筆談ホステス、選挙カー&マイクなし 電子ボードで“声”届ける

2015年4月18日6時0分  スポーツ報知
  • 電子ボードを使い選挙戦を展開することを明かした斉藤りえさん
  • 電子ボードを使い選挙戦を展開することを明かした斉藤りえさん

 東京都北区議選(19日告示、26日投開票)に出馬する「筆談ホステス」こと聴覚障害者の斉藤りえ(本名・里恵)さん(31)=日本を元気にする会=が17日、選挙カーやマイクなどを使わない「音のない選挙戦」を展開することを明らかにした。ウグイス嬢も動員しない。話すことができない斉藤さんは街頭活動では、小型電子ボードなどを使い、「筆談」で支援者らと1対1のコミュニケーションを図るという。(江畑 康二郎)

 筆談による接客が人気を呼び、銀座の高級クラブでNO1になり、2009年に刊行した「筆談ホステス」はベストセラーとなった斉藤さん。19日から本格的に始まる選挙活動も専ら「街頭筆談」となる。

 1歳から聴覚障害で今も耳が聞こえず、話すこともほとんどできない斉藤さんは、「音を一切使わない戦い」で人生初の選挙戦に挑む。筆談で取材に応じ「私は声を出すことができない上に、区議選ではビラ配布を禁じられている。言語、聴覚障害者は最初から排除されていると思う。この現状に警鐘を鳴らす意味でも新しい選挙の方法を考えました」。選挙といえば、マイクを握り、お願いをするイメージがあるが、今回は一切使用せず、ウグイス嬢や司会者も動員しない。応援議員の演説だけは、例外としてマイクを使う。

 「音のない選挙戦」で武器となるのは、ノートサイズの「小型電子ボード」と裏側にメッセージが書ける枠がある「名刺」。当初、大きなホワイトボードの使用も考えたが公職選挙法に抵触する可能性があり、電子ボードに文字を書き、街頭に集まった支援者らと1対1の「筆談」でコミュニケーションを図っていく。

 都選挙管理委員会によると、「文書図画の掲示」は、主に「選挙事務所」「選挙カー」「候補者が身に着ける物」「演説会場」「選挙ポスター」以外は公選法で違反とされている。ただし、会話の代替として、小型電子ボードの1対1の伝達行為は問題ないという。また、名刺に関しては、ビラのようにばらまくのではなく、あいさつで渡すことは禁じられていない。

 十数人のボランティアらと始めた街頭活動での手応えは上々だ。「口元を見てある程度言葉は理解できる。北区の皆さんは、ゆっくり話してくださる方が多くて優しいです」と笑顔。

 北区選管によると、聴覚障害者の立候補は初めて。仮に当選しても、議会の議事進行をどのように理解し、意見をいかに発信していくかなど課題は残る。だが、「変えていく自信はあります」。握る筆に力がこもった。

 ◆斉藤 りえ(さいとう・りえ)1984年2月3日、青森県生まれ。31歳。髄膜炎の後遺症で1歳10か月で聴力を失う。「青森一の不良娘」と呼ばれ高校中退。07年単身上京し、銀座の高級クラブでホステスとして活躍。09年に青森観光大使に。14年から東京都北区在住。現在、4歳の長女を育てながら、セミナー講師や執筆活動を行う。

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