2015年04月17日
時速590キロ
今日はヒコーキではなく、新幹線の話。リニア中央新幹線の2027年開業を目指すJR東海は16日、営業仕様の「L0系」車両を使った山梨リニア実験線での有人走行試験で「時速590キロ」を達成したと発表しました。鉄道では世界最速となる記録で、ギネスにも登録申請するそうです。
私は「航空」に限らず、物書きとしてこれまでさまざまなジャンルで執筆を続けてきました。広告コピーのライター経験も長く、大手広告代理店の仕事を手伝ったことも2度や3度ではありません。当時受け持ったビッグクライアントの一つがJR東海で、私は技術関係の取材・執筆をメインで担当。約10年間、東海道新幹線などの現場を歩きました。
リニアの研究施設や開発現場の取材も重要なテーマでした。山梨実践線にも何度となく足を運び、技術者たちにインタビュー。1997年の12月に、それまでフランスの高速鉄道TGVが持っていた時速515キロの記録を塗り替える時速531キロを達成したときも、リアルタイムで現場からの報告を受けながら記事にしたことを思い出します。あれはたしか、その年のちょうどクリスマスの日でした。
そして昨日、さらに60キロも記録を上塗りし、時速はついに590キロに! もっとも、営業運転では最高でも時速505キロ程度で、最速への挑戦はあくまで「信頼性」を高めるためのものです。リニアには運転席がありません。ガイドウェイ(側壁)に配された電磁石(推進コイルと浮上・案内コイル)を地上から遠隔操作することで、車両を前進させます。超高速で走る無人車両を、ホームドアを備えたホームに1センチの狂いもなく止めるためにはきわめて高精度な制御技術が必要で、実用化に向けたエンジニアたちの挑戦は今後もまだまだ続くのでしょう。「世界最速」のニュースに接し、久しぶりにまた現場を取材してみたくなりました。
2015年04月14日
日台間に週500便
日本から台湾へ、台湾から日本へ。相互の旅行者がどんどん増え続けているそうです。「両国を結ぶ国際線フライトは2015年中にも週500便を超える勢い」と、台湾のメディアが伝えました。
台湾旅行がブームになっていることは、私も昨年の秋に『SANKEI EXPRESS』紙で書きました。格安を武器にファンを集め、国内の空から近隣のアジアへ翼を広げてきたLCCがブームを強力に後押ししている──と。台湾へ飛ぶ場合、以前は日系の2社かチャイナエアライン、米国デルタ航空など大手の利用がほとんどでした。昨秋初めてバニラエアで成田から台北へ飛んでみたのです。人気の「特製とろ〜りクリームパン」〔写真〕を機内で買い、気さくなクルーたちと冗談を言い合いながら、とても快適なフライトでした。
台湾という国はもともと、日本人にとって最も身近な“海外”のひとつです。食べ物がおいしく、親日的で、治安も悪くありません。そんなことから、若い女性たちには「海外へひとり旅に出るなら、まずは台湾で練習を」とアドバイスしてきました。
それにしても、日台間のフライトが週500便というニュースには驚きました。2011年には週250便程度だったそうなので、この4年間で倍増した計算です。私も夏以降に、またLCCで飛んでみようかな。今度は別のLCCで、東京以外の都市から。あるいは同じバニラエアで、次は台北ではなく高雄へ。いま書いている原稿の仕事が終わったら、本気でプランを練ってみようと思います。
2015年04月11日
航空セミナー第2弾
3月12日に六本木ミッドタウンタワー7階のイベントスペース「d-labo」で開催した私のトークセミナーのレポートが同サイトにアップされました。当日はせっかく申し込んでいただきながら、急な仕事などで出席できなかった方も多かったと主催者側から報告を受けています。レポートは2時間おしゃべりしたうちの一部を再現したものですが、お越しになれたかった方はこちらをご覧ください。
それでも当日はたくさんの人にお集まりいただき、d-laboスタッフも「セミナーを始めて以来の大入り・盛況だった」と話していました。“空の旅”に興味をお持ちの方がこれほど多いのかと、登壇した私自身も驚いています。セミナーではANAから現役の客室乗務員である広報部の山本直子さんにゲストで登場していただくと告知したことも、少なからず影響があったのかも知れません。
さて、その盛況を受けて、d-laboからは「今後も“航空”をテーマにしたセミナーは継続して開催していきたい」と要望が届きました。もちろん、私も二つ返事で承諾しています。そしてまずは、私の相棒である航空写真家のチャーリィ古庄氏が「第2弾」を受け持ってくれることになりました。2015年5月21日(木)の開催で、テーマは「写真で見る世界のびっくり空港&おもしろエアライン」。詳細はこちらです。
興味のある方は、どうぞ早めにお申し込みください。私は5月の連休明けは出張がつづき、しばらく留守にしますが、セミナー開催の前日には戻る予定。ですので当日は、私も会場に応援に駆けつけたいと思っています。
2015年04月08日
成田第3ターミナル
深夜の1時を回りました。あと2時間半ほどして午前3時30分になると、成田空港で建設を進めてきたLCC専用の第3ターミナルが新しく営業を開始します。私もこの数日間、テレビ局を中心にメディア各社から「なぜいまLCCターミナルなのか?」といったテーマで取材を受けてきました。開業に合わせて朝の情報番組などで大きく特集を組む局も多いと思います。
第3ターミナルは第2ターミナルの北側に建設され、ブリッジで結ばれた本館とサテライトの2つの建物で構成されています。成田に現在乗り入れているLCCの14社のうち、新ターミナルに移るのはジェットスター・ジャパン、バニラエア、春秋航空日本とオーストラリアのジェットスター航空、韓国のチェジュ航空の5社。ご覧の写真は本館とサテライトをつなぐブリッジで、サテライト側の駐機場が拡張されると、将来はこのブリッジの下を航空機が行き来する光景が間近に見られるようになります。
上記LCCのうち、ジェットスター・ジャパンとバニラエア、春秋航空日本の3社が国内の各都市への便を運航。国際線を運航するのはバニラエア、ジェットスター航空、チェジュ航空の3社で、トータルすると国内線で12の都市が、国際線では4つの国・地域の7都市が第3ターミナルと結ばれることになります。開業時点のダイヤでは、国内線・国際線合わせて1週間に680便程度になることも発表されました。
もちろん実際に利用してみないことには、その使い勝手などは実感できません。そこで、まずは5月の連休明けに成田第3から熊本へのジェットスター・ジャパンの便を予約しました。今月はちょっとスケジュールが厳しそうなので5月にしたのですが、もしうまく調整できれば、4月中にもどこか1都市くらいへはこの第3ターミナルから飛んでみようと思っています。
2015年04月05日
新ブランド
民事再生手続き中のスカイマークの新ブランドは「SKY bee(スカイ・ビー)」に! 昨日の土曜日、そんなニュースをマスコミ各社がいっせいに報じました。「bee」は「ミツバチ」の訳ですが、ロゴにはミツバチではなく、強さをアピールするため「スズメバチ」をモチーフにするというデザインプランもいっしょに。
ニュースの情報源は、同社の経営再建を支援する投資ファンド、インテグラルの代表である佐山展生さん本人です。土曜日朝の日テレ系情報番組『ウェークアップ!ぷらす』に出演し、新しいロゴや機体デザインの見本をカメラに向かって披露しました〔写真〕。佐山さん自身は「まだ決まったわけではなく、あくまで一つのプランですが」と但し書きをつけたのですが、それを聞いたマスコミは黙っていません。すぐに「速報」のような形で全国に広まりました。
同じ番組にコメンテーターとして出演していた私も、本番のオンエア前に聞いていました。「昨日、出来てきたばかりのプランなのですが──」と、佐山さんは新ロゴやデザインを私に見せながら、まだ決定ではないので番組で紹介していいものかどうか最初は迷っていた様子。しかし全国ネットの放送で披露してしまったら、もうほとんどこの案で決まりだととらえる人も多いのでは? 佐山さん自身も、わりと気に入っている印象は受けました。
ここで大事なポイントなのは、ブランド刷新が経営トップの意向だけで進められているわけではないことです。「事業改善」「サービス向上」「営業推進」「職場環境改善」という再生に向けた4つの委員会が社内に発足し、参加する社員を全国から公募。自ら手を挙げた社員たちが毎週、各地から集まってきては、会社の将来や方向性について活発な意見を出し合っています。その一つとして出てきたのが「社名やロゴも含めてゼロから出発し、どこにもまねできない会社に生まれ変わっていこう」という案でした。はたして「SKY bee」で決まるのか、あるいは佐山さんの言うようにあくまでこれは一例で、別の案が出てくるのか──新ブランドとデザインはもう間もなく正式に発表される予定です。
2015年04月02日
新たな旅立ち
昨日はエアライン各社で、新入社員の入社式が行われました。ANAグループでは今年、過去最多の1,187人が入社し、入社式もかつてない大規模なものだったとか。JALグループでも1,067人のニューフェイスが式典に参加し、植木義晴社長から「新しいことに挑戦する勇気を」というエールが送られたそうです。
民事再生手続き中のスカイマークでも、11人の新入社員を迎えました。50人以上が入社した昨年に比べると大幅減ですが、それでも「この会社で力を発揮したい」と思う若者はいます。新人のうちの多くはパイロット候補生で、同社の井手隆司会長は「大変な時期にスカイマークを選んでくれて本当に感謝している。もう一度強い会社になるために、みなさんのチャレンジに期待したい」と奮闘を求めました〔画像はANNニュースより〕。
スカイマーク、私も期待しています。経営再建を支援する投資ファンド、インテグラルがリードしての取り組みがすでにスタートしました。動き出してからまだ日は浅いですが、社内ではドラスチックな変化が起き始めているという社員たちからの情報も私に入ってきています。
その再生へのキーマンであるインテグラルの代表・佐山展生氏が、明後日(4日・土)の朝8時からの情報番組『ウェークアップ!ぷらす』(日本テレビ系列)に生出演し、再建への道筋から課題までを自身の口で語ることになりました。私もゲストコメンテーターとして番組に同席するため、明日、讀売テレビのスタジオがある大阪に入ります。佐山さんにどこまで話してもらえるのか? 何を聞けるのか? 楽しみです。
2015年03月30日
週刊ポスト
週刊誌に、ついに自分のことを書かれてしまいました。「顔はコワいがダンディで──」などと、褒められているのかケナされているのかわからないような、失礼千万な表現で。いったいどんな記者を使っているのか。ったく。訴えてやるゥ!
