イタリア語のために

　この間本屋に行ったら，なんと中級以上のイタリア語と銘打ったイタリア語の文法書が出ていたので，さっそく買ってきました．

　　　本多孝昭『本気で学ぶ中・上級イタリア語』東京：ベレ出版，2015．
　　　　　　http://www.beret.co.jp/books/detail/565

　まだちゃんとは読んでいませんが，僕としてはかなり参考になりそうです．ざっと見た印象を言うと，例文が短めのわかりやすいものが多くて好感がもてます．海外の文法書では，古典作品や権威的文章に例をとるという実例偏向主義のせいで，例文が難解な語彙や言い回しのせいで，ポイントがしぼりにくいものになってしまい，学習者にとっては例文があまり効果的な助けにならないということがしばしばありますが，この文法書では，短く簡潔な例文が収録されているおかげで，問題となっている文法事項がどのように使われているかが，わかりやすくなっていると思います．また，例文の朗読を収録したCDがついているのも，文法書としては画期的ですね．
　ただ，これでもすこし徹底性には欠けているような気がします．たとえば前置詞の fra/tra の違いの所では，あっさりと「どちらを使ってもOKです」(p. 341)で済ませていてもいいとは思いますが，もうちょっと踏み込んで書いてもらいたい気がします(ちなみにうちのブログの記事：http://datiintrovabili.blog100.fc2.com/blog-entry-316.html)．しかしこれはやっぱり紙面の量の制限があったせいだと思います．一回り大きいB5ぐらいの紙面で，さらにあと200ページぐらい増量させられれば，これを超える文法書は50年ぐらいは現れないだろうというぐらいの，いい文法書になったとは思いますが．まあそうすると8000円以上はする文法書になって，半分図書館アイテムになってしまうので，売れ行きも悪く，出版しても赤字になりかねない本は，やはり存在できないということなのかもしれません．

本気で学ぶ中・上級イタリア語 CD BOOK (2015/03/18) 本多 孝昭 商品詳細を見る

[遠過去の記事から独立させて書き直しました]

　先立過去または前過去は，遠過去よりも一段階以前の時制で，概ね近過去・半過去と大過去の関係に対応します．

　　「家に帰ったとたん，その事故が起こった」
　　Appena fui ritornato a casa, accadde l'incidente. (先立過去—遠過去)
　　Appena ero ritornato a casa, è accaduto l'incidente. (大過去—近過去)

　先立過去の語形は，大過去の場合と同様，essere / avere の遠過去+過去分詞となります．

io tu lui/lei　 noi voi loro

andare fui andato/a fosti andato/a fu andato/a fummo andati/e foste andati/e furono andati/e　　 (朗読)

parlare ebbi parlato avesti parlato ebbe parlato avemmo parlato aveste parlato ebbero parlato (朗読)

　先立過去は，大過去のところに書かれている条件に類似しています(こちらを参照)．つまり，遠過去で表現される過去の時点よりも，さらに以前の過去を示すものです．

　しかし，使われる条件は以下のように限られています．以下の制限の結果として，先立過去を避けて，遠過去を用いる，あるいは，競合するジェルンディオや不定詞を用いた表現にされることも普通にあります．
　
　(1) 先立過去は，「……した時，した後で」のように，時間を表す従属文，すなわち時間文の中でしか用いられません．つまり，大過去のように，独立した文の中では使われません．しかも，そのうち，以後を表す時間文の中で，さらに直後を表す場合のみ用いられます．代表的なものは appena, non appena「……するやいなや」, finché「……するまでは」などに導かれる従属文です．dopo che「……した後で」，quando「した時」でも使えますが，この場合は主文もしくは dopo che 文，quando 文が直後を表す場合で，しばしば直後を表すような表現が主文もしくは dopo che 文，quando 文で使われていることも多いです．

　(2) さらに，これらの従属文では先立過去がいつでも使えるというわけではなく，主文のほうで遠過去が使われている場合に限ります．主文が近過去の場合は，大過去しか使えません．例えば先立過去を使って Appena ebbi finito cenare, ho telefonato mio padre. とするのは不可能です．主文を近過去のままにするなら，大過去を使って，Appena avevo finito di cenare, ha telefonato mio padre. にするしかありません(逆に主文が遠過去の場合，それ以前の行為を表すために大過去を使うことは普通にできます)．

　(4) また，essere の先立過去は，fui stato/a ですが，実際は使われません．受動態の先立過去も用いられません(理論上は fui stato/a chiamato/a「私は呼ばれた」という形)．このような時は，遠過去(fui, 受動態は fui chiamato の形)を用います．

　(5) それから，現在イタリア語では前過去は使われなくなる傾向があり，上のような前過去の使われない条件に当てはまっていなくても，先立過去の代わりに遠過去が用いられることは普通にあります．競合する表現で，たとえば dopo + 不定詞過去，ジェルンディオの過去を用いる(dopo aver comprato, avendo comprato「買った後で」)こともあります．

　　Quando fui ritornato a casa, mi telefonò mio padre immediatamente. 私が家に帰ると，すぐに私の父が電話してきた．
　　＝ Quando ritornai a casa, mi telefonò mio padre immediatamente. (先立過去を使わないで遠過去)
　　＝ Quando ero ritornato a casa, mi ha telefonato mio padre immediatamente. (大過去)
　　＝ Dopo essere ritornato a casa, ... (不定詞過去)
　　＝ Essendo ritornato a casa, ... (ジェルンディオ過去)

　　Quando ebbi finito di cenare, ritornò mio padre immediatamente. 私が晩ご飯を食べ終わると，私の父が帰って来た．
　　＝ Quando finii di cenare, ritornò mio padre immediatamente. (先立過去を使わないで遠過去)
　　= Quando avevo finito di cenare, è ritornato mio padre immediatamente. (大過去)
　　＝ Dopo aver finito di cenare, ... (不定詞過去)
　　＝ Avendo finito di cenare, ... (ジェルンディオ過去)

　なお，先立過去を用いている従属文がさらに従属文を持っているような場合には，先立過去よりも前の時制を大過去が表します．

　　Quando ebbi saputo che Luigi era ritornato a Roma, gli telefonai immediatamente.
　　　　ルイージがローマに帰ったことを知った時，すぐに僕は彼に電話した．

　

