ニュース詳細
人魚のミイラも 「大ニセモノ博覧会」4月18日 10時34分
「ニセモノ」と「ホンモノ」の違いとは何か。その答えを探るべく、日本を代表する国立の博物館が、がん作やコピー、イミテーションといった偽物にまつわる資料を一堂に集めて紹介しています。
見ているうちに偽物と本物の境界があいまいになり、「偽物=悪」や「偽物は価値が低い」といった見方が揺らぐ、ユニークな展示です。
見ているうちに偽物と本物の境界があいまいになり、「偽物=悪」や「偽物は価値が低い」といった見方が揺らぐ、ユニークな展示です。
偽物と本物が混在
この企画展は、千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館が開いています。
会場に入って最初に目に付くのは、一列に並ぶ12枚の大判・小判です(冒頭の画像)。
このうちの11枚は偽物。1枚だけある本物を当ててみる趣向です。
次は、本物であれば高値が付く「安南陶器」と呼ばれるベトナムの焼き物がずらりと並びます。20年余り前に京都の骨とう市で格安で売られていたということで、「発掘風景」の映像まで用意されていましたが、すべて偽物です。
さらに進むと、書画を紹介するコーナーがあります。掛け軸やびょうぶは宴会の場で座敷を飾る際に必要なことから、偽物にも「活躍の場」があったということで、各地の旧家に伝わる本物と偽物を織り交ぜて展示しています。
説明文として「教授のつぶやき」というくだけた解説が付けられ、偽物について「もう少しホンモノに似せる努力をしないと」「まったく絵心を感じません」といった辛口の評価も見られます。
こうした遊びが随所に見られるこの展示、国内有数の研究機関として知られる国立歴史民俗博物館としては、かなり異例のことです。
「歴博の真面目でアカデミックといった印象を逆手に取りました。次は使えません」と話すのは、展示代表の西谷大教授。「遊んでいるところもありますが内容はちゃんとしています。これをきっかけに常設展示も見てもらいたい」と、呼び水の効果を期待します。
展示チームには、日本史や考古学、絵画史などの研究者16人が参加。「真面目に遊ぶ」をモットーに、それぞれが専門を生かして偽物にまつわるネタを持ち寄ったということで、さまざまな時代の偽物と本物が混在する企画展が実現しました。
会場に入って最初に目に付くのは、一列に並ぶ12枚の大判・小判です(冒頭の画像)。
このうちの11枚は偽物。1枚だけある本物を当ててみる趣向です。
次は、本物であれば高値が付く「安南陶器」と呼ばれるベトナムの焼き物がずらりと並びます。20年余り前に京都の骨とう市で格安で売られていたということで、「発掘風景」の映像まで用意されていましたが、すべて偽物です。
さらに進むと、書画を紹介するコーナーがあります。掛け軸やびょうぶは宴会の場で座敷を飾る際に必要なことから、偽物にも「活躍の場」があったということで、各地の旧家に伝わる本物と偽物を織り交ぜて展示しています。
説明文として「教授のつぶやき」というくだけた解説が付けられ、偽物について「もう少しホンモノに似せる努力をしないと」「まったく絵心を感じません」といった辛口の評価も見られます。
こうした遊びが随所に見られるこの展示、国内有数の研究機関として知られる国立歴史民俗博物館としては、かなり異例のことです。
「歴博の真面目でアカデミックといった印象を逆手に取りました。次は使えません」と話すのは、展示代表の西谷大教授。「遊んでいるところもありますが内容はちゃんとしています。これをきっかけに常設展示も見てもらいたい」と、呼び水の効果を期待します。
展示チームには、日本史や考古学、絵画史などの研究者16人が参加。「真面目に遊ぶ」をモットーに、それぞれが専門を生かして偽物にまつわるネタを持ち寄ったということで、さまざまな時代の偽物と本物が混在する企画展が実現しました。
あいまいな境界
展示資料はおよそ300点。西谷教授はその内訳について、「本物」と「偽物」そして「見方によって本物にも偽物にもなるもの」がそれぞれ3分の1ずつあると説明します。
「本物にも偽物にもなるもの」の一例が、縄文時代の「貝輪形土製品」。貝で出来た腕飾りをまねた、いわばイミテーションです(画像奥・栃木県教育委員会蔵)。貝の入手が難しい内陸部で出土していることから、土で作って代用品にしていたと考えられます。
また、江戸時代の農民が年貢を低く抑えるために用意した、偽の書状も展示されています。
こうした土製品や書状も、その時代の人々の心情などを読み解く歴史資料となるため、単なる偽物と切って捨てるわけにはいきません。西谷教授は「本物より価値ある偽物もありえます。欲望や憧れ、生活を少しでもよくしたいという思いなど、物の背後にある人間臭さを感じてもらえれば」と話します。
「本物にも偽物にもなるもの」の一例が、縄文時代の「貝輪形土製品」。貝で出来た腕飾りをまねた、いわばイミテーションです(画像奥・栃木県教育委員会蔵)。貝の入手が難しい内陸部で出土していることから、土で作って代用品にしていたと考えられます。
また、江戸時代の農民が年貢を低く抑えるために用意した、偽の書状も展示されています。
こうした土製品や書状も、その時代の人々の心情などを読み解く歴史資料となるため、単なる偽物と切って捨てるわけにはいきません。西谷教授は「本物より価値ある偽物もありえます。欲望や憧れ、生活を少しでもよくしたいという思いなど、物の背後にある人間臭さを感じてもらえれば」と話します。
完全復元!人魚のミイラ
人魚のコーナーに足を踏み入れると、本物と偽物の境界がさらにあいまいに。
江戸時代の人々は人魚の存在を信じていました。会場には、国学者・平田篤胤が「人魚の骨を手に入れ、食べるために小さく削った」と記した手紙が展示されています。
ミイラも存在し、信仰の対象になっていたほか、明治時代にかけて欧米に輸出されていたということです。
企画展では、その人魚のミイラを当時の技法を知る人に作ってもらい、初の公開にこぎ着けました。
「レシピ」も公開されています。材料は、上半身は死んだ猿、下半身は大きめのサケです。しょうゆの入った溶液に漬け、わらを詰めて形を整えたあと、接合します。およそ40日間、乾燥させ、ブラッシングすれば完成です。
では、こうして今によみがえった人魚のミイラは偽物と言い切れるのか。「人魚のミイラは明らかに偽物、したがって展示も偽物。しかし技術的には本物。視点を変えれば境界はあいまいになるんです」(西谷教授)
江戸時代の人々は人魚の存在を信じていました。会場には、国学者・平田篤胤が「人魚の骨を手に入れ、食べるために小さく削った」と記した手紙が展示されています。
ミイラも存在し、信仰の対象になっていたほか、明治時代にかけて欧米に輸出されていたということです。
企画展では、その人魚のミイラを当時の技法を知る人に作ってもらい、初の公開にこぎ着けました。
「レシピ」も公開されています。材料は、上半身は死んだ猿、下半身は大きめのサケです。しょうゆの入った溶液に漬け、わらを詰めて形を整えたあと、接合します。およそ40日間、乾燥させ、ブラッシングすれば完成です。
では、こうして今によみがえった人魚のミイラは偽物と言い切れるのか。「人魚のミイラは明らかに偽物、したがって展示も偽物。しかし技術的には本物。視点を変えれば境界はあいまいになるんです」(西谷教授)
「大ニセモノ博覧会」は、国立歴史民俗博物館で5月6日まで開かれています。4月20日と27日は休館です。