2013年07月22日

九州への旅①

九州への旅①(追記あり)

九州への旅というか、インターハイへの旅というか。
7月20日の深夜に夜行バスで東京を旅立ち、早朝に名古屋着。(夜行バス2800円也)

名古屋から、JRの「青春18切符」(1日分2300円でJRの各駅停車が乗り放題というありがたーい切符。夏、春、冬の休み時期しか発行されないのが残念)で、まずは岐阜へ。
NPOぎふの練習場である藍川の体育館で、インターハイに個人で出場する五十川航汰選手を取材。

rg-lovers-417618.jpg
rg-lovers-417619.jpg
rg-lovers-417620.jpg
臼井優華選手や、スーパージュニア・安藤梨友選手などもいて、目移りしそうになりながら、五十川選手中心に取材。藍川から岐阜駅までは車で送っていただき、コンビニで差し入れのおにぎりまで買っていただき、大垣行きのJRに乗車。大垣と米原で乗り換えて、京都へ。 京都駅から市営バスで、船岡山まで行き(220円也)、京都市立紫野高校へ。 近畿大会3連覇を成し遂げ、今年はついに18点台をマーク! 今年の紫野団体は強い! との評判を聞きつけ、急遽、立ち寄ることにしたのだ。
rg-lovers-417623.jpg
rg-lovers-417622.jpg
rg-lovers-417624.jpg
紫野高校に来たのは、2011年3月以来だったが、木学監督曰く、「あの頃は全国大会に出るのがやっと、のチームだったが、今年はもう一段上を狙えるチーム」とのこと。 たしかに、技術的にも練習の雰囲気も、そして、部員数も2年前とはまるで違っていた。 強い! と評判の団体は、たしかに強かった。うまかったし、かっこよかった。 本通しは見れなかったので、佐賀のインターハイで見るのが一段と楽しみになった。 このへんから、京都の暑さにかなり参ってきたので、船岡山バス停近くのコーヒー店で アイスコーヒーを飲み(300円也)、再び市営バスで円町へ移動(220円也)。 そう! 円町と言えば、花園大学。 すでに個人の練習は終わっているとのことだったが、せっかく京都に立寄ったのだからと、足を伸ばしてみた。
rg-lovers-417625.jpg
rg-lovers-417627.jpg
rg-lovers-417628.jpg
個人選手達は、練習を終えてリラックスムードだったが、団体はまさにこれから本格的に練習が始まろうというところだった。 インカレ出場チームのメンバーの動きを、他のサポートメンバーが周囲から見てチェックしているかと思えば、2チーム以上分の人数で、動きを合わせる練習をしている。これは圧巻だった。 ついつい見とれてしまい、かなり遅くまでいてしまったが、花園大学を後にして、円町から京都にJRで出て、京都駅乗り換えで明石まで移動。明石駅前のネットカフェで爆睡。(ナイトパック6時間1200円也)。夕飯は、コンビニで買った「ミニ冷やし中華」。 そして、今朝は明石発5時41分のJRで、今まさに岡山に向かっている。井原鉄道に乗り継いで、井原へ。今日の井原は,午前中練習とのことで、こんな時間から移動中。 今夜は、岡山市内の旧友の家に泊めてもらい、明日はまたJRを乗り継いで福岡まで移動。 福岡大学に行く予定。 実家のある熊本につくのは、24日。 父の81歳の誕生日には間に合いそうだ。 立ち寄り先の詳しいレポートは、研究所及びジムラブに随時アップしていく予定。 そのために、今日の午後と明日の夜はネットカフェにまたお世話になりそうだ。 山陽本線、学生さんが増えて、混雑してきた。 今、6時50分。相生通過中。 ※追記 井原高校取材を終えて、現在、岡山駅前のネットカフェで更新作業中。 ジムラブに、井原高校の記事をアップしました。 http://gymlove.net/rgl/topics/club/2013/07/22/post-32/ 大会直前なので、あまり詳しい情報は書かないようにしましたが、井原の雰囲気は感じてもらえると思います。ぜひ、ご覧ください。
rg-lovers-417735.jpg


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月18日

青森大学男子新体操部について

青森大学男子新体操部について

rg-lovers-417086.jpg
本日、代々木第2体育館にて、三宅一生プロデュースの「青森大学男子新体操部」のイベントが行われました。すでにTwitterなどでは、賞賛の嵐が起きているようですが、今日のこのイベントを見て、初めて男子新体操や青森大学に関心をもった方、ますます知りたくなった方のために、ちょうど1年前になりますが、テレビ朝日の番組で青森大学男子新体操部がとりあげられたときに、まとめた「青森大学の男子新体操について」という記事を以下にリンクしておきます。 ぜひ、ご覧になってください。 青森大学の、そして男子新体操の魅力にますますはまること間違いなしです。 http://www.plus-blog.sportsnavi.com/rg-lovers/article/1926      <撮影:清水綾子> ※ジムラブに、「三宅一生プロデュース『青森大学男子新体操部』」をアップしました。 http://gymlove.net/rgl/topics/report/2013/07/20/post-31/


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月17日

2013インターハイに向かって⑪ 北海道恵庭南高校団体

2013インターハイに向かって⑪ 北海道恵庭南高校団体

ここ数年、恵庭南高校の団体演技には、感動させられることが多い。
とくに昨年のインターハイでは、試技順が早かったため、やや採点的には不利だったか、と思うくらいに、得点以上の印象を残した。

そして、今年3月の高校選抜でも、やはり盤石の演技を見せ、18.275で5位。試技順が最後で、優勝した小林秀峰の直後という独特な雰囲気の中での演技だったが、彼らの演技は、きっちりと確実で、この大会でへっぽこカメラマンぶりを発揮した私が撮っても、しっかりと美しく6人そろった瞬間が何枚も撮れていた。
それだけ、体操をちゃんと見せることができるだけの能力と、見せるに値する徒手をもったチームなのだ。おまけに伝統的に強いタンブリングは、今も健在だ。