──というのは冗談です。記事を書いたのは、ラジオ番組のコメンテーターなどで大活躍している旅行・航空アナリストの鳥海高太朗氏。彼が『週刊ポスト』に連載中の「“おとな旅”コンシェルジュ」の取材で、私の親しい友人であるマンボミュージシャンのパラダイス山元さんとの天草への珍道中にいっしょに同行し、今日発売の同誌にその詳細を面白おかしく記事にまとめています。
鳥海氏からは記事が掲載される前に「男性週刊誌の“ノリ”で書かなくちゃいけなかったので、怒らないでくださいね」と連絡が届いていました。もちろん私は「何をどう書いたっていいよ。楽しい記事にしてね」と返事。彼は大切な仕事仲間ですし、航空マスコミの世界に入ってきたときからずっと可愛がっている後輩でもあります。そんな鳥海氏も加わっての今回の天草の旅は、飲んで食べて、とにかく笑いっぱなしの3日間でした。
私も現在、季刊『航空旅行』の春号(Vol.13)に寄稿する天草エアラインのレポートを書き進めています。例のドイツ・ジャーマンウイングスの事故のことで今日もTBSの昼の情報番組『ひるおび!』への生出演があったりで、作業が止まっていましたが、明日には仕上げて入稿できる予定。掲載号は4月30日に発売ですので、こちらもどうぞお楽しみに。
2015年03月27日
エセ評論家の偏見
自分の文章で個人的な「怒り」をぶつけるようなことは私はしないのですが、今日は少し感情をあらわにします。それも、かなり長めの文章で。連日メディアで報じられている独ジャーマンウイングスの事故に関して、ここできちんと言っておかなければ、現場で一生けんめい頑張っているLCCの社員たちが報われないと思いました。しばらく、おつきあいください。
墜落事故の一報が入ってきたその日(3月24日)の深夜、私はさっそく某テレビ局の電話取材を受け、状況から推察して「単なる機体故障による事故とは考えにくい。ハイジャック犯やテロリストにコクピットが占拠された可能性も考えなくてはいけないのでは?」とコメントしました。まだほとんど何もわかっていない状況下での、あくまで「可能性」としての発言です。
私のコメントが翌朝の情報番組でそのままオンエアされると、それを受けたある評論家は「いやあ、テロの可能性はないでしょう」と切り捨てました。他局の番組でも別の評論家が「テロとは考えられない」と断じます。見解が異なることを私が問題にしているのではありません。ですが、まだ情報が何も入ってきていない状況で「テロではない」と結論づける彼らが、事故原因についてどう言及したか? 信じられないことですが、まるで「これこそが真実」というように、彼らは「LCCだから」と口を揃えたのです。ジャーマンウイングスはLCCなのでろくな整備も行っていないはず、LCCのパイロットはちゃんとした訓練を受けていない──などと、まったく根拠のないことを持ち出して。
古い体質の評論家ほど、LCCに対する偏見があるようです。私はいつも言うのですが、運航の安全基準に大手もLCCもありません。パイロットも大手とは勤務形態が変わるだけで、課せられる訓練も必要とされる経験も同等です。LCCだから信用できないなどということは、絶対にない。なのに、したり顔で「LCCは整備に手を抜く」とか「LCCのパイロットは能力が低い」と評論する彼らは、おそらくLCCには一度も乗っていないのでしょう。現場をまったく知らないのです。冬の寒いときはコタツに入って、夏の暑いときにはクーラーの効いた部屋で、古い時代の自分たちの貧弱な経験だけを頼りに彼らは「LCCはけしからん」と結論をくだす。LCC各社にとっては、はた迷惑な営業妨害です。かつてはある程度の収入がある人しかできなかった旅客機での移動を、LCCは一般の人たちにも開放しました。空の旅をもっともっと気軽に、安心して楽しんでほしい。そんな願いを実現するために、LCCの現場の人たちがどれだけ頑張っているかを、彼らは自分の目で見ようともしません。だから今回のジャーマンウイングスの事故も、何ら根拠もないのに「LCCはやっぱり整備を適当に済ませていた」とか「LCCのパイロットの経験不足が招いた事故だろう」などと決めつけるのです。考えてもみてください──自分たちが儲けるために人の命をないがしろにするような会社で、誰が働きたいと思いますか!
所定の整備をきちんとやっていなかった事実が発覚した航空会社が監督官庁である国交省から厳しい指導を受ける──そんなニュースをたまにテレビや新聞で目にします。しかし、これもLCCに限ったことではありません。大手だって同じです。整備に手を抜く会社は姿勢を正してもわらなければなりませんが、これも「LCCだから」ということではないのです。
機体の定期整備を「外注化」していることを攻撃する評論家もいました。ですが、重整備の外注は、いまは大手でもやっていることです。効率化やコスト削減という背景もありますが、専門の会社に委託することでより高い安全を確保できるという考え方が主流になりつつあるのも事実。ジャーマンウイングスの親会社であるルフトハンザは、グループにルフトハンザテクニックという整備専門の会社を組織し、長年にわたって技術を蓄積してきました。そこでは、自社の機体の整備だけでなく、世界中のエアラインから1,000機を超える航空機の整備委託を受けるほど信頼されている技術部隊が活躍しています。評論家を名乗るなら、そういう現場にも自分の足を一度くらい運んでみれば、現状を把握できるはず。残念ながら、よくテレビであれこれ言っている評論家は、忙しくてそんな時間もないのかも知れませんが。
いいえ、私が非難しているのは、すべての評論家ではありません。尊敬する先輩たちも大勢います。今回の事故に関してテレビ出演されていた中では、元JALの機長であり、操縦桿を握って地球を800周した実績をもつ小林宏之さんの解説に感銘を受けました。限られた情報しかないなかで、自分はどう思うか、どんな可能性が考えられるかなどを理路整然と解説する論評は聞いていて「なるほど」と思うことばかり。現状ではわからない点については「それはまだ何とも言えない」と発言する勇気も持ち合わせていて、さすがです。
ジャーマンウイングスの事故機のボイスレコーダーが回収され、仏検察当局は「ドイツ人の副操縦士が意図的に墜落させた」という見解を発表しました。某評論家が言ったような「LCCだから整備に手を抜いていた」わけでも、別の評論家が言った「LCCのパイロットだから経験不足」だったわけでもありません。そういう論調で語っていた評論家たちは、自分たちが展開した“いわれなきLCC攻撃”をどう釈明するのでしょうか。故意に墜落させたという副操縦士の名前がテロリストの名簿にはなかったことも伝えられています。なので、私が言った「テロの可能性も考えなくてはいけないのでは?」といった意見も的外れだったのでしょうか。しかし、仏検察当局が語ったように「自殺は一人でするもの。多くの人を道連れにする行為は自殺とは呼ばない」というのも当然のこと。罪のない150人もの命を一瞬にして奪う行為は、私に言わせると“テロ”以外の何ものでもありません。
2015年03月26日
飛行前点検
コンピュータ技術がどれだけ発達しても、最終のチェックは人間の目に頼らざるをえない──そんな状況を、これまで取材したさまざまな世界で垣間見てきました。整備責任者から引き渡されたフライト前の機体も同じ。機長は副操縦士と手分けして「エクステリア・インスペクション」と呼ばれる外部点検を必ず実施します。
「機体はいつもきちんと整備され、飛行前点検で不具合が見つかるようなことはまずないですが──」と、先日フライト前に会ったJALの機長も言っていました。「たとえ雨や雪などの悪天候時にも、飛ぶ前にもう一度自分たちの目で確認する作業を省略することは絶対にありません。これはたくさんの乗客の命を預かるパイロットとしての責務だと思っています」
そのときの取材では、出発するまでの様子も見学させてもらいました。機長はコクピットの点検を副操縦士に指示すると、自分は駐機場に残り、機首部分に移動します。そこから機体の外周を時計回りに歩いて目視での点検を開始。ボディや主翼、尾翼などに損傷は見られないか? エンジンやギアに異常はないか? オイル漏れなどにも注意し、機体の外板の継ぎ目に顔を近づけての入念なチェック作業が進みます。
こうした飛行前点検は、会社の規模の大小や運航する旅客機の種類で変わるものではありません。ご覧の写真は、先月訪ねた天草空港での1シーンです。福岡から到着した天草エアラインのDHC-8で、折り返し準備の様子を撮影しました〔facebookにも別角度の写真を掲載〕。到着から出発まで25分しかないなか、機長の目は機体の細部に注がれます。その真剣な眼差しに、エアラインパイロットとしての“プロ魂”を感じました。
2015年03月23日
満員御礼
六本木ミッドタウンタワー7階のイベントスペース「d-labo」で先日(3月12日)開催した私のトークセミナーに、たくさんの方々にお集まりいただきました。主催者側からの報告では「過去のイベントの中でも最多の入りだった」とのこと。お越しいただいたみなさんには、改めて御礼を申し上げます。
いつも言っていることですが、私はモノを書く人間で、しゃべることを生業にしているわけではありません。セミナーや講演の仕事をあまり増やそうとも思わないので、準備にも時間をかけず、本番ではつい“本音”で余計なことも話してしまいます。それでひんしゅくを買って主催者から「もう来るな」と言われれば、はい、わかりました、もう行きません──というぐらいの気持ちで(笑)。
今回のセミナーでは、ANAの現役客室乗務員である山本直子さんをゲストに招き、途中で30分ほど私とのトークショーをはさみました。言いたいことを言ってしまう私とは違う、山本さんの誠実な話しぶりに、うなずいたりメモを取ったりしながら真剣に聞き入っていた人も少なくありません。私より、ゲストがお目当てだった人も会場にはかなりいたように思います。私ももちろん、それを狙って山本さんに声をかけたのですが(笑)。
もう来るなと言われたら、行きません──と先ほど書きました。ですが、反対に「来い」と呼ばれれば、積極的にリクエストにお応えしていくつもりです。セミナー終了後、主催者側から「反響が大きかったので、今後も“航空”をテーマにしたセミナーを定期的に開催させてほしい」と連絡がありました。「また話を聞きたい」と言ってくれているみなさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。世界の空を飛びまわってかき集めた“裏話”をたくさん引っ提げて、また近く、みなさんと再会したいと思います。
2015年03月20日
衝動買い
国内LCCの1社、ジェットスター・ジャパンが「3月14日で累計搭乗者数が800万人を突破した」と発表しました。初就航は2012年7月3日だから、累計800万人を2年8カ月で達成したことになります。ライバルのピーチも先日、同様に累計搭乗者数800万人達成をアナウンス。しかしピーチは初就航が2012年3月2日なので、こちらは3年かかりました。顧客獲得のペースはジェットスター・ジャパンのほうが速いようです。
ジェットスター・ジャパンの就航直前には、著書『航空大革命』を書くための取材で同社の鈴木みゆき社長に単独インタビュー。そして就航初日には成田から札幌に飛び、同日夜のニコニコ生放送で2時間の特番を組みました。ご覧の写真は初便を見送るスタッフたち恒例の“スタージャンプ!”で、つい先日の出来事のように思い出します。
ところで今日、ジェットスター・ジャパンは「お母さんに、会いに行くよ」というテーマでの国内線キャンペーンチケットの販売を開始しました。片道の最安値は1,990円。キャンペーンサイトを覗いてみたら、たしかに格安のチケットが出ています。私の母は東京・下町の実家にいるので、会いに行くのに飛行機に乗る必要はないのですが、サイトを訪ねたついでにいくつかの路線の往復チケットをつい購入してしまいました。いずれの目的地にも、別に用事があるわけではありません。衝動買い、です。
今年はできるだけ海外へは出ず、本を書く仕事に集中しようと決めました。しかし、旅をしないと自然とストレスがたまるもの。「国内ならいいかな?」という思いが、私を衝動買いに走らせたのかもしれません。本の執筆はホテルでもできますし。でも、目的もない地方へ一人で行くのも淋しい。誰かヒマな人、つきあってくれないかなあ。
2015年03月17日
王家の行列
個人的な用事(取材)でソウルに来たら、仁川国際空港のターミナルで名物の「王家の行列」に遭遇しました。朝鮮王朝時代の宮廷衣装に身を包んだ人たちのこの行列は、空港利用者に乗り継ぎの待ち時間を楽しんでもらおうという仕掛けのひとつ。毎日、昼前と夕方の2回行われ、見物客が続々と集まってきます。
そういえば先日、英国の調査期間スカイトラックス社が各国の国際空港を評価する「ワールド・エアポート・アワード 2015」が発表されました。1位〜4位は昨年と変わらず、1位は3年連続でシンガポール・チャンギ国際空港。そして2位に、今年もここ──仁川国際空港が選出されています。
仁川国際空港は日本人旅行者にとても便利で、とくに地方からの利用者が少なくありません。大韓航空だけでソウルから日本の15都市を結び、ソウルに昼の12時前後に到着するフライトが数多く設定されています。ソウル到着後は、1、2時間の乗り継ぎで世界の各都市へ。仮に4、5時間の待ち時間があっても、無料で使えるインターネットスペースや映画館などの設備が充実しているほか、30を超える有名ブランド店や免税店が並ぶショッピングエリアの散策も楽しい。一人あたりの免税品購入額は、たしか仁川国際空港が世界一だったと記憶しています。
今回は残念ながら、乗り継ぎ便の利用はありません。用事があるのはソウルのみ。さっさと仕事を済ませて明日には帰国します。本当はスギ花粉の少ない韓国でしばらく過ごしたいのですが。マスクを二重か三重にして完全防備し、花粉だらけの東京へ帰ります。憂鬱だなあ。
2015年03月14日
揚力を体感する
穏やかな土曜日。今日はちょっと軽〜い話を。まず、スプーンを一つ用意してください。コーヒーをかき混ぜるものでもカレーライスを食べるものでもOKです。次にお風呂場かキッチンへ行って、水道の蛇口をひねって水を出します。写真のようにスプーンの柄の先端を親指と人差し指で軽くはさんでぶら下げ、スプーンの背中の丸くふくらんだほうを流れている水に近づけていってください。スプーンの丸い部分が水に触れた瞬間──どうなるでしょうか?
