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安売り規制では町の酒販店を救えない

2015/4/17付
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 自民党内に、酒の安売り競争を規制する法案を議員立法で今国会に提出する動きが出ている。財務相の示す基準を守らない安売り店は、販売免許を取り消すこともあるという内容だ。小規模な店の保護を目的に掲げるが、この法案には問題が多いのではないか。

 国税庁は2006年、酒の過度な安売りをやめるよう取引指針を出した。これに基づき、原価割れ販売をしていると判断した店などに対し、注意や指導をしてきた。しかし法的な強制力がなく、安売りをやめる店と無視する店があり不公平だとの声があった。

 法案成立を目指す議員たちによれば、酒税法を改正し、注意しても安売りをやめない店はまず名前などを公表する。効果がなければ罰金を科したり免許を取り消したりできるようにするという。

 免許を失えば経営に甚大な影響が出る。自社が掲げる安値が経営努力の結果か、それとも不当な乱売か、証明や線引きが難しい場合もある。法案が成立すれば安売り店を萎縮させるだろう。

 これまで酒販店にとって、配達を伴う業務用の需要は大事な収益源だった。しかし最近、大手ネット通販会社が相次ぎ酒の販売免許を取得し、宅配に乗り出している。量販店に加えネット企業の攻勢も受けている各地の酒販店は規制強化を訴えてきた。

 しかしどこでも手に入る商品の価格を法律で下支えしても、店の集客にはつながりにくい。大型店にない個性的な品ぞろえや独自のサービスなど、創意工夫で付加価値を高めるのが本来の姿だ。そうしてこそ町の魅力が高まり、地域経済も活性化する。

 そもそも不当廉売の防止については、すでに独占禁止法がある。酒の小売店だけをここまで特別に保護しようとするのはなぜか。明快な説明が要るだろう。

 もともと酒には製造、販売、サービスなどで規制が多い。酒税収入を増やしたければ、規制を減らし業界を活性化するのが筋だ。地方企業や小売店による独自の酒の開発など、挑戦を後押しする方が長い目で見て市場は広がる。

 タクシー業界への規制強化など最近、競争を排除する動きが目立つ。しかしイノベーションを生むのは規制の強化ではなく緩和や撤廃である。市場競争を通じ消費者の利便性や満足を高めなければ、経済の成長も企業の存続もない。このことを肝に銘じたい。

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