フランス:人種差別対策130億円かけネット監視機関創設
毎日新聞 2015年04月18日 19時38分(最終更新 04月19日 01時22分)
【パリ宮川裕章】1月のシャルリーエブド紙襲撃事件などの影響で、フランスでイスラム系移民やユダヤ教徒への差別意識が高まっていることを受け、バルス仏首相は17日、人種差別的な発言やインターネット上の書き込みなどの取り締まりを強化する方針を明らかにした。
総額1億ユーロ(約130億円)をかけ、新たなネット監視機関を創設するとともに、学校現場で移民やユダヤ人迫害の歴史関連施設の見学などを義務化する。
現在、差別的な発言や書き込みには、報道関連法の罰則があるが、適用例は限定されている。そこで刑法に禁止条項を設け、一般人の人種差別発言やネット書き込みを罰することができるようにする。また、ユダヤ系商店を狙った強盗など、他の犯罪に人種差別的な発言などが加わった場合は刑を重くする。
これまでもインターネット上の差別的な書き込みを監視し、削除する機関はあったが、書き込んだ個人を特定し、追跡する専門機関を新たに設ける。仏議会では現在、最新技術による通信傍受を含んだ情報収集法案を審議中で、表現の自由や個人情報の保護という観点から反対意見もある。だがバルス首相は「ネット上の無策は終わりだ」と述べ、差別監視の大幅な強化を示唆した。
また教育分野での対策も進め、小、中、高校それぞれの段階で、移民歴史博物館や、奴隷制度廃止博物館、第二次世界大戦中のユダヤ人虐殺の関連資料館などへの訪問見学を義務化する。
民間団体の調査によると、1〜3月にフランスで起きたイスラム教徒に対する攻撃や差別は、前年同期の約6倍に上った。ユダヤ教徒に対する攻撃や差別も2014年は前年に比べて倍増し、イスラエルへ移住する人が激増している。ユダヤ教徒を敵視するイスラム過激思想の広がりや、イスラム過激派と一般のイスラム教徒の混同などが背景にあると指摘されている。