スプーンは水の流れの勢いにはね返される。そう考える人が多いかもしれません。しかし、実際はその反対。スプーンは流れている水に吸い寄せられたでしょう。蛇口をいっぱいにひねって水流を増すと、スプーンはさらに強く水に吸い寄せられます。
これを真横にした形を考えると、飛行機の主翼に発生する「揚力」が理解できます。飛行機の主翼の上面も丸くふくらんでいて、その断面は、じつはスプーンを横から見た形状とそっくり。水の流れは空気と考えてください。翼の上面に速い速度で空気が流れると「負圧」という空気の圧力の差が生まれ、これが機体を上に持ち上げる揚力になるわけです。
これ、私がかつて航空工学を学び始めたとき、最初に教授から教わった「揚力を体感する」方法でした。以前にも書いたりしゃべったりしてきましたが、最近各地で開催される「ヒコーキ入門」などの講座で話すと、受講生のみなさんから「へえ」と驚かれることが少なくありません。スプーンだけ用意すれば家庭でも簡単にできる実験ですので、時間があるときにでも試してみてください。
2015年03月11日
YS-11の深夜便
去年もいまごろの時期がそうだったように、今月と来月に発売になる週刊誌と月刊誌で「航空特集」や「エアライン特集」が組まれ、その執筆に追われています。客室乗務員の世界の話を書いたかと思うと、次のテーマはスカイマークの動向と私自身の見解について。今朝はMRJに関するの4ページの記事を仕上げました。あ、その前には懐かしい純国産プロペラ機YS-11の歴史についても〔写真は、2006年にYS-11が退役するときの日本エアコミューターの特別塗装機〕。
こういくつも仕事が重なると、頭を切り替えながらの作業になり、ちょっと大変です。ひとつのテーマで執筆が始まるとついついその世界にのめり込んでしまって。YS-11について書いているときは、私は「その時代」の人になり切っていました。まあ、それがモノを書くことの楽しさでもあるのですが。
YS-11はかつて、札幌や大阪、福岡を深夜便で飛んでいたのをご存知ですか? いまだと騒音問題で深夜の運航などまず認められませんが、当時はプロペラ便として特別に許可され、多いときは夜中に毎日5往復くらい飛んでいた時期があります。昨日書き終えた記事には「急な出張でよく利用し、深夜の大阪便では忙しい芸能人にときどき会いました」という、当時の日本の高度成長期を支えた企業戦士のコメントなども盛り込みました。
週刊誌と月刊誌の特集企画に寄稿する仕事は、今日でとりあえずは一段落です。明日(12日・木)の夜は六本木ミッドタウンタワーでのトークセミナーがあるので、また頭を切り替えておかないといけません。「定員をはるかに超える申し込みがあった」と主催者側から報告が入りました。どんな人たちが来てくれるのか──私も楽しみです。
2015年03月08日
空港図書館
空港へは出発のどれくらい前に到着するか? と聞かれたとき、以前は「ぎりぎりに」と答えるのが旅慣れた人だとされてきました。ですがそれは、空港に早く到着しても何もすることのなかった時代の話。最近はショップやレストランなどの施設を充実させ、飛行機に乗らなくても「行くと楽しい場所」を目指す空港が少なくありません。
大都市の大型空港だけでなく、ローカルな空港でも同様な取り組みが始まりました。その一例が、2週間前に行った熊本県天草の天草空港です。今年の2月5日、同空港のロビーフロアの一角に「空港図書館」がオープン。天草産の木でつくられた温かみのある陳列棚に飛行機や天草に関する本が並び、出発までの待ち時間などに自由に閲覧できるようになっています。
私も先日訪れた際に、サイエンス・アイ新書の『疑問50』シリーズや『まるごと解説』シリーズなど著書を数点寄贈させていただいたのですが、帰京してから「そうだ、図書館にもっとふさわし本がある」と思い立って追加で送ったのが『飛ぶしくみ大研究』と『空港の大研究』の2冊。いずれも学校や図書館向けにつくった大型本で、天草エアラインの営業部長、川崎茂雄さんから「さっそく陳列しました。お父さんを出迎えに空港に来たお子さんなどが手にとってくれています」と嬉しい報告を受けています。
川崎さんからの報告の最後には「貸し出しはできないのですが、たまに本がなくなります。でも、数日するとちゃんと元の棚に戻っているんですよ」と、微笑ましい一文が添えられていました。
2015年03月05日
近未来の旅客機づくり
旅客機は、何万という種類のパーツから構成されています。整備工場にはメンテナンス用に各種の部品をいつでもストックしておかなければなりません。急きょ交換が必要になった場合に、部品がなければ話にならないからです。たとえば就航先の空港に交換部品の用意がなく、ハブ空港から取り寄せるためフライトが丸一日遅延になる──そんなケースも過去に何度か目にしてきました。
使用している部品は、機種ごとに異なります。保有する機種が多ければ多いほど、ストックしなければならない部品の点数も増え、そのコストはばかになりません。コスト増は会社の経営を圧迫するため、LCCやローカルな会社では使用する機材を1機種か2機種に絞って効率化を進めてきました。
しかし国内外に幅広いネットワークをもつ大手では、小型機から大型機までさまざまな機種を保有しなければなりません。部品ストックにかかる膨大なコストを、どうにか削減できないか? 各社とも模索を続けてきた中で、欧州の航空機大手エアバスがユニークな提案を始めています。私がそのことを知ったのは先月、A350XWBの製造現場を取材するためドイツのハンブルク工場を訪ねたときでした。同工場のあるチームが話題の3Dプリンター技術を近未来の旅客機づくりに役立てる研究を進めている──そんな話を聞き、取材の途中で見学させてもらったのです。
詳細を、今朝公開した誠Styleの連載『“飛行機と空と旅”の話』の記事で報告しました。実際に3Dプリンターでつくったという骨組み模型〔写真〕を手に取りながら説明してくれたチームリーダーの言葉を、いまもこれを書きながら思い出し、旅客機づくりの未来像に胸をわくわくさせています。
≫≫≫「3Dプリンターで、飛行機づくりはどう変わる? ──エアバスの場合」
2015年03月03日
石造りの橋の上で
先週の天草の旅では、自由と平等を求めて立ち上がった切支丹の一揆軍と幕府軍(唐津勢)との戦い──いわゆる「天草・島原の乱」のゆかりの場所を、パラダイス山元さんの案内で訪ね歩きました。写真はその中の一つ、市内を流れる町山口川です。大激戦地となったところで、川は当時、両軍の戦死者の血で真っ赤に染まったそうです。
向こうに見える石造りの橋が「祇園橋」です。天保3(1832)年に架設され、長さは28.6メートル、幅3.3メートル。45脚の石の角柱によって支えられた全国でも珍しい造りで、1997年に重要文化財に指定されました。
実際に渡ってみます。石をただ雑に組み上げただけのように見えますが、その造りは精巧そのもの。脚となる石柱の一つひとつの形を整え、上部に配した石材の重さでしっかり固定されています。上流側の橋脚は45度回転させ、角を流れに向けて水圧を分散させるよう工夫してあることも、橋が180年以上も持ちこたえてきた理由でしょう。石の芸術品だと感じました。
緩やかにアーチを描くこの優美な橋の上に立ち、静かな水流を見ていると、いまから378年前にここが激しい戦(いくさ)の場になったことが信じられません。天草四郎が率いた一揆軍は、どんな思いで戦いに挑み、どう散っていったのか。ますます興味をもち、その後は貴重な記録が残された天草四郎メモリアルホールや天草キリシタン館などにも精力的に足を伸ばしました。
2015年02月28日
旅の最適シーズン
天草の旅から戻りました。おなかをいっぱいにして。「それにしてもよく食べたなあ」と思います。滞在した三日間、ずっと飲んで、ずっと食べていました。そもそものきっかけが、友人であるパラダイス山元さんからの「秋本さァん、暴飲暴食ツアーしようよ〜」という誘いだったので、予定していたことですが。
今回の旅で最も印象的だったのが、食べ物のおいしさと、人々の優しさ・親切さです。そして、出会った誰もが口にしていた「この街が大好き」という言葉も忘れられません。それも、とっても控えめな口調で。上の写真──山元さんと私の間に写っているのは、最終日のお昼に訪ねた寿司の名店「蛇の目寿し」の女将さんです。近くの街から嫁いできて、暮らし始めるうちに、天草が大好きになったと話していました。
「本当に素敵な街なんですよ」と女将さん。「今日帰っちゃうなんて言わないで、あと1週間でも2週間でもいてみてくださいよ」
「ありがとうございます。でも、また来ますよ」と私。「次に訪ねるとしたら、何月頃がいいかなあ。やっぱり夏?」
「夏は最高ですよ。海が青いし、お魚はおいしいし。あ、違うか。お魚はいつでもおいしいわ」
「ははは。冬は寒いから、じゃあ次は夏にしよう」
「いえいえ、冬がまたいいんですよ。空気が澄んで、海も山も見事なくらいきれいなんだから」
「なるほど。夏場だと、何月がいいかなあ。梅雨時は避けたほうがいいと思うから、7月か8月?」
「それがねえ、梅雨の季節がまた味があるんですよ。大雨が降った翌日に急に気温が上がったりすると、霧が出ましてね。霧に包まれた先に幻想的な山の景色が現れて、それはそれは美しいんです」
結局、天草はどの季節も最高なのだという結論に達しました。食べ物のおいしさも、ここの人たちの優しさも、季節によって変わるわけではないので。また近いうちに再訪するをすることを約束し、天草エアラインの昨夕の便で帰京しました。楽しかった〜!
