「私は絶対に辺野古新基地は造らせない」

 安倍首相との会談をようやく実現させた沖縄県の翁長知事は、一段と強い言葉で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する意思を示した。

 「沖縄の方々の理解を得る努力」を何度も口にしながら、翁長氏の要請を4カ月も拒んできた安倍首相は、先に会談した菅官房長官と同様、「辺野古への移転が唯一の解決策と考えている」と繰り返した。対話はまた平行線をたどった。

 安倍首相は26日から訪米を予定している。戦後70年の節目に日米同盟の深化を世界に示す狙いがある。沖縄県知事と会談することで、政権が普天間問題に積極的に取り組んでいる姿勢を米側に伝えられる、という目算も働いたのだろう。

 だが今回の会談を、政権の「対話姿勢」を米国に印象づけるための演出に終わらせてはいけない。

 安倍政権と沖縄県との対立は険しさを増すばかりだ。首相は打開の糸口を見いだせない現状を直視し、翁長知事が求めた通り、オバマ米大統領に「沖縄県知事と県民は、辺野古移設計画に明確に反対している」と伝えるべきだ。

 「粛々」と移設作業を続けている政権が「対話」姿勢をみせる背景には、国内で沖縄問題への関心が広がっている面もあるだろう。米国でも「移設は順調に進むのか」という懸念が一部でささやかれているという。

 沖縄県は4月からワシントン駐在員を置いた。5月にも翁長知事自身が訪米して直接、移設反対を訴える。

 翁長知事は今回も「沖縄は自ら基地を提供したことはない」と、米軍による土地の強制接収や戦争の歴史に言及した。この言葉が含む史実の重さを、首相はどう感じただろうか。

 菅官房長官との会談で出た翁長知事の言葉は、小手先の経済振興策による解決を拒絶した歴史的メッセージだと、県民の評価は高い。

 そのメッセージはまた、昨年の名護市長選、県知事選、総選挙で移設反対の民意が繰り返し示されながら、無視し続けてきた政権への怒りを、米軍統治下の自治権獲得闘争と重ねてみせた。それは地域のことは自ら決めよう、という自己決定権の主張でもある。

 政権が本気で「粛々」路線から「対話」路線へとかじを切るというのなら、ボーリング調査をまず中断すべきだ。そうでなければ対話にならない。