弱視の子どもが使いやすいノートを、自身も弱視者である東京都杉並区の伊敷(いしき)政英さん(38)がつくった。ノートの名は「KIMINOTE(きみのて)」。表現する楽しさを知り、自分のこと、弱視のことを社会に伝えられるようになってほしい。そして、君の手でよりよい社会を作ってほしいという願いを込めた。

 障害者向けのウェブサイト制作を支援する伊敷さんの矯正視力は右目が0・02、左目は光を感じる程度で、幼いころからノートへの筆記に苦労してきた。

 普通の市販ノートの罫線(けいせん)は細く、色が薄い。弱視者にとって見づらく、文字がはみだしたりまっすぐ書けなかったり、なかなかきれいに筆記できなかった。弱視者向けのノートはあったが、大人向けの地味なデザインで子どもが喜ぶ絵表紙のものはなかった。

 昨年、弱視の女児がいる知人から「市販の弱視対応のノートはかわいらしくなく、学校に持っていきたくないと言っている」と相談を受け、自分で作ることにした。ネットで資金を募るクラウドファンディングで呼びかけ、制作費用115万円を確保。罫線の色や太さなど、実際に弱視の子どもたちに使ってもらって仕様を検討した。

 完成版は見やすい濃緑の太い罫線で、表紙はケーキを作る女の子と羊のイラスト、ロケットと小惑星探査機の写真をあしらった4種類を用意した。弱視の子は顔を近づけてノートを見るため、めくった時にページの角が目に入ってしまうことがある。目への影響をやわらげるため角を丸くした。これまで2800冊作り、全国の盲学校や弱視学級にも贈った。

 伊敷さんは大学生の時、サークル仲間全員で書き込むノートに自分だけ書き込めず、疎外感をもったことがあった。「弱視の子どもとそうでない子どもが、このノートを連絡帳などで活用し、互いを理解するきっかけになれば」と願う。

 B5判、各540円。問い合わせは専用ホームページ(http://kiminote.jp/別ウインドウで開きます)。(前田智)