放送局聴取:「自民がけん制」与党内も自制促す声
毎日新聞 2015年04月17日 22時18分(最終更新 04月17日 23時43分)
「放送法に照らしてやっている」。報道番組を巡り、NHKとテレビ朝日の幹部を呼んで説明を聴取した17日の自民党情報通信戦略調査会。メンバーの議員らは「圧力には当たらない」ことを強調した。しかし、放送に詳しい識者や報道現場からは「放送局へのけん制であり、放送内容への介入だ」との指摘が相次ぐ。自制を促す声は与党内にも出ている。【青島顕、斎川瞳】
東京・永田町の自民党本部で非公開で行われた調査会。正午前、聴取を受けた2人が部屋を出た。報道陣の質問に、テレビ朝日の福田俊男専務は「誤解があったら困るので、説明させていただいた。詳細については避けたい」と語った。NHKの堂元光副会長は「説明しただけ」と答えて党本部を後にした。
調査会メンバーの議員には「聴取は放送局の自主性を損なわないか」「圧力に当たらないか」などの質問が飛んだ。会長の川崎二郎・元厚生労働相は「(圧力とは)思わない。真実を曲げた放送がされるなら、(放送法という)法律に基づいてやらせてもらいます」と話した。小坂憲次・元文部科学相は「こういうふうにしろという話は出ていない。事実関係を聞いただけ」と、NHKとテレビ朝日に対して要請などはしなかったと強調した。
第2次安倍政権では、政権や自民党が放送局の姿勢や番組に口を出すケースが目立つ。そのたびに放送法4条の「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」との規定が持ち出される。テレビ局は元来、放送法による縛りに加え、総務相から5年ごとに免許を受けなければならず、介入を受けやすい立場にある。
自民党による聴取について、元テレビ朝日記者でメディア総合研究所「放送レポート」編集長の岩崎貞明さんは「放送法を根拠に放送局にけん制をかけている。ある意味、露骨な介入だ」と危機感を示す。NHK中堅職員の男性も「聴取自体が『放送内容に介入しますよ』と言っているに等しい。自民党もひどいが、呼び出しに応じるNHKも問題だ。国会の要請ならともかく、今回は応じるべきか内部で議論すべきだった」と語った。
公明党の井上義久幹事長は17日の記者会見で「介入ではないかと受け止められないよう、慎重な対応が必要だ」と話した。