　今時間文の記事を書きながら時制を勉強しなおしていますが，ちょっといろいろ以前の記事にも勘違いしている部分があって，全体的に時制の部分をアップデートすることになりそうです．いまさらながら，独学が陥りやすい悪い所が出てきて恐ろしくなります(道理でイタリア語検定2級が通らないわけです)．まあ，時間が10年ぐらいかかったかもしれませんが，ようやく間違った知識に気がついて正確な知識にたどり着けたことを喜ぶべきなのでしょうか．

　mentre も同時を表す時間文を作ります．quando は比較的広い範囲で使えますが，mentre の場合は，「……している間」を意味し，継続的な行為が mentre 文の中で用いられ，主文の動作がその時間内に起こっている場合に用いられます．mentre 文の中では，そのため，継続を表す半過去と現在と未来が使われるのが普通です．主文で表される行為は，mentre文で継続している時間内で，一度きりの場合もあれば，繰り返し行われたり，あるいは平行して続いていることもあります．
　quando とは一部重なるところがあり，quando の説明であげた例文の中でも，mentre で表現してもよいものがあります(quando の説明の例文では書きかえ可能なものにはそう書いておきました)．ただ，quandoの時には可能であった「……したら……した(するだろう)」という場合，それから，「……した時にはすでに……であった」のような場合には，mentre は使うことはできません．あくまで「……の間」に主文の行為が起こる，という意味でしか用いられないことになります．

　　Mentre mio padre mangia, guarda sempre la tv.
　　　僕の父は食べている間，ずっとテレビを見ている．

　　Lei studeva mentre tutti dormivano.
　　　彼女は皆が寝ている間勉強していた．

　　Mentre ero in autobus, una ragazza mi ha chiesto aiuto.
　　　僕がバスに乗っていた時，一人の少女が僕に助けを求めた．

　　Mentre noi lavoravano a casa o in biblioteca, Marco si recava al cinema frequentemente.
　　　僕らが家や図書館で勉強している間，マルコは頻繁に映画に出かけていた．

　　Nessuno potrà attaccare il vilaggio mentre noi gli faremo la scorta.
　　　僕らが警備している間は，誰もその村を攻撃できないだろう．
　　
　副詞の intanto「その間に」を用いる intanto che，それから nel frattempo che も，mentre と同じ意味で同様に使うことができます．これらは特に文語ということもなく，日常的に使えます．文語になるのは mentre che です．

　　　Impara intanto che sei giovane. 若いうちに学べ．

　　　Nel frattempo che aspettavo il autobus, parlavo con gli amici.
　　　　バスを待っている間，僕は友人たちとおしゃべりしていた．

かなり不十分だったので再度訂正しました

　一般的に時間文で用いられるのは，quando です．基本的に同時と以後の二通りの可能性がありますが，時制の組み合わせでそれ以外も可能です．

A. 同時「……の時」

　同時を意味して，広く「……した時」などで訳されます．主文とquando文の関係で，多様な時制が用いられます．

　　(1) Quando leggevo un libro, mi ha telefonato Luigi. (=Mentre leggevo un libro)
　　　僕が本を読んでいた時，ルイージが僕に電話してきた．
　　　　(quando文では継続する過去の行為なので 半過去，主文ではその最終に起こる瞬間的な行為なので
　　　　　　近過去(遠過去 telefonò でもよい))

　　(2) Quando ero ragazzo, andavo a volte al bosco. (=Mentre ero ragazzo)
　　　子供だった時，時々その森に出かけたものだった．
　　　　(quando文の継続中の行為が半過去，
　　　　　　それと平行して繰り返される行動が半過去で表される)

　　(3) Quando tutti lavoravano o studevano i giovani dormivano.
　　　　皆が働いていたり勉強したりしている時に，その若者たちは眠っていた．
　　　　　(quando 文の継続中の行為にならんで主文の行為が起こっている)

　　(4) Quando abitavo a Roma, l’incidente è accaduto. (=Mentre abitavo a Roma)
　　　私がローマに住んでいた時，その事故が起こった．
　　　(quando文の中の継続的な行為が半過去，その中で起こった瞬間的な出来事が
　　　　　　近過去で表されている(遠過去のaccade でもよい))

　　(5) Mio padre sempre guarda la tv quando fa colazione.
　　　　私の父は，朝食をとる時にはいつもテレビを見ている．
　　　　(同時に行われる現在の習慣なので，両方現在)

B. 以後「……した時，してから」

　quando はある事が起こった後に，主文の内容が起こる，という時間関係も表せます．

　　(6) Quando io avevo arrivato a Roma, l’incidente è accaduto (もしくは accadde).
　　　私がローマに到着した時(してから)，その事故が起こった．
　　　　(quando文の私が到着する，という行為が起こった後に，主文の事故が起こったので，
　　　　quando文の中は大過去，主文は近過去(遠過去)が用いられている)

　 [この部分は間違いです．quando 文の中でも，「……するや否や」の意味になる場合しか先立過去は用いられません]
　(6)の文はもちろん quando+先立過去, 主文遠過去 の組み合わせにもできます．先立過去が使われなくなる傾向がある現在では，単なる遠過去にしてしまってもいいようです．このあたりは読解などでも頭にいれておかないと，時制の関連で少しおや？と思ってしまいそうですね．以下の例での先立未来，接続法過去もそれぞれ未来，接続法現在になることがあるのと同じ現象です．

　　(6a) Quando io ebbi arrivato a Roma , l'incidente accadde.
　　　(Quando io arrivai a Roma, ....)
　　　　私がローマに到着した時(してから)，その事故が起こった．

　quando文では，以上のように，通常は直説法が用いられますが，未来の事が語られる場合にはその内容が不確実なことになり得るので，そのような時には接続法が使われることがあります．以下の (7) では，「僕の娘が未来に知りたいと思う」かどうかは不確実なので，quando の中に接続法過去が使われています．

　　(7) Quando mia figlia l'abbia voluta sapere, le dirò la verità.
　　　　(接続法現在も可：Quando mia figlia la voglia sapere, ...)
　　　　僕の娘がそれを知りたいと思った時，彼女に僕は真実を告げるだろう．

　一方で，未来にそうなることが確実と考えられる，あるいは疑いの余地がない場合は直説法未来になります．次の例では，「夜が来る」であろうことは，もちろん実現が確実なことなので，直説法先立未来です．

　　(8) Quando sarà venuta la notte, tutti cominceranno a tornare a casa.
　　　　(単純未来も可：Quando verrà la notte)
　　　　夜が来たら，皆は家に帰り始めるだろう．

　(7)の文章の quando文の中を直説法未来にした次の(7a)も不可能ではありません．未来に「娘がそれを知りたいと思う」ようになることが，話者にとって不確実ではないということになるでしょうし，また，口語的に，単に接続法をつかうことを回避したともいえると思います．

　　(7a) Quando mia figlia l'ho voluta sapere, le dirò la verità.
　　　　(単純未来も可：Quando mia figlia la vorrà sapere, ...)
　　　　僕の娘がそれを知りたいと思う時には，彼女に僕はそれを言うだろう．