2015年02月25日
25年ぶりの天草
小さな港町に誕生した小さな航空会社──天草エアラインが、保有するわずか1機の小型プロペラ機をやりくりして毎日10便を運航していることは前回のBlogで紹介しました。第1便が朝の8時に本拠地の天草空港を出発。福岡を往復して帰ってくると、次は熊本を経由して大阪(伊丹)へ旅立ち、同じルートで午後3時過ぎに天草に舞い戻ります。ここまで6区間を運航したところで、乗務員が交代に。その後は福岡を2往復し、19時35分に天草に帰ってきて、ようやく1日の仕事が終了です。
その天草エアラインで本日、私も天草にやってきました。利用したのは、福岡に到着した朝の第1便が天草に帰っていくAMX102便です。羽田から朝6時25分発のANA便を使って、福岡に到着したのが8時25分。そこで9時発の天草エアラインに乗り継ぎました。
天草を訪れるのは、かれこれ25年ぶりです。もちろん当時は、天草エアラインはまだ存在していません。隠れキリシタンについて詳しく調べていた頃で、長崎か島原から船を使ってのアプローチでした。それに比べ、いまはこんなに近いのかと感動すら覚えます。飛行機だと福岡から35分、熊本からなら20分で着いてしまうのですから。
あいにくの曇り空でしたが、運航するボンバルディアDHC-8(39席のQ100タイプ)は2,700メートル程度の低い高度を飛ぶので、機窓からの景色もまずまず楽しめました。そして何よりも愉快なのが、機内の雰囲気です。社内に5人しかいない客室乗務員の一人が各便に乗務し、そのサービスはまさに“手づくり”といった感じ。詳しくは、天草の旅のレポートも含めて、このBlogやfacebookのほか雑誌などのメディアでも追々報告していく予定です。
2015年02月23日
親子イルカ号
フジテレビの情報番組『Mr.サンデー』(毎週日曜日・夜10時)の昨夜の放送で、天草エアラインが取り上げられていました。所有するたった1機の小型プロペラ機をやりくりして本拠地の熊本県・天草飛行場を中心に毎日10便もの定期便を飛ばしていること、移動のための手段としてではなく同社の飛行機に乗ることを目的にやってくるファンが多いことなどが紹介され、視聴者の反響も大きかったようです。
日曜の夜なので、ご覧になった人も多いかもしれません。私も新聞の番組欄に「日本一小さな航空会社」とあったのでテレビを点けてみたら、あの親子イルカをモチーフにしたボンバルディアDHC-8の青い機体が画面に登場しました〔写真〕。一般公募により2013年2月にデビューした新塗装機です。
天草エアラインはつい5、6年前まで赤字に苦しんでいました。しかし、その後の社員ぐるみのイメージアップ作戦でどうにか持ち直し、根強いファンが増え続けています。民放大手がゴールデンの時間帯に特集として取り上げるのも、その表れでしょう。ある月刊誌が恒例にしている航空特集でも今年は「地域エアライン」にフォーカスするそうで、その巻頭で天草エアラインをレポートすると編集者が言っていました。同誌では私は別のテーマで2本ほど記事を寄せますが、別の取材班が昨日、天草へ出発しました。
じつは私も、同誌の取材班が戻るのと入れ替わりに、今週水曜日から天草に発ちます。その報告は別の雑誌になりますが。取材のアテンド役は、天草エアラインと深〜い関係にあるマンボミュージシャンのパラダイス山元さん。普段も仲良しである彼と私の“珍道中”を撮影するために、相棒の写真家・中西一朗氏も同行する予定で、楽しい取材旅行になりそうです。
2015年02月20日
“つぶやき”を評価に
旅にはトラブルがつきものです。乗る予定だった便が欠航になる。悪天候で到着が遅れ、接続が間に合わない。楽しみにしていた海外旅行が台無しになったり、会議に出席できず仕事が停滞してしまうこともあるでしょう。そんなとき、みなさんはどうしますか?
まずは空港のカウンターで振り替えの便を調べてもらったり、逃した接続便の次の便に乗れないかを探します。うまくいけばいいですが、なかには手続きの場所ややり方がわからず、路頭に迷ってしまうケースも少なくありません。その怒りを、Twitterなどでぶちまけている人もときどき見かけます。「こんな航空会社はもう二度と利用しない!」「空港スタッフの対応にムカついた!」「ふざけるな!」などなど。
怒りはもっともです。そしてその怒りを、どこかにぶつけないと気がすみません。ですがそんなクレームも、社員の対応の仕方ひとつでプラスに変わることも。親切にしてもらったことでその会社がますます好きになる、という経験を、私自身も過去に何度もしてきました。
私が連載コラムを寄稿している旅行・観光専門ビジネスサイト『トラベルボイス』で今朝、デルタ航空のユニークな取り組みを紹介する記事を公開しました。旅行者の“つぶやき”を評価に変える「ソーシャルメディア・ラボ」というチームのレポートです。先日、米国アトランタのデルタ航空本社を訪ねた際に取材しました。へえ、と思う人も多いのでは? ぜひ一読してみてください。
≫≫≫「航空会社のソーシャルメディア活用事例──旅行者の”つぶやき”が評価に変わる」
2015年02月17日
ワインの話
最近、ワインが好きです。料理に合わせてビールも日本酒も焼酎もウイスキーも飲みますが、仕事を終えた深夜などに、書斎でワインを抜くことが多くなりました。ワインを飲むのは、もちろん移動中の機内でも。facebookにもアップしたご覧の写真は、先週利用したフィンエアーのビジネスクラスでのものです。
写真を見ただけで「あ、フィンエアーのフライトだ」とわかる人もいるかもしれません。ワインが注がれたイッタラのグラスは、まるで繊細な氷の彫刻。窓から差し込む陽光を受けてキラキラまぶしく輝き、ワインの味わいをことさら高めてくれます。そして、グラスに添えられているライトグレーの紙ナプキンはマリメッコのデザイン。どちらもフィンランド人が心から愛するブランドです。
ん? 今日はいつもと違って洒落た文章を書くなァ──なんて思いました? はい。「ワインが注がれたイッタラの」から「フィンランド人が心から愛するブランドです」までは、仲間の旅ライターEさんのパクリです。季刊『航空旅行』のヨーロッパ特集(Vol.8)で彼女がフィンエアーを取材したときのレポートにそう書いていました(笑)。
さて、機内で試したこの赤ワインは、カリフォルニア・カーネロス地区のピノノワールです。魚料理をオーダーしたので本当は白がよかったのでしょうが、どうしても赤が飲みたくてクルーに相談したら、彼女は「これなら魚のグリルにも合いますよ」とすすめてくれました。辛口のミディアムボディで、オークの微香があり、これはうまい! ネットで注文しようと、いま調べ始めています。
2015年02月14日
ゾロか、たぬきか
エアバスの最新鋭機A350XWBの製造現場の取材で訪ねたドイツのハンブルクと南仏トゥールーズから、昨日戻りました。facebookにもアップしたご覧の写真は、A350XWBのコクピットを正面からとらえたものです。トゥールーズのモックアップセンターで撮影しました。
顔つきは、ボーイング機はもちろん、従来のエアバス機ともずいぶん変わったという印象を受けます。6枚に分割されたコクピットの窓枠が黒くペイントされ、精かんさが増しました。これについて、案内してくれた女性スタッフとちょっとしたやりとりがあり、近くにいた現場スタッフたちに大笑いされたのを思い出します。
「目のまわりが黒く塗られたこのスタイル、日本でもヒコーキ好きの女子らの間で好評ですよ」と私。「たぬきが空を飛んでいるみたいで可愛いね、って」
「タネキ? タネキって、何ですか?」
「タネキじゃなくて、たぬき。Raccoon dog」
「Raccoon dog! あらま。何てことを! 私たちは“マスク・オブ・ゾロ”みたいでカッコいいと思っていますのに」
マスク・オブ・ゾロ。おお、なるほど。言われてみれば。たぬきはちょっとマズかったかな(笑)。けど、言っちゃったものは仕方ない。私はうやむやに笑い飛ばして、脱出用ハッチのことに話題を変えました。A350のコクピットは窓が開かないので、脱出用のハッチを副操縦席側の天井部分に設けているんだね──とか何とか。女性スタッフにもすぐに笑顔がもどり、その後も楽しく取材を進めました。
2015年02月11日
独仏間の移動
今回の旅の目的は、エアバスの最新鋭機A350XWBの製造現場の取材です。先ほど、初日の予定を終えました。A350XWBは他のエアバス機と同様に、コンポーネント(構成パーツ)ごとにヨーロッパ各地にある複数の工場で分担して製造。完成したひとかたまりのコンポーネントが南仏トゥールーズにある最終ラインに輸送され、組み上げられていきます。
まずは早朝のフィンエアー便で、ヘルシンキからドイツのハンブルクへ飛びました。ハンブルク工場はA350XWBの製造ラインの中でも最も重要な一つで、後部胴体と機首部の組み立て作業が進められています。迫力の現場を、スタッフの説明を受けながら昼食を挟んで夕方までじっくり取材・撮影し、その後は午後5時過ぎの飛行機で最終ラインのあるトゥールーズへ。定期便の就航がないハンブルクからトゥールーズへの移動では、エアバスの社員やエンジニアたちが使う専用シャトルに便乗させてもらいました。
A318で運航するシャトルの機内は、ほとんど満席です。トゥールーズへ出張するハンブルクのエンジニアもいれば、ハンブルクでの会議や打ち合せを終えて帰るトゥールーズのスタッフも少なくありません。出発待ちのロビーで、さまざまな人に「どちらから?」と声をかけられ、中には私が手にしていた指定座席の番号を見て「このフライトは途中からフランスとスイスの国境沿いを南下していくので、天気がよければ左手にスイスアルプスが見えるよ」と教えてくれる社員も。言われたとおり、離陸後1時間ほどして窓のシェードを上げると、夕日に赤く染まりはじめた雄大な雪山の景色を楽しむことができました〔写真〕。
明日は終日、トゥールーズでA350XWBの最終組立ラインを取材します。そして12日(木)は早朝のエールフランス航空便でトゥールーズからパリへ移動。そこで再びフィンエアーに乗り換え、ヘルシンキ経由で13日(金)の昼前に成田に戻ります。
2015年02月09日
欧州最短ルート
現在、朝の6時を過ぎたところ。東の空がうっすらと白み始めています。徹夜で続けてきた書き物をようやく終え、急いで荷造りにとりかかりました。パッキングを済ませ、軽く朝食をとったら、成田空港の第2ターミナルへ。これからお昼の便で、ヨーロッパの数都市を訪ねる取材に出ます。
ヨーロッパへ行く場合、ルート選びがポイントになります。目的地までダイレクトに飛べるなら問題ないのですが、直行便の就航がなければどこかの都市で乗り継がなければなりません。今回は「利便性」を重視し、また取材テーマの一つでもあることから、フィンランドのヘルシンキ経由を選びました。
北欧の街、ヘルシンキ。地図でみると、すごく遠くにあるように思えます。以前どこかでこんな文章も書きました──「地球儀で探すと、ずいぶんと上のほう。立っているとすべり落ちそうな位置にヘルシンキを見つけた。世界の首都でこれ以上北に位置するのは、アイスランドのレイキャヴィクしかない」。陸路で向かうならたしかに遠いのでしょうが、しかし空路だとそうではありません。丸い地球儀上に糸を伸ばして日本かの直線距離を比べてみると、欧州の主要都市の中で一番近いのがヘルシンキです。フライト時間も他の都市より1、2時間短く、ヘルシンキで乗り継ぐことで目的地までの飛行距離も「最短」というケースが少なくない。今回の旅の最初の目的地であるドイツ・ハンブルクへも、とても便利にアクセスできることがわかりました。
