのみ発揮されたものではないということを、今回の合宿での練習を見て、私は思い知らされた。
2日間通して、私は彼らの「鹿倒立」を何十回も見たが、わかるほどにずれたり、誰かがつぶれるといったミスは、ほんとに数えるほどしかなかった。とにかく、しっかり止まるし、倒立の形になるタイミングもおそろしく揃っているのだ。
これを見ていた国士舘大学の選手たちまでもが、「すごいな」と漏らすほど、恵庭RGの鹿倒立には揺るぎがなかった。
それもそのはず。
練習を見ていると、やっている回数が半端ないのだ。
できてないからやり直し、ではなく、できていても、できていても。
「完璧」なものが10回は決まるまでやるのだと言う。
弱いチームならばわかる。
しかし、今やチャンピオンチームなのだ。
それがここまで「倒立」にこだわる必要があるのだろうか。
そう思ってしまうほどに、彼らの倒立練習は続いた。
「ビリからスタートしたチームなので」
と森多監督は言う。
森多が恵庭RGの指導に携わり始めた初年度である2007年の全日本ジュニアで恵庭RGクラブは、18チーム中18位になっている。得点は、13.650。構成は8点台で他のチームと大差ないが、実施では参加チーム中唯一の5点台。それが、「恵庭RGクラブ」のスタートだった。
このときのメンバーには、現在は青森大学の石橋壮幸、青森山田高校の植野洵、今年のインターハイでは団体3位になった恵庭南高校の村上裕亮、山本海智、高橋祐大らがいた。
それでも最下位になってしまうほど、当時の恵庭は実施が弱かった。だから、とにかくそこは重点的に強化してきたのだという。
「普段の練習では倒立歩行もかなりやります。倒立で長い時間歩けるようになれば、少々バランスを崩してももちこたえる力がつくので。」
十分強くなった今でも、その徹底した倒立練習を見ると、このチームが「初心」を忘れていないということがわかる。もちろん、選手は入れ替わっているのだが、おそらく指導者が忘れていない。
その謙虚さが、昨年の優勝につながったのだろう。
そして、今年も。
なにしろ激戦必至なだけに、楽に連覇できるとは言い難い。
恵庭RGも成長しているが、他のチームだって成長していないわけはないのだから。
それでも、連覇ができるかどうかはさておき。
彼らはきっと今年も「恵庭らしい」演技を見せてくれるに違いない。
<つづく>
※ジムラブに「東京国体直前! 東京選抜チームレポート②」をアップしました。ぜひご覧ください。http://gymlove.net/rgl/topics/report/2013/09/28/2013-95/