フトンで電話出演じゃねエ(最近の新譜など感想アリ)
kenzee「チョリ~ス!」
司会者「ハ?(なんかムカツク)」
kenzee「ホレ、ボクぐらいの作家チャンともなると、CX系の仕事もジャンジャン入ってくるジャン」
司会者「この4月1日からスタートしたフジテレビ資本のネット放送、「ホウドウキョク24」。
報道番組専門のストリーミング放送。このチャンネル独自の番組を制作・放送していて、フジの地上波の再配信とかじゃないんだよね。ネット放送とはいえ、ちゃんとお台場のフジのスタジオで制作されている。このチャンネルの平日ゴールデンの時間帯に放送されているのが「あしたのコンパス」という番組でメインキャスターが速水健朗さん、古市憲寿さん、津田大介さん、佐々木俊尚さんという、「大人向けトークラジオLIFE」みたいな人選だ。昨日の金曜日は佐々木さんがメインキャスターの曜日でその中で佐々木さんが新刊本を取り上げるコーナーがあるんだね」
kenzee「で、まあ例のボクのネオな本が取り上げられましてネ、もう佐々木チャンとも意気投合で。もうザギンでシースーでも行きますかぐらいのノリで。ギロッポンのチャンネーのビーチクをメーナー的な展開もアリかとか」
司会者「イマドキそんなベタベタなテレビ業界人おるか!」
↑ぐらいのいい調子の記事をアップする予定であった。しかし・・・
司会者「イヤーkenzeeさん、グダグダでしたな、「あしたのコンパス」の電話出演!」
kenzee「(ボソーとキツネウドンを食べながら)ウン・・・。喋るのってムズカシーね。オイラ、こう見えても昼間は人と対話する仕事してるんだけど・・・」
司会者「オンエアを観ていない人のために説明すると、メインMCの佐々木俊尚さんとフジテレビアナウンサーの大島由香里さんでまずオイラの本、「ネオ漂泊民の戦後」を紹介されるのだ。そこはさすが佐々木さんで「この本は日本の近代化の歴史のなかでいろんなところに歪が生じている。これを歌謡曲の歌詞とかアイドルブームとかなぜか連合赤軍事件と絡めて考えるという変わった論考で」みたいに手短かに解説いただいた。「それでは著者の方と電話が繋がっております。中尾さん、どうぞ」
kenzee「ワー」
司会者「なんかワーって言ってなかった?」
kenzee「真っ白になった。気がついたら「中尾さん、スイマセン、あと5秒です」「ア、アハードーモー」「著者の中尾さんでした」エンディングみたいな出始めの頃のダチョウ倶楽部みたいになってた」
司会者「著者なのに」
kenzee「オンエア観たら、まあ、アップアップしてますワ。あと、オイラこんなに関西弁イントネーションキツかったのかと思った。標準語で喋ってるつもりだったのに」
司会者「しかもね、どうも佐々木さんの金曜日はほかの速水さんとか古市さんの曜日よりワリとハードめの話題が多いみたいなのね」
kenzee「オイラの前が酒税法改正がテーマでなんかエライ大学の先生みたいな人がでてきて解説するってマジメな話だったのよ」
司会者「その話のあとのコーナーで「日本の戦後近代を考える」本を紹介するのは順当な流れだよな」
kenzee「ところがその著者が「ミャーッ」みたいなヤツでサ・・・」
司会者「まさかエライ大学教授のあとにこんなポンポンチキブログ芸人が登場するとはね」
kenzee「アハハー。で、向こうはネット放送いうてもちゃんとしたお台場のスタジオでしょ? オイラ自分の部屋のフトンの上に正座してスマホで喋ってたからネエ」
司会者「SFな光景だな」
kenzee「パジャマでね。その時点で負けとるワナ。教訓がひとつあります。たとえ電話出演が姿が映らないからといってフトンに正座はダメね。一応イス的なものに座るとか、あるいは立って喋るとかしないと「ウワー」ってなりますよ。ほいで、フトンンの上で「ワー」喋って「あと5秒です」言われて「ありがとうございましたー」ってADの人に言われて。ハっと我に返って」
司会者「で、そのフトンで寝ます」
kenzee「寝れるか! ホンット、日々勉強ですヨ。しかし、自分の書いた本の話するのってムズカシーよね。昔、オイラが高校生ぐらいの時、村上龍が文芸誌で新刊のインタビューで「書いたのは結構前だから細かいことはもう忘れた」とか平然と言っててオイ!とか思ったものだが、齢40にしてちょっとその気持ちわかったカモ。まさか誰もアーカイブなんかしてないと思うけど、決してあのコーナー、You Tubeなどにアップしてはいけないよ。オイラ、自殺しちゃうからネ」
司会者「これで終わるのもアレなんで、最近聴いた音楽の話でもしたらどうだい」
・Sugar's Campaign「FRIENDS」(2015年)
kenzee「Avec AvecとSeihoの二人からなるポップユニット。2011年ごろから活動をはじめ、You Tubeにアップされた「ネトカノ」やdancingthroughthenightsとの共同配信となった「ダブルトラブル~4人はなかよし」での「放課後ゆうれい」などが話題となる。女性ラッパー泉まくらの「東京近郊路線図」のプロデュースなどを経て発表された待望のメジャーファーストアルバム。打ち込みのトラックだが70年代後半~80年代初頭のAORをタップリ意識したような甘酸っぱい世界。たとえば一足先にブレイクを果たしている((( さらうんど)))などと比較されるのだろう。しかし、Sugarのほうがよりストレートで屈託のないポップス。「ホリデイ」や「ネトカノ」を聴いて思わずボクは元シュガーベイブのギタリスト村松邦男の83年のソロ「Green Water」を想起したのだった。「このDTM少年!」と呼びたくなるようなAvec Avecのハッキリしたアレンジ。「ホリデイ」などそれぞれの楽器は単純なことしかやっていないのに想起されるのは1979年のニューヨークの街中を初代ウォークマン聞きながら闊歩しているような昭和なシティ感覚。でもボクが一番好きなのはアルバム中でも異彩を放つ「香港生活」だな。都会のメインストリートに曇天が立ち込めたような不穏なトラック。でもチョッパベースがンベンベハネてくれるところにシティ感覚が。ドラムがキックとリムショットだけで重く突き進んでゆく内省的な世界。でもリムショットのタイミングがヘンになるところがあって、普通のAOR好きとは一線を画すであった。ボクがアマゾンなら「あわせて買いたい」の項目に田中康夫「たまらなく、アーベイン」(5月27日新装版発売)を加えたいところだ。そう、シティというよりアーベインなのだ。
