世界一発行部数が多い書物は聖書である。60億冊から3880億冊まで諸説あり、実数はよく分からない。明治維新以降、キリスト教徒が1%を超えたことがない日本でも、過去に約3億5000万冊の聖書が頒布・販売された。
大ベストセラーはよく「聖書の次に売れた」などと評される。近年では『ハリー・ポッター』(シリーズ4億5000万部)や、『ダ・ヴィンチ・コード』(8000万部)などが浮かぶ。
一番売れた日本語の小説は吉川英冶『宮本武蔵』の1億2000万部だそうだ。漫画では、1位は尾田栄一郎『ONE PIECE』(3億8000万部)、2位がさいとう・たかを『ゴルゴ13』(2億8000万部)…と続く。
さて、米国には全832ページ、厚さ約5・5センチ、重さ約1・2キロもあるユニークなベストセラーがある。「第2の聖書」とも呼ばれ、3000万部も売れ、私も1990年代に購入したこの本のタイトルは『The Book of Virtues』、道徳読本である。著者のウィリアム・J・ベネット博士は、レーガン政権時代に教育長官を務めた。
われわれが身に付けるべき「徳目」を10個選び、詩や寓話(ぐうわ)、説話、名著などを引用して、学べる構成である。10個の徳目とは、「自己規律」「思いやり」「責任」「友情」「勤勉」「勇気」「忍耐力」「正直」「忠誠」「信仰」だ。
米国では伝統的に家庭と教会が道徳教育を行う。家庭の道徳教育として、子供にベッドで読み聞かせるのに合うため、巨大な本が大ベストセラーになったのだ。