堀込泰三 - 人生,仕事術,就職・転職,生活 10:00 PM
会社は「家族」でも「友達」でもない。覚えておきたいキャリアの教え
新入社員時代のワクワクが収まると、誰もがあることに気づきます。会社は、友達ではないのだと。それがスタートアップであれ大企業であれ、あなたは単なるリソースに過ぎません。つまり、信じられるのは自分しかいないのです。そこで、いつでも冷静さを保ち、自分のキャリアをコントロールするための方法をお伝えします。
もちろん、社員を大切にしている優良企業も存在します。でも、それは非常に珍しいケースであり、そういう会社に就職できた人はラッキーだといえるでしょう。
多くの人が働く会社は、社員のことをあまり考えてくれません。そもそも(米国では)、自ら退職する場合は2週間前に会社に知らせなければならないのに、会社側からの解雇は、事前通告なく言い渡すことができるというダブルスタンダードがまかり通っているのです。ひどい話ですが、自分の味方は自分しかいないことを思い出すリマインダーとして、心に留めておきましょう。
人事部の仕事は社員を守ることではなく、会社を守ること
人事部が助けてくれるはず、と思いたい気持ちもわかります。残念ながら、それは必ずしも真実ではありません。多くの会社の人事部は、社員の書類作業、福利厚生、給与、研修、モラルなどを担当しています。別の言い方をすれば、社員が仕事に集中できる環境を整えること、魅力ある給与で人材を集めること、社員の人間関係悪化や悪いボスなどの問題をなくすことが仕事なのです。つまり、人事部は会社のニーズと利益のために存在しているのであり、あなたの利益は考慮されません。
個人レベルであれば、人事部の中にもあなたを助けてくれる人がいるでしょう。でも、そういう人に出会うのは至難の業。出会えたなら、個人的に相談に乗ってもらいましょう。
人事部に不信感を持つ必要はありませんが、少なくとも問題が起きたときの駆け込み寺にはなりえません。自分の裁量ではどうにもならないことがあり、不満を述べたからと言って、必ずしもその根源である人にフィードバックされるわけではないのです。ですから、他人に相談するよりも、まずは自力で問題解決にトライしてください。それは時に難しく、労力のムダになることもあります。それでも、自己主張をして社内の問題に自力で対処する方法を学んでおけば、今後ふりかかるあらゆる問題に対処できるようになるでしょう。
いつも転職のオファーを持っておく
昔、ありがちな「モチベーションイベント」で、ある人物による成功の秘訣を聞きました。「もっと一生懸命働け」といった、よくある類の話でしたが、1点だけ、印象に残っている言葉があります。それは、「他社からのオファーを受けている社員は最高の仕事をする」というものでした。そのような社員は自己主張が強く、満足度も幸福度も高いのだと。その理由は、求められているから。自分のスキルが求められていて、他の選択肢があるため、キャリアを自分で選択していると感じられるのです。
雇用主によっては、このようなアイデアを好まないかもしれません。でも、正直そんなことは、あなたに関係ありません。筆者はかつて、社員が転職活動をしていないかを、上司が逐一チェックする会社にいたことがあります。そのようなやり方は、あなたを会社に縛り付けようとしているだけ。騙されないように気をつけてください。
バレないように転職活動をする必要があっても、働いてみたい会社をリサーチしてみてください。そこで働く人に面接してもらったり、軽いお茶でもして、話を聞きましょう。LikedInやその他のSNSでつながりましょう。オファーをいくつかもらいましょう。オファーは契約ではないので、ハロウィンのトリック・オア・トリートのように、たくさん集めて回っても問題ありません。ポイントは、自分はまだ求められていることを知ることと、業界を知ることにあります。結果として、仕事で役立つ人脈が得られるというおまけも付いてきます。
転職後でも新しい仕事を探し続ける
新しい仕事を得たからといって、さらに新しい仕事を探すことをやめないでください。転職直後は、あなたにとっては新しいチャンスでも、会社にとっては新しいリスクなのです。「最後に雇用された者が最初に解雇される」という諺にもあるように、誰かが解雇されるとしたら、それはあなた。それに、多くの仕事には、試用期間があります。あなたがどんなにうまく行っていると思っても、予算削減によってふたたび転職市場に戻らなければならないこともあるのです。
雇用されたばかりの新人は、経験を持つ社員よりも脆弱です。つまり、転職初日から、世の中の動きに敏感でいることが重要なのです。
人脈は思いのほか重要
人脈という考えをあざ笑う人がいます。確かに、薄っぺらい響きがしますが、実際はそうではありません。過去の記事でも書いたように、人脈は作られた見せかけのものではなく、仕事を通じてお互いを知った友人であり、支え合う関係なのです。解雇や予算削減の多いこの時代に、それほど価値あるものはないでしょう。
先日、かつての同僚とランチをしました。まだいくつかのフォローアップメールが残っていますが、もし「解雇テスト」を受けるとしたら、私は喜んで、彼の名を挙げるでしょう。解雇テストとは、今日あなたが解雇されたとして、誰に仕事またはアドバイスを求めるかを問う質問です。10人挙げられないようなら、昔の同僚や友人に連絡をしてください。挨拶をして、いま何をしているかを聞き、相手が転職をしたければ助けてあげられると伝えるのです。実際にしてあげられることは少ないかもしれませんが、あなたの会社の求人情報を軽くチェックするだけ、あるいは友人の友人からの伝言ゲームであっても、仕事で困っている人には、驚くほどの助けになるものです。
人脈とは、そうやって築くもの。かつての同僚をSNSでフォローして、誰かが転職したら祝福する。業界での仕事ぶりをフォローする。子どもが生まれたり家を買ったら祝福する。つまり、いい友達でいることです。逆に、あなたのシチュエーションが悪化したとき、このような人脈の存在がどれほどの助けになることか。必ず助けてもらえる保証はありませんが、あなたも友達を助けられる存在であるなら、確率はぐっと高まると思いませんか?
辞め時を知る
辞めることがベストな場合もあります。これは大事な選択肢のひとつなので、キャリア関連のどんな記事にも書いています。あなたができることは、自分が会社を求めているよりも強く、会社に求められているかどうかを知ること。その関係が逆になっている場合、何らかの対策か、新しい仕事の検討が必要です。そのためにも、新しい仕事をすぐに探せないような場所に閉じ込められないこと。いつでも自由に動けるポジションにいるだけで、日々の仕事の嫌な部分を乗り越えられることもあるのです。
とはいえ、誰かの問題に対して「すぐ辞めればいいじゃん」と言うのはあまりにも短絡的。みんなお金が必要なので、急げばいいというわけではないのです。落ち着いて、自力での問題解決を試みつつ、それに固執しすぎないこと。そこにはいつもドアがあって、そのドアを出て二度と戻ってこないという選択をするのもあなた次第なのです。
Alan Henry(原文/訳:堀込泰三)
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