信州大環境・エネルギー材料科学研究所(長野市)の金子克美特別特任教授(ナノ科学)は16日、海底など低温高圧の環境下に存在するメタンハイドレートを、特殊な活性炭を使うことで比較的圧力の低い状態で迅速に人工生成できることが分かったと発表した。メタンハイドレートは次世代のエネルギー資源として注目され、日本近海での埋蔵も確認されているが、採掘の難しさが課題。より効率的に生成できるようさらに研究を進め、実用化を目指す。
研究は信州大とアリカンテ大(スペイン)を中心とするチームが2010年度に始めた。真空の装置に特殊な活性炭と水蒸気、メタンを入れ、気圧を変えながらメタンハイドレートが生成される速度と量を計測。活性炭を使うことで、30気圧(水深10メートルごとに約1気圧増える)、気温2度の条件でメタンハイドレートが数分で生成できた。同じ条件で活性炭を使わない場合は、発生に1週間かかるという。
金子教授によると、自然界のメタンハイドレートは水深500メートルより深い低温高圧環境の海底下に埋蔵されている。活性炭の構造を工夫すれば、より低圧で生成できるとみている。10気圧で生成できれば、「水深100メートルの海底で人工生成できるようになる」と見通す。
この技術を応用し、エネルギーが循環する仕組みづくりを構想。工場で排出された二酸化炭素をバクテリアを使ってメタンに変え、このメタンを水深100メートルの海底の活性炭層に送り込んでメタンハイドレートを生成して安定貯蔵する。必要に応じてメタンを取り出してエネルギーとして利用する仕組みだ=イラスト。金子教授は、今後20年ほどで実用化が可能との見方を示した。
今後は研究を進め、工業地帯での構想の実践を目指す。金子教授は「実現には時間がかかるが、地球温暖化を解決する一助としたい」と強調。メタンハイドレートを500メートルの海底から採掘するよりも「はるかにコストが削減できて安全だ」としている。