裁判員:「心に負担」ずっと 経験者7割超に「あった」

毎日新聞 2015年04月18日 12時08分

 ◇「裁判員経験者ネットワーク」のアンケート

 裁判員を務めて感じた心の負担について、裁判員経験者や弁護士らで作る「裁判員経験者ネットワーク」(東京都千代田区)がアンケートをしたところ、経験者の7割超が何らかの負担を感じたと回答した。経験者の心理面に特化した初めての調査とみられ、裁判が終わってから負担を感じる実態も浮かび上がった。経験者らは「裁判終了後も継続的な支援が必要だ」と指摘している。【島田信幸】

 ネットワークに登録している経験者を中心に昨年12月から調査を始め、42人から回答を得た。「心の負担を感じたか」の問いに30人が「あった」と回答。具体的な内容(複数回答)については30人全員が「人の運命を決めること」を挙げ、「守秘義務の範囲が理解できない」が22人、「残酷な証拠写真、証言」が18人と続いた。

 「どのような負担軽減策が必要か」の質問には、23人が「制度の教育や広報を増やす」と答え、「守秘義務の範囲を明確にしてほしい」との回答も22人に上った。最高裁が電話相談を受け付けるために設置している「裁判員メンタルヘルスサポート窓口」を利用したのは2人だけだった。

 負担を感じた時期も尋ねたところ、「審理後しばらく経過してから」と答えた人が14人いた。2010年7月に東京地裁で強盗致傷事件を担当した会社員の小田篤俊さん(44)もその一人だ。

 被告は起訴内容を争わず、懲役13年の求刑に対し同8年6月を言い渡した。判決を聞いて涙する被告に「納得してくれている」と感じた。その後はどこからも連絡がなく、気になって調べたところ、被告は控訴、上告していた。「判決の時は社会復帰を応援する気持ちだったが、被告のその後を知り、言い渡した刑が正しかったのか、初めて心の負担を感じた」と明かす。

 最高裁も経験者にアンケートを実施しているが、審理の分かりやすさなどを主に尋ねており、負担に特化した調査は行っていない。同ネット共同代表世話人の牧野茂弁護士は「審理中だけでなく、その後に負担を感じる人がいることも分かった。負担を軽減する具体策を検討する必要がある」と指摘する。

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