聞き手古屋聡一
2015年4月18日17時32分
大学生らの就職活動が本番を迎えた。経団連の方針で解禁時期が3カ月後ろ倒しになったが、卒業予定の学生を年度ごとにまとめて採る新卒一括採用の光景は変わらない。グローバル化が進む今、日本流の仕組みに合理性はあるのか。
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新卒一括採用が続いているのは合理性があるからです。企業は一定期間に必要な人材を選べて多数採用でき、学生側も卒業後すぐに安定収入を得られる。その本質を「入社後の徹底した人材育成を前提にした、若者の未来にかける採用」と読み解けば、少し見方も変わるのではないでしょうか。
トヨタ自動車とリクルートが共同で設立したコンサルティング会社で働いていたことがあります。トヨタ生産方式の考え方を様々な業種に応用する会社でしたので、トヨタのベテラン社員と接する機会が多くありました。「大切な仕事とは何ですか」という私の質問に対して、必ず最初に「人を育てることです」という答えが返ってきました。このように多くの日本の大企業は、会社ぐるみで人材を育てることに力を注いでいます。
日本にイノベーション(技術革新)が起きないのは、画一的な雇用制度が原因という批判がありますが、日本経済の競争力を高めているのは、スティーブ・ジョブズ氏のような天才ではなく、名も無き普通の人たちです。目立たなくても仕事をきちんと仕上げる普通の人が大勢いるから、日本の商品やサービスの水準は高く、世界中の信頼を勝ち得ています。ゼロから育てられた普通の人たちが強みなのです。実際、トヨタをはじめ日本の大企業は最高益を更新して絶好調です。
大手企業の新卒採用者を見ると、真面目でコツコツから、突破力が強そうなタイプまで幅広い人材がそろっています。新卒一括採用を通して、多くの企業が人材の多様性を確保しようとしています。個性を殺すようで、個性尊重の仕組みなのです。最近は、新卒採用と並行して既卒者に門戸を開く日本企業も増えています。
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