民法改正案:閣議決定 18年度までの施行を目指す
毎日新聞 2015年03月31日 19時19分
お金の貸し借りや物の売り買いといった契約に関するルールを見直す民法改正案が31日、閣議決定された。1896年の制定以降、一度も抜本改正がなかったことから、時代に合わせて分かりやすい法律にする狙いがある。一部の項目には消費者保護の視点も反映された。政府は2018年度までの施行を目指しており、市民生活や企業活動にさまざまな影響を与えそうだ。
部屋を借りる際に家主に納める「敷金」。民法に規定がないこともあり、返還を巡るトラブルも多く、国民生活センターには「敷金を超える部分の修繕費を請求された」といった相談が年間1万数千件寄せられる。改正案では敷金を「借り主が支払う賃料の担保」と定義し、「家主は賃貸借が終わった時に返金しなければならない」と規定。借り主には、時間の経過による床や壁紙の自然な傷み(経年劣化)を元に戻す義務がないことも明記された。
商品が壊れているような場合の売り手の責任(瑕疵(かし)担保責任)も明確化する。現行法上は、買い手は損害賠償か契約解除しか求められないが、修繕や交換、代金減額も請求できるようにする。
一般的には重い認知症の高齢者ら判断能力に乏しい人が結んだ契約は無効になると考えられているが、この点も現行法に規定はない。そこで、契約当事者に意思能力がない場合は契約を無効とする規定を新たに設ける。
保険契約や電気・ガス、インターネット通販など多くの契約で広く使われる「約款」には難解な言葉が並び、全文を読む消費者はほとんどいないとされる。このため解約時の違約金や事業者の責任範囲を巡って争いになることもある。改正案には、消費者に一方的に不利益な条項は無効▽事業者の判断で約款を変更できるのは消費者の利益になる場合などに限定−−といった条文が盛り込まれた。
政府はこの日、改正に伴って必要な商法など216の法律の改正案も閣議決定した。上川陽子法相は記者会見で「国民生活や経済・社会に大きく影響を与える重要法案。関係各界の賛同を得ており、速やかな成立に向け努力したい」と述べた。【和田武士】