防音校舎:埼玉・所沢市長が翻意 2校エアコン設置を表明

毎日新聞 2015年04月02日 21時01分(最終更新 04月02日 22時54分)

小中2校へのエアコン設置を明らかにする藤本正人・所沢市長=2015年4月2日、海老名富夫撮影
小中2校へのエアコン設置を明らかにする藤本正人・所沢市長=2015年4月2日、海老名富夫撮影

 航空自衛隊入間基地に近い防音校舎の小中学校にエアコンを設置すべきかどうかを巡り住民投票に発展した埼玉県所沢市で、当初設置しない構えだった藤本正人市長が2日、騒音の程度が高いとされる2校で設置することを表明した。投票では設置賛成が反対を上回っていた。自治体住民全体の利害に関わらない身近な問題を巡る住民投票が行政トップの方針転換を後押ししたケースとして注目を集めそうだ。

 東日本大震災後に就任した藤本市長は2012年、「震災を踏まえ、快適な生活を見直すべきだ」などとして06年に決まっていたエアコン設置方針を撤回。これに対し、設置予定校の保護者らは「騒音で窓を閉めると気温は40度を超す。開けると授業が聞こえない」と訴えて署名を集め、住民投票が今年2月15日に実施された。

 住民投票には、多数票が市の全有権者数の3分の1以上の場合には市長や議会は結果の重みを斟酌(しんしゃく)する−−との条件が付いていた。開票され、賛成票は反対票を上回ったが、投票率31・54%で条件には遠く及ばず、エアコン設置は市長の裁量に委ねられていた。

 藤本市長は2日の記者会見で「住民投票で賛成が反対を上回ったことも考慮し、防衛省が航空機騒音の激しいと認定する『第1種区域』内の2校への設置を決断した。来年度中に工事に取りかかれるよう手続きを進めたい」と述べた。

 住民投票の対象は防音校舎28校だったが、2校以外は「1種区域」外。藤本市長は残る26校について「財政状況などを考慮しながら検討するが、ほかに教育現場としてやるべきこともあり、優先順位は低くなる」と、当面の設置は否定した。住民投票の請求代表者、関原明子さん(45)は「市は財政状況や他市の状況などを考えながら、前向きに検討していただきたい」と26校への設置にも期待を寄せた。【海老名富夫】

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