この大会では、5位争いの常連である埼玉栄高校が、前日の公式練習中に選手の1人が負傷するというアクシデントで5人編成となってしまい順位を下げてしまったという状況ではあったが、それでも、恵庭南が埼玉栄と並んで、「トップ4(小林秀峰・神埼清明・井原・青森山田)を脅かす存在」であることには間違いない。

rg-lovers-416916.jpg
そして、今年6月の団体選手権。 埼玉栄、さらには、インターハイには出場できないNPOぎふ新体操クラブと恵庭南の熾烈な戦いに期待していたのだが、この大会では、恵庭南がアクシデントに見舞われる。メンバーの一人が、ユース予選で足を痛めてしまったのだ。 団体選手権前日の公式練習では、なんとかやろうしている姿も見受けられたが、かなり厳しそうだった。そして、当日、やはり彼の姿はフロアになかった。
rg-lovers-416866.jpg
5人編成になってしまった恵庭南は、それでも大きなミスもなく健闘したが、16.500で9位。5人編成によって、1.5の減点もあり、これは仕方ない順位だった。 それでも、構成9.200、実施8.800と、たとえ5人でも、上位争いに食い込める得点は出せている。これが、6人そろった演技だったら、さらに迫力も増し、もっと高い得点も望めるはずなだけに、やはり侮れない存在と言えるだろう。
rg-lovers-416867.jpg
先日、国士舘で見た神埼清明もそうだったが、恵庭南もまた、ここ数年で動きの美しさ、深さなどが飛躍的に向上したチームではないかと思う。 ただ、基本的には「そこ」で勝負するタイプのチームではない。 ことさらに、「美しい新体操」や「凝った表現」を見せつける演技ではないように思う。
rg-lovers-416868.jpg
ある意味、シンプルにノーマルに、彼らのもつ「強さ」をしっかりと見せるのが恵庭南の新体操であり、彼らにとって「美しさ」は武器ではなく、標準装備という感じがする。 昨年の全日本ジュニアで、恵庭のジュニアチームが団体で優勝したが、その勝因は、恵庭南の強さと通ずるものがあった。 つまり、彼らの新体操は「ちゃんとしていた」のだ。 そして、その「ちゃんとした体操」を、ちゃんと見せる実施だったのだ。
rg-lovers-416870.jpg
今の恵庭ジュニア達は、「徒手重視」で育ててきたチームだと、昨年の全日本ジュニア後に聞いた。 そして、現在の恵庭南高校の選手達は、恵庭ジュニアが「徒手重視」に舵を切ったころにジュニアだった選手達なのだ。 だから。 今の恵庭南の演技は、見ていてこんなに心地よいのだな、とあのときわかった気がした。 足先やひざなど、男子には目立つ粗も少ない。さらに、全体的に胸が厚く、そしてその胸が前後によく動く。そのことによって、彼らの動きには深みや重厚感が増している。
rg-lovers-416871.jpg
以前のイメージから、「恵庭は徒手が弱い」と思っている人も少なくないようだが、もはやそんなことはない、と私は思う。 きっとこのインターハイで、恵庭南は、「徒手よし、タンブリングよし」の演技を見せてくれるに違いない。 敵はおそらく、九州の暑さ。 それさえうまく乗り切れれば、夏の九州に「北海道旋風」を起こせる可能性は大だ。
rg-lovers-416873.jpg
そんな「2013インターハイ台風の目(になることを期待)」である恵庭南高校の練習を、当ブログにたくさんの写真を提供してくれている清水綾子さんが訪ねた。 ちょうど団体選手権の直前だったのだが、そこでは熱のこもった、それでいてなんだか楽しそうな、練習風景があったとそうだ。
rg-lovers-416863.jpg
rg-lovers-416865.jpg
地元で、小さいころから一緒にやっている子達が多いからだろうか。 また、卒業したOB達もよく顔を出し、道内の大会には今だに出場したりもし、現役の後輩達のことも気にかけ続ける、そんな空気があるからだろうか。 今の恵庭南は、十分、強いチームなのだが、いい意味でどこか「のんびり」しているように見える。しかし、そういうチームだからこそ出せる「本番力」もきっとあるんじゃないか。 全日本ジュニアの優勝杯が北海道にわたったのは、昨年が初めてだった。次は、インターハイの優勝杯を! そう欲張ってもいい時期だ。健闘を期待したい。
rg-lovers-416874.jpg
                                     <撮影:清水綾子>※選抜大会除く ※ジムラブに「2013ユースチャンピオンシップ女子13~15位」の記事をアップしました。以後、続く予定です。 http://gymlove.net/rgl/topics/report/2013/07/18/20131315/ ジムラブに、Facebookの「いいね!」ボタンがつきました。ぽちっとしていただければ、励みになります。よろしくお願いいたします。