とはいえ、ヘルシンキに降り立つのもかれこれ3年ぶり。素通りしてしまうのも、もったいない。現地時間の午後3時過ぎに到着したら、今日はヘルシンキで1泊し、ハンブルクへは明日の早朝便で向かうことにしました。利用するフィンエアーは日本路線で運航するエアバスA330とA340に新しいシートの導入を進めているので、そのフライトも楽しみ。まだ古いシートの機材と新しいシートの機材が混在しているようですが、今日の成田線が新シートの導入機材だと嬉しいなあ。どうでしょう? 空港に着いてからのお楽しみ、ということで。
2015年02月06日
六本木でセミナー
東京・六本木のミッドタウンタワー7階に「d-labo」というイベントスペースがあります。日本語に直すと「夢・研究所」で、これはスルガ銀行が2007年3月から運営しているもの。六本木ミッドタウンのほか二子玉川や湘南など3カ所にスペースを設け、これまで週に2、3回のペースでさまざまな分野の専門家たちを招いての講演やセミナーを開催してきました。
これまで実施してきたイベントはトータルで約400回。カルチャーから趣味、政治や経済までテーマもいろいろです(過去のイベントや今後予定しているセミナーはこちらで)。今回、そのひとつとして「旅」をテーマに、私がセミナーを担当することになりました。主催者側と話しあって決めたタイトルは「もっともっと“空の旅”を楽しもう」。詳細は以下です。
■日時:2015年3月12日(木) 19:00〜21:00
■定員:80名 ※申し込み先着順
■会場:六本木ミッドタウンタワー7階「d-labo」
■備考:参加費無料
サブタイトルには「客室乗務員たちが演出する雲の上の多彩なドラマ」と付記しました。今回は心からのもてなしで機上の時間を演出してくれる客室乗務員の仕事なども含めて、いろいろお話しできればと思っています。私に与えられた時間は2時間ありますので、セミナー途中ではANAの現役客室乗務員をスペシャルゲストに迎えて2月から着用を開始した新しい制服を披露するほか、彼女との本音トークもお届けする予定。ぜひふるってご参加ください。
2015年02月04日
“捨て魔”の災い
航空写真家のチャーリィ古庄氏が「世界で最も多くの航空会社に搭乗した人」としてギネス記録に認定されたときの彼との対談で、私は何でもすぐに捨ててしまう“捨て魔”であることを告白しました。古庄氏が「搭乗券をすべて保管していたことで記録が証明された」と言ったのに対し、私は「フライトを終えるとその場でゴミ箱にポイしちゃう」と。
仕事場である書斎も、放っておくとぐちゃぐちゃになるので、不要なものは捨てずにいられません。取材して記事を書き終えた資料類も、以前は「いつかまた使うかな」ととっておいたのですが、結局使ったためしがない。使いたくても何がどこにあるかわからず、探し出せないのです。
昨年の暮れに、二日間かけて書斎の大掃除をしました。正月休みは季刊『航空旅行』2015年冬号に寄稿する記事を書く予定で、取材を終えた資料などは一括してデスクサイドに保管し、それ以外はポリ袋にぽんぽん放り投げていく。爽快でした。出したゴミは結局、大型サイズのポリ袋に5つ分。書斎は見違えるように片づき、翌日からフレッシュな気分で執筆作業に向かおうとしたときです。あれ? ないゾ。保管しておいた、4社分のフライトレポートと5カ国の旅のエッセイを書くための資料が。す、捨てた? もう一度探してみましたが、どこにも見当たりません。捨ててしまったようなのです、ゴミといっしょに。
凍りつきました。そのまま凍りつづけたら、死んでしまったかも知れません。ですが幸い、ノー天気な性格なので、30秒後には一人で大笑い。「ギャハハ、あいつら(資料類)はおれに捨てられる運命にあったのさ」と。そうして記憶だけを頼りに、忘れてしまった部分は想像力で補って書き上げたのが、巻頭特集「エアバスA380で行く旅」の68ページ分の原稿です。facebookにもアップした上の写真は、執筆しながら思い出したモーリシャスでの一コマ〔倉谷清文氏撮影〕。楽しかったなあ。あ、最後に本音を言いますね。もう二度とあんなふうにゾッとした気分は味わいたくない。モノを捨てるときは、気をつけよっと。
2015年02月01日
LAでアート巡り
私が力をいれて取り組んでいる季刊『航空旅行』の2015年冬号が昨日、発売になりました。これまで何度も報告してきたように、特集は「エアバスA380で行く旅」。A380は開発当初から取材を進めてきた私の重要テーマの一つであり、今号で紹介したエアライン4社はすべて私が取材・執筆しています。
その中でも思い出に残っているのが、SQ(シンガポール航空)で飛んだLA(ロサンゼルス)の旅です。同社のA380には、世界初就航となった2007年10月のシンガポール/シドニー線に搭乗して以来、ずっと関わりつづけてきました。この最も愛着のあるSQで大好きなアメリカ西海岸の街、LAへ。写真家の倉谷清文氏とともに精力的に取材・撮影スポットを訪ね、どのシーンもいまだ鮮明に記憶に焼きついています。
LAの旅でテーマにしたのが「アート巡り」です。いつか実現したいとずっと思っていました。街なかをクルマで走っているとあちこちで出会う、古い倉庫の壁などにダイナミックに描かれたアート作品の数々。思わずクルマを止めて歩きはじめてしまうことも少なくありません。そこで撮った倉谷氏の写真も、私のエッセイとともに誌面に配置しています。
ロサンゼルス国際空港に完成した新しいターミナル(トム・ブラッドレー国際線ターミナル)についても、到着時に取材しました。自動入国審査端末の稼働で入国手続きが迅速化されたほか、商業施設も従来とは比べものにならないほど充実。この新ターミナルについても、同誌の連載「世界のエアポート」で併せて報告しています。
2015年01月29日
バクテーの有名店
クアラルンプール中心部のインビ通りから一本裏手に入ると、中華料理系の店が並ぶ屋台街に出ます。どの店も安くて、そこそこ旨いと評判で、なかでも地元の人たちでいつも込み合うのが「新峰肉骨茶(Sun Fong Bak Kut Teh)」というバクテーの超有名店。現地の人に連れられて、お昼に行ってみました。
バクテー(肉骨茶)とは、骨付きの豚肉を漢方のハーブを効かせたスープで煮込むヘルシー料理です。茹でこぼしをしながら作るので豚の余分な油が取り除かれ、味は意外なほどあっさり。漢方の臭さもありません。三枚肉やスペアリブ、ホルモン、骨つきモモ肉など豚肉のいろいろな部位を味わえるのも魅力です。
隣の国シンガポールにもよく行くバクテーの名店がありますが、クアラルンプールのこの店は白スープのバクテーのほか鉄板焼きやホルモンの煮込みなどメニューが豊富。シンガポールとマレーシアと、バクテーはどちらが本家なのだろうと思ったら、双方で「うちが元祖」と言い張っているそうです。クアラルンプール郊外のクランという街が発祥という説が有力なようですが。
脂肪分などを身体から洗い流す中国茶といっしょに──というのがバクテーの一般的な食べ方で、この日はジャスミン茶を注文しました。もちろん、ビールもついでに(笑)。いろんな種類をたらふく食べて、一人せいぜい1,000〜2,000円程度。満足でした。
2015年01月27日
赤道に近い都市
身体が軽〜く感じます。昨年末のパリ取材を終えてから、ウエイトオーバーの解消に取り組んできました。アジアや中東、アフリカ、欧米と海外での仕事が続き、ついついおいしいものを食べ過ぎてしまって。旅の取材では食べることも必須なので仕方がないことですが、そこに極度の運動不足も重なったようです。
でも「身体が軽く感じる」と書いたのは、じつは減量の成果ではありません。軽くなった理由は、昨日から滞在しているマレーシアのクアラルンプールという土地にあります。どういうことか、というと──。
赤道に近いクアラルンプールでは、地球が自転している遠心力で、どの人の体重も平均200グラムほど軽くなります。これ、ウソではありません。自分の体重を正確に測って、その体重と完全に等しい浮力を持つ風船を用意し、それにぶら下がったと仮定しましょう。計算上は体重と風船の浮力がちょうどつり合うはずですが、クアラルンプールでは静止しません。地球の遠心力で、身体が徐々に浮き上がってしまう。つまり、その分だけ身体が軽く感じてもおかしくないのです。
な〜んて、たかが200グラムの差なんて、認識できるわけないか。トイレに一回行けば、それ以上に体重は変動しますから(笑)。クアラルンプールで身体が軽くなった本当の理由は、日本から着てきた重いジャケットやコートを脱ぎ捨てたからです。昨日朝、自宅を出発したときの気温は摂氏3度でしたが、到着したこちらの温度表示は30度。半袖のポロシャツ一枚になったら、心も身体も解放されました。今週はクアラルンプールに滞在して、人に会ったりホテルで書き物をしたり──まあ、仕事はほどほどにして、プライベートな時間もゆっくり楽しみます。
2015年01月24日
女優・佐々木希さん
日本経済新聞の購読者に届く女性向けの月刊タブロイド紙『日経interesse(インテレッセ)』。その表紙には毎回“旬”な女優やタレントが登場し、「この人に会いたい」と題するインタビュー記事が掲載されます。最新号(2015年2月号)を飾るのは女優の佐々木希さんで、そのカバーストーリーは私がインタビューして書きました。
佐々木さんは、2月に公開される映画『さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら〜』で、永作博美さんとW主演を果たしました。私が会ったのはクランクアップの直後で、インタビューする前日の夜に、完成したばかりの試写用のDVDを拝見。シングルマザー役という、佐々木さんのこれまでとは違った役柄に、ずいぶん苦労や戸惑いもあっただろうなと想像したことを思い出します。
これは、故郷の奥能登に帰って焙煎珈琲店を開いた「岬」と、この地に住むシングルマザーの「絵里子」との心の交流の物語。佐々木さんが挑んだのは、岬(永作博美さん)との関わりや子どもたちとの日常を通じて人と交わることの喜びを知っていく絵里子役です。台詞(せりふ)のキャッチボールでストーリーを進めていくのではなく、言葉少なに、心が揺れ動く様子を佐々木さんは背中や表情だけで見事に演じ切っていました。私も舞台脚本などを書いてきた人間なので、この作品にはそんな点でも好感を持ちます。
インタビューでそんな感想を伝えると、佐々木さんはにっこりうなずいて「私にとっても転機になった作品だと思います」と話していました。同映画は2月28日から全国公開されますので、興味のある方はご覧になってみてください。
2015年01月21日
究極のもてなし
半個室型のシートに身をゆだねる。プライベートな空間がとても心地いい。サイドテーブルに置かれたグラスに、ウェルカムシャンパンが注がれる。ほどなく、この便のキャビン責任者であるチーフパーサーが挨拶に現われて──。
以前、ANAのファーストクラスを利用したときに、こんな描写で始まるフライト体験記をどこかのメディアで書きました。担当の客室乗務員の洗練されたサービスぶりが、強く印象に残っています。