その他

　時制の関係を利用して，次の例のように，主文の内容がquando文よりも前に起こっているような例も可能です

　　(9) Quando io sono arrivato a Roma, l’incidente era (già) accaduto.
　　　私がローマに着いた時には，その事故は(既に)起こっていた．
　　　(近過去 ho arrivato の時点より前に事故が起こっていたので era acceduto の大過去)

　また，quando は比較的自由に前置詞と組み合わされて用いられます．

　　(10) Io mi ricordo bene di quando studiavo a Bologna.
　　　　　僕はボローニャで勉強していた時のことをよく覚えている．

　　(11) Dobbiamo pensare a quando un disastro accadrà.
　　　　　災害が起こるであろう時のことを我々は配慮するべきである．

　また，da quando「……以来」fino a quando「……する時まで」などのように使われることもありますが，これはまた以前・以後を表す従属文として説明しようと思います．

　時間文は，日本語で言えば「……した時，……している間，……する前に，……した後に」など，主文の内容のおこる時間的な環境を表す副文です．それぞれ，時間を表す接続詞に導かれます．
　代表的なものとしては以下のような場合があります(もちろん詳しくはそれぞれ別に説明します)。
　以下，時間文は太字，さらに接続詞は赤字で強調しています．

　　Quando (mentre) dormivo, mi hai telefonato. 僕が寝ている時(間に)，君は電話してきた．

　　Prima che io dormissi, mi hai telefonato. 僕が寝る前に，君は電話してきた．

　　Dopo che avevo dormito, mi hai telefonato. 僕が寝た後で，君は電話してきた．

　　Luigi abita qui da quando la sua famiglia ci si è trasferita da Londra.
　　　彼の家族がロンドンから引っ越して来た時から，ルイージはここに住んでいる．

　　Il nostro negozio andava bene finché l'imposta sui consumi non è salita dal 5 al 8%.
　　　消費税が5％から8％に上がるまでは，僕らの店はうまく行っていた．

　　Non appena l'imposta è introdotta, il nostro negozio ha cominciato a declinare.
　　　その税が導入されたとたん，僕らの店は傾き始めた．

　　Il tuo cane mi abbaiava furioso ogni volta che venivo da te.
　　　僕が君の所に訪れる度にいつも，君の犬は僕に激しく吠えたものだ．


　大雑把にいって，以上の用例は，次の三つに分けられます．

　　(1) 同時……主文と時間文の関係が同時(quando, mentre, ogni volta che など)
　　(2) 以前……時間文の内容より先に主文の内容が起こる(prima che, finché など)
　　(3) 以後……時間文の内容より後に主文の内容が起こる(quando, (non) appena, dopo che, da quando など)

　それぞれ，主文と時間文の時間的な関係によって動詞の時制が使い分けられ，さらに，時間文が現実に起こったことか，それとも不確実な内容なのかによって，直説法・接続法も使い分けられます．それから，競合する他の表現方法，例えばジェルンディオや不定詞を使った表現もあり，それらとの関係も重要です．

　以下何度かにわたって，時間文を説明していきたいと思います．

　ようやく不規則動詞リストに音声をすべて埋め込みました．これでグーグルに飛ばさないでローカルで発音させることができると思います．結構手間はかかるのですが，この作業で何回も音声を確認するので，記憶の強化にはすごく役立っています．
　あと色々抜けていたり(助動詞の近過去は essere か avere かなど)，新しく書き足すことも沢山あります．とりあえず書きかけの前置詞 a なんかはさっさと終わらせたいですね．

　東京外語大ではネット上で語学学習ができる言語モジュールというのを作成しています．比較的最近になって，イタリア語も登場したので，あげておきます．
　ただ，短めのシチュエーション会話が40課ほどあるだけなので，すごく充実しているというわけではないですね．他の言語では文法や発音などもあるのですが……．
　直接行けるように，会話の1課のところに直リンクしておきます．課や表示形式は右上のプルダウンで変更できます．

　　東京外国語大学言語モジュール

　簡単だ……と思いきや，結構しらない表現があるものですね．1課で「8時過ぎだ」というのは Sono le otto passate. という表現になるというのを初めて知りました．あとで時間の表現のところに書き足さなければいけないです．

それから Rai の In Italia のサイトの新版が登場しています．僕のコンピューターでは非力すぎて動画が再生できないのですが，メモリに余裕がある場合は，もしかしたらこちらのほうが便利かもしれません．動画などの内容は殆どおなじですね．

　　新サイト：http://www.italiano.rai.it/
　　旧サイト：http://www.initalia.rai.it/default.asp

もうすぐお目見えすると思います．イタリア語検定……級突破シリーズの単語版ですね．

　　　京藤 好男 (著), アルダ ナンニーニ (著), 一ノ瀬 俊和 (監修) 『イタリア語検定3級突破単語集』
　　　　　　東京：三修社，2015.1.30 (出版予定)

同じ著者・監修で『イタリア語検定4・5級突破単語集』も出ていますが，準2級以上はまだないようです．

イタリア語検定3級突破単語集 (2015/01/30) 京藤 好男、アルダ ナンニーニ 他 商品詳細を見る

イタリア語検定4・5級突破単語集 (2005/09/01) 京藤 好男、アルダ ナンニーニ 他 商品詳細を見る

第39回実用イタリア語検定秋季の合格者が発表されています．

　　http://www.iken.gr.jp/effetto.html


さて僕はどうだったかといいますと……

受験番号を控えるのを忘れていたために，合格しているかどうかわかりません orz ...　おそらく落ちているとは思いますが，11月末に結果が送られてくるのを待つしかありませんね．

