■新滑走路の工期は6年
こうした状況を受けて、新たに建設する滑走路の工期は約6年と短い。ところが、施工場所の制約は大きい。例えば、滑走路増設エリアを埋め立てるうえで、大規模な作業船が近寄れるだけの水深を持つエリアは、南北の2カ所だけ。そこで、水路が得られそうな箇所に新たに仮設桟橋を建設し、ここから埋め立て用の材料を搬入できるようしていく。
埋め立てエリアを囲む護岸は、水深の浅い区間では捨て石を、深い区間ではケーソンを利用する。護岸延長約8.5kmのうち、ケーソンの使用区間は約1.2kmに相当し、使用函数は約60函に達する。
ただし、埋め立てエリア全体を護岸で締め切ってから内部を埋めていては工期に間に合わない。そこで、埋め立てエリアを6区画に分割し、締め切りを終えた区域から埋め立てを前倒しできるようにした。
施工箇所は外海に面していて、台風や冬季の波浪の影響を強く受ける。しかも、海洋工事なので夜間は施工できない。そのため、天候などの良い時期には休日返上で施工を進める。
■基地問題が生む土砂調達リスク
工事には新たなリスクが出てきた。資材調達だ。埋め立て工事では、土砂を県内から調達する予定にしている。これまでにも空港の別工事で生じた土砂を保管するなど、事前に準備はしてきた。それでも、必要とする土砂の約3分の1に相当する380万m3(立方メートル)は購入する予定だ。米軍普天間飛行場の辺野古移設の事業が動き始めたために、この土砂に費用増などの調達リスクが出てきた。今後の材料の安定供給は予断を許さない。
工事を終えれば、滑走路の処理容量は深夜の離発着便などを除いて年間約18.5万回に増す。現在の約1.4倍だ。まだ10年ほどは人口増加が見込まれる沖縄県。成長の柱として空港増強への期待は大きい。2008年12月から2009年2月にかけて市民に意見募集したところ、滑走路増設案に肯定的な意見は約8割に及んだ。
空港増強による経済効果を十分に発揮させていくには、周辺の脆弱なインフラの手当てにも目を配る必要がある。例えば道路事情。慢性的な交通渋滞に悩まされている那覇市内では、空港へのアクセス改善を図るための道路整備やモノレール延伸といった事業が動き出している。
(日経コンストラクション 浅野祐一)
[日経コンストラクション2014年10月13日号の記事を基に再構成]
[参考]日経BP社は2015年2月23日、書籍「日本大改造2030―この国を変える250のインフラ事業―」を発売した。日本が“成熟社会”に移行して久しいが、その日本を支えるインフラは、これから大きく変化を遂げようとしている。少子高齢化や人口減少、リスクが高まりつつある自然災害、財政難といった様々な課題を受け、将来の日本の姿を想定したインフラの再構築が始まっている。本書では、日本の社会や経済を根底から支える事業の動向や計画、具体的なプロジェクトを、臨場感あふれる写真や詳細な図面などとともに紹介している。
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那覇空港、LCC、滑走路、全日空
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