《日本経済に関する報告書を発表し、ことしの経済成長率の見通しを1%に上方修正したうえで、成長戦略の実施が遅れを取っているとして、女性の労働参加などについて抜本的な構造改革を至急強化する必要があると提言しました》では、経済成長が続く前提でとしか読めません。
OECDが主な提言の先頭に「労働力の減少傾向を遅らせる」を置いた意図は、上のグラフから明らかです。このままでは推定労働人口が2011年の6千万人から2030年には5千万人ほどに減ってしまいます。これでは多少の技術革新があっても大幅な経済縮小は免れません。
報告書はこう述べます。《労働力人口の減少を緩和するため、男女平等の推進が必要である。男性の労働参加率は85%と女性よりも20%ポイント高い水準にある。もし女性の労働参加率が2030年まで男性の労働参加率と同レベルに追いつけば、労働供給の減少は5%に留められ、労働参加率に変化がなかった場合に比べ GDPは約20%高まるだろう》。つまり現在の歩みであるグラフの赤い線から青い線に移行するのですが、なにせ相手の政府は女性は家庭で子どもを育てるのが美風と考える保守的な与党幹部がいる安倍政権です。
実際にこの大変革は容易ではありません。《雇用における男女間格差は、出産後労働市場に残る女性が38%に過ぎないという事実に表れている。日本は子育てや学童保育に対する支出(対GDP比)がスウェーデンや英国の3分の1に過ぎない。ただし、支出を増やすためには税もしくは社会保険料収入が必要》であり、子育て支援の拡充は遅々として進みません。もう一つの労働力確保手段である外国人労働者の活用問題では、近年の日本政府のやる気の無さにさじを投げている感があります。
2050年までのロングスパンで年齢別3区分の推移を見たグラフです。15〜64歳の生産年齢人口はOECDグラフにある2030年の先にもう一段さらに急速な減少が待っています。国立社会保障・人口問題研究所の推計は出生率中位を前提としていますが、最近の非正規雇用拡大は若い男性から結婚の機会を奪っており、出生率改善どころか更なる低下も考えられます。第474回「先進国で稀な人口減少と高齢化をグラフで見る」で先進7カ国でドイツ以外は日本しか人口が減らない特異さ、それを放置している政府の無為無策を描きました。OECDの対日審査提言が具体化される可能性は薄いでしょう。