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日銀当座預金の「資金源」は私たちの銀行預金

日本銀行の量的・質的金融緩和を批判する池尾教授が、混乱したロジックを展開しています。

このままでは将来、日本は深刻なインフレに直面する:日経ビジネスオンライン 

現在、日本銀行がやっている量的緩和というのは、準備預金を増発することで国債を大量に購入するというものです。準備預金というのは、民間の銀行が日本銀行にある自分たちの当座預金口座においている預金のことです。銀行が保有している準備預金の資金源となっているのは、私たちや企業が銀行に預けている預金です。銀行預金にはゼロに近い金利しか付かないけれど、国民はみんな文句も言わず銀行にお金を預けています。その預金を見合いに銀行は国債を保有したり、準備預金を保有したりしているわけです。

要するに今は、国債<-(日銀)<-準備預金<-(民間銀行)<-預金、という資金の流れになっています。国債を消化する資金を最終的に提供しているのは、私たちや企業の預金です。財政赤字をまかなっているのは、民間の貯蓄です。*1

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準備預金の「資金源」は

  1. 日銀(増発中*2
  2. 私たちや企業の銀行預金

のどちらなのでしょうか。

また、銀行は「私たちや企業の預金」を原資に国債や準備預金(さらには貸出金)を保有しているということですが、「私たちや企業の預金」の出所はどこなのでしょうか。

預金の出所について、イングランド銀行は次のように解説しています。 

Whenever a bank makes a loan, it simultaneously creates a matching deposit in the borrower’s bank account, thereby creating new money. 

Banks buying and selling government bonds is one particularly important way in which the purchase or sale of existing assets by banks creates and destroys money. […] When banks purchase government bonds from the non-bank private sector they credit the sellers with bank deposits.

銀行が「私たちや企業」に貸し出したり、「私たちや企業」から有価証券を買い取ることで、「私たちや企業」の預金口座に預金がプラスされるということです。

金融ビッグバンの幻想と現実

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現代においては、銀行はけっして「預金で集めたおカネを貸すところ」ではありません。[…]銀行は「自ら預金をつくりだして、それを貸すところ」なのです。

同様に、中央銀行が銀行から国債等を買い取ることで、銀行の準備預金口座に準備預金がプラスされます。 日銀は「私たちや企業の預金」を銀行経由で入手して国債を購入しているのではなく、自ら作り出した準備預金(日銀当座預金)で購入しています。

池尾の認識は、金融システムの現実とは相当異なっているようです。

イングランド銀行の金融政策 (世界の中央銀行)

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アメリカ連邦準備制度(FRS)の金融政策 (〔世界の中央銀行〕)

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*1:強調は引用者。

*2:日銀当座預金残高は3月末に200兆円を超えました。