私が搭乗したのはボーイング777-300ERでの運航便で、8席あるファーストクラスを2名の客室乗務員で担当していました。ちなみにビジネスクラスは客室乗務員1名が10名の乗客をケアするそうなので、それと比べても、ファーストクラスでは乗客一人ひとりに対するパーソナルなサービスの度合いがいかに高いかがわかります。その最上級クラスで働けるのは、さまざまなフライトで数多くの経験を重ね、社内での資格を有する選ばれた人たちだけ。「いつかは自分もファーストクラスを──」と、客室乗務員としての仕事を始めた彼女たちは誰もがそう夢見ると聞きました。
ANAは今日、3月29日に始まる夏ダイヤから、成田/シンガポール線(NH801/802便)にファーストクラスを導入すると発表しました。同路線は現在、ボーイング787でデイリー運航していますが、これを777-300ERに大型化。ファーストクラスが8席設置されます。ANAの“究極のもてなし”が少し身近に体験できるようになるので、また乗ってこようかな。
2015年01月18日
那覇の新ラウンジ
週末に沖縄に飛びました。「飛んで帰ってきた」という表現が正確ですが。昨年12月15日に那覇空港にオープンした「ANAスイートラウンジ」の視察が目的です。ANAのプレミアムメンバーのためのライフスタイルマガジン『ANA AZURE』でラウンジ探訪の新連載が始まることになり、その案内役を務めることになりました。
一般の上級会員向けラウンジは那覇空港を訪れるたびに何度も使ってきましたが、ファーストクラス利用者やマイレージサービスの最上位「ダイヤモンド」会員が利用できるスイートラウンジは、国内線では羽田に次いで2番目の開設です。ラウンジに直結する専用の保安検査場も新設され、とても便利になりました。沖縄は修学旅行の学生などが団体で訪れ、時期や時間帯によってはセキュリティを抜けるだけでかなりの時間を要することが多々ありましたから。
以前から「スイートラウンジを」という利用者からの声も多かったそうです。そこで新ラウンジを開設したわけですが、残念なのは四方が壁に囲まれて窓がないこと。「航空機を眺めながらくつろげたらいいのに」と思う人もいるかもしれません。確保できたスペースの関係で仕方ないのでしょうが。
それでも、インテリアに沖縄らしさを演出するなど、とてもいい雰囲気でした。上の写真で私が持っているのは品評会で堂々1位に輝いた琉球泡盛「松藤」で、これも那覇の新ラウンジだけでのサービスです。内装の写真なども含めて、詳しくは『ANA AZURE』で春号から始まる新連載で!
2015年01月15日
仰天の世界紀行
航空機の進化で、かつては実現しえなかった長距離路線が開設される時代になりました。ですが、ロングフライトだけが“空の旅”ではありません。世界には、フライト時間がわずか1分という超短距離路線も! そんな話が、先週発売になった『ビックリ飛行機でゆく世界紀行』(イカロス出版)の冒頭に出てきます。
著者は、航空写真家のチャーリィ古庄氏。彼は日本から何日もかけて、フライトを何回も乗り継いで、英国のオークニー諸島という聞いたこともない島を目指しました。前述した、飛行時間が1分という世界最短の定期路線に乗る──それだけのために、です。そんな珍道中ばかりを集めた本書は、読みはじめると面白くて止まりません。止まらないのは著者も同じで、彼は「まえがき」で「重度の三大疾病に冒されている」と告白しています。その三代疾病とは、依頼されてもいないのに飛行機の写真を撮りに出かける“撮りインフルエンザ”と、飛行機に乗ってばかりいる“乗りウイルス”と、機体番号を集める“レジおたく菌”と──。
私は、年末から続いていた執筆作業をようやく終え、チャーリィ夫妻と一昨日、東京・丸の内のイタリアンで新年会を開きました。彼が引率役で昨年秋に実施した「エミレーツ航空でゆくドバイ/ブロガーツアー」に参加させてもらった私の子分も交えて。チャーリィはその席で、新刊書を私にプレゼントしてくれました。写真にもあるように、私の書棚には彼の本がどんどん増えていきます。
本を手渡すときにチャーリィは私たち二人を見ながら「在庫が1冊しか手もとになくて」と恐縮するので、私は子分に「キミは自分で買いなさい」と言ったら、彼女からすかさず「私はもう買って、読み終えました」と返ってきました。え、えらいなあ。その発言にはチャーリィ夫妻も感激した様子。私も自分でお金を払って買えるように、ちゃんと働かないと。
2015年01月12日
1995年
いまから20年前の1995年は、いろいろなことがありました。たとえば、カシオ計算機が「QV-10」というデジタルカメラを発売したのが1995年の3月。私も当時、すぐに飛びついたことを思い出します。パソコンに直接つなげて、撮った写真を移動させることができる。衝撃でした。デジカメはすでに他社からも出ていたものの、撮影画像をその場で確認できる背面の液晶パネルは世界初。ここから時代が変わりました。
私は仕事柄、あらゆるジャンルの本を読みます。マンガから小説、難しい技術書まで。1995年当時には、哲学書や宗教に関する本をかなり読みあさっていました。そして、その年に日本で大ベストセラーになったのが、ノルウェーの高校哲学教師ヨースタイン・ゴルデルが書いた『ソフィーの世界』です。ファンタジー小説の形をとった哲学の入門書で、世界各国で翻訳されて2,300万部以上を売り上げました。
1995年の1月17日は阪神・淡路大震災があり、その年の3月20日は地下鉄サリン事件が勃発。「がんばろう、神戸」や「マインドコントロール」が流行語になりました。東京臨海副都心にゆりかもめが開業したのもこの年の11月です。
さて、今日は成人の日。あの年に生まれた人たちも、今年で20歳を迎えます。20年なんて、本当にアッという間。成田空港では昨日、千葉県成田市の主催で、エアライン5社の客室乗務員や整備士らが制服姿で参加してのひと足早い成人式が行われていました〔写真〕。
2015年01月09日
羽田神社にて
今日は羽田神社に来ました〔写真〕。この界隈に住む子分が「休みなのでつきあいますよ」と言うので、京急の大鳥居駅で待ち合わせて。昨年に引き続き、これから遅〜い初詣でです。
遅い、と言っても、昨年ほどではありません。昨年は1月1日から体調をくずし、入院も含めて3週間寝込んでしまいました。2014年の初めての外出は1月24日──空港で取材があったついでに、この羽田神社まで足を伸ばしてお参りしたのを思い出します。
2015年も今日が初外出ですが、今年は寝込んでいたわけではありません。心身ともに健康で、ピンピンしています。ただ、仕事が忙しくてまったく出かけられませんでした。一番の大物は季刊『航空旅行』の冬号(Vol.12=1月30日発売)の特集「エアバスA380で行く旅」の原稿で、書いたのは計68ページ。巻頭のエミレーツ航空をはじめシンガポール航空、大韓航空、タイ国際航空のフライトレポートに、ドバイとモーリシャス、ロサンゼルス、パリ、バンコクの旅のエッセイを添えて特集が構成されます。今日の午前中に最後の1本を入稿し、ようやく終わりました。
神社でのお参りを終えて、いまから子分が予約したという蒲田の店に飲みに向かいます。外で飲むのも今年は今日が初めて。酒が回りそうだなあ。ハメを外さないようにしないと。
2015年01月06日
コンタクト
年末から正月にかけてある雑誌への寄稿記事をずっと書き続けているのですが、予定より遅れていて、まだ終わりません。1本につき6ページから10ページの記事が計11本、ほかに連載コラムが1本、トータルで約70ページの仕事です。1本終えると、頭を切り替えるのに半日くらいかかって、そのロスが響いています。
2日ほど前の深夜に、テレビ東京でジョディ・フォスター主演の映画『コンタクト』が放映されていました〔写真〕。ラストシーンは賛否が分かれるのですが、全体としては好きな映画です。テレビの放映は観る時間がなかったのですが、前述した「頭の切り替え」を兼ねて、昨夜遅くに書斎で久しぶりにDVDを鑑賞しました。
ジョディ・フォスター演じる天文学者エリーが最初のほうのシーンでビーナス(金星)を見上げて言うセリフがあります──「この銀河だけで4,000億もの恒星が存在しているの。恒星の百万に一つが惑星を持ち、惑星の百万に一つに生命がある。その百万に一つが知的生命であるなら、全宇宙には数百万の文明があるはず。そうじゃなかったら、スペース(空間)がもったいない」。私も、まったく同意見です。
ただし、私はUFOなどに一度も遭遇したことがないので、確信が持てません。一度でも見れば、信じられるのに。じつは、私が取り組む「航空」の世界で、ある職種の人たちの多くがUFOを見ているらしい。取材をかけてもなかなか口を割らないのがもどかしいのですが(笑)。今月末に開講する中日文化センターの新講座『もっと知りたい旅客機の世界 〜空の旅の楽しみ方〜』で、もし受講者の方たちに興味があれば、そんな話もしちゃおうかな。
2015年01月01日
謹賀新年 '15
新しい年──2015年が始まりましたね。午前0時の時報を待って、今年最初のBlogを更新しました。みなさん、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、先日の中日新聞に私の記事が掲載されました。今月末に開講する中日文化センターの新講座『もっと知りたい旅客機の世界 〜空の旅の楽しみ方〜』の講師として、同紙の記者からインタビューを受けたものです。いまからfacebookに拡大画像をアップしますので、内容はそちらでご覧ください。
講座の募集定員は当初、45名と聞いていました。が、中日文化センターの担当者の報告によると、昨年の時点ですでに40名を超す申し込みが届いているとか。初回は1月31日(土)で、まだ1カ月近く募集期間があることから、100名まで入れる教室に変更したそうです。ですので、空の世界の興味のある方は、どうぞふるってご参加ください。
それでは、今年1年もみなさんにたくさんの素敵な旅の機会が訪れますように。
2015年元旦 秋本俊二
2014年12月28日
さわやかな敗北
今日は中央競馬の1年を締めくくる「第59回・有馬記念」。この日で引退を宣言していた5歳牝馬のジェンティルドンナが、見事なラストランを見せてくれました。1番人気から3番人気のゴールドシップ(3着)、エピファネイア(5着)、ジャスタウェイ(4着)を抑えての圧巻の勝利です。
2着には、3歳牡馬のトゥザワールドが入りました。私の買った馬券は、1着・2着とも的中。しかし残念ながら、3着のゴールドシップは「7枠14番」という外枠を嫌って、買っていません。ジェンティルドンナとトゥザワールドの2頭を固定し、1枠から5枠までの数頭に流して「三連複馬券」を買っていたのですが。
私の買った馬券が当たっていたら、1、2カ月くらいは働かないで済みそうだったのですが、そうはうまくいきません(笑)。今年秋のG1レースでは、菊花賞とエリザベス女王杯を連続で的中させました。神様は「これ以上“当たり馬券”をプレゼントしてしまうと、こいつ本当に働かなくなるゾ」と判断したのでしょう。なので、来年も真面目に執筆活動に取り組むことにします。
ジェンティルドンナには拍手喝采です。歴史に名を残す名馬であることが、今日のグランプリレースで証明されました。馬券は外れたものの、さわやかな敗北感を味わいながら、2014年最後のBlogをいまこうして綴っています。みなさん、今年もBlog『雲の上の書斎から』を訪ねていただきありがとうございました。どうぞ素敵な新年を!
