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【社説】

続く日照不足 食卓も曇り空になる

 かつてない春の日照不足。青果物の生育不良は、農業、農家だけではなく、台所や家計を直撃する問題だ。果物や野菜は工業製品とは違う。お日さまの賜物(たまもの)であることを、消費者もかみしめたい。

 「田んぼも畑も、お天道さま次第だで…」

 ベテラン農家のつぶやきが、実感を伴ってよみがえる。

 四月上旬の日照量が一九六一年の統計開始以来最小になる観測地点が多く出て、野菜や果物の生育に影響を及ぼしている。

 日照不足の原因は気候変動だ。

 相次いで通過する低気圧や前線の影響で全国的に天候が不安定になり、四月上旬の日照量は愛知、和歌山、三重などで全県的に平年の三割以下、和歌山や奈良では5%前後のところもある。

 気象庁の予報では、五月上旬にかけても、雨や曇りの日が多く、特に太平洋側で降水量が増える見込みという。

 長雨は、野菜や果実の出荷に直接響く。三月末から四月にかけての日照時間が平年の三割程度しかない高知県では、ハウスのキュウリやナス、ピーマンなどの育ちが悪く、湿度も上がって病気の被害も出始めているという。

 消費地にも影響は表れている。

 東京、名古屋など大消費地の青果市場でもナスやキュウリ、ニンジンなどが品不足の様相だ。

 四月は野菜や果樹にとって、大切な時期である。

 たとえば中部地方ではスイカの受粉時期になる。受粉の遅れは、そのまま出荷の遅れにつながっていく。

 スイートコーンなど今植え付けるべきものは、湿った土で根腐れを起こす恐れがある。

 ニンジンのような根菜は、雨が続くと掘り採りの収穫作業ができなくなる。

 露地ものの春キャベツやブロッコリーなどへの影響も心配だ。

 どうすればいいのだろうか。

 愛知県農業総合試験場は「まず圃場(ほじょう)をよく観察してもらうこと。病虫害の兆候があれば、早めの防除、農薬散布に努めること。圃場の排水に気を配ること−」などを挙げ、農家に注意を促してはいる。

 しかし、雨が続くと薬液は流れ、散布作業も困難になるなど、抜本的な対策はないという。

 異常気象は私たち消費者にも、決してひとごとではない。結局は家計に響く。曇天の空と食卓を見比べて、農家の労苦にしばし思いを寄せてみたい。

 

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