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月16日

2013インターハイに向かって⑩ 佐賀県立神埼清明高校団体

2013インターハイに向かって⑩ 佐賀県立神埼清明高校団体

この連休中に、「いいもの」を見ることができた。

佐賀の神埼清明高校が、国士舘大学に練習に来ていたのだ。
その情報を仕入れて、早速、見に行ってきた。

そこで見た神埼清明というチームは、もちろん、強くてうまかったのだが、それだけではなく、なにか「清々しさ」や「潔さ」を感じさせるチームだった。

rg-lovers-416604.jpg
「神埼って前からこういうチームだったっけ?」 私は、考えた。 いや、なにか、違うような気がする。 ほんの数年前までの神埼は、「強いこと」は間違いないが、つっこみどころもあるチームだったような気がするのだ。
rg-lovers-416605.jpg
とくに、すさまじいまでの組みのインパクトで度肝を抜いていたころの神埼に対しては、賞賛の一方で、疑問を唱えるむきもあったように思う。 いわく「組みで神埼に対抗できるのは、小林秀峰くらいだが、新体操は組みだけではないはず。むしろ、動きの質や美しさこそ、評価されるべきではないか。」と。 たしかにそれも一理ある。 当時の神埼がそうだったとは言わないが、「組みさえすごければ勝てる」のでは、新体操としてはどうだろう? と思わざるを得ない。
rg-lovers-416606.jpg
それでも、「組みの強さ」で、結果を出してきた神埼のようなチームが、がらりとチームカラーを変えることは難しいだろうし、そうしたいとも思わないだろう。 同じ競技でも、時代によって何が評価されるかは変わるものであり、それに対応することも勝つためには必要だが、「迎合」はしたくない。 神埼は、というか中山智浩監督は、いや、もしかしたら九州人は、かもしれないが、そう考えるのではないか。
rg-lovers-416607.jpg
しかし、そういう意地を通せば、「時代遅れ」になってしまう危険性もある。ましてや、勝つことは難しくなる可能性はおおいにある。 インターハイ団体の優勝は、 昨年が青森山田、一昨年が井原。 美しさや表現力に定評のあるチームが続いている。 それぞれのチームの良さは、誰もが認めるし、中山監督も認めている。とくに井原に対しては、「誰もが認める体操」と、言いきった。 それでも、神埼は神埼のやり方で、彼らよりも上にいくことができるはずだと、中山監督は考え、信じている。
rg-lovers-416608.jpg
ここ数年のインターハイや高校選抜での神埼の演技は、いつも素晴らしかった。優勝こそできていないが、常に、「勝ってもおかしくない」演技を見せていた。 正直、勝ち目は薄い試合であっても、それでも、コンスタントにそこまで仕上げてくる。それは、絶対に勝負を捨てることのない指導者がいて、ついていく選手達がいてこそ、できることだったんだと今回の練習ぶりを見ていて感じた。 いや、もしかしたら「優勝」には届かない時期があったからこそ、今のこの「懸命でひたむき」な練習ぶりはあるのかもしれない。 だとしたら、この数年の惜敗は、確実にこのチームを進化させている。
rg-lovers-416609.jpg
今の神埼の新体操には、「男子新体操」が本来もっていた良さが、凝縮されているような気がする。 力強くて。 男らしくて。 スリリングで。 エキサイティングで。 そして、美しい。 研ぎ澄まされた日本刀の輝きのような美しさが、彼らの動きのひとつひとつにはある。 そして、彼らの疾走感あふれる演技で、そこにはたしかに風が起きていた。 その風は、ときに強く、ときに渦巻くように。 ときには、ふっと止まる瞬間もあり、また吹き抜けていく。
rg-lovers-416610.jpg
彼らの起こす風は、果たして神埼清明高校に3年ぶりの優勝をもたらし、中山監督の最高の笑顔を見せてくれるだろうか。 その可能性は十分にある。                                         <撮影:清水綾子>


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月14日

2013インターハイに向かって⑨ 女子個人「3年生たち」

2013インターハイに向かって⑨ 女子個人「3年生たち」

インターハイが終わったからと言って、そこですべてが終わるわけではないのだけれど。
それでも、ひとつの区切りには違いないだけに、とくに3年生には、できるだけ納得のいく演技をしてほしい、といつも思ってしまう。

とくに、今年の3年生は、ジュニアのころからよく見ていた選手が多いのでなおさらその思いは強い。

●池ヶ谷晴香(静岡サレジオ)

rg-lovers-416192.jpg
●藤岡里沙乃(府立乙訓)
rg-lovers-416194.jpg
●成松由加理(別府鶴見ヶ丘)
rg-lovers-416195.jpg
●佐々木真子(日大山形)
rg-lovers-416197.jpg
●小川真悠(取手聖徳女子)
rg-lovers-416198.jpg
頑張ってほしい、とは思うが、高校の3年間はいろいろなことがある。一筋縄ではいかないものだ。 それを思えば、3年生の今、インハイの舞台に立てるということで、ある意味、十分とも言える気もする。 だから。 頑張ってはほしいけれど、気負う必要もない。 思いつめる必要もない。 なにがあっても、高3まで新体操を続けてきた自分に誇りをもって、踊る姿が見たいと思う。                                      <撮影:清水綾子>※小川真悠のみ  


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月13日

2013インターハイに向かって⑧ 宮城県立名取高校団体

2013インターハイに向かって⑧ 宮城県立名取高校団体

古びた体育館の4分の1面。
それが彼らに与えられたスペース。
隣では、バレー部やバトミントン部が大きな声を出しながら練習している。ときにはボールも飛び込んでくる。