　お世話になったので，宣伝料とかもらっているわけではないですが，紹介まで．僕が1ヶ月ぐらいいた，イタリアのボローニャにある，イタリア語語学学校です．

　　CULTURA ITALIANA　英語サイト　日本語サイト

　コースは非常に整っていて，僕がいた時は，基本的に Edilingua 社の Progetto italiano という教材を使って，この教材の順に進めていました．特別にペースが早いという訳ではないので，日本人でも比較的ついて行きやすいとは思いますが，心配なら先に教材を購入して予習するといいかもしれません(また，一応何の教材を使っているか，学校に確認したほうがいいと思います)．
　僕自身はネットでたまたまここがいいという紹介を見て，あまり考えずに選んだのですが，結果的に僕にとっては，非常にいい環境で勉強できたと思います(1ヶ月だけですが)．講師陣もわかりやすくて親切でしたし，初級の一番最初から初めて1ヶ月で，ボローニャで暮らすにはほとんど会話に困らない程度にはなれました．帰りの列車では普通にイタリア人の高校生達と会話しながら帰っていたのはいい思い出です(この会話力は既に今はどっかにいってしまいましたが……)．
　学費は4週間で909ユーロ(12万円ちょっと)．結構いい値段にはなりますが，堅実な学校ですから，高いということはないと思います．宿泊施設としては，学校で斡旋してくれる部屋に泊まることができて，1週間90ユーロ(1万2千円ちょっと)ですから，宿泊費は東京などの家賃を考えると比較的安めですね．
　この学校を出てほかの学校に行った知人も何人かいるのですが，CULTURA ITALIANA よりよかったということはなかったようです．そもそも，教科書順に一歩一歩堅実に進めるタイプの語学学校が，意外とイタリアではないようなので，一般的に語学学校を選ぶ際には，その点にも注意しなければいけないようです．なお，CULTURA ITALIANAはボローニャ校のほかに，アレッツォ校もあるのですが，行くなら断然ボローニャ校です．
　僕も正直，もう一回ここに戻って続きを勉強したいのですが，なかなか諸事情が許しませんね……

Progetto Italiano 1: Corso Multimediale di Lingua e Civilta Italiana (2006/06/30) Telis Marin、Sandro Magnelli 他 商品詳細を見る

Nuovo Progetto Italiano: New Ed Quaderno Degli Esercizi 1 + CD-Audio (Level A1-A2) (2013/05/12) 不明 商品詳細を見る

　実用イタリア語検定では，3年前に準2級が新しく設けられました．これについて，どのような準備をしたらいいかというご質問がありました．僕もまだ2級のレベルには到達していないので，とても責任をもった回答はできないのですが，いろいろとアドバイスされているところをまとめると：

　2級の対策本しかないので，次のような本がとりあえず最初に手に取るべきということになるでしょう．

イタリア語検定2級突破 (2003/08) 日向 太郎 商品詳細を見る

『2級突破』は，同じシリーズの『3級突破』よりはやや取り組むのが難しいと思います．日本で入手できる通常の文法書では解説されていない規則なども『2級突破』には突然書いてあって，独学者だとかなりびっくりします．このあたりが，中級イタリア語といわれる範囲なのですが，日本だと中級以上の文法書が事実上存在しないので(かろうじて『坂本文法』はありますが，正直いって記述内容の正確さに疑問があります)，それをきちんと体系的に学ぶとすると，やはり語学学校に行くか，外国語で書かれた文法書を読む必要があったりします．そこまで深入りするべきかとなると，実際は大変な割に時間がないので，ペンディングにしたまま，勉強を続けるということに(独学の場合)なると思います．そんなこんなで，『2級突破』はやや歯がゆい気持ちになる対策本なのですが，それでも，やらないよりはやった方がずっとずっといい結果につながると思います．

　上の本に続く試験対策としては，『実用イタリア語検定1・2・準2級』『実用イタリア語検定1・2級』の，2級と準2級の部分をやるということになると思います．

　過去問を解答して，内容を十分消化するには，過去問4-5年分をやるだけでも，かなり時間がかかります．2級の過去問の聞き取り問題をやるとわかると思いますが，純粋な耳の問題もさることながら，解答でネックとなる部分でなくとも，なかなか触れることのできない日常会話の語彙や表現がたくさん出てくるので，いちいち辞書などで確認していくと，それだけでもかなり時間がかかります．文法については『2級突破』と同じことがいえますが，類似した問題が出ることもあるので(僕の記憶では1問は過去問と全く同じだったと思います)，文法的理解をした後に，文を暗記するぐらい勉強して損はないと思います．読解については僕は割と得意なので，苦痛はありませんでしたが，苦手な場合は，読む練習のほうも多少練習が必要かもしれませんね．ただ，作文は，レベルは3級とそれほど変わらないという印象を受けました．3級が受かっていれば，準2級の作文はそれほど難しくはないと思います．

　2級と準2級の違いというのは，点数の上では，2級は全体の8割(聞き取り・筆記・作文のそれぞれで最低7割以上)であり，準2級は全体の7割(個別で最低6割)という違いはありますが，文法事項の範囲は，2級と同じということになるようです．ですから，接続法・条件法・直説法・不定詞などの関わってくる複合文は十分やる必要があると思います(ここが意外と勉強しにくいところですが)．もちろん，それらの動詞の形，それから遠過去形なども十分暗記している必要があります．また，このブログでもまとめている使役動詞構文，知覚動詞構文なども出てきますね．

　僕の場合は，過去2回2級を受験して，不合格をもらい，その後準2級を受験したのですが，だいたい2ヶ月ぐらい2級の過去問を4年分やったところで，準2級はなんとか合格という感じでした．お恥ずかしながら，2級の合格の目処は現在全く立っていない状態です……．というわけで，あまり人に勉強の仕方など教えられる立場にもないのですが，参考になれば幸いです．

　il quale について，ご質問を受けまして，少し調べてみました．ご質問によると，quale を使った関係文では「直接補語を先行詞にとることが出来なかった」と記憶されているとのことですが，確かにそういう規則があるようです．
　次の文章は, che を使っても la quale を使っても基本的に普通の文章(ただし文語)ですが……

　　Ho visto la donna che giocava a tennis. 僕はテニスをしている女性を見た．
　　＝ Ho visto la donna la quale giocava a tennis. (文語)

　しかし，関係文の中での役割が，直接補語となっているような場合には，il quale よりは che が使われるのが普通であり，il quale が用いられるのは文学的イタリア語でのみ，とのことです．ですから，次のケースでは che を用いた上の方が普通で，下の方は同じ意味でも文学的用法であって，普通ではないということになるようです．

　　La macchina che Luigi aveva comprato era difettosa. ルイージが買った車は欠陥品だった．
　　＝ La macchina la quale Luigi aveva comprato era difettosa. (文学的用法でまれ)

　文法書類を見返してみると，il quale の用法については，いろいろ細かい制約があるようで(文学的な用法であるためでしょうか)，この辺りは一度まとめてみる必要があるようです．というかおそらく作家や時代で色々違いが出てくる用法かもしれません．ざっと見た範囲でも，文法書によっては，やや疑問に思える規則も書かれていることもあります．例えば，il quale は，前置詞と共に用いられるケース以外は，制限的用法に使われることはなく，制限的用法にするためには接続法が用いられるという規則が書かれている文法書があるのですが，本当に有効な規則なのかどうか，確認するために少し調べてみたいとおもっています．
　しかし，とりあえずは，il quale の形は，何らかの理由で学位論文などを書いたりする必要がある場合を除き，読解レベルで，文章語的な固めの表現であるという理解ができれば十分としてよい用法ではないかとも思います．che や cui といった，よりよく使われる関係代名詞のほうを使えるようにすべきでしょうね．

