2015年04月16日(木)01時27分

Moon Studios CEOが指摘する大作主義の問題点「ビジネスとして破綻している」

moon-ceo.jpgThomas Mahler氏

『Ori and the Blind Forest』が高い評価を得ているMoon Studiosは、現在5本の新作を準備中。そのうちの1本が、1944年にアウシュビッツから脱走したユダヤ人を描く『Project Memoir』だ。

最高経営責任者Thomas Mahler氏が「インタラクティブ・ドキュメンタリー」と呼ぶ『Project Memoir』は、第二次大戦という使い古された題材をより深く掘り下げるものになるという。

Thomas Mahler
人々を異なる人物の立場に置き、重みのある決断をさせる。それは他の媒体ではできないことだ。本ではできないし、映画でも音楽でも無理だ。インタラクティブ性が不可欠だからね。しかし、ゲームはインタラクティブだ。

ビデオゲーム業界の第二次大戦の扱いを見ると恥ずかしくなるよ。ゲームのストーリーテリングがどれだけ遅れているか、端的に示している。第二次大戦ゲームは無数に存在するが、そのどれもが興味深い題材を活かしきれずにいる。人間心理や人類の歴史といった面で、極めて面白い題材なのにね。どのゲームもナチスを撃つだけなんだ。本当に馬鹿げているよ。

『Project Memoir』のような思慮深いエンターテイメント作品の居場所は、現在のゲーム業界にはほとんど存在しないとMahler氏。

Thomas Mahler
MicrosoftやActivision、EAのような企業に乗り込んで、「極めて論争的な物語重視のゲームにお金を出す気はないかな?前代未聞のインタラクティブ・ドキュメンタリーで、成功するか全く分からないんだが、投資して欲しい」と尋ねるなんて、まずありえないことだろうね。そうなって欲しいが、現在のゲーム業界で『シンドラーのリスト』のようなゲームを作るなんて、到底不可能なことなんだよ。

現在私は、そのリスクに多くの資金と2人の開発者を投じているんだ。しかし、自分の名前を冠したいと思えるレベルの傑作として、リリースできるレベルに仕上がるかどうかは分からない。とても小規模なプロジェクトで、まだ試作段階に過ぎないんだ。しかし、この作品に全力を投じれば、業界全体にとって素晴らしい作品になるだろうと、私は既に分かっているんだよ。

Mahler氏は、1本のゲームに大金を投じるよりも、複数の小規模ゲームに投資を分散した方が、ビジネスの観点からも理に適っているとして、大手パブリッシャーに考えを変えるよう求めている。

Thomas Mahler
その中の一つが次の『Minecraft』になるかもしれない。それがどんな作品なのかは誰にも分からないが、この業界には頭の良い連中が沢山いるんだから、全てを投げ打つような賭けを毎回毎回するのは理屈に合わないんだよ。私からすると、ビジネスとして破綻している。1本のトリプルAゲームにかかる5000万ドルだか6000万ドルを、10から20のタイトルに分散して投資すれば、その中に(『Minecraft』の生みの親)Markus Perssonがいて、次の大ヒットを生んでくれるかも知れないんだ。そういうモデルを見てみたい。トリプルAタイトルはなくならないし、重要な存在だ。最高だし、大金を稼いでくれる。だが同時に、投資対効果の高い、大金を生み出す小規模タイトルを生み出すことも可能なんだ。しかも、投資額は少なく、リスクも低くて済む。私にはその方が理に適っているよ。なぜActivisionがそういう方法を取らないのか、なぜEAがそういう方法を取らないのか、なぜ任天堂がそういうやり方に殆ど手を出していないのか、私には理解できない。全く意味不明だよ。

ソース: Games Industry

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