スプリングマットはもちろんない。
タンブリングを練習するのは、1本のタンブリング板の上のみ。

団体メンバーは1人ずつ(必要に応じては2人で)、その板の上で、自分のパートの通しをやっていた。

rg-lovers-415843.jpg


rg-lovers-415844.jpg
rg-lovers-415845.jpg


彼らは、今年のインターハイに出場する名取高校新体操部だ。
団体での出場はじつに11年ぶりのことだという。

rg-lovers-415846.jpg
団体でのインターハイ出場から遠ざかって久しかった名取高校を、今年インターハイの舞台に押し上げたのが、この春、名取高校に赴任した本多和宏監督だ。
rg-lovers-415849.jpg
現役時代も、「異端の新体操選手」として知る人ぞ知る存在だったという本多は、宮城県で教職についてから、選手育成に手腕を発揮してきた。はじめは野呂和希(現・盛岡市立高校監督)の後継となった白石東中学校で、そして、その後、聖和学園高校で、彼は創部2年目のチームを「選抜準優勝」に導くというミラクルを起こしている。 聖和学園を離れてからは、新体操部のない公立中学でバトミントン部顧問を務めながら、白石のキューブ新体操で指導にあたり、昨年、話題沸騰だった「3つ子×2組団体」を育てている。 本多の聖和時代、そしてキューブでの指導については、ライター・横田泉のブログが詳しいので、そちらを参照してもらいたい。(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/reportage/article/91 ) その本多が、ついに、新体操部のある高校=名取高校に赴任というニュースは、4月1日に異動が公布されるやいなや明るい話題として、新体操界に広まっていた。 これで、宮城県の新体操は活気づくだろうな、と期待はしていたが、さすがに4月に赴任して3か月足らずで迎える東北大会で団体3位以内に入ってインターハイに駒を進めることは、まだ難しいだろう。そう言う声も多かった。 なにしろ東北には、青森山田、盛岡市立の2校がある。 実質、3位を狙うしかないが、そこにも会津工業がいる。会津工業も決して弱いチームではない。そこに食い込むことはかなり困難ではないかと思われた。 しかし、結果的には、0.025差で名取高校は会津工業を下し、インターハイ出場を決めた。会津工業のミスにも救われた面もあるとはいえ、それでも、自分達の最善を尽くしたからこそついてきた結果には違いなかった。 「創部2年目で全国2位」を成し遂げた指揮官は、「赴任3か月でインターハイ出場」も、成し遂げてしまったのだ。 rg-lovers-415850.jpg


rg-lovers-415851.jpg
rg-lovers-415852.jpg


いったいどんなマジックを使ったのか?
と思うが、そこにはなんの種も仕掛けもない。
ただ、「そこにあるもので工夫して戦った」だけなのだ。

そして、もちろん。
本多の指導は厳しい。
新体操に対する美意識の高さには定評があるだけに、たとえ相手が高校始めの選手であっても、本多は容赦しない。
すぐにできないことはわかっている。
彼らは、本多の要求にすぐに応えられるような訓練をしてきていない。
筋力も柔軟性もセンスも。すぐに「打てば響く」ようにならないことは仕方のないことだ、とは本多だってわかっているはずだ。

選手たちは、彼らなりに、「宮城県伝説の指導者」である本多に指導を受けられていることにやりがいも感じているのはわかるし、必死についていこうとしていることもわかる。
ただ、思うようにはできないことが多いだけなのだ。

だから、本多は「容赦しない」つまり、「あきらめない」のだ。
言い続けていれば、彼らなりに変化していくはずだということを信じているのだ。

rg-lovers-415853.jpg
タンブリング板での練習をひととおり終えると、タンブリング板をばらし、フロアマット敷きが始まった。しかし、それも男子新体操用としては薄すぎるぺらぺらのスポンジマットを下敷きにして、上にフロアマットを敷いただけのものだ。ここでは、タンブリングはできない。 だから、タンブリングは板の上で練習しておき、フロアを敷いてからは、動きの練習をする。そういう方法でしか、彼らは練習できないのだ。 「でも、聖和のときよりはかなり恵まれてます。」 さらりと本多は言う。 「あのころは、外で練習することも多かったから。」 外で練習していても、全国2位になった。 だったら、屋根のある体育館で練習できるこの環境なら、日本一だって目指せるはず。おそらく彼は本気でそう思っている。 rg-lovers-415855.jpg


rg-lovers-415860.jpg
rg-lovers-415857.jpg


フロアマットで、彼らが練習を始めたのを見て、驚いた。
それぞれの動きをばらして見たときに比べて、ずい分、よく見えるのだ。
細かいことを言うならば、もちろん、粗はある。
それでも、「いい演技」に見える。
そのくらいには、彼らは動けるし、やれていた。

そして、作品にやはり力がある。
だから、選手達の能力が100%以上に引き出せるのだ。

rg-lovers-415858.jpg
聞けば、この作品は、曲こそは変えているが、聖和学園が選抜で2位になったときの作品をほぼ踏襲しているのだと言う。 あのときも、戦力が充実していたわけではなかった。 練習環境にも恵まれていなかった。 それでもやれるものを! それでも上を目指せるものを! と考え抜いて作り上げた作品だけに、今の名取高校チームにも、力を与えられる作品になると、本多は考えたようだ。 それに、「今のチームに合わせた構成を考えている時間はなかった」という事情もある。 この日も、4時に練習が始まったが、7時20分には定時制の授業が始まるため、体育館から出なければならない。授業が7時間目まである日は、練習の始まりがもっと遅くなる。それでも終わりは7時20分。 この限られた時間の中で、どうやっていくのがもっとも効率よいのか、それはまだ「手さぐりで試行錯誤中」なのだという。 rg-lovers-415859.jpg


rg-lovers-415856.jpg
rg-lovers-415861.jpg


私が名取高校を訪ねた7月11日、本多がこの学校に赴任してから3か月半が経とうとしていた。
環境のことも、選手たちの能力や練習ぶりに対しても、思い通りにはいかないことが多いことも、本多は十分にわかっていた時期だろう。

だが、とにかく彼はあきらめない。
「なんとかできる方法」を考える。

そういう指導者だということは、よくわかった。

本多和宏は、現役の最後は国士舘大学の個人選手だったが、高校は会津工業。もとは福島県の出身だ。

男子新体操にとっては「会津」は、すこし独特な地のような気が私はしているが、今年になって、大河ドラマ「八重の桜」を熱心に見るようになって、なんとなくその「独特さ」の源がわかるような気がしてきた。

彼らは、人と違うことを恐れない。

武士の時代なら、「会津らしさ」を尊び、それを守るためには命も投げ出した土地柄だ。
今の時代なら、それがおそらく「自分らしさ」なのだろう。
本多が「異端の新体操選手」だったゆえんもおそらくそこにある。