　いずれにせよ，質問を下さった方には，いろいろ調べる機会を与えてくださって，大感謝です．

秋の実用イタリア語検定は10月5日の日曜日に行われました．すでに試験の模範解答が出ているので，確認することができます．

　　http://www.iken.gr.jp/effetto.html

さて一応今年も2級を受験したのですが，基準の8割には残念ながら到達せず……．今年は何を勉強したらいいのか，正直わからなくなってしまっていて，実は1ヶ月以上前の下の記事を更新した後，イタリア語には一切触れることなく，前日もなにもせずに，ぶっつけ本番で受験してしまったというのもあります．ただ，多分独学で過去問を勉強しても，そんなにかわらない点数だっただろうという感じですね．
　ヒアリングは2-3割程度聞き取れた実感しかないですが，こちらが山勘がかなりあたって8割近くとれていたものの，頼りのはずの筆記が今年は7割ちょっとで，2級で要求される全体8割はこの時点で多分無理ですね．
　筆記では今回はまだやっていなかったり習熟に乏しい文法の範囲(複合文などの直説法・接続法・条件法)のあたりが，かなりできないことがわかりました．ここもブログで書いて勉強したいのですが，ここは普通の文法書であまり書いていない部分なので，英語やイタリア語などで書かれた文法書を読まなければいけなくて，どうも億劫で書けないでいます．これからはもうちょっと文法記事を更新しないといけないですね．
　あと普通の日常会話の表現に乏しいので，この辺りをどう補うかも課題ですね．テレビ番組など見ていればいいのでしょうが，やっぱりまだ2-3割も聞き取れない状態なので，ヒアリングの上達具合にかかって来そうです．これも最終的にマスターできるには，最低2年ぐらいは必要でしょうか．
　読解のほうは，ほかの外国語で鍛えた余力がそのまま使えるため，この部分では例年苦労はしないのですが，今年はぶっつけ本番だったせいか，ヒアリングと文法で頭が疲れきってしまい，どうも話の筋が読み切れず，読み返しを繰り返してしまって作文の時間を徒に削ってしまいました．もともとの文章としても，ちょっと混乱を起こしそうな話だったと思います．正誤判定のほうの文章をヒントにできなかったら，誤読していたでしょうね．
　そんなこんなで2級取得にはおそらくまだ数年はかかるかな？という手応えですね．そもそも独学にこだわっているのが，わかってはいるのですが，一番よくないところなのでしょうね……(しかしお金がないので学校にいけません……)．

　まあそんなわけで，ほぼ不合格ではありますが，今年のイタリア語検定自体のレベルは，2級に関しては以前よりは取り組みやすいほうだったかもしれません．作文のテーマも，比較的書きやすいものでしょう．その意味では今年の1次合格を逃してしまったのは少々残念でした．

注意！！書きかけです！

　a の基本的な意味は，その語源であるラテン語の ad 「……へ」が持っていた方向の意味で，「……へ，に」です．これは関節目的語にまで拡大され「……に」となります(もちろん人称代名詞は間接補語弱形では mi, ti, gli, le, ci, vi, gli)，さらに時間「……に」，目的「……へ」などにまで拡大されます．部分的には，ラテン語の ab 「……から」から来たと思われる，分離・離脱の意味の動詞と結びつく「……から」の意味，それから原因を表す「……によって」の意味も用いられます．
　a の後に定冠詞が続く場合は，必ず融合して以下のようになります．

	il ragazzo	lo zio	i ragazzi	gli zii gli amici	la ragazza	le ragazze	l'amico l'amica
a	al ragazzo	allo zio	ai ragazzi	agli zii agli amici	alla ragazza	alle ragazze	all'amico all'amica

　a に続く語が母音で始まる時には ad となることが多いですが(実は上述のように本来の形)，必ずしなければならないということもありません．例えば，「ローマの西に」は ad ovest di Roma も a ovest di Roma も両方とも可能です．


1. 場所・方向「…に，…へ」

　静止点並びに方向を表します．ただし，続く名詞などの性質によって in など他の前置詞と使い分けがあるので，こちらを参照．

　　Siamo arrivati a Roma (ad una conclusione). 我々はローマに着いた(ある結論に至った)．
　　Risiedevo a Milano per qualche giorno. 私はローマに何日か滞在していた．
　　È già ora di andare a letto. もう寝る時間だ(ベッドに行く時間だ)．
　　a nord 北に　a(d) ovest 西に　a sud 南に　a(d) est


2. 時間「…に」

　これも a を用いる場合，また無冠詞で時間を表す場合など，使い分けがあります．時間の表現と合わせて覚えたほうがいいですね．こちらとこちらを参照．

　　Luigi mi ha telefonato alle otto (a mezza giorno / a mezzanotte). ルイージは8時に(正午に/夜12時に)僕に電話してきた．
　　Marco uscì a notte (a mattina / a notte fonda). マルコは夜に(朝に/夜更けに)出かけた．
　　A carnevale ogni scherzo vale. カーニバルではあらゆる悪戯がOK．
　(祭日など a natale「クリスマス」a capodanno 正月)
　　Ci troviamo a dopo (a presto). また後で(またすぐ/また明日)会いましょう(挨拶)．A dopo!「後で！」A domani! 「また明日！」

　ただし questo/a 「これ」がつく場合には，a が使われないことが多いです．

　　Questo giorno ho letto molti libri. 僕は今日は沢山本を読んだ．
　　他に questa notte「昨晩，今晩」 　quest' anno「今年」　questa settimana「今週」など．
　　ただし a quest'ora 「今頃は」


3. 傾向「…しがちな」　具体的な方向から派生して，抽象的な物事への傾向も a で表されます．

　　tendenza alla caduta della salario 給料の下落の傾向


4. 目的「…のために」　これも方向から派生して，目的も a で表されます．行動の抽象的な方向ということになります．

　　Mia Moglia è andata alla spesa. 妻は買い物に出かけた．
　　Ieri mattina siamo andati a passeggio nel bosco. 昨日の朝，我々は森の中を散歩しに行きました．


5. 行為の及ぶ対象＝間接目的語「…に」　

　動詞の行為が及ぶ対象を a で表し，間接目的語となります．人称代名詞では，強調される時以外は，間接補語弱形 mi, ti, gli, le, ci, vi, loro などが使われます．a は強調される時にのみ用いられます(a me, a te, a lui, a lei ...)．こちらの 2. 以下を参照．

