朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は、セウォル号沈没事故から1年を迎えた16日昼前、全羅南道珍島の彭木港を訪れた。しかし、死者・行方不明者の霊前への献花や焼香もできず、遺族と会うことすらできなかった。李完九(イ・ワング)首相も京畿道安山市の合同焼香所を訪れたが、遺族に弔問を拒否された。事故から1年がたつが、韓国社会の悲しみと対立がますます深まっていることを示す象徴的な光景だった。
朴大統領は午前9時半ごろ、大統領府(青瓦台)を出て、専用機とヘリコプター、乗用車を乗り継ぎ、午前11時50分ごろに彭木港に到着した。しかし、合同焼香所の門は閉ざされており、献花も焼香もできなかった。政府関係者は「朴大統領が来るという情報が伝わった後、セウォル号関連団体の関係者が焼香所を閉鎖してしまったため、弔問しようにもできなかった」と説明した。
朴大統領は焼香所の前にあった行方不明者9人の写真だけを見て回った。続いて、焼香所の横にある行方不明者家族の臨時宿泊先に寄った後、約300メートル離れた防波堤に移動した。そして、「セウォル号を引き揚げろ」と書かれた旗の下で海を背にして立ち、国民へのメッセージを約7分にわたり読み上げた。
朴大統領はメッセージで、「まだ冷たい水の中から帰ってこない9人の行方不明者の家族を思うと、胸が張り裂けそうだ。突然家族を失った苦痛を誰よりもよく知っており、その悲しみが消えずにいつも胸中に残り、人生を苦しめることも自分の半生を通じ感じてきた」と述べた。その上で、「船体の引き揚げを真剣に準備すべきだと思う。必要な措置を迅速に取り、できるだけ早く船体引き揚げを始めたい」と表明した。
しかし、朴大統領がメッセージ朗読を終え、車に移動する間にも、一部の関連団体メンバーは「セウォル号を引き揚げろ」といったスローガンを叫びながら、デモを行った。これに先立ち、彭木港に滞在していたセウォル号事故の死者遺族、行方不明者家族は、船体引き揚げと行方不明者の捜索が完了していないという理由で、事故1周年の追悼式を拒否し、15日午後に安山市に帰った。