2014年12月25日
動物に癒された1年
2014年も、余すところあと6日となりました。この1年間の写真を整理していて思ったのは、動物に触れ合う機会が多かったなということ。そしてどの写真にも笑顔の自分がいることで、心を癒されている様子が伝わってきます。
3月に行ったオーストラリアのシドニーでは、郊外の大自然のなかで乗馬に熱中しました。約2時間をかかて森の中へ分け入っていった体験は、忘れられません。モーヴくんという名のあの11歳の牡馬、元気かなあ。またそう遠くない将来、会いに行きたいと思っています。その帰りには動物園にも寄り、コアラやカンガルー、ワニなどと遊びました。
6月のパラオでの一番の思い出は、湖に生息する2,000万匹のクラゲたちと泳いだこと。気味悪さと恐怖心から最初は嫌々だったものの、だんだんクラゲたちに心を奪われ、少しでも長くここで彼らといっしょにいたいという気持ちに変わっていったことを思い出します。11月のドバイでは、夜の砂漠でラクダに乗りました。ついでに、市内でラクダ肉のハンバーガーを食べたのは、余計な経験だったかも知れません(笑)。
そして12月のモーリシャスでは、ゾウガメやライオンを自分の手でなでました。つい最近のことなので、その感触はいまも手に残っています。facebookにもいくつかの写真をアップしましたが、どれも楽しい思い出で、2015年もまた忘れられない旅ができたらいいなと願っています。
2014年12月22日
“二股提携”の真相
先週後半から週末にかけて、新聞やWeb媒体を中心にスカイマークに関するニュースが相次ぎました。経営立て直しに必死に取り組む同社の動向に、マスコミ各社の注目が集まっているようです。
まず19日に入ってきたのが「国内線の主力機材として使用する小型機ボーイング737を削減する方針を明らかに」と「米子空港(鳥取県)発着の路線から撤退する方針を固める」という二つのニュース。ピーク時には30機を保有していた737を2015年末時点で25機に減らす一方で、不採算路線の整理も進めているようです。米子線のほか、札幌/仙台線も2015年3月で運休する見込みだと伝えられました。
そして20日に報じられたのが、総2階建て機A380の購入契約見直しをめぐるニュースです。「エアバスはスカイマークに対し、英国商事裁判所で損害賠償を求める訴訟の準備を開始した」と各社は報じました。両社は9月末から違約金の減額交渉を続けていますが、条件面で折り合いがつかず、長期化しそうな気配です。当初の予定なら、いまごろはスカイマークのA380が成田/ニューヨーク線に就航していたと思うと、残念でなりません。もちろん私は、まだまだ期待と希望を捨てていませんが。今後の動きを注意深く見守っていきたいと思います。
12月後半に入ってからは、読者から「JALとANAそれぞれとの間で交渉が進む“二股提携”」についての質問も増えています。ちょっとわかりづらい問題だと思いますので、こちらにつては本日、一問一答形式での解説記事を『Business Media 誠』で公開しました。興味のある方はご一読ください。
≫≫≫「スカイマークがJAL、ANAとの“二股提携”を模索──その真相は?」
2014年12月19日
YS-11購入計画
11月末にモーリシャスに滞在していたとき、友人である航空写真家のチャーリィ古庄氏から「これ、共同購入しましょうよ」とメールが入りました。国土交通省ホームページにある「お知らせ」コーナーのURLが添えられて。アクセスしてみたら、国交省が保有する国産プロペラ機YS-11の最後の1機が、一般入札で競売にかけられていました。
そのときは海外取材中で忙しく、私は「あはは」と笑ってすぐに忘れてしまったのですが、彼は冗談ではなく本気で私を誘っていたことがあとでわかりました。YS-11の古い機体を、古庄氏は真剣に手に入れたいと思っていたのです。
YS-11って、どのくらいの大きさがあるのか? 全長26メートルで全幅が32メートル。で、デカいな。最低でも832平方メートルの敷地が必要だ。坪にすると250坪。うちの庭じゃ入らない。(彼が住む成田の)近くに空いている土地(林)があるけど、木の伐採や舗装にすげーお金がかかりそう。いや、そもそもどうやってうちまで運んでくるか? 売りに出されているYS-11はすでに登録が抹消されているから、飛んでこれないし。主翼を取り外して、トラックで運ぶしかないか。うわ、輸送にも金がかかる! こりゃ大変だな。銀行はこんなことで、お金貸してくれるかな。無理だろうな。で、でも、欲しい。改装して「YSカフェ」でも開いたら、どんなに楽しいか……。
そんなことを、古庄氏はずっと考えていたらしい。先ほども言ったように、私はあとで知ったことですが。では、誘われたときに「本気」だと気づいていたら、どうしたでしょうか? もちろん、どうもしません。巻き込まれなくてよかったです(笑)。このYS-11は一昨日、大阪の航空機販売会社が223万200円で落札したと国交省から発表がありました。
2014年12月16日
過ぎ去りし10年
パリ取材から戻り、前回のBlogでも書いたように今年予定していた海外取材はすべて終了しました。年内はもう日本を離れません。そこで本日、執筆の合間を見てパスポートの更新へ。10年前に更新したパスポートの有効期限が、昨日で半年を切ったからです。
古いパスポートには、この10年間の旅が記録されています。スタンプを押す空きスペースがいまから2年半ほど前になくなり、増補手続きをしたのですが、新しい空欄もほとんどいっぱいに。アメリカ、アジア、ヨーロッパをはじめ、中東、アフリカと本当によく旅をしました。前回──2005年にパスポートを更新して最初に行ったのは、どこだっけ? そう思ってスタンプをたどってみたら、中国でした。
先ほどfacebookにもアップしましたが、そのときの写真です。世界各国の旅行&航空ジャーナリストを集めての会議が上海であり、私も招待されて飛びました。10年前なので、とても若い! まるで「小僧」のような顔をしています(笑)。あのころに比べると、私もずいぶんな「おっさん」になりました。
新しいパスポートには、そのおっさんの顔が載ります。いいえ、少しも嫌ではありません。最近はどの国に行っても、入国審査で係員にパスポートの写真と実物とを何度も見比べられるのが常でした。さすがに10年も経つと顔が変わり、みんなに「これ、ほんとにお前か?」という目で疑われて。でも、これからはパスポートもおっさん顔になるので、その心配ももうありません。10年後に再びパスポートを更新するときは、おっさんどころか「じーさん」になっているのでしょうね。それもぜんぜん嫌じゃありませんが。
2014年12月13日
海外取材を終えて
フランス・パリより帰国しました。ヨーロッパは早くも本格的な冬を迎え、パリでも小雨がぱらつく底冷えの毎日。しかし、下町のモンマルトルを歩いた日だけは朝から快晴で、丸一日を大好きなエリアでのんびり過ごせたのは幸いだったなと思います。
先ほどfacebookにもアップしたご覧の写真は、同行の写真家・中西一朗氏が撮影し、アーティステックなモノクロ画像に加工してくれたものです。多くの観光客が訪れるモンマルトルでも比較的静かな西側斜面の小道をふらふら歩いていたとき、彼から「ちょっと振り向いてください」と言われ、撮ってもらいました。モノクロ写真だと、モンマルトルという街の雰囲気がより伝わるのではないかと思います。
さて、2014年の海外取材はこれですべて終了です。今年もよく歩きました。元日に体調をこわして3週間ほど寝込み、海外での仕事はしばらく封印。3月になってANA便で米国ワシントンD.C.へ飛んだのが2014年の旅始めで、今年は渡航回数を減らすつもりだったのですが……。夏以降は出張が続き、振り返ってみると例年と同様に飛び回った結果になりました。
年間のフライトは何回くらいにおよぶのか? 先日、2015年1月にスタートする中日文化センターでの講座『もっと知りたい旅客機の世界 〜空の旅の楽しみ方〜』の担当者から「講座案内に“年間フライトが○○回の講師による”と入れたいので教えてください」と依頼され、ざっと50回くらいかなと答えたのですが、ちゃんと数えてみたらそれ以上(片道1回として約60回)でした。よく飛んだなあと、自分でも思います。来年はその半分くらいに抑え、国内にとどまって執筆作業に徹しようと目論んでいるのですが、はたしてどんな1年になるのやら。
2014年12月10日
ハープ弾きのおじさん
パリ滞在3日目。7日(日)に到着してからずっと小雨がぱらつく空模様でしたが、この日の朝は部屋のカーテンを開けると青空が目に飛び込んできました。何だか嬉しくなって、急いで支度をし、サン・ミッシェル駅からメトロを乗り継いでモンマルトルへ。私がパリへ来ると必ず一度は訪れるエリアです。
前回パリに来たときは、モンマルトルにホテルを取り、他のエリアへは行かずにここだけで過ごしました。「パリらしからぬパリ」といわれる、自由な空気に満ちあふれた独特の下町風情が私は好き。丘の斜面に古い街並みが広がり、その中心で白亜の聖堂サクレ・クール寺院が冬の低い太陽の光を浴びてまばゆく輝いています。