　　Vorrei regalare un libro a mio figlio. 僕は息子に本を一冊贈りたい．
　　　　(Vorrei regalarti un libro. 僕は君に本を一冊送りたい．)
　　Ho chiesto al mio insegnante cosa studiare. 僕は僕の先生に何を勉強したらいいか質問した．
　　　　(Gli ho chiesto cosa studiare. 僕は彼に何を勉強したらいいか質問した．)
　　
6. 方法・手段「……を使う」

　何かの行動が行われる方法・手段あるいは，ある物などが何かの方法で動く場合に，その方法を表す時に使います．

　　In questo bosco siamo dovuti andare a piedi. この森では我々は徒歩で行かなければならなかった．
　　　同様に: andare a cavallo (しかし andare in macchina, in treno など，こちらも参照)
　　Per 20 anni Luigi ha giocato a. calcio ルイージは20年サッカーをプレイした．
　　　その他 giocare a sci, a tennis スキー，テニスをプレイする
　　barca a motore (a vela) モーターボート(帆船)　　ricaldamento a vapore 蒸気ボイラー
　　Dovremmo misurare la distanza a occhio. 我々はその距離を目で測らなければならなかった．
　　comprare (vendere) a credito / a credenza　信用買い(貸し売り)をする

　この場合，a の中の名詞に形容詞がついて，「……を……して，したままで」のようになることがあります．慣用句に沢山あるので，重要名詞などでは辞書を引くときに少し注意して探すと，色々面白い表現に行き当たります．

　　Non posso tornare a mani vuote. 私は手ぶらで帰るわけにはいかない(手が空のままで)．
　　Sempre mia figlia sogna ad occhi aperti. 私の娘はいつも夢想している(目を開けたまま夢見ている)．
　　La risultà dell'esperimento ci ha lasciato a bocca aperta.
　　　　実験の結果は我々を唖然とさせた(口を開けたままにした)


7. 特性・特質・様式

　ある物の特性を表します．料理などで「……風」となるものはこの用法です．

　　film a colori カラー映画　　
　　gonna a fiori (a pois [pwa]) 花柄(水玉模様)のスカート
　　Tagliatelle al Ragu Bolognese ボローニャ風ミートソースのタリアテッレ
　　risotto alla milanese (romana) ミラノ風(ローマ風)リゾット
　　Paghiamo (facciamo) alla romana. 割勘で払いましょう(ローマ風に(!)払いましょう)．


8. 原因

　原因を表すこともあります．おそらくは元々は場所ないし時の a がもとで，「それにあたって」という意味から生じたのではないかと思いますし，実際の例でもそのように訳されたほうがいいかもしれません．

　　A quella vista la piccola figlia è scoppiata in lacrime. その光景に小さな娘はわっと泣き出した．
　　Luigi ha cominciato a ridere a quelle palore. ルイージはその言葉を聞いて笑い始めた．


9. 比較

　比較の対象が a で表されます(ただし比較級での比較の対象は di (che) です．こちらを参照)．



10. 限定

　「……に関しては，……の点では」の意味になります．

　　Al mio avviso (giudizio) la tua tesi di laurea merita una loda. 私の見解(判断)では君の学位論文は賞賛に値する．
　　Io non sono bravo a parole. 僕は話すのはうまくない．
　　Stanno bene a quattrini (soldi). 彼らは収入(金回り)がよくない．
　　　　(しかし Stanno bene di saluti. 健康がすぐれている)
　　(In) quanto ai problemi non te ne posso parlare. その諸問題に関しては，僕は君に話す事はできない．
　　　(＝a proposito dei problemi)



11. 価格

　売買賃貸の価格などを表します．

　　Ho acquistato/comprato (venduto) la macchina a 2.000 Euro. 僕はその車を2千ユーロで買った(売った)．
　　Si affitta a 100 Euro a mese. 月100ユーロ賃貸．
　　comprare (vendere) a buon mercato (a caro prezzo) 安価で(高値で)買う(売る)　





なお，前置詞 a をとる基本的動詞についてはこちらを参照．

そろそろ秋のイタリア語検定試験の申し込みが始まります．

試験日程：
一次：2014年10月5日（日）　　二次（1，2級一次合格者）：12月7日（日）

申し込み期間：
2014年 7月17日（木）～8月17日（日）消印有効

　窓口申し込みができる受験窓口は，あまり多くないので，郵送で申し込む場合が多いでしょうね．その場合は，8月の最初の週には検定協会に受験要項を送付依頼しなければいけません．今はWeb申し込みが可能です．

詳しい開催要項はこちら：http://www.iken.gr.jp/exam.html


受験対策本などを挙げておきましょう．

一番あたらしい『実用イタリア語検定<2013>』はこちら：

実用イタリア語検定〈2013〉1・2・準2級―問題・解説 (2013/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定〈2013〉3・4・5級―問題・解説 (2013/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

過去の対策本などは過去記事のこちらにまとめてあります：http://datiintrovabili.blog100.fc2.com/blog-entry-425.html

『実用イタリア語検定<2014>』の発売は，例年通りだと8月半ばのようです．

Ultimamente non ho buona volontà di studiare italiano. Ma sarebbe spiacevole se dimenticassi tutte cose che ho studiato, perciò scriverò in italiano se avrò un pò di tempo. Probabilmente si troverà un sacco di errori nel mio italiano, ma errare è humano e un uomo diventa maturo col errore, benché ho fatto troppo molti errori.

