インド北部パトナに、優秀だが学費が出せないほど貧しい家庭で暮らす少年少女を集め、無料で教える進学塾「スーパー30」がある。ここの生徒の優秀さに目をつけた東京大学が留学を呼びかけたところ、初の合格者が出た。

 東大の合格通知を手にしたのは、アビシェク・グプタさん(19)。15日にメールが届いた。主に留学生向けに設けられた教養学部英語コース(PEAK)。9月入学で講義は英語で行われる。4年間の学費と生活費の奨学金も出た。グプタさんは「世界的に評価が高い東大に合格できてうれしい」と話す。

 「スーパー30」は、英ケンブリッジ大に合格したものの、家庭が貧しくて進学を断念した経験を持つ数学講師アナンド・クマールさん(42)が、「貧しくても優秀な子にチャンスを与えたい」と2002年に開設した。

 試験で選抜した生徒30人を1年間鍛える方式で、目標は、卒業すれば世界各国のIT企業から引く手あまたの名門インド工科大(IIT)。これまでの12年間で計360人中308人がIITに合格した。

 インドからの優秀な留学生を求めている東京大インド事務所の吉野宏所長がスーパー30に注目し、昨年10月下旬に留学説明会を開いたところ、グプタさんらが出願したという。グプタさんは「(5月下旬の)IITの入試を受けて、最終的に進学先を決めたい」。吉野所長は「ぜひ、東大に来てほしい」と期待している。(ニューデリー=貫洞欣寛)