2013テレビ信州杯レポート⑭ 男子シニア団体3位/甲府工業高校
報道ステーションの興奮まだ冷めやらぬ、だが、こんな番組もあったことをどのくらいの人が知っているだろうか。
その番組は、テレビ山梨が制作した
「新体操ボーイズ ~汗と涙と努力の日々~」
部活動を再開し、インターハイ出場を目指す甲府工業高校新体操部を追った1時間のドキュメンタリー作品で、なんと! 平成24年日本民間放送連盟賞 青少年向け番組 優秀賞を受賞している。
当初は、山梨県内だけでの放送だったようだが、この受賞により、最近になって全国あちこちの局で放送されているので、「これ、見た!」という方も増えてきたのではないだろうか。
じつは、私も最近になってやっと見ることができた。
(以前、DVDをいただいたりもしていたのだが、我が家のデッキで再生することができず、見られないままになっていたのだ。)
最近の放送を録画してもらい、今度はやっと見ることができた。
この番組で追っているのは、2011年の青森インターハイに向けての甲府工業高校で、団体チームが組めるようになってまだ1年足らずという状態だ。私はこの年の5月、多摩市で行われたチャリティー競技会での彼らの演技を覚えているが、それはかなり前途多難と思わせるものだった(このチャリティー競技会にもテレビ山梨は、取材に来ていたようだが、内心「大丈夫か…?」と思ったのではないだろうか)
しかし、この番組を見ると、5月からインターハイまでのわずか2か月間で、彼らが驚異的な頑張りで伸びたことが誰の目にもわかる。
このときのインターハイの成績は、下から数えたほうが早かったが、それでもそこで彼らが見せた演技は、ドキュメンタリー番組の締めとしてはこのうえないものだったし、だからこそ、番組を見た人にも共感され、優秀賞受賞にもつながったのだろうと思う。
ただ。
この番組が、2011年のインターハイで終わっているのがじつに惜しいな、と私は思った。
なぜなら、甲府工業高校の快進撃は、ここがスタートだったのだから。
この番組の中で、インターハイの本番直前に、雨宮監督が、チームの1、2年生に向かって言う言葉がある。「1、2年生にとっては、ここは通過点でしかない」・・・まったくその通りだった。
2011年インターハイ終了後、当時の3年生を抜いた新チームで挑んだ2012年3月の高校選抜大会では、得点こそ15.950とインターハイでの15.900をわずかに上回るにとどまったが、その演技からは、インターハイのころとはまったく違う迫力が伝わってきた。地元・山梨県で開催された選抜大会という地の利もあったかもしれないが、その利をプレッシャーにしてしまわないだけの力を彼らはつけていたのだ。
そして、2012年8月の福井インターハイでは、試技順1番ながらも素晴らしい演技を披露。得点16.650は試技順の不運もあったのでは? と思わせるほどのインパクトのある演技だった。それでも、1年前には「夢の16点台」だったのに、それを軽々と彼らは超えてみせた。
テレビ山梨の番組を改めて見てみると、1年前には、この程度のチーム(失礼な言い方だが)だったのがウソのようだ。福井インターハイでの甲府工業は、もう「人数不足のため休止していた部活動を再開してやっとインターハイに出てきたチーム」ではなかった。まだトップチームでこそないが、そこを目指して、一歩一歩進んでいるチームだった。
そして、2013年1月。
長野カップで、私はまた彼らに会うことができた。
すでに3年生は抜けた新チームになっている。
甲府工業の現在の3年生には2年生のころから中心選手だった内田諒がおり、彼の抜けた穴は小さくないだろうと思われた。
それでも、長野カップで彼らは、3位になった。
公式戦ではないとはいえ、構成8.800、実施8.400=17.200。
ついに17点台の壁も突き破った。
写真を見てもわかるとおり、静止した状態で見ると、トップチームにひけをとらない。
彼らは、じつに美しいチームに成長している。
2011年のドキュメンタリーで、当時は団体メンバーに入っていなかった1、2年生を週末ごとにやってくるOB達が指導している場面があった。
雨宮監督の恩師であり、前監督の原田氏が、「自分が監督だったころは、選手以外の子の指導はほとんどできなかったが、今は見てくれるOB達がいて、ほんとうにありがたい。」と言っていたが、今の甲府工業を支えているのは、そのころOBの指導を受けていた子達だ。
すぐにレギュラーにはなれなくても、また、頑張っている先輩達がすぐには結果を出せなくても、ずっと頑張ってきた。そんな彼らが、今、「ここまで」きている。
2013年、甲府工業はもうひと伸びを見せてくれるに違いない。
男子新体操は、こういうチームがいるから面白いのだ。
テレビ山梨にも、今年はぜひ「新体操ボーイズ2」を制作してもらいたものだ。前回を上回る感動が、そこにはきっとあるはずだから。
<撮影:清水綾子>