真の敵は他にいる!? 「セブンVSミスド」ドーナツ戦争の行方を読み解く

■ミスドの真の敵とは?
では、立場を変えてミスタードーナツからこの争いを考えてみよう。では、ミスタードーナツの敵はどうなのだろうか。これもセブン-イレブンではない。もちろん、見た目が酷似したドーナツであるから、販売への影響がゼロかと言えばそうではないだろう。しかしネット上では、見た目は同じでも味や食感からミスタードーナツを評価する声が多く、中には「さすがミスド」と評価を再認識するものまである。

 

そもそもミスタードーナツの場合、イートインスペースも広いので、そこで飲み物を飲みながらドーナツを食べたり、飲茶を食べたりできる。また、コンビニのドーナツとは異なり、培われたブランド力があるので、お土産にテイクアウトする人たちも少なくない。店舗は都心のど真ん中よりも、少し離れた郊外近くに多いのも特徴だ。高校生が友達やカップルでイートインの利用をしたり、家に帰るお父さんがお土産で購入したりと、セブン-イレブンとは異なる利用法が見られるのだ。

 

では、ミスタードーナツの敵とはなんだろうか。

 

キーワードは「地元の希薄化」だ。その裏にあるのは「電車の直通運転が増えたこと」と、「イオンをはじめとする大型ショッピングモールが増えたこと」だ。

 

まず「電車の直通運転が増えたこと」について。関東で言えば、埼玉から渋谷経由で横浜まで電車1本で行けるようになったり、茨城方面から上野を経由して品川まで行けるようになるなど、ここ数年、路線がどんどんつながっている。鉄道がつながることで、都心部だったり、他の土地へのアクセスが良くなる。

 

これは郊外に店舗を多く持つミスタードーナツにしてみたら嬉しいことではない。少し前であれば、郊外にする住む人が、自宅に一番近い駅前でミスタードーナツを購入して家に帰っていたものが、アクセスが良くなったことにより、都心部で話題のお菓子やケーキを購入して帰りやすくなるのだ。また高校生などのデートでも同じことが言える。かつては、地元のミスタードーナツでデートしていた彼らも、アクセスが良くなったことで、地元にこだわらなくても良くなっているのだ。これはミスタードーナツにとってはあまり歓迎できない現象だ。

 

次に「イオンをはじめとする大型ショッピングモールが増えたこと」だ。スーパー、アパレルショップ、書店、映画館、飲食店、ライフスタイルショップなどが入った大型ショッピングモールが郊外に次々にできたことで、ミスタードーナツと同等以上にオシャレで魅力的な話題のスイーツショップも出店してきた。その結果、今までミスタードーナツのメイン顧客であった人たちが、こちらの方に流れてしまう現象が出始めているのだ。

 

ミスタードーナツのライバルはセブン-イレブンよりも、クリスピークリームなどの競合相手よりも、ミスタードーナツが置かれた周辺環境の変化なのだ。

 

■まとめ
表面的に見れば「セブンVSミスド」という構図に見えるこの争い。消費者からすれば「セブンとミスドを食べ比べてみよう」という新しい楽しみ方ができるだろう。しかしマーケティング視点で本質を見ていくと、必ずしも「セブンVSミスド」という構図ではない。むしろこの争いは、ドーナツ市場における限られたシェアの奪い合いというより、セブン-イレブンの参入によってドーナツ市場全体が活性化される効果をもたらすのだ。その結果、より美味しいドーナツが開発されたり、消費者がドーナツを食べる頻度が増えたりというプラスの効果が期待できるのだ。

2015年04月17日

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