エベレスト:世界最高峰から星空撮影に挑戦 

毎日新聞 2015年03月30日 11時46分(最終更新 03月30日 14時23分)

マナスルのベースキャンプ(標高4850メートル)から眺めた星空=2013年9月、村山孝一さん撮影
マナスルのベースキャンプ(標高4850メートル)から眺めた星空=2013年9月、村山孝一さん撮影

 ◇元プラネタリウム解説員の男性、ヒマラヤに出発

 「宇宙に一番近い場所から星空を眺めたい」。東京都日野市の団体役員、村山孝一さん(47)が4月9日、世界最高峰のエベレスト(8848メートル)登頂を目指してヒマラヤに出発する。元プラネタリウム解説員の村山さんが狙うのは、誰も撮ったことがないとされるエベレスト山頂付近の本格的な「星景写真」の撮影だ。

 公立の社会教育施設の分館長を務める村山さんは、3年前まで約20年間、首都圏各地のプラネタリウムで解説員をしていた。登山は10代からの趣味で、2013年9月には、初めて8000メートルを超えるヒマラヤのマナスル(8163メートル)に挑んだ。

 死と隣り合わせの高所では、荷物はできるだけ軽くするのが鉄則。夜間に不用意に出歩いたり、登山中に立ち止まったりするのも非常識とされるが、村山さんは同行の仲間に迷惑のかからない範囲で一眼レフを構え、星や月を撮った。標高6350メートルの第2キャンプでは、通常は寝袋の中で抱えて温めておくブーツを三脚代わりに雪で固定し、その上にカメラを乗せて撮影した。

 高所の星空の見え方は、平地とまるで違った。空気が薄く、乾燥した山の上では、光が屈折しないため星がキラキラ瞬かない。また、下界の「光害」が全くない暗闇に慣れると、色を感じる視細胞が働かず、空全体がグレーに見えるという。「不思議な光景で、怖くも感じた」

 マナスルでは山頂に立ったが、第2キャンプより上で星空にカメラを向ける機会がなかった。今回は好天の日の午前1時に7900メートル地点から山頂へのアタックを始める予定で「無理はしないつもりだが、シャッターチャンスは多いはず」という。しかも、登頂予定の5月7日未明は、みずがめ座イータ流星群の最大活動日に当たり「幻想的な風景が見られるはず」と目を輝かせる。

 帰国予定は5月28日。「ヒマラヤにいると、天空が宇宙空間そのものだと実感する。元解説員としての知識も活用して、子どもたちに星空の魅力を伝えたい」と意気込む。【清水健二】

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