人と違うことをおそれず、自分の信じた道を進んでいるならば、「あきらめる」必要もない。「言い訳する」必要もない。

老人と子どもしかいない、と言われた鶴ケ城でスペンサー銃をかついで戦った八重のように。
今ある戦力で、最大限の知恵をしぼって戦うまで、なんだろう。

rg-lovers-415863.jpg
会津の血なのか、本多和宏のパーソナリティーなのかはわからないが、そんな指導者が、高校指導の現場に戻ってきたことで、これからの男子新体操が面白くなることは間違いない。 今年のインターハイは、宮城県の男子新体操の新しい時代の幕開けにきっとなる。 いや、それは宮城県に限らない。 今、現在、「上を目指せる環境ではない」と思っている学校、チーム、選手たちにとっても、きっと希望になるチームが、今、誕生し、これから育っていくのだ。 彼らの全国デビュー戦は、2013年8月4日。 試技順は、17番だ。
rg-lovers-415864.jpg


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月12日

2013インターハイに向かって⑦ 永井直也(青森山田高校)

2013インターハイに向かって⑦ 永井直也(青森山田高校)

永井直也にとって今年は「最後のインハイ」になる。

中学3年のとき、ユースチャンピオンシップで初めて見た永井の印象は強烈だった。中学生とは思えぬ、そして男子とは思えぬ表現力、しなやかさ、やわらかさを伴ったその演技は、順位以上のインパクトがあり、しっかりと記憶に焼きついた。

当時、私は、男子新体操を熱心に見始めてまだキャリアは浅かったが、永井の存在をこのときに知ったのは私だけではなかった。
永井が全国規模の大会に出場したのはこのときが初めてだったのだ。まさに鮮烈なデビューだったと言えるだろう。

rg-lovers-415317.jpg
そして、そのわずか5か月後。 全日本ジュニアで、永井は優勝する。 前年までは、2種目で行われていた全日本ジュニアが4種目になった最初の年、半田スポーツクラブの団体メンバーも兼ねていた永井には、負担も大きかっただろうが、ユースのときより、さらに完成度を高め、魅力も増し、文句なしの優勝だった。 前年のジュニアチャンピオン・臼井優華は、高校1年生ながらもその年すでにインハイ準優勝、ユース優勝と快進撃を続けていた。 永井は、臼井とはまったくタイプは異なるが、ジュニアチャンピオンになった時点でのインパクトは、臼井にもひけをとらないだけのものがあった。
rg-lovers-415318.jpg
たった1年で、知らない人はいないスター選手にかけのぼった永井直也は、青森山田高校に進学。 上級生には、同じ愛知県出身の前田優樹、平野泰新(ともに現在、花園大学)などがいたが、その年は、青森がインターハイの開催地となっており、個人枠は2つあった。 前田、平野、永井の3つ巴を勝ち抜いたのは、永井と平野。 2人はそろって青森インハイに出場し、永井は1年生ながら、平野に次いで3位となる。優勝したのは、高校2年生になった臼井。 そして、高校2年になると、永井はユースで2位、平野との激戦を制して連続出場を果たしたインターハイでは5位となる。どちらも優勝したのは臼井。 このころ、すでに臼井優華は、大学生や社会人とも互角以上に戦える力をつけてきていたので、いくら永井でも、勝つことは難しかった。とくに高2のユースでの永井は、高校入学以来、最高とも言えるすばらしい演技を見せたが、それでも、臼井超えはできなかった。 さらに、インターハイでは、永井の同級生である小川晃平(井原高校)が2位と永井を上回る位置につけている。
rg-lovers-415319.jpg
そして、インターハイが終わり、秋の新人戦を前に、永井はついに青森山田の団体メンバーに入る。 団体でも常に優勝を目指している青森山田だが、入学から1年4か月、永井は団体メンバーには入っていなかった。 団体選手としての力のある選手がほかにもいたせいもあるだろうが、それは、「個人選手」としての永井が尊重されている所以のようにも見えた。 しかし、それまで個人に専念してきた永井にとって、団体との兼任はどうなんだろう? いささかそんな不安もあった。 ところが、今年の3月。 高校選抜で、永井は今までとははっきり違う芯の強さが表に出た演技を見せた。高校に入って初めて、団体と個人両方での出場となった全国大会だったが、4種目すべていい出来で、臼井優華も抜けた今、当然優勝してもおかしくない演技ではあった。 しかし、僅差で永井を抑え、優勝したのは小川晃平だった。中3のときの全日本ジュニアでは、永井に次いで2位だった小川は、高校生になってからじりじりと個人選手としての力も伸ばしてきており、ついに自身初の個人優勝を手に入れたのだ。その勢いのままに、続くユースチャンピオンシップでも、小川が優勝。 一方、ユースでの永井は、ミスのあった種目もあり、7位に沈んでしまった。 さらに、その後の東北大会では、音楽トラブルもあり、青森山田高校の後輩である佐久本歩夢に優勝をさらわれるという事態にもなってしまった。 あくまで結果だけで言うならば、永井直也は、高校最後の年になって、最大のピンチを迎えている。
rg-lovers-415320.jpg
  インターハイまで、1か月を切った。 最後のインターハイを、永井直也はどんな心境で迎えるのだろう。 そして、今、どんな思いでいるのだろう。 しかし、私はあまり心配はしていない。 窮地と言えば、窮地にいる永井だが、今、直面している試練は、おそらく彼にとって「一番必要なもの」だったのだろう、と思うからだ。 団体と兼任する体力的なつらさも、負けるはずがない、または負けたくない相手に負ける経験も。 演技の繊細さから、ナイーブな少年、というイメージを持ちがちだが、おそらく永井は、見た目とは違って、勝ち気で負けず嫌いだと思う。ただ、その「熱」を、ストレートに出すことがあまり得意じゃないように見えていた。 臼井にしろ、小川にしろ、すばらしい選手であり、永井をもってしても勝つことは難しい相手には違いない。だが、今まで勝てなかった試合では、その「熱」の部分で、少しずつ相手のほうが上だった、ように感じることが多かった。 だが、今回は。 もしかしたら、永井直也こそは、誰よりも「勝ち」を熱望しているんじゃないか。そして、その「熱」は、隠しきれないほどになっているのではないか。私は、そう思っている。そう期待している、と言ってもいい。 さらりと登場して、さらりを優勝をかっさらった全日本ジュニアのときと違って、山も谷もあって迎えた高3のインターハイで勝つことは、彼にとって大きな意味をもつ。 だからこそ、今回こそは、永井直也の真価を見せてくれるんじゃないか。 私は、そんな予感がしている。       <撮影:清水綾子>   ※ジムラブの「選手名鑑」、少しずつですが増えています。ときどき、チェックしてみてくださいね! ●体操はこちら→ http://gymlove.net/gl/players/ ●新体操はこちら→  http://gymlove.net/rgl/players/


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月10日

2013インターハイに向かって⑥ 静岡県立島田工業高校団体<下>

2013インターハイに向かって⑥ 静岡県立島田工業高校団体<下>

島田工業高校は、JRの最寄り駅からはかなり近く、便利な場所にあった。駅から学校に行く途中で見つけたお寿司屋さんで、大満足なランチを食べて、いざ島田工業へ!

校内をきょろきょろしながら、進んで行くと、あった!
新体操マットの敷かれた小さな体育館が。
そして、そこには軽く10人以上の部員達がいた。

rg-lovers-415203.jpg


rg-lovers-415204.jpg
rg-lovers-415206.jpg


今シーズンの島田工業の演技は、そのステキさで私を驚かせてくれたのだが、島田工業の練習を見て、もっとも驚いたのが、その部員数だった。

この日は、テスト前で集合がばらついていたため、私が最初に見たときは10人くらいだったが、じつは、3年生が6人、2年生8人、そして、1年生はなんと10人!
マネージャーも3人もいる。
部員が24人いれば、頑張れば団体が4チーム組める。
私も、いろいろな高校を見て回っているが、こんなに部員が多い高校は、そうそうない。

「赴任した最初の年は、3年生が4人い
るだけで、2年生はゼロでした。その年は、人集めに苦労しました。」
と語ってくれたのは、島田工業監督の鈴木康正だ。
国士舘大学を卒業してすぐに島田工業に赴任し、それから16年、ずっとここで男子新体操部を指揮している。

rg-lovers-415207.jpg
鈴木が言うには、最初の年こそ人集めに苦労したそうだが、それからはずっとほぼ今年と同じくらいは部員が集まってくるのだとか。 ただし、ほとんどが未経験者だ。 たまに器械体操経験者がいることもあるが、「ジュニアから新体操をやっていた」という子は、過去に何人もいなかった。 仮にもインターハイ常連校なのだから、初心者には敷居が高くはないのか? と思ったが、鈴木はさらりと言う。 「部活体験の時期に、体育館の前を通った子は、どんどん引っ張りこみます。やってみれば楽しいと思ってくれますから。」 さらに、 「初心者から始める子がほとんどだから、新入生は、先輩達を見て、あの人でもできるんだったら、自分もできるじゃないか、と思うみたいです。」 rg-lovers-415208.jpg


rg-lovers-415209.jpg
rg-lovers-415210.jpg


そうして集めた部員達に、鈴木はまさに「前転から」教えるのだそうだ。

それでも、そんな初心者軍団が、見る見る上達する。
今まで私が見た島田工業の演技も、たとえば井原や青森山田のように洗練されているかといえばそうではなかったが、しかし、初心者軍団というほどの危うさを感じたことはなかったと思う。

「タンブリングも徒手もそこそこできる」そんな印象をもっていたのだが、それがほぼ全員が高校から新体操を始めた選手達のチームだったとは、かなりの驚きだった。

初心者を、インターハイで見劣りしない演技ができるレベルまで引き上げるのだから、練習もかなりきついのではないかと思うが、それでも毎年20人からの部員が集まり、新体操を続ける。

この鈴木康正は、そんなチームを16年間率いているのだ。
それは、決して派手ではないが、すごいことじゃないだろうか。

rg-lovers-415213.jpg
そんな島田工業のチーム事情を聞くと、今までの作品の「オーソドックスさ」にも合点がいく。 鈴木監督の口からも、「もとは初心者の集まりだから、いつもは、とにかく彼らにできることで、いちばん確実に点数になることで作品を構成して、あまり細かな動きや凝ったことは入れないんです。そうしないとまとめきれないから。なにしろ、何年か前には、インハイ本番の途中で演技を忘れちゃった!なんて選手もいましたから。うちのチームは、素人の集まりだから、何が起きるかわからないんです。」という言葉が出た。 rg-lovers-415215.jpg


rg-lovers-415219.jpg
rg-lovers-415220.jpg


それなのに、今年の作品は今までとはかなり印象が違っている。
それは、なぜなのか?

「去年のインハイで、うちは実施は悪くなかったと思うんですが、点が伸びなくて。それで、いろいろな先生にアドバイスをもらったんです。今の新体操の傾向とか、どういうところが評価につながるのか、などを。」

今までは、「そこまで欲張れない」と断念してきた「動き」を、いよいよ取り入れていかないと、もう今より上を目指すことはできそうにない。
だったら、今年はやってみよう!
そう思ったのだと言う。

「たまたま今年のメンバーは例年より柔軟性には恵まれていたし、とても練習熱心なメンバーなので、彼らならやってくれるんじゃないか、という気持ちもありました。」

rg-lovers-415222.jpg
実際、この作品を作り始め、形になってくるに従って、選手達の練習には熱がこもってきた。 「うちは土日の練習は午前で終わるようにしているんですが、彼らは午後もずっと自主練をしています。 だから、練習では合っていなかったところなどを、合わせておけと言えば、合うまでずっと自分達でやるんです。」 そんな彼らだから、鈴木監督は、「今年は、まず構成を考えて、それができるようになるまでやる」ことができたのだと言う。 rg-lovers-415226.jpg


rg-lovers-415232.jpg
rg-lovers-415235.jpg


今回の構成に関しては、ほとんが鈴木監督が考えたものだそうだ。
「残念ながら、子ども達のほうからの提案はなかなか出ないので。」

そして、鈴木監督は、構成を考える際に、他のチームの演技の動画などを見ないようにしているのだそうだ。参考にするのは、ダンスや太極拳など、同じ体を動かすものでありながら、まったくの別ジャンル。そうしないと、知らぬ間に他チームの影響を受けてしまう。それが嫌だから、「あえて見ない」のだと言う。

そうして鈴木監督が練りに練った構成には、彼が今まで「やってみたかった(やらせてみたかった)もの」がいっぱいつまっている。そんな作品になった。

rg-lovers-415240.jpg
例年よりも、「動きで見せる、同時性の見せ場もつくる」ことを意識したこの作品を、おそらく選手達も気に入っているんだろうと思う。 選抜大会、団体選手権と見るたびに、精度も上がっているが、なにより選手達が自信をもってやっていることが伝わってくる。 彼らも、「今までとはひと味違う作品」への挑戦を、楽しんでいるんだ。 長い自主練だって、きっと楽しいからやっているんだ。 鏡の前で、自分達の姿を映して見て、「オレたち、かっこよくない?」なんて騒ぎながら、きっと楽しく、楽しいけれど「より上」を目指してやっているんだな、と今回の練習を見て、改めて思った。 rg-lovers-415241.jpg


rg-lovers-415242.jpg
rg-lovers-415244.jpg


そして、なんと言ってもこのチームには、来年、再来年の出番を待つ後輩達がたくさんいる。レギュラーチームのほかに2チーム組んで練習をしていて、大会にも出るというなんとも頼もしい後輩達だ。
いや、現時点ではまだまだ頼りない1年生も多いが、そんな彼らにとって、かつては自分達と同じ初心者だったのに、今、これだけの演技ができるようになった先輩達の存在は、どんなにか励みなるに違いない。
そんな先輩達がいるから、きっと彼らも頑張れるのだ。

ほぼ全員が高校始めというチームが、毎年のようにインターハイに出場していること。
そして、常に中堅レベルの演技をしていること。
さらに、今年はより上をうかがえそうな力をつけてきていること。
こんなにたくさんの部員がいること。
ある意味、偉業と言ってもいいほどのことを、黙々と淡々とまっとうしている指導者がいること。

すべてが、いい。

インターハイで、彼らには、ぜひ最高の演技を見せてほしい。
鈴木康正という、この実直で、稀有な指導者のためにも。
全国にはまだたくさんいるだろう、高校に入ってから新体操を始めた選手達のためにも。

頑張れ! 島田工業!



  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月08日

2013インターハイに向かって⑤ 静岡県立島田工業高校団体<上>

2013インターハイに向かって⑤ 静岡県立島田工業高校団体<上>

3月の高校選抜大会から気になっているチームがある。
静岡の島田工業高校だ。

高校選抜大会では、男子の試技順2番だった。
まだ、大会序盤で観客席の空気もまだどことなく緩慢な時間帯での登場。しかし、その演技はたしかに会場の空気をきゅっと引き締めるだけのインパクトをもっていた。

rg-lovers-414935.jpg


rg-lovers-414936.jpg
rg-lovers-414937.jpg


「島田工業高校」は、たしかにインターハイの常連校であり、毎年、「そこそこうまいチーム」だということは私も知っていた。
だが、同時に、「そこそこうまいが、オーソドックスな演技で、それほど印象に残る演技ではない」ということも知っていた。

だから、高校選抜のときも、良くも悪くも、「いつも通り」の演技なんだろうと思って見ていたのだが、演技冒頭から、「えっ? これが島田工業?」という驚きの連続だった。

例年のチームと能力はさほど変わらないんじゃないかと思う。
いや、選抜の段階では夏のインターハイのときよりは、力は落ちていたのかもしれない。が、それを補って余りあるほどに、いつもとは違う島田工業だったのだ。

一言で言うなら「かっこいい」! つけ加えるなら「洗練されている」!
そして、「工夫されている」 じつに魅力的な演技だった。

最近の男子新体操のトレンドをほどよく取り入れつつ、本来、島田工業がもっているオーソドックスな男子新体操の良さも感じられる、とてもいい作品で、しかも実施の面でも目立ったミスはなかった。

得点は17.400。印象よりはやや低いような気もしたが、試技順2番ということも考えれば、まずまずだったかもしれない。
結果、高校選抜で島田工業は7位だった。上の6校は小林秀峰、神埼清明、井原、青森山田、恵庭南、盛岡市立という上位常連校だったことを考えると、かなりの健闘だ。

そして、私は、もう一度、この演技を見る機会を得た。
5月にユースチャンピオンシップと同時開催された男子団体選手権だ。
島田工業はここにもエントリーしてきた。

このときは試技順3番。
島田工業の前が、優勝候補の埼玉栄高校で、埼玉栄はすばらしい演技を見せ、会場が沸きに沸いた。

その直後にフロアに登場することになった島田工業だったが、彼らの演技は会場の空気をしっかり自分達のものにすることに成功した。
独特な入りの技で意表をつき、その後は、動きをしっかりそろえて見せる。そろっていることがわかりやすい徒手の部分はもちろんのこと、今年の島田工業の演技は、その隙間を埋める動きのそろい方が絶妙なのだ。そして、その動きが、うまく音をとらえ、見る者をぐっと引き込む力をもっている。

rg-lovers-414938.jpg
高校選抜のときに感じた、あの「おおっ?」という感覚は、やはり間違っていなかった。 今年の島田工業は、ひと味違う。 この作品は、この演技は、今までの島田工業の殻を破るものになる! この団体選手権の演技で、私はそう確信してしまった。 rg-lovers-414939.jpg


rg-lovers-414940.jpg


団体選手権では、じつは惜いミスがあった。鹿倒立で1人動いてしまったのだ。しかし、それでも18.025で3位。
島田工業にとっては、男子団体選手権初のメダルだった。