広告消去のために……

　イタリア語を読むためのなかなか力強い味方となる本が登場しました．

　　　関口英子，白崎容子 編訳『名作短編で学ぶイタリア語』東京：ベレ出版，2014年．

　イタリア語の原書は，僕も読む時はかなり苦労します．本格的な原書はもちろん注釈もついていません．かといって，講読用の本で，丁寧な解説がついているものもあまりないです．幸いにして，日本語訳が出版されていても，比較してみて，どうして日本語のこの訳になるのかわからない場合もかなりあります．僕自身は本格的な文学作品だと，原書で読んで相当詳しく調べて読んでも，完全理解の70-80％程度に到達するかどうか，というところですね．
　上の本は，近現代のイタリア語の名作を9作とりあげて，対訳と文法などの注釈を適宜加えているほか，別にページを割いて文法のポイントを適宜まとめてくれています．読んだら終わり式の読解練習というだけでなく，読むことを通してイタリア語を知るための本になっています．
　個々の作品は，対訳の日本語を読むだけでも非常に面白く，巻頭のルイージ・カプアーナのTrottolina「こま娘」は，こんな面白いおとぎ話があったのかと，驚きました(それでこの本を買ったのですが)．その他，イタリアを代表するアルベルト・モラーヴィア，最近亡くなられたアントーニオ・タブッキに至るまで，大変面白い作品ばかりです．文法が終わっていない段階，あるいはイタリア語を始めていない段階でも，是非日本語を読むためだけでも買っておいたらいい本といえるでしょう．
　文法ポイントは，適宜体系的にまとめられていて，非常に便利です．例えば，読解に入って最初に戸惑うのは，様々な機能をもつ si は，文法学習の段階では別々に学ばれますが，実際の作品では，どれもこれもいっしょに出て来るため，これらをきちんと読み分けなければいけません．本書の p. 122 では，si の様々な用法が，4ページほどで，例文と解説付きですっきりきれいにまとめられています．特に Si tolse il cappello 「彼は帽子を脱いで」(p. 122)で出て来る si は，間接目的語の用法で，帽子の所有者を表すものです(日本語や英語的な感覚では Tolse il suo cappello になりそうですが，これはイタリア語らしくない言い方)．この si は，僕も最初にタブッキを読んだ時に頻繁に出て来るため，用法を突き止めるために文法書を何時間あさったかわかりませんが，このページをみれば，そんな手間をかけずにすんだと後悔しきりです(まあその手間のおかげで忍耐力だけはつきましたが)．そのほか，なかなかきれいにまとめられているのをみたことのない，句読点の用法(pp. 36-39)，縮小時・拡大辞を含む，接尾辞・接頭辞のまとめ(pp.52-55)など，大変に便利です．
　最後に，この本の非常によい点は，レイアウトが本当に見やすいこと．文字の大きさ，行間，適切な網掛けによる強調，小さめの活字ながら読みにくくない脚注，表紙や各短編の最初のページの挿絵も美しく，ページ左の見出しも美しいですね．丁寧に作られている内容に相応しい，丁寧なレイアウトと装丁です．ここまで神経を使って本を仕上げるということは，電子化されてレイアウトが自由にいじれるはずの現代の語学出版で，なぜか滅多にないことです．今後の色々な語学書の出版の際には，この本はすばらしい手本になると思います．そうして，なによりいいのは，最近の本によく見られる，安っぽいこけおどしの低劣な売り込み文句が一切ないことです．本そのものの内容で売るという気概が感じられますね．値段も2600円程度と，比較的安価で良心的です．
　このような読解の本であれば，何冊あっても歓迎されると思います．是非是非，続刊を望みたいところです．
　

名作短編で学ぶイタリア語 (2014/02/17) 不明 商品詳細を見る

日伊学院の作文・翻訳コンテストでの，語数カウントの情報をいただきました．いつも情報ありがとうございます．その他の情報などと改めてまとめると……

1. 独立して文字で書かれているものは，冠詞・前置詞などもすべて語に数える．

　　la mia vita 「私の人生」は3語，il da farsi 「為すべきこと」は3語．

2. アポストロフィで区切られているものは，独立した単語とみなす．くっついているのは一語．

　　l'amica 「女友達」は2語，C'è un'isola「ある島があった」は4語．
　　dimmi 「私に言って下さい」は1語．
　　1 の il da farsi の続けて書かれた場合 il daffarsi あるいは il dafarsi は2語．

　ちなみにこの「為すべきこと」の意味の il da farsi や il daffarsi, il dafarsi は辞書でも探すことのできない頻出表現です．同じ意味の il daffare はなんとか辞書にも載っていますが，これよりも il da farsi の形がよく用いられます．新聞などでもよく見かけますし，試験でもたまに意地悪で出されますから要注意．不定詞(句)が名詞化したものなので，無変化名詞でもあります．多く見られるのは，前置詞 su とともに用いられる sul da farsi (複数 sui da farsi)という形です．僕もこれを辞書で探して何時間費やしたかわかりませんね……．

3. もちろん，文字以外のコンマやアポストロフィーなど，例えば . , : ; ' " () <> ! ? などなどは，語数に数えません．


また多少違った数え方もあるのかもしれませんが，おそらくこのまま他の試験などの語数に適用してかまわないと思います．

追記：まだ数詞の場合などはわかりませんが，概ね一語でいいと思います．100万を超えると, 1,000,000 は un milione と読むので，この場合に 2語とするかどうかなどという微妙な問題はありますが，イタリア人がそこまで厳密に数えたりはしなさそうですね(笑)．

追記2：「作文の文字数は記入するべきですか？」とのご質問がありましたが，必要ないと思います．少なくとも僕は書いていません．

とりあえず広告消去のために……．それにしても，いい曲ですね．歌詞は read more 以下で．

　最近イタリア語は殆どやっていないのですが，書かないとブログにひどい広告が出て使いにくくなってしまうので，なんとか書いてみます．

　新年の挨拶は，タイトルにあるように Felice Anno Nuovo! または Felice Nuovo Anno! の両方が「よいお年を！(幸せな新年を)」にあたるようです(Google で検索するかぎり，両方が同じ程度普通に使われているようです)．「明けましておめでとう！」と大体同じといってもいいでしょうが，Felice Anno Nuovo (Nuovo Anno)! は前の年でも使えます．

　ただ，年末年始はヨーロッパでも祝うことは祝いますが，むしろクリスマス(Natale)のほうがメインです．というより，年末年始もクリスマスの一部です．クリスマスは 12月25日の Natale から，1月6日の公現祭 Epifania (東方三博士のキリスト礼拝の日)まで続いて，その間ずっとクリスマスツリー l'albero di Natale なども飾られています．この間がクリスマス休暇になり，クリスマスには万難を排して家族が集まって，静かに過ごすのが通常のようです．クリスマスの挨拶は Buon Natale!「よいクリスマスを!(お過ごし下さい)」のようですね．クリスマスには正月をセットにして，Buon Natale e felice Anno Nuovo! 「よいクリスマスと幸せな新年を！」というのもよくあるようです．

　ともあれ，皆様がたによい一年でありますように！

　Che sia un buon anno per tutti!

