占い師だって
場末の岡場所の年増が、若い男に惚れられて、しまいには「あたしだって一度でいいから女の花を咲かせたい」と思ってしまうと、
あちこちからネタを仕入れては、人から銭をかすめている岡っ引きが
「身の程知らずってえのが大嫌いなんだ」と口をゆがめて吐き捨てた。
また、
身寄りのない娘が好き合った男と祝言を挙げることになって
「生まれたときから、人にいわれました。お前の父親のせいでみんな不幸になったって。
はじめてです、お前のおかげで幸せになったっていわれたのは、ご新造さん」
(NHK「慶次郎縁側日記」)
いまはみんな幸福になる権利があると憲法に書いてあります。
でも、たしかに身の程知らず、というのもあるような。
占いにすがれば、幸福になれると信じてしまう。
占いというのはきっと、カウンセリングのルーツなんではないでしょうか。
一対一で向き合って座り、他人のいないところで、そっと語りかける。
聞いてる方は、言われたとおりやれば物事がうまくいくような気にさせられる。
今までの自分の考え方をガラリと変えた考え方を教えてくれます。
自分の考えとのギャップが人気の秘密でしょう。
周りの人は「いいかもしれない、そうしてみたら」と無責任なことを言ってけしかける。
でも、何をやっても周りから相手にされてこなかった人を受け入れ、役に立っていると言ってあげることも大切。
占い師が身の程知らずの高望みをする人の心をつかむのも、
隣人が周りから全然認められていない人に優しいことばを掛けると、すっかり信頼されるのも、
満たされていない人の心に響くものがあるのでしょうね。