いがらしみきおさん(マンガ家)と読む『私・今・そして神 開闢の哲学』

[掲載]2015年04月12日

いがらしみきおさん(マンガ家) 55年生まれ。『ぼのぼの』『ネ暗トピア』など著作多数。『かむろば村へ』を映画化した「ジヌよさらば」が公開中。=鈴木繁撮影 拡大画像を見る
いがらしみきおさん(マンガ家) 55年生まれ。『ぼのぼの』『ネ暗トピア』など著作多数。『かむろば村へ』を映画化した「ジヌよさらば」が公開中。=鈴木繁撮影

表紙画像 著者:永井 均  出版社:講談社 価格:¥ 778

■世界を開く異様な「私」「今」く

『私・今・そして神 開闢の哲学』[著]永井均(講談社現代新書・778円)

 最初に読んだのは『I【アイ】』というマンガを連載していた2011年ごろ。『I』は「神様はいるのか」が一つのテーマになっています。この本のどこかに、求める答え、神が存在する証拠が書かれているんじゃないかと思って読み始めたんです。
 著者は神さまはいると考えているらしい。でも普通の信仰とはちがう。どこまでも論理的に突き詰めていこうとするから、筋道を追うだけでも大変です。そのうち「私」や「今」に論が移っていく。実はここからがすごい。「私」と「今」は他者や他の時間とはまったくちがう「開闢(かいびゃく)」の特異点だと永井さんは言っています。宇宙の始まりの「ビッグバン」のような一点。そんな異様なものが「私」であり「今」である、と。時間的空間的に、その前後にも世界があるとしたら、神はいることになる。驚きました。開闢とか特異点とか『I』の前に私が描いたマンガ『かむろば村へ』に登場する、自他ともに認める神様「なかぬっさん」とはずいぶんちがう。
 永井さんの他の著作も読んでみました。ニーチェにもウィトゲンシュタインにも噛(か)みついている。この本は論理が追いやすく書かれていることも分かりました。
 私は小さいころから、誰が世界を創ったのか、この世界はいったいなんなのかと、考えてきました。自分は創った覚えがないから、たぶん神さまが創ったんだろう、と。自分が死んでも世界は存続するのか、だとすれば、自分のいない世界にどんな価値があるのだろう。
 いつ親がその秘密を明かしてくれるか、友だちが、先生が教えてくれるのかと待っていましたが、誰もそんなことを話し出そうとはしませんでした。永井さんはそこを考えている、自身の問題として。本物の哲学者だと思います。
 この本と出会い、自分の世界が上方に向けてスポンと広がった。色んな人に感じてきた絶対的違和感も薄れた。少し丸くなった気がします。
 (構成・鈴木繁)

この記事に関する関連書籍

私・今・そして神 開闢の哲学 (講談社現代新書)

著者:永井 均/ 出版社:講談社/ 価格:¥778/ 発売時期: 2004年10月


I【アイ】 第1集 (IKKI COMIX)

著者:いがらし みきお/ 出版社:小学館/ 価格:¥1,008/ 発売時期: 2011年07月


I【アイ】 3 (IKKI COMIX)

著者:いがらし みきお/ 出版社:小学館/ 価格:¥1,543/ 発売時期: 2013年08月


ぼのぼの 1 (バンブー・コミックス)

著者:いがらし みきお/ 出版社:竹書房/ 価格:¥576/ 発売時期: 1987年03月


ぼのぼの 39 (バンブーコミックス)

著者:いがらしみきお/ 出版社:竹書房/ 価格:¥669/ 発売時期: 2014年07月


ネ暗トピア 1 (バンブーコミックス)

著者:いがらしみきお/ 出版社:竹書房/ 価格:¥441/ 発売時期: 1983年08月


ネ暗トピア 7 (バンブーコミックス)

著者:いがらしみきお/ 出版社:竹書房/ 価格:¥441/ 発売時期: 1985年01月


かむろば村へ 上 (ビッグコミックススペシャル)

著者:いがらし みきお/ 出版社:小学館/ 価格:¥860/ 発売時期: 2015年03月


かむろば村へ 下 (ビッグコミックススペシャル)

著者:いがらし みきお/ 出版社:小学館/ 価格:¥860/ 発売時期: 2015年03月


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