宗教を重視しない日本では、大家族と地域社会、学校が大きな役割を果たしてきた。だが、近年は核家族化や地域社会の弱体化が進んでいる。加えて戦後、「修身」の授業をGHQ(連合国総司令部)が軍国主義に結び付けて禁止した。
後に、道徳の授業は復活したが、受験勉強中心の教育では、教師も生徒も親も道徳教育に関心が薄い。いじめや自殺、殺人など、子供の非行の一因であることは確実だ。
従って、道徳の授業を強化する方向には大賛成だ。「愛国心の強制だ」などと騒ぐ人々は、日本以外の某国への愛国心が強すぎるとみえる。
ベネット博士の本は『魔法の糸−こころが豊かになる世界の寓話・説話・逸話100選』(実務教育出版)として翻訳本も出版された。ただ、そもそも原著が、日本の修身の教科書のまねだという噂もある。問題はどちらが先かではなく、日米両国とも道徳教育が不十分だという現実だ。
道徳教育の元祖であろう「論語」が生まれた大陸の権力者や観光客を見ると、心からそう思う。
■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。80年、法学博士号・経営学修士号を取得し、国際法律事務所に就職。83年、テレビ番組「世界まるごとHOWマッチ」にレギュラー出演し、一躍人気タレントとなる。現在は講演活動や企業経営を行っている。最新刊は『不死鳥の国・ニッポン』(日新報道)。