◇メッツ7−5マーリンズ
ボルト級ダッシュの「神走塁」!! マーリンズのイチロー外野手(41)は16日、敵地ニューヨークでのメッツ戦で4−5の7回に代打出場し、右中間三塁打を放った。直後の二ゴロに三本間で止まったが、送球がそれたのを見て再び本塁突入。約10メートルの距離を、100メートル走の世界記録保持者ウサイン・ボルト並みのスピードで駆け抜けると、三塁側から滑り込み、捕手のタッチをかいくぐった。いったんはアウトと宣告されたが、ビデオ判定の末セーフに覆り、同点の生還が認められた。
本当に41歳のメジャー最年長野手なのだろうか。7回、イチローは代打で登場。右中間を真っ二つに割る打球で三塁を陥れると、見せ場はここからだった。続くゴードンの二ゴロに「ゴロ・ゴー」で本塁突入。だが、当たりが痛烈すぎる本塁アウトのタイミングに、共同電によれば「僕が(本塁に)行くか、(打者走者を)二塁に生かすのを優先するか」を瞬時に判断し、打者走者のために三本間で急停止した。
だが、本塁送球が一塁側に大きくそれるのを見て、再突入。「力を利用できない。どんだけエネルギーが要るのか」と苦笑した猛ダッシュから三塁側に体をひねって滑り込み、捕手のタッチを数センチの間合いでかわすと、左手をいっぱいに伸ばす。ベースに触れたかどうか判然としなかったため、もう一度体を伸ばして左手でベースにタッチ。主審はアウトを宣告したが、異例の5分44秒にも及ぶ長いビデオ判定の後、セーフに覆った。
恐ろしいのは、そのスピードだ。再突入から約10メートル先の本塁に左手を差し入れるまで、約1・9秒(30回の手動計測による平均値)。2009年にジャマイカのボルトが100メートル走で9秒58の世界記録を樹立した際、0〜10メートルのタイムは1・89秒だった。もちろん、正確な比較は難しいが、驚がくの反射神経と走力に、米放送局CBSスポーツ(電子版)は「10歳年下の選手ばりのスーパー・スライディング。魔法の走塁」と報じた。
走塁技術の高さは、つとに知られるところだ。12年10月8日のオリオールズ戦は、捕手のタッチを2度もかいくぐって生還。米国では「ニンジャ走塁」と大きな話題になり、この日のイチローも「考えてはできない。あのときに近いと思う」と感覚の類似を語った。「あきらめたら絶対に無理。うまくいかない。気持ちが切れたら終わり」と背番号51。今回のボルト級ダッシュも、いずれイチロー伝説の1ページとして語り継がれるのは間違いない。
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