・(((さらうんど)))「See you,Blue」(2015年)
kenzee「そんな(((さらうんど)))早くも3枚目のアルバムが届いた。今回はもっともゲストの多い一枚。SugarのSeihoもトラックで参加。ほか、Drian、Kashif、在日ファンクの後関好宏、砂原良徳など。参加ミュージシャンが増え、楽曲もより開放的なものが増えたにも関わらず、最終的には鴨田潤の私小説を読んでいるかのような内省的な世界に身を浸すことになる。やはり鴨田さんの声だろうか。本来、歌謡曲には向かないタイプの声なのに、ワリとエレクトロニカ寄りのサウンドなのに決してヴォーカルにエフェクトをかけようとはしないのだった。やはり(((さらうんど)))のサウンドとは鴨田さんの「声」にその重心がある。決して声量があるわけでもなく、ヴォイスレンジも狭い。彼らのお気に入りの佐野元春のような声だけで圧倒するというタイプのものではない。しかし存在感のある声。そしてバンドよりこのような内省的なマシンのサウンドの中で生きるタイプの声。機械的な、スクエアなビートの中で思春期の少年のような声が佇むのだ。往々にして「少年のような」という形容は「ライ麦畑」のホールデン・コールフィールドをイメージされていることが多いだろう。しかし鴨田さんはサリンジャーは読んでいないような気がする。
・クラムボン「triology」(2015年)
kenzee「5年ぶり、9枚目のアルバム。もうアラフォーとは信じられない鉄壁のロックンロール。たとえば「Rough&Lough」のような曲をキライな人がいるのだろうか。鼻歌のような素直なポップス。私が不思議なのはこのようなおおらかなポップスをあのミトのような神経質タイプのオタク青年が作るという事実である。まあ、ポップスってそういう音楽なんだけどネ。原田さんのヴォーカルもいよいよテン年代の水森亜土のごとき迫力を湛えている。「Scene 3」では新しい試みもある。MOHARAのラップ・・・というよりポエトリーリーディングとクラムボンのジャズトラックとの共演である。素晴らしい声。ジャンプ漫画の主人公のような最大公約数的ヒーロー声。焦燥について語っているのにルサンチマンというか、世を拗ねたようなところがない。「セルアウトしない松岡修造」とでも名付けたくなるような清冽さがある。このMOHARAのポエトリーからオナジミの「はなさくいろは」の新録への流れが嬉しい。「バタフライ」にも実験がある。タラララータラララーという早口になる譜割りが新鮮だ。昔のコムロっぽいというのは容易い。ブリッジの部分でバイテンになる所やサビで言葉はゆっくりと刻まれる。そのコントラストは意図したものだろう。しかし原田さんの滑舌でこんなコムロ曲みたいな早口できたんだね。「yet」でこのアルバムはハイライトを迎える。You Tubeのシングルヴァージョンではストリングスが印象的であったがアルバムではいつもの3人だけの我々のよく知るクラムボンサウンドで再現される。3分29秒でムリな転調が起こる瞬間、このポップスはなにかに勝利したのだとわかる。次の「ある鼓動」は凱歌である。なにも言うまい。ポップス信者の永遠のアンセム。「ビート」とは鼓動のことであった。ところでリアルサウンドのミトのインタビューは読んだけどナルホドナーぐらいだったヨ」
・V.A.「Free Soul.the treasure of hi」
kenzee「最後にオールディーズを。70年代のメンフィスの名門レーベルHi Recordsのコンピレーションだ。橋本徹さん監修で間違いない内容。実はオイラ、ハイってアル・グリーンの「Let's Stay Together」ぐらいしか知らなかったんだけど、あとはたまにサンソンでシル・ジョンソンとかかかるの聴いたぐらいだったんだけど、吟醸酒のようなリズムセクション。ドラム、ハワード・グライムス、ベース、リロイ・ホッジズ、ギター、ティニー・ホッジズ、キーボード、チャールズ・ホッジズ。つまり彼らのリズムが日本酒とピッタンコ!なのである。なんというか身体に優しい有機野菜だけで作った肴と酒、みたいなリズムセクション。このCDだけで何杯でも呑めます。ハイサウンドといえばメンフィスのロイヤル・レコーディングスタジオだが、映画館を買い取って造ったもので元々音楽のスタジオでもなんでもなかったんだね。この建物は傾斜していたようでこれが独特のサウンドの要因となった。あと、このサウンドを作ったのはレーベル主宰者のウィリー・ミッチェルなワケだけどマイクとかドラムのセッティングとかを固定して動かせないようにしていたらしい。だから同じ音がするんだね。モコモコしたイナターいサウンドなんだけど全然飽きない。人間の体温をそのまま音楽化したようなレコード。
ハ~ア~今日はこんなところかな? いい経験だったよ。佐々木さん、大島さん、ホウドウキョク24スタッフの皆さん、どうもありがとうございました!
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