モンマルトルは、斜面の南側と北側で雰囲気がかなり異なります。この日はメトロ2号線のアンヴェール駅から南側斜面をつたってダイレクトにアクセスするルートを選びました。駅前から延びる生地問屋街のスタンケルク通りを進み、サクレ・クール寺院へ続く石段をゆっくり登っていくと、また会いました! 寺院前の広場で支度を始めていた、いつものハープ弾きのおじさんに。
私は毎回必ず3、4曲は聴いていくので、もしかしたら顔を覚えてくれていたのかも知れません。「あと5分待って」と言われ、近くに腰を下ろすと、やがて美しいメロディを奏で始めました。通りかかる観光客たちも、その音色に足を止め、少しずつ輪が広がっていきます。若き芸術家や多くの旅行者を引きつけてやまないこの街の魅力は、いつの時代も変わることはありません。
2014年12月05日
業界のナイショ話
この話はヒミツにしておこう。これも他言は控えないと──。世界を飛び歩いてフライトの現場の人たちと交流を持ったり、国内外のエアラインの本社や支社を訪ねて関係者たちにインタビューしていると、いろんな情報が私の頭の中にストックされます。ですが、面白いネタに限って、書いたりしゃべったりできないケースが少なくありません。暴露してしまうと、それを話してくれた人に迷惑がかかることがあるからです。
なわけで、本や雑誌、Web媒体で発表する文章は、私の知っていることの一部でしかありません。その「言えない部分」を一冊の本にまとめれば、面白くてベストセラーになるかもしれないのになあ。以前はそんなことも空想しました。だったら、この世界を引退する直前に「エアライン暴露本」を出して大儲けし、あとは悠々自適に暮らそうか──などと。
じつは最近、かつては「言えなかったこと」を、どんどん書いたりしゃべったりし始めています。物書きとして私が最も大切にすべきは、ウラ話を教えてくれた情報源よりも交流あるエアライン関係者よりも、まずはやっぱり読者です。その読者に、これからは面白い話を誰にも遠慮なく提供していこうと決めました。そのことでエアライン関係者に嫌われ、出入り禁止になっても、揺るぎない基盤もできましたしね。年齢的にも、もういいや、何でも言っちゃえ──という気持ちです(笑)。
さて、先日facebookでもお知らせしたように、名古屋の中日文化センターで2015年1月から『もっと知りたい旅客機の世界 〜空の旅の楽しみ方〜』と題する講座を受け持つことになりました。3カ月(月1回)の講座で、ここでもいままでどこにも書いていない、誰にも話していない「航空業界のナイショ話」をふんだんい披露するつもりです。中日文化センターの関係者の話では「11月27日に受付を開始した直後から多くの申し込みをいただいております」とのこと。もちろん、まだまだ席には余裕があるそうです。名古屋地区での開催という場所の制約はありますが、時間の都合のつく方、また遠くからでも大丈夫という方は、ぜひぜひ起こしください。詳細はホームページで。
2014年12月02日
パイナップルとモグラ
モーリシャスの人たちは本当に素朴です。ホテルやレストランで彼らと触れ合っていると、どれだけ心が開放されることか。それに私の大好物であるパイナップルが、いまが旬。日本で売られているのと比べると二回りほど小ぶりですが、味も濃く、フレッシュでおいしい。滞在中にたくさん食べて帰ろうと心に決めました。
驚いたのですが、パイナップルを食べるときに、こちらの人たちは果肉に塩と唐辛子を塗り込みます。「味が変わっちゃうじゃん!」と思ったのですが、そうすることで酸味の主張が薄まり、まろやかになるのだとか。みんながみんな同じ食べ方をするので、騙されたと思って私も試してみました。首都ポートルイスの市場を訪ねたときに、屋台のおばさんがビニール袋に入れたパイナップルに塩と唐辛子をまぶし、もみ込んでいたのを買ってみたのです〔写真〕。
ビニール袋を開いて恐る恐る口に入れてみると──これ、なかなかイケます! まずくないどころか、たしかに味がまろやかに。モーリシャスの塩と唐辛子は、日本のとは少し違うかもしれませんが、トライしてみればみなさんもきっとハマると思います。
さて、モーリシャスの旅も後半に入りました。東海岸の「コンスタンス・ル・プリンス・モーリス」から西海岸の「ディナロビン」にホテルを移しています。東海岸から西海岸へクルマで向かう途中、枝の先に何かをぶら下げた少年に出会いまた。降りて近づいてみると、大きなモグラです。食べるのだ、と彼は言いました。「家に帰ったら母さんに煮込んでもらうんだ。でっかいのが捕れたから、今夜はご馳走さ」と。自慢気に言って白い歯を見せる彼は、とても嬉しそです。
2014年11月30日
インド洋の貴婦人
ドバイを朝10時に発つエミレーツ航空EK703便で、モーリシャスに到着しました。空港からクルマで40分ほどの高級リゾート「コンスタンス・ル・プリンス・モーリス」に部屋をとり、週末をのんびり過ごしています。
季刊『航空旅行』の次号(Vol.12=2015年1月末発売)で予定している巻頭特集「エアバスA380で行く旅」の取材が佳境を迎えています。今回のエミレーツ航空はその3社目。ドバイ/成田線で運航していた同社のA380は、羽田線の開設でボーイング777に変更になり、いまは日本からA380に乗ることはできません。では、ドバイからのどの路線でエミレーツ航空のA380を取材しようか? いくつか候補に挙がったなかで最終的に決めたのが、モーリシャス線でした。
アフリカ・マダガスカルの東側に浮かぶモーリシャスは、日本からは遠いため、まだまだ馴染みが薄いかもしれません。しかし、ヨーロッパの人たちには大人気。「インド洋の貴婦人」と呼ばれ、多くの旅行者が訪れます。エミレーツ航空はドバイからモーリシャスへの便を、A380を使ってダブルデイリーで運航。私たちは午前の便を利用し、そのフライトを取材してきました。
モーリシャスを訪れるのは、私にとって今回が初めて。時間がゆっくり流れ、癒されています。ドバイの旅に続き、これからしばらくはfacebookなどでモーリシャスの旅の報告を続けます。
2014年11月27日
オールドドバイ
メトロの「レッドライン」から「グリーンライン」に乗り換え、午後4時前に「アル・ラス」という駅に着きました。地上に出ると、目の前を小さな船が何隻も行き交っています。地図で確認したら、私たちが立っているのは入江の北側。高層ビルた林立する「ニュードバイ」に対して、このあたりは「オールドドバイ」と呼ばれ、昔から商売の盛んな地区でした。
入り江沿いの通りから路地に入ると、さまざまな商店が肩を寄せ合うように密集して建ち並んでいます。布団屋にサンダル屋に絨毯屋に洋服屋。いまごろの時間になって店のシャッターを上げているのは、洋服屋のおやじさんでした。
「何、これから開店?」
「店は朝9時から開けてるよ。午後1時過ぎに閉めたんだ。いままで休憩してた」
「休憩って、3時間近くも休むんだ」
「お昼ごはんを食べてね。それから休む。いまの時期は涼しくなったからずっと開けている店をもあるけど、暑い季節は昼間に商売なんかやってられない。9割の店はお昼ねタイムさ」
洋服屋のあるエリアには、洋服屋ばかりが何百軒と並んでいます。そんなに競合して大丈夫なのか心配して聞くと、おやじさんは「同じものは売っていないから問題ないよ。素材も違うし、品物も違うから」と不敵な笑みを浮かべました。近隣のカタールやアブダビ、バーレーン、クウェートなどから買い付けに来るそうです。その先には靴を売る店が何軒も軒を連ね、右の路地を折れると帽子屋がずらり! しばらく歩くと、金のマーケットとして有名な「ゴールドスーク」に行き着きました。「24金買わない?」「ブレスレットを彼女のお土産にどう?」「見るだけでいいから寄ってって」──そんなふうに声をかけられながらの活気あるオールドドバイのそぞろ歩きも、楽しいものです。
2014年11月24日
“空の歌”は名曲揃い
お昼の12時15分からスタートしたNHK・FMラジオの特番『今日は一日“SORAソング”三昧、ヒコーキ・ラジオ/NHK002便』──順調に進行しています。ゲストのココリコ・遠藤章造さんとのトークを終え、入れ替わりにクリス松村さんが登場したところで、私はしばしの休憩に入りました。控室でのんびりしながら、いまこのBlogを書いています。ソラシドエアから借りたパイロットとCAの制服を着ているのは、司会の和田光太郎さんとアシスタントの渕上彩夏さん。
前回のBlogでも書きましたが、2012年9月に『NHK001便』を羽田空港の特設スタジオから公開生放送しました。司会の宮崎放送アナウンサー、和田光太郎さんとは2年ぶりの再会です。『001便』を終えたあと、和田さんは「必ず002便を飛ばしましょう。次は2時間とかではなく、丸一日でもやりたい」と言っていました。まさかそれが実現するなんて──私もびっくりです。
オープニングでかかった曲、バリー・ホワイト&ラヴ・アンリミテッド・オーケストラの『Love's Theme(愛のテーマ)』は、いいですね。JALやキャセイパシフィック航空のCMで使われたこの曲を聴くと、海外に憧れていた1970年代当時に引き戻されます。今日のテーマは「SORA ソング」ですが、空をテーマにした曲には名作が少なくありません。番組ではまだまだリクエストを受け付けているようですので、みなさんもぜひ!
このあと、18時50分頃からニュース&天気予報に続いて、番組が再開する19時20分頃から私もまたスタジオに戻ります。22時45分の終了まで、楽しい音楽とともに、くつろぎながら聴いてくださいね。