　イタリア語検定の結果がでまして，結局文法問題以外は平均点を大幅に下回る結果で，悪いと思っていた予想をさらに下回る結果でした．ヒアリングはさすがにもう上達はあきらめていますが，作文のほうはさすがにちょっとひどかったです．ひょっとすると，出来の他に，語数の計算が間違えていたのかもしれません．確か欧米語では，作文などの語数は，たしか語の数そのままではなくて，冠詞や前置詞やavere, essere などの時制の助動詞を含まないものだったと思うのです(←これは情報としてははなはだ曖昧で，間違っているかもしれません)．このあたり，実は準2級でも迷ったのですが，こっちはぎりぎり合格していたので確認するのをすっかりわすれていました．本番は時間ギリギリでおそらくどちらでも大体範囲内になるようにしたと思うのですが，もしかすると範囲から外れていたかもしれません．来年受験することがあれば，その時にでも質問しようかとも思いますが，できれば，だれか詳しい方，コメントいただけるとありがたいです．まあたとえ字数が範囲内だったにしても，書いた手応えははやり2級の作文レベルではないよね，という程度ではありましたが……．

追記：コメントで情報をいただきました．どうもありがとうございます！それによると，冠詞・助動詞・前置詞は，1語に数えるのだそうです．その際，l'amico のように，冠詞などをアポストロフィでつながれているものも，2語に勘定するようです．ちょっとマージナルな部分については，l'ho detto は3語？2語？でよくわからずとのことで，c'è は1語？とのことです．また引き続き調べてみます．

2013年秋季 第37回実用実用イタリア語検定の合格者(1-2級は一次試験のみ)が受験番号で発表されています．

　　http://www.iken.gr.jp/effetto.html

2級はやはり駄目でした．ヒアリングが5割ちょっとしかとれていないので，まあ門前払いですね．筆記はわりとできていたものの，ここでもぽろぽろ知らない知識が出てくるので，とても万全とはいえません．作文はそもそも練習していないので，最初から無理ではありましたが，あまりにひどくて採点している先生もあきれているのではないかなあと思います．ヒアリングができないのは，さすがにこの年齢になると，正直どうでもいいことなのですが，筆記の幾つかの間違いのほうが，今の勉強の仕方のまずさを示しているように思います．いずれにしても，またほそぼそと，文法事項でもまとめていくぐらいしかやることはないかなと思います．

　どうも2級の試験が明らかに思わしくなくて，答え合わせすらする気になかなかならないですが，とりあえず正解が出ています．といってももう2週間前の話ですね……

　　http://www.iken.gr.jp/index.html

　仮に合格したとして，多分試験日までは一度もイタリア語を話すことはないでしょうから，二次試験はどう考えても無理そうです．まあいつかまた挑戦する日が来るかもしれませんが，来年はもうないかな．

辞書で用いられる略号について質問をいただきました．

ネット上のイタリア語辞書ですが，序文などもついているものはあまりないので，略号なども山勘に頼ってなんとかしていました(素人くさくてすみません……)．ご質問いただいたので，本腰をいれて探してみると，ネットがメインの発音正書法辞典(DOP)についている略号リストがありました．少々長いですが，便利で網羅的だと思います．これもページ上にリンクつけておこうと思います．

　　http://www.dizionario.rai.it/staticAZ.aspx?treeID=197

8月17日(土)の申し込み締め切りが迫ってます．特に1級と2級は秋しか行われないので，うっかり忘れると次の秋受験まで1年待ちになります．

http://www.iken.gr.jp/exam.html

2013年度版の検定過去問はまだ出ていないようです．こちらも早く出てほしいですね．
2013年度版の検定過去問問出たようです．

実用イタリア語検定〈2013〉1・2・準2級―問題・解説 (2013/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定〈2013〉3・4・5級―問題・解説 (2013/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

ずいぶん間があいてしまって申し訳ありません．

2013年秋季 第37回実用実用イタリア語検定の開催要項が発表されています．


受付期間：2013年7月10日(水)～8月17日(土) 締め切り
日時：　　　2013年10月6日(日) 　二次試験(1,2級一次合格者)：12月1日(日)

会場など詳しくは：http://www.iken.gr.jp/exam.html



　受験申込書がPDFでhttp://www.iken.gr.jp/exam.htmlの上のほうにあげられていますが，こちらを印字して郵送してもいいということなのか，ちょっと説明が足りません(ちなみに微妙に文字がずれているのですが，僕だけでしょうか……)．郵送の方は確認されたほうがいいと思います．PDFでだめなら，受験要項などを書店に取りに行くか，検定協会に郵送してもらう必要があるので，その時間ロスも考慮にいれなければいけません．

　試験対策などですが，準2級を受けた感じでは，ともかく過去問を暗記するぐらいまでやることがベストということになるでしょうか．リスニングのほうは特にそうですね．日常会話に近い会話教材は，実はあまり多くないのですが，検定のリスニングの問題がそれのいい例になっています．


　以下検定対策本でも．(こちらも参照下さい：http://www.iken.gr.jp/pubblicazione.html)

　3級までの試験対策本は，どれも非常によく充実していて，イタリア語の入門のあとの知識の整理には非常に有効です．文法事項のまとめがすばらしくて，検定試験を受けなくても，これを利用することで身に付くことが沢山あります．

　2級は試験自体がかなり難しいので，対策本があまり機能していないというか，まあこんな感じの問題がでるよ，というぐらいですね．また，2級以降の文法事項は，坂本文法などを見てもよくまとまっていなかったり，日本でのイタリア語学習上の問題もあります(特に使役動詞，知覚動詞，従属文など)．緊急に必要なのは，しっかりまとまった日本語の本格的文法書ですね．独学で英語やイタリア語の文法書を見てまとめるのは，やりがいがあるのを通り越して大変すぎますし，まとめている間に検定試験が終わってしまいます．

イタリア語検定対策4級5級問題集 (2007/09/11) 京藤 好男 商品詳細を見る

イタリア語検定4・5級突破単語集 (2005/09) 京藤 好男、アルダ ナンニーニ 他 商品詳細を見る

イタリア語検定4・5級突破 (2002/08) 藤谷 道夫、一ノ瀬 俊和 他 商品詳細を見る

イタリア語検定3級突破 (2002/08) 一ノ瀬 俊和、東 哲史 他 商品詳細を見る

イタリア語検定2級突破 (2003/08) 日向 太郎 商品詳細を見る

　しかし，いずれの対策本も，10年前の出版物なので，最近の検定問題の傾向とはやや違うようです．実際の試験対策には，過去問をやるのがやはり欠かせないようです．


実用イタリア語検定2013年は8月中旬刊行予定とのこと．既刊のもののみあげています．

実用イタリア語検定2012 4・5級問題・解説 (2012/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定2012 1・2・3級問題・解説 (2012/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定 4・5級試験問題・解説〈2011〉 (2011/07) イタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定 1・2・3級試験問題・解説〈2011〉 (2011/07) イタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定〈2010〉4・5級問題・解説 (2010/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定〈2010〉1・2・3級問題・解説 (2010/08) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

実用イタリア語検定2009 4・5級 (2009/07) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る

こちらはAmazonでは在庫なしで古書になっています．高額なのでご注意下さい．

実用イタリア語検定2009 1・2・3級 (2009/07) 国際市民交流のためのイタリア語検定協会 商品詳細を見る