試合での成績が、目標よりも下で終わってしまうことは、どんな選手にとってもつらいことだと思う。
が、その経験は、成長の糧でもあるし、糧にできなければならない。
しかし。
単に1位を目指していたのが3位だった。
10位以内を目指していたのに11位だった。
だけではすまないのが、次の段階の試合につながる試合だ。
ほんの1つ順位が違ってしまっただけで、次の試合に出られる選手と、そこで終わる選手とに分かれてしまう。
そんな明暗が、幼いころからずっと一緒にやってきた仲間の中で別れた場合、その悔しさややりきれなさは、想像に難くない。
2013シーズンは、小林秀圭にとって「しんどい年」だったのではないかと思う。
彼女自身、昨シーズンはどこかぴりっとしなかった。
中学2年生、ジュニアではトップレベルの選手であることは疑いようもない選手だ。
しかし、昨年は、肝心なところでミスが出た。それが成績に響いていた。
小学校の低学年のころから、彼女は、そして同じクラブの同期生である鈴木歩佳は、有望で人目をひく選手だった。
ただ「素質に恵まれている」だけでなく、NPOぎふ新体操クラブのハードな練習にも音を上げない根性もあった。
いや、ことによっては、2人そろっているからこそやってこれた面もあるのかもしれないが。
切磋琢磨しながら、「ぎふの2人」は、順調に成長していた。
うまい具合に、勝ったり負けたりしながら。
ところが、昨シーズンは、シーズンはじめのユースチャンピオンシップの予選種目・フープで、小林は、今まで見たことがないほど崩れてしまった。予選順位は、19位。フープが足を引っ張る形になったが、30位までが進める決勝には残った。鈴木歩佳も、予選は16位。高校3年生までが出場するユースチャンピオンシップだけに、当時中学2年生だった2人は、やや苦戦を強いられていた。
決勝では、2人ともしまった演技を見せ、順位を上げた。
結果、鈴木は10位、小林は17位という最終順位だった。中学2年生としては十分、立派な成績だ。
しかし、15位までが出場できる全日本選手権に、鈴木だけが出場することになった。
ここが始まりだったように思う。
昨シーズンは、その後の試合でも、クラブ選手権ジュニアの部で鈴木が4位、小林が10位。
全日本ジュニアでも、鈴木が4位、小林が10位だった。
少し前まで、どちらかというと鈴木はミスが多い選手で、小林のほうが安定感のある演技をするという印象があったが、こと昨シーズンに関しては逆になってしまった。
べつにそんな年があってもいいと思う。
幼いころからずっとトップ集団で走ってきた選手なのだ。
少し停滞することがあってもなんら問題ない。
苦しかったシーズンは、後になってみれば、きっと彼女の大きなステップになる。
そうは思ったが、今までずっと同じように成長してきた鈴木との間に、今までになく大きな差がついてしまったことだけが気がかりだった。
必要以上に落ち込んだりしていないといいのだけど。そう思っていた。
そんな私の思いは杞憂だったようだ。
今年のユースチャンピオンシップでの小林秀圭は、しっかり輝きを取り戻した姿を見せてくれた。
思い切りよく気持ちよい手具操作や、回りながら、ぐぐっと開脚度が大きくなるパンシェターンなど、彼女ならではの輝きが、その演技のあちこちで見られた。大人びた雰囲気も身につけ、表現力にも進境が見られた。
「成熟したジュニア選手」として、じつに楽しみな、力と魅力のある選手、になっていた。
きっと、もう大丈夫だ。
中学3年生になった2014年、彼女はきっと「ひと回り強くなった自分」を見せてくれるに違いない。
<撮影:末永裕樹/赤坂直人>