これは、インターハイがますます楽しみになってきた。
そう思った私は、今年の島田工業の変化の秘密を探るべく、先日、島田工業を訪ねてみた。

静岡は神奈川県の隣だから、近いもんだと思ってうっかりJR各駅停車で向かったら、思った以上に遠かった。
静岡県と言っても島田まで行くと、むしろ愛知県のほうに近いのだと、今回の旅で思い知らされた。

しかし、それだけの長旅をしても、今の島田工業は、行ってよかったな、と思わせるチームだった。

「島田工業高校レポート」は、<下>でお送りする。
                                <撮影:椎名桂子←高校選抜、清水綾子←男子団体選手権>

※ジムラブに記事をアップしました。「体操女子、ユニバーシアード銀!」ということで、美濃部ゆう選手の記事です。http://gymlove.net/gl/topics/report/2013/07/08/67-13/


  • 共通ジャンル:
  • 体操
2013年07月07日

2013インターハイに向かって④ 京谷知季(新湊高校)

2013インターハイに向かって④ 京谷知季(新湊高校)

富山の県立高校である新湊高校には、今年は新体操部員が3名しかいない。
存続の危機、と言っても過言ではない状況、かもしれない。

だが、たった3人しかいない部員達の平均値の高さを、ユースチャンピオンシップで見せつけた。これで6人そろっていたら、どんなにステキな団体ができるだろう? と思わずにはいられなかった。

現に、新湊高校は、2010年のインターハイにも4人編成の団体で出場している。2人欠けていることによる構成上の減点があるため、順位は下のほうだったが、あのときも「4人なのに、このクオリティ!」と驚いたものだった。今にして思えば、現在は青森大学(海老江)、国士舘大学(赤井)に進学して新体操を続けている選手達が、あのときの4人団体にはいた。
「4人なのに、すごい」と感じたのは、間違いではなかったのだ。

だから、今回のユースでの「新湊トリオ」の演技を見たときに、今年もまた6人はそろっていないまでも、団体も期待できるのでは? と思ったのだ。しかし、聞いてみると、今年はこの3人が部員のすべてで、団体は組めなかった、と。
ユースでの好成績も、団体が組めなかったため、例年より個人の練習をする時間があったから、とのことだった。それにしても…彼らの団体が見たかった…。それは本当に残念でたまらない。

しかし、団体がない分、少し練習量が多かった。
それだけとは思えない演技を、彼らはユースで見せてくれた。
そして、その3人の中の1人、3年生の京谷知季がインターハイには個人で出場するという。

●京谷知季(新湊高校)

たしか昨年のインターハイにも出場していたと記憶しているが、そのときも、「とてもよく見える選手」という印象をもった。ミスもあったと思うし、まだまだやり込んでいる演技ではないこともわかるのだが、センスというのか? 動きがよく見える選手なのだ。
ユースでは決勝種目・クラブで、彼は、いきものがかりの「さくら」を使っていた。この曲は、京谷にとっては先輩にあたる赤井龍也(現国士舘大学)が青森インターハイのときにスティックで使っていた曲だ。
あのときの赤井も、「とてもよく見える選手」だった。とくにスティックは、あの年のインターハイの中でも、印象に残った演技のひとつだった。

その曲で踊った京谷のクラブは、見事なノーミス。美しく、やさしい曲調をしっかり踊りこなして、赤井のスティックに勝るとも劣らない演技だった。彼らにとっては、「あこがれの先輩」だったろう赤井に対するリスペクトあってこそ、のノーミス演技だったようにも思う。

rg-lovers-414638.jpg
今年は、京谷ひとりが「新湊高校」を背負ってインターハイに出場する。だが、翌年には、数こそは少ないが楽しみな選手が2人もいるのだ。来年以降の新湊高校の新体操部を活気づけるためにも、インターハイではぜひ頑張ってほしい。たった3人の新体操部でも、これだけやれるんだ! と見せてほしい。彼にはきっと、それができる。 今年は、インターハイの舞台に上がることはないが、来年が楽しみ! とユースで思わせてくれた新湊高校の下級生達も紹介しておこう。 今から注目しておいて損はない選手たちだ。 ●石崎優弥
rg-lovers-414639.jpg
4種目すべてを8.500前後にまとめての27位は立派だ。 地道にしっかりと今の自分の力を出し切れたユースではなかっただろうか。まだ粗削りながらも、もともと持っている線が美しく、上半身や腕、指先まではっとさせる美しさを見せるときがある。練習を積めば、かなり、大化けしそうだ。 ●籠 純希
rg-lovers-414640.jpg
決勝種目ではミスが多く、予選13位から後退して24位で終わってしまった籠だが、予選ではロープで9点台にのせるなど、存在感を示した。 決勝のクラブだったと思うが、「医龍」の曲を使った演技。ミスがあり、得点は伸びなかったが、これはかなり印象に残った。タンブリングも強く、線も美しくバランスのいい選手だが、とくに表現力を感じさせる腕の動きがよく、いわゆる「空気を動かす演技」のできる選手になりそうだ。 部員が少なければ、どうしてもモチベーションを保つことが難しいのではないかと思うが、そんな中で、こんなきらめく原石のような選手が3人も育っていることには、驚くしかない。 インターハイではまず、京谷が、そしてそのあとも、頑張れ! 新湊高校! ※インターハイの演技順は、こちら↓ http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gymhs/article/349 ※ジムラブの「選手名鑑」は、体操、新体操とも地道に更新中です。 http://gymlove.net/rgl/players/


  • 共通